―異質― 日本国の有事防衛組織、その異世界を掻き回す重金奏《激突の編》 作:えぴっくにごつ
――それから各々はそれぞれの行動に移行した。
穂播と直宇都は新型73式小型トラックに乗って、広場より後方へと下がって行った。鐘霧や朱真は、今しがた到着した隊員等と合流再編成し、神殿の大階段を駆け上がって行く。
そんな中、制刻、鳳藤、河義、策頼等、54普連の面子。そして敢日とGONGは、一度広場の一角で集合した。
「――さて、どうするか。俺達はどうにも、良くも悪くもお客さん扱いって感じだな」
集合した所で、河義が一番にそんな言葉を発する。
「んなら、好き勝手動かせてもらいましょう。ドンパチの所を、冷やかしに行くのもいいでしょう」
その河義の言葉を受けて、制刻はそんな進言の言葉を発した。
「冷やかしって、お前……」
そんな制刻の発言に、鳳藤は呆れた声を上げる。
「いや。だが俺達の側でも、もう少し町の状況を掌握しておくべきかもな」
しかし河義の方は制刻の言葉から、自分達での状況掌握の必要性を鑑み、発した。
「んじゃ、俺等で見てきます。河義三曹は策頼と一緒に、ヘリのお守りを」
それを受け、制刻は自身が観察行動に出る旨を発する。そして続け、河義等にヘリコプターの防護を要請。
「剱、行くぞ」
そして河義の返事も待たずに身を翻し、鳳藤に追従を促しながら、神殿の大階段に向かって歩き出した。
「はぁ、そんな予感はしてた……」
有無をいわさず、制刻に付き合わされる事になった鳳藤は、ため息混じりに吐き出しながら、制刻の身を追う。
「よし。行くぞGONG」
そして敢日とGONGは、当たり前と言うようにそれに続いた。
制刻等3名と1機は、神殿の大階段駆け上がり、大きく仰々しい作りの神殿正面入り口を潜り抜け、神殿内部へと踏み入る。
内部は広く天井の高い作りになっている。そして内部には、先んじて踏み入った鐘霧率いる一班が展開しており、すでに彼等の手によりクリアリングは終えられていた。
「見ろ。彼等皆、装備が最新だぞ」
そんな班の隊員等の姿を見止め、鳳藤が一番に発する。
その言葉通り、鐘霧率いる班の隊員は皆、新型の小銃である〝17式5.56mm小銃〟。もしくは〝17式7.62mm小銃〟を装備。分隊支援火器射手は、MINIMI Mk.3を装備している。
そして他各種装具も、新しい形式の物が多く見受けられた。
「流石の期待の新設連隊だな」
「あぁ」
感嘆の声を零す剱。しかし一方の制刻は、対して興味無さげに生返事を返す。
「そう言えば自由。お前も一時期、77普連に居たんだろう?」
そんな制刻に、今度は敢日が尋ねる言葉を紡ぐ。
制刻は、元の世界で二年前に起きた、ロシアクーデター軍による南樺太侵攻――〝樺太県侵犯事件〟の際、〝部隊間相互教育プログラム〟という施策により、第77普通科連隊に出向していた経歴があった。
「そん時、色々あって穂播さんと拗れたんだろ?」
「何があったんだ……?」
続け敢日は、制刻と穂播との関係性について言及。鳳藤は、困惑と呆れの混じる声で、尋ねる言葉を紡ぐ。
「色々だ」
しかし制刻はそれだけ言い、またしても詳細を話そうとはしなかった。
「貴様ら」
そんな所へ、端から声が掛けられ飛んで来た。各々が視線を向ければ、そこに歩んで来た鐘霧の立つ姿があった。
「我々に同行するつもりか?」
「えぇ。ちと、冷やかしに」
そして寄越された尋ねる言葉。それに対して、制刻は不躾な、そしてふざけた様子でそんな言葉を返す。
「状況掌握のためです……ッ」
そこへ鳳藤が、少し慌てて訂正補足の言葉を差し込む。
「噂通りの問題隊員だな――まぁいい。一緒に来る以上は、協力してもらうぞ」
鐘霧はそんな制刻の態度を前に、少し厳しい顔色で発した後に、そう忠告し命じる言葉を発する。
「いいでしょう」
それに、またも不躾に言葉を返す制刻。
対して鐘霧は最早言葉を返さず、身を翻して制刻から離れた。
「4班、行くぞ」
鐘霧は、神殿内部で警戒態勢を取っていた、班の隊員各員に発し命じる。各員はそれに応じて警戒態勢を解き、先行する鐘霧に続く。
「んじゃ、俺等も行くか」
そして制刻等も、あまり緊張感の感じられない様子で、それに続いた。
鐘霧率いる班――改め4班。そして制刻等は、神殿内部を突っ切って抜け、神殿の反対側へと出る。
出た先では、神殿の土台部より降りるための通用階段が設けられていた。表の荘厳な作りの大階段とは違い、実用性主眼のシンプルな階段であった。そして神殿より先には、町並みが広がっていた。
「階段を降りるんだ」
鐘霧の促しを受け、列を成して階段を下ってゆく4班。そして制刻等もそれに続く。
階段を降り切った先は町路と繋がっており、その町路は神殿より緩やかなカーブを描いて離れ、町並みを割って伸びている。
その町並みを割って伸びる町路の先に、複数の緑色の大きな影――オークの群れが姿を現したのは、その時であった。
「来やがったぜぇ!」
各員はすぐさまその存在を確認。そして代表するように、朱真が声を張り上げた。
「展開しろッ」
ほぼ同時に、鐘霧が指示の声を発し上げる。そして4班各員は飛ぶように散会、町路周辺の家屋や遮蔽物に飛び込みカバー。そして一泊置いた後に、各所各員より射撃行動が開始された。
町路の先より現れたオークは、10体程。内の先陣を切る二体程が、得物の斧をひっさげながら、吶喊を試みようとしたが、その二体はあえなく小銃射撃の餌食となり、地面に崩れた。
「近づけさせるな。ヤツ等の肉薄は脅威だ」
鐘霧が、展開した班員に警告の声を発し上げる。
しかし反して、オーク達はそこから続き吶喊を仕掛ける姿は見せなかった。オーク達は町路の向こうで、身を隠す様子を見せる。そして直後、こちら側へ複数の矢が飛来、襲い来た。
「ッ――気を付けろ。
襲い来たそれを受け、鐘霧は警告の声を。続けて分隊支援火器射手の隊員に、軽機による制圧射撃を命ずる。
それに呼応し、射手の構えたMINIMI MK.3が発砲を開始、弾幕を町路上に形成する。
さらに4班各員も、矢撃の隙を見ての射撃を再開。町路上を、銃火と矢撃、双方の激しい攻撃が飛び交いだした。
「モンスターズ。うまくカバーしながら戦いやがるな」
一方。鐘霧等同様に周辺遮蔽物にカバーした制刻等は、上がり出した激しい射撃音を聞きながらも、先のオーク達の動きを観察。そして制刻がそんな言葉を零す。
「あぁ、こっちの戦闘形態を学んで、合わせて来てるみたいだ。見た目の割に、なかなかどうして柔軟で、戦術に長けてる」
制刻の言葉に、近くでカバーしている敢日が返す。
オーク達は隊の戦闘形態に対して、見おう見まねな様子ながらも、学び適応していた。敢日はそんなオーク達を評する言葉を紡ぐ。
「頭の回るモンスターか。厄介だな」
そして制刻は、そんな敵の存在に、淡々と呟いた。
その間にも戦闘状況は動き、4班側からの火線弾幕により、オーク達の内の2~3体程が無力化。残るオーク達は身を晒すことを極力避け、クロスボウだけを遮蔽物より突き出し、狙わずの闇雲な矢撃を放ってきている。しかし精度こそ欠けるものの、これ等の矢撃もまた前進押し上げの障害となる、厄介なものであった。
「面倒だな、時間を食われる――陸士長」
制刻の元へ、鐘霧から呼ぶ声が掛けられる。
「役に立ってもらうぞ。迂回して、ヤツ等の側面背後を突けないか試してみろ」
そして鐘霧からは、そんな命じる言葉が寄越された。
「〝樺太事件の特異点〟が、どれ程のものか見せてもらう」
続き、そんな言葉を寄越す鐘霧。それは少しの皮肉と、試すような色の含まれた言葉であった。
「まぁ、いいでしょう」
しかしその言葉に、制刻は不躾に端的に了承する。
「解放、GONGを借りる」
「あぁ」
「GONG。裏庭を突っ切っていくぞ」
そして制刻は敢日に断ると、GONGに向けてそう発した。
現在戦闘の舞台となっている町路に沿って、建ち並んでいる家屋群。その家屋群の裏手には、各家屋の裏庭敷地が隣接し連なり、家屋群を隔てて町路と平行に走っている。この連なる裏庭を突っ切っていけば、オーク達の側面に辿り着き、そこを突けるはずであった。
制刻は遮蔽物としていた荷車を離れ出、先に見える家屋裏手の裏庭へ、設けられていた柵を越えて踏み込んだ。
さらに続いたGONGが柵を壊し、裏庭へと踏み込む。
「GONG。そのまま生垣もだ」
そんなGONGに指示する制刻。
それを受けたGONGは、電子音を鳴らし返事をしたかと思うと、次の瞬間に重鈍そうな動きで駆けだし、その先にあった高い生垣へ吶喊。生垣の一角をなぎ倒し、強引に開口部を作った。
「その調子だ」
GONGはそのまま各家屋の裏庭敷地を隔てる生垣や柵を、その巨体で押し倒し崩壊させ、進路を切り開いていく。
そして幾つめかの柵を踏み倒し、その先に踏み込んだ時であった。
「うおぁ!?」
「な、なんだッ!?」
そこで、二体のオークと鉢合わせた。
オーク達は、突如として現れた異質な物体であるGONGに、驚愕と動揺の様子を見せる。
「――ごぅッ!?」
「ぁッ!?」
しかし直後に、オーク達は立て続けにもんどり打った。そして鈍い悲鳴を上げながら、膝を着き崩れ落ち、オーク達は亡骸となり地面に横たわる。
一方を見れば、GONGの横に小銃を構えた制刻の姿があった。制刻はGONGに続いてこの場に踏み込み、すかさずオーク達に対してヘッドショットを決め、無力化したのであった。
「――考える事ぁ、同じか」
制刻は警戒の意識を引き続き周囲に向けつつも、オーク達の亡骸を見下ろしながら呟く。おそらくこのオーク達も、裏庭を抜けてこちらの側面背後を取ろうとしていたのであろう。
そんな推察をしつつも、制刻とGONGはそこから横に建つ家屋へと、裏口扉を潜り、そして壊して踏み込む。
家屋内を抜けてゆき、町路に面する一室へと抜け、制刻はその窓際で一度カバー。その窓から外を覗けば、そこには見事に、4班と対峙中であるオーク達の無防備な側面や背中が見えた。
「よぉし――」
静かに一言呟く制刻。制刻は窓より小銃の銃身を突き出し、引き金に力を込める。
――そして無慈悲な射撃が、オーク達を横薙ぎにし、あるいは背中を襲った。
「な、なんだ――ぐぁッ!?」
「後ろだ――ぎぇぁッ!?」
背後側面を取られての強襲。襲い来た銃弾に、オーク達は次々に横殴りにされ、あるいは背を食われ崩れ落ちる。
弾倉中の弾をばら撒き切り、小銃は程なくして弾切れを起こす。
しかしその時にはすでに、まだ残るオーク達も態勢を大きく崩し、遮蔽物より身を晒していた。そしてそんな所を、町路の向こうより来る4班の攻撃に、ことごとく撃ち抜かれて、亡骸へと加わって行った。
「――ラインガン4、クリアだ。正面に出るから撃つな」
程なくして、町路上に動くオークの姿は無くなった。制刻が4班へ再び要請を送り、4班からの射撃が停止。町路上は静けさを取り戻す。
それを確認した後に、制刻は警戒しながらも窓を乗り越え、町路上へと出る。
その先に広がっていたのは、そこかしこに崩れ散らばった、いくつものオーク達の死体であった。
「モンスター相手とは言え、気分のいいモンじゃないな」
一帯を見渡していた制刻の所へ、背後から声が聞こえた。見れば、先の家屋の玄関口より踏み出て来る、敢日と鳳藤の姿がそこにあった。制刻とGONG同様に、裏庭を抜けて追いついてきたのだろう。
「まぁな」
敢日の言葉に、制刻は淡々と返す。
さらに程なくしてその場に、4班の隊員らが、前進し合流して来た。隊員等は先までオーク達が陣取っていた一帯へ展開し、警戒姿勢を取る。
「まだいるかもしれん、注意しろ」
そして最後に鐘霧が到着し、指示の声を発し上げた。
「二尉。とりあえずは、こんなモンです」
制刻は、その追いついてきた鐘霧に対して、そんな軽口混じり報告を発して向けた。
「よくやったが、まだ序の口だ」
それに対して鐘霧は、ストイックな口調でそんな評価の言葉を返して来た。
「イシムラ、こちらラインガン4。攻勢箇所より流出して来た敵は、迎撃した。これより押し上げ、攻勢箇所での戦闘に合流する」
そして鐘霧は、指揮官用無線機を用いて報告の通信を上げる。報告相手は、戦闘団本部で戦闘状況、情報を統括している直宇都だ。
《了解ラインガン4。攻勢突出地点では現在ラインガン5及び6-1が交戦中。しかし包囲体制は十分ではありません。急ぎ合流願います》
報告に対して直宇都の声で、了解の旨と要請の言葉が返って来た。
「了解、終ワリ――聞いたな?行くぞ」
鐘霧は要請を了承して通信を終えると、前進再開の声を上げた。
鐘霧の声に応じ、4班は隊伍を組み直して町路上を前進を開始。制刻等も、それに続いた。