―異質― 日本国の有事防衛組織、その異世界を掻き回す重金奏《激突の編》   作:えぴっくにごつ

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ちょっと書けたので久しぶりに更新です。


チャプター8:「フォートスティートにて」
8-1:「Fuel Solution Plan」


 場所はまた、豊原基地のある個人所有領。スティルエイト・フォートスティートへ。

 その領地内の一点。乾燥した荒れ地の広がるその一帯。

 そこは元々、地下油――元世界における原油が組み出せる、簡素な採掘櫓・施設のみがある、言ってしまえば寂れた場所であった。

 しかし今にあっては、その一帯は日本国隊各隊の車輛や重機類が少なくない数置かれ、または動き回り。そしていくつかの天幕がまた設営され、そして人――隊員が急かしく動き回る、いささか物々しい光景へと風変りしていた。

 

 その展開された天幕の一つ。比較的大きめな、業務用天幕の内部。

 内部は中央に並べ合わせたテーブルが占め。その上には数多の雑多な何らかの機材器具が、まるで遊園地のアトラクションの群れを思わせる様相でまた占めている。

 

「――ッー」

「――むぅ……」

 

 そしてそのテーブルにそれぞれの位置で立って向かい。真剣そのものの顔色で、その機材器具を弄りまわして作業に没頭する二人の者の姿があった。

 

 一人は、少し厳つくそして偏屈そうな性格が見るだけでもわかる表情顔立ちの男性。

 頭に上げたゴーグルが特徴的。

 その正体は、陸隊 第54普通科連隊 第1中隊所属の隊員――竹泉 善良。

 階級は二士だが、上位階級者にも平気で突っかかり皮肉を吐く問題児。

 

 もう一名は、女としては長身気味で、黒く長い髪の元に中性的な顔が映える、言ってしまえばイケメン風な美女。

 その正体は、日本国隊とは別のこの異世界に飛ばされ。そして先日に日本国隊に回収保護された民間人の大学生の女性――水戸美 手編。

 さらに明かせば、日本国隊の元世界とはまた別の地球日本――パラレルワールドの日本人。

 

 隊員である竹泉はもちろん。水戸美もその格好は、作業時のために借り受けた迷彩服2型姿。

 

 そしてそんな二人が没頭するは、テーブル上に雑多に並ぶ数多の機材器具の、組み立てや加工作業だ。

 二人が今作成に掛かっているもの――それは、石油原油の蒸留・精製装置。

日本国隊にとっての不安懸念材料の一つである燃料問題、それを解決・補うためのそれだ。

 

 いや、正しく詳細を言えば。その第一段階はすでに完了している

 天幕の端。そこに寄せて置かれた別のテーブルの上には、ある程度はコンパクトながらも、しかしフラスコやらガラス管などで構成された妙な実験器材のような代物が置かれている。

 それはこの異世界で調達された機材器具、それらを用いて組み立てられた物。

 同じくこの異世界で入手できた簡易バーナーで、原油の入ったフラスコが炙られ。それは気化から途中装置を通って冷却の行程を得て、原油から変わり透明度の高い液体へと変じて抽出されている。

 それこそ――ガソリン。

 

 実験器材のようなそれは、完成した石油精製装置の第一段階。

 精製の知識を有する竹泉と水戸美の手によって、すでに精製は成功。形となっていたのだ。

 

 しかし、その当人たる竹泉と水戸美は。今も真剣そのものの様子で作業に没頭している。

 それこそは、精製の第二段階。

 第一段階で成功した精製機器は、しかし理科の授業の実験で作られるような物に、毛が生えた程度のものに過ぎない。

 日本国隊各隊――自動車化された現代軍事組織の行動を支えるには、あまりにも小規模すぎる。

 そこからさらに発展。蒸留精製をさらに大規模に効率的に行うための、より拡大した精製装置を作成するために。二人は制作作業を続けているのだ。

 

 現在。日本国各隊の補給事情は、この異世界転移の元凶者たる〝作業服と白衣の人物〟の不確定でふざけた采配に頼り切っている。

 組織としては不安定で、そして面白くない状況だ。

 それの解決を少しでも望むべく、燃料などの自給自足の手段は喉から手が出る程に欲したい代物なのだ。

 

 そしてそれを実現しうる知識と技術を持つ、竹泉と水戸美に掛かる期待は巨大なものであった。

 もっとも、二人が作業に没頭し続けるのはその責任感というわけでは無く。

 二人が突き切った研究・開発ジャンキーだという理由が非常に大きかったが。

 

「――ヘェイッ!お二人さぁんッ!もうとうにランチタイム過ぎたずぇッ!」

 

 そんな、二人が作業に没頭し続ける天幕内に。入り口が勢いよく開かれると同時に、高らかで陽気な声が飛び込んだのはその時であった。

 そして踏み込んで来たのは、あまりにも巨大な巨体。身長200cmを優に超える、あまりにジャイアントでヘビーな人物だ。

 

 その正体は、竹泉と同じく第1中隊所属の男性隊員――多気投 仰留。

 その日焼けしたように黒い肌は黒人人種を思わせる。正しくは彼はハワイ、ポリネシア人の祖母を持つクォーターであり、それが理由だ。

 加えて言うと、竹泉の入隊前からの親友であり。54普連内では第1中隊の問題児二人組と認識されている。

 

 その多気投は踏み込んでくると同時に伝えたのは、時刻がとうに昼食の時間を過ぎている旨。

 

「ん゛ぇ゛?」

「ふぇぁ?もうお昼ですか?」

 

 その殴り込みの如き呼びかけに。

 しかし竹泉は酷く濁った声で。水戸美も無自覚の疲労が見える様子で言葉を返す。

 

「ワイットッ。お二人さん、まさかのひょっとするってぇと、徹夜からの延長戦じゃぁあるめぇなっ?」

 

 その二人の様子に、多気投はほぼ決めつけるような言葉色で、そう尋ねる言葉を向ける。

 

「あ゛ぁ゛?あー、仮眠は取った――よな?」

「取りましたよ。記憶によると」

 

 そんな二人から返るは、どこか煩わしさすら含んだ。うるさい母親でも相手にするかのような色での返答。

 その様相から回答が本当か。本当だったとしても、まともに仮眠と言える物だったかどうかは大変に妖しさを含んでいた。

 

「ホォーリーシィットッッ!あぁんだけ口酸っぱく、無理せずちゃんと体を休めろっ言ったずぇよぅ!?」

 

 そんな二人の様相に、多気投は縁起でもするようなオーバーな身振り手振りと合わせて、言葉を張り上げる。

 水戸美が加わり、そして石油精製装置の実験試作が始まって以来。多気投始め周りからのさんざんの言い聞かせにも関わらず、竹泉と水戸美はこんな調子であったのだ。

 

「あはは、まだこの程度ならだいじょうぶですよぉ」

「おせっかいで作業を中断しくさってくれんなよッ。加工の難所がいい感じでクリアできたトコなんだ、このまま進めてェ」

 

 しかしそれに水戸美はイケメン顔に反したホワホワした様子で返し。竹泉はゲームを邪魔された子供のように、不機嫌そうに言う。

 

「じょーだんダイレクトアタックだずぇ……ッ!お二人さんに必要なのは強制ブレーキだっ、中断してメシにいくずぇっ!」

 

 しかし多気投はそれを一蹴するように張り上げると。天幕内を回って、竹泉と水戸美を首根っこを掴む勢いで回収。

 天幕内より二人を連れ出しに掛かった。

 

「ちょ、おぉいッ」

「あわーっ」

 

 本人の言に反してやはり疲労が蓄積しているのだろう。二人はそれぞれ反応の言葉を零しつつも、軽々と多気投の腕っぷしによって回収されてしまう。

 

「おーらッ、メシかっ食らってシエスタだ!研究ジャンキーズッ!」

「あぁ、わーったわーったッ」

「あーれぇぇー」

 

 そして二人は多気投の小脇に抱えられ、昼食と休憩のために連れ出されて行った。

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