―異質― 日本国の有事防衛組織、その異世界を掻き回す重金奏《激突の編》   作:えぴっくにごつ

8 / 77
1-8:「攻勢点」

 緩やかなカーブを描く町路を駆け前進する、鐘霧等4班と、制刻等。

その途中で各々の耳が、銃撃音を捉える。それは進むにつれて大きくなり数を増やし、激しさを増す。

 そして制刻等の進む町路は、程なくして開けた一帯へと通じ出た。

 その場は、二等辺三角形の形状をした、一辺が100m及び50m程の一帯。制刻等が出たのは、その内片方の100m辺の丁度真ん中。

 等しい二辺の頂点側――東側にはいくつかの家屋が立ち、その各家屋からは陣取った77戦闘団の各班による、激しい銃火が発されている様子が見える。

 そして50m辺側――西側には教会のような建物が建ち、その内部や周辺には目測20体以上のオーク達が陣取り、矢撃などを放つ姿が。さらには一帯のど真ん中、銃火の中を無謀も同然の吶喊を仕掛ける、多数のゴブリンの姿が見えた。

 一帯は苛烈な戦闘の繰り広げられる只中であり、制刻等はそのど真ん中に出たのであった。

 

「ッ――展開しろッ!」

 

 鐘霧はその光景に一瞬気圧されるが、すぐに気を取り直して班員に命じる。それに応じて、飛ぶように周辺へ散会、身を隠し配置展開する班員各員。

 ちなみに制刻等はすでに各個の判断で先んじて、カバー体勢に入っていた。

 

「ラインガン5へ、こちらラインガン4。戦闘現場に到着した。現在一帯の南側――そちらの左手に居るッ」

 

 一帯の状況を観察確認しながら、味方部隊へ到着を伝える通信を送る鐘霧。彼の視線の先では、一帯のど真ん中を吶喊するゴブリン達が。そして東側にある家屋の二階より発される、おそらくMINIMI Mk.3の物であろう機銃掃射により、そのゴブリン達がことごとく惨殺される姿が見えた。

 

《ラインガン4へ、こちら5ヘッド。増援に感謝する。そのまま、そこからの敵の流出を抑えて欲しいッ》

 

 呼びかけた味方部隊である5班からは、感謝の言葉と共に、要請が寄越され来る。

 直後――西側にある教会の付近で小爆発が上がり、その場に居た3体程のオークが巻き込まれ、千切れ吹き飛んだ。

 再び東側に視線を戻せば、家屋の影に、60㎜迫撃砲(B)――M6C-210コマンドーを置き構えた隊員の姿が見え、それがオーク達を吹き飛ばしたのであろう事が伺えた。

 

「――了解、5ヘッドッ――(うりき)士長、花庭一士ッ。そこの家屋を抑えて配置しろッ」

 

 鐘霧は味方部隊の要請に了解の返答を返し、それから班員の内の2名に、すぐ傍にある家屋を抑え、そこに陣取るよう命じる。

 

「剱、オメェも行け。上に上がって、支援しろ」

「あ、あぁ」

 

 それに便乗し、制刻は選抜射手である鳳藤に、家屋上階に上がって射撃支援を行うよう促す。鳳藤はそれに戸惑いつつも答え、カバーを解いて家屋へと向かっていった。

 

「おい、こっちに来たぞ!」

 

 それと入れ替わりに、班員の内の朱真から声が上がった。

 見れば銃火が激しく飛び交う一帯の中、一部のゴブリン達がこちらに流れ向かって来る姿が見えた。

 さらにそこへ加えて、そんなゴブリン達の背後、教会の方向より火の玉が飛来。飛来した火の玉は幸い、4班の頭上を掠めるだけで飛び去って行ったが、飛び来たそれは班員を少なからず驚かした。

 

「ヤツ等、摩訶不思議までかまして来るのか」

 

 おそらくオーク達が放ってきた魔法現象に、制刻は先の様子をしげしげと観察しながら零す。

 

「あぁ。見た目の割に多芸みたいだな」

 

 それに対して、敢日が軽口で返す。

 ゴブリン達の吶喊も、襲い来た火の玉も、敵モンスター達の決死の攻勢行動であった。しかしそれ等は、制刻等及び4班各員の開始した迎撃行動を前に、脆くも崩れ去った。

 吶喊して来たゴブリン達は、しかし次には、配置を終えた分隊支援火器射手のMINIMI Mk.3の掃射を。そして各々の開始した射撃を真正面から受ける形となり、バタバタとなぎ倒されていった。

 そして4班員の内の1名が、先に飛来した火の玉の、その軌道から打ち出された地点を推測。その飛来元に向けて、17式5.56mm小銃を――正確にはその銃身下に装着された、アンダーバレルグレネードランチャー、ベレッタGLX-160を突き出し構え、狙いをつけてその引き金を引いた。

 ランチャーより撃ち出された40mmグレネード弾は、教会を囲う垣根の一角に、飛び込み炸裂。そこに身を隠していた、魔法発動者であるオークを、垣根ごと吹き飛ばした。

 

「またやられタッ!」

「囲まれてルッ!」

 

 果敢な突出攻勢を仕掛け、町内での巻き返しを図ろうとして来たオーク達。しかし残存兵力に過ぎない彼らのそれには限界が見えだし、そして態勢の整った隊側の強力な火力を前に、オーク達は瓦解しつつあった。

 

「ふんばれッ!」

「ヤツ等が来るッ!」

 

 しかしオーク達が後退する様子は無い。そして、オーク達の元よりそんな言葉が零れ聞こえて来た。

 

「今の聞こえたか?」

 

 そんな零れ聞こえたオーク達の言葉を聞き留め、敢日はネイルガンで五寸釘をばら撒きながらも、制刻に向けて尋ね発する。

 

「あぁ。何かを企んでやがる」

 

 制刻は小銃への再装填を行いながら、オーク達の企みを推察し呟く。

 ――ドン、ドン。――と。

 何かの音が聞こえ来たのはその直後であった。

 音源は、西側に建つ、オーク達の陣取る教会の向こう。一定間隔で響き聞こえるそれは、徐々にその数を増す。

 そして――ヌォ――と。

 教会の影より、巨大なそれは姿を現した。

 それは、身長おそらく3mを越える、人型の――しかし人ではない巨大な生物。太い手足に、肥満という表現では足りないほどに出た腹。それは、トロルとよばれるモンスターであった。

 現れたのは、計4体のトロル。そのいずれもが、その身を完全に隠せる巨大な盾を片腕に。そしてもう片方の腕には、棒の先に棘の生えた鉄球を付けた鈍器――いわゆるモーニングスターを装備していた。

 

「おいおい――ッ。またヤバそうなデカブツが出て来たぞッ!」

 

 そんなトロル達の出現に、敢日が声を張り上げる。

 

「トロルだッ。あれはトロルだ!」

 

 続け鐘霧が、その正体、名称を発し上げた。

 その現れたトロル達は、一定の間隔を空けて布陣。手にしていた巨大な盾を各方へ向けると、それを地面へドスンと降ろす。そうしてその巨体の足先から頭までを完全に隠すと、盾を摺りながら、隊側に向かっての前進を開始した。

 

《これを待ってたのかッ――5ヘッドより各ユニット、アレを止めろッ。アレに火力を向けろッ!》

 

 5班の長から、無線越しに寄越された要請の声。それを合図に、各方各員より、トロル達に向けて攻撃が開始された。各隊員の各小銃射撃が。各方に配置した軽機による掃射が、それぞれの銃火がトロル達に注がれる。

 しかし、そのいずれもが、トロル達の構える巨大な盾に阻まれた。

 

《ッ、お互いを守ってやがるッ》

 

 無線上に、5班の長からの、悪態の声が上がる。

 トロル達は、その巨大な盾で自らを守るだけでなく、巧みに互いを守り合い、各方からの攻撃を見事に防いでいた。

 そんな所へ、トロル達の内の一体の元で、爆発炸裂が起こる。4班の隊員の、ベレッタGLX-160から放たれた、40㎜グレネードの着弾炸裂だ。

 一瞬、爆煙に包まれるトロルの身体。――しかし、爆煙が晴れて散った向こうに現れたのは、盾こそ焼け焦げ凹んだ跡が見えるものの、依然健在のトロルの姿であった。

 

「マジかよ……ッ!」

 

 グレネード弾を放った射手の隊員から、苦々しい声が上がる。

 

「ラインガン4より5。アレを止めて倒すには、生半可な火器ではダメだッ」

 

 そして傍らで鐘霧が、5班に向けて、訴える言葉を送る。

 

《あぁ、分かっているッ。こちらで対戦車火器を準備する。各ユニット、それまで時間を稼いでくれッ》

 

 5班の長からは、少し焦った様子での、要請の言葉が寄越された。

 

「つったって、アレ止まんねぇぞッ」

 

 そんな要請の言葉が寄越されたものの、しかしトロル達を足止めする事も容易な事ではなく、朱真が弾をばら撒きながらも、困惑の声を上げている。

 

「剱。あのメタボのデカブツに、ヘッドショットを決められねぇか」

 

 一方。制刻は支援射撃位置に付いている鳳藤に向けて、トロルに対しての頭部狙撃ができないかを、通信で尋ねている。

 

《ッ、ダメだッ。頭まで完全に盾で隠してる、狙えない……ッ!》

 

 しかし鳳藤からは、狙撃は不可能である旨が、焦燥混じりの言葉で帰って来た。

 

「しゃぁねぇ。解放」

 

 それを聞いた制刻は、呟いてから、敢日に促す言葉を送る。

 

「あぁ――GONG」

 

 敢日はその意図を理解し、呼応。そして、後方で身を隠し待機していたGONGを呼んだ。

 GONGは機械音を鳴らして、カバーする敢日の元まで歩き出て来る。そして敢日の隣に陣取り、その巨体を低くして申し訳程度に遮蔽物に隠す。

 態勢を完了させると、GONGは左アームを翳し突き出し、そこに搭載されるリニアガンを起動展開させ、構える姿勢を取った。

 それから一瞬の間が訪れる。それは、照準のための空白。

 ――次の瞬間。異質な衝撃音が、GONGより響きあがった。

 同時に、GONGの左アームが、そしてボディが、後退する。

 異質な音は、リニアガンの射撃音。そしてGONGの動きは、その射撃の衝撃を受け止めた物だ。

 そして、周囲の各々の視線は、その先のトロル達へと向く。

 4体のトロルの内の、先頭中央に位置し前進していた1体。そのトロルの持つ盾に――いや、その奥に隠れていたトロルの胴に、大穴が空いていた。

 リニアガンの撃ち出した弾は、見事にトロルの身を盾ごと貫いて見せたのだ。

 その身に大穴を開けたトロルは、直後に身を崩し、倒れ、音と砂煙を上げる。

 そしてその倒れたトロルの向こうに位置していた、もう一体のトロルが、援護を無くしてその身を、制刻等や4班へと晒した。

 

「今だ、やるんだッ!」

 

 発し上げられたのは、鐘霧の指示の言葉。

 その身を晒したトロルが、爆煙に包まれたのはその瞬間であった。ベレッタGLX-160射手による、再びの40㎜グレネード攻撃が、トロルを襲ったのだ。

 煙が晴れれば、その身にクレーターのような損傷を作り、膝を着いたトロルの姿が、そこに現れた。

 

「二体ダウンッ!」

 

 二体のトロルの無力化を確認し、声を張り上げる鐘霧。

 しかし衝撃は、さらに立て続く。

 制刻や4班から見て最奥に位置していたトロルの元で、先のグレネード着弾時のそれよりも、より大きな爆煙が轟音と共に上がった。

 それは、東側家屋群に陣取る5班よりの、84㎜無反動砲カールグスタフからの攻撃であった。

 爆煙に包まれるトロルの巨体。そして爆煙が晴れた時、そこにあったのは、大穴の空き放り出された巨大な盾、そして千切れ散らばったトロルの身体であった。

 

《三体目、ダウンッ》

 

 三体目のダウンを告げる5班からの報告が、通信上に上がる。

 現れ前進して来た4体のトロルの内、3体が強火力の投射により崩れ、無力化された。残るは1体のみ。

 

「――オ゛ォオオオオオッ!!」

 

 しかし、その残る一体となったトロルから、雄たけびが上がり聞こえ来たのはその時であった。

 そのトロルは、それまで摺っていた巨大な盾を持ち上げ構える。そして、もう片腕に持っていたモーニングスターを振り上げ回すと、鈍重な動きでしかし駆けだした。

 それは吶喊行為。その迫る先は、制刻等と4班の方向だ。

 

「まずいッ!てき弾、対応しろッ!」

 

 トロルのその巨体を持っての肉薄は、大変な脅威となる。その姿を見た鐘霧は、てき弾――グレネードランチャー射手への対応攻撃を命じる。

 

「装填中ですッ!」

 

 しかし間が悪かった。

 先に発射を行ったばかりのグレネードランチャーは、現在装填中であり即応は不可能であった。そうこうしている間にも、トロルは4班の元へ距離を詰めて来る。

 

「ッ――各員撃て!対応しろッ!」

 

 発し上げ命じる鐘霧。しかし命じられるまでもなく、班の各員はすでにトロルに向けて、射撃行動を始めていた。各小銃弾が、軽機の銃火が、迫るトロルのその巨体に殺到する。

 しかしトロルは、驚異的な姿を見せた。

 

「――グォオオオッ!!」

 

 巨大な盾の隙を抜け、銃弾群はトロルの巨体の各所を傷つけた。5.56㎜弾がトロルの脚を貫き傷つけ、7.62㎜弾がその腹に食い込んだ。

 しかしそれらを以てしても、トロルは動きを止めない。トロルは自らを奮い立たせる雄たけびを上げ、駆け進み続けた。

 

《ラインガン4、危険だッ!近すぎて炸裂火器が撃ち込めないッ、退避し距離を取れッ!》

 

 そこへ5班からの警告要請の声が、各員のインカムに届く。

 その通信の通り、トロルはすでに4班の間近まで迫っており、無反動砲や軽迫撃砲等の炸裂火器の投射は、危険な域に達していた。グレネードランチャーに至っては、この間合いでは安全装置が働き炸裂しないだろう。

 

「ッ――退避ッ!後退を――」

 

 鐘霧は、班の各員に向けて退避の支持を張り上げようとした。

 ――しかし、その時であった。

 鐘霧の横を、何者かが通り抜けた。その人影は、遮蔽物となっていた木箱を軽々と踏み飛び越えて見せる。

 その正体は、他でもない制刻であった。

 

「ッ!陸士長!?」

 

 その姿に、鐘霧は驚きの声を上げる。それも無理はない。

 制刻は、退避を促そうとしていた矢先に、反対に遮蔽物の向こうへと繰り出し、トロルの前へと身を晒したのだから。

 

「解放、剱。露払いを頼む」

 

 当の制刻は、驚く鐘霧には返事を返さずに、インカムを用いて敢日や鳳藤に向けて、要請の言葉を送る。

 そして視線を起こせば、そこには迫り来た、トロルの巨体があった。すでにその距離は、トロルがその腕に持つ、凶悪な得物の間合い。

 直後、その腕に持たれたモーニングスターが振り上げられる。

 

「ッ!おい――ッ!」

 

 鐘霧より発し上げられた声。それと同時に、得物は制刻に向けて振り下ろされる――

 ――しかし、その凶悪な得物は、制刻の身を直撃する事はなかった。

 

「っと」

 

 見れば、制刻は軽快な動きで、モーニングスターを回避していた。片足を軸に、その身体を斜め後方へ捻り引いてる。

 そして目標を失ったトロルのモーニングスターは空を切り、地面に落下。鈍い音と砂煙が上がる。

 

「グォッ――!?」

 

 自身の攻撃か空振りに終わった事に、目を向くトロル。

 ――鈍い衝撃音が上がったのは、その瞬間。

そしてトロルはその身、その太い脚に、鈍い衝撃と鈍痛を覚えた。

 見れば、制刻が片脚を突き出し、トロルの太い脚に蹴り入れ、折り崩していた。制刻は回避行動から続き、トロルに向けて脚撃を繰り出し放ったのだ。

 さらに制刻はそこから連続動作で、自身の足先を、折り崩したトロルの脚の後ろへ回す。

 

「ほれ」

 

 そして払われた制刻の脚。それは、なんとトロルのその太い脚を、いとも簡単に掬い上げて見せた。

 トロルの巨体は、掬い上げられ一瞬だけ宙へ浮かぶ。そして次の瞬間、その巨体は空を仰ぎ、音と土煙を上げて、尻と背からドシンと地面に落ちた。

 

「オォ――!?」

 

 その身に何が起きたのか、理解が追い付いていないのだろう、仰向けに地面に沈んだトロルは、その目を見開いている。

 しかし、そのトロルの視界を、何かの影が覆う――

 

「――キョォッ!?」

 

 ――瞬間、トロルのその大口から、しかし反した乾いた音が――悲鳴が上がった。

 トロルの首は、あってはならない方向まで曲がり、トロルは白目を剥いて口から泡を零し、そして――絶命していた。

 それを成したのは、今なおトロルの頭を踏みつける戦闘靴。――その主は、他でもない制刻。

 制刻は、転倒させたトロルの頭部を踏み抜き、その首をへし折り絶命させたのだ。

 

「――やれやれ」

 

 制刻は、トロルの無力化を確認して脚を放すと、気だるげに一言零す。

 

「エピックヘッドよりラインガン5。最後のデカブツは仕留めた、後は頼めるか」

 

 そして制刻は、インカムを用いて5班へと、報告と要請の通信を送る。

 

《……ッ!あ、あぁ……了解だ。これよりこちらで対応、押し上げる……!》

 

 5班の長からは、少し間をおいての返信が返って来た。おそらく、制刻がその身一つでトロルを無力化した事に、呆気に取られていたのだと思われる。

 5班の陣取っている東側家屋からは残るオーク達に向けて射撃行動が再開される。そして同時に、家屋からは5班及び6班の隊員等が駆け出て来た。

 

「組ごと左右に展開!」

「接近のし過ぎに気を付けろ!」

 

 隊員等は一帯へと進出展開。押し上げ、残敵の掃討を開始。

 

「やられた!トロル共が全滅ダッ!?」

「ひ、引けェッ!」

 

 対するオーク達は、増援のトロル達の全滅を前に、戦意を失ったのだろう。これまで保っていた体勢を瓦解させ、逃走を開始。しかしそんな無防備を晒したオーク達の背に、各方からの射撃や軽迫撃砲の着弾炸裂が襲い、オーク達は殲滅されていった。

 

「――制刻陸士長」

 

 そんな様子を眺めていた制刻。そこへ声が掛けられ振り向けば、背後に難しい顔をしてそこに立つ、鐘霧の姿があった。

 

「デカブツ一体、無力化しました」

 

 その鐘霧に向けて、どこか不躾な様子で報告の言葉を発する制刻。

 

「ッ――貴様の実力は確かなようだ。――だが、連携を軽視して突出する真似は控えろ」

 

 そんな制刻に対して鐘霧は、制刻の先の行動を評しながらも、同時に忠告の言葉を叩きつけた。

 

「急だったんでね。今後、気を付けましょう」

 

 対する制刻は、受けたその言葉にしかし、本当にその気があるのか怪しい、淡々とした返事を返した。

 その制刻を前に、鐘霧は引き続きの難しい表情を作っていたが、程なくして視線を外し、インカムに手を当て通信を始めた。

 

「――イシムラ、こちらラインガン4。5及び6と合流し、突出して来た敵を無力化、押し返した」

《了解ラインガン4。その場は5、6に任せ、そちらはパルスライフル・コマンドの元へ向かってください》

 

 鐘霧は戦闘団本部へ報告を上げ、それに応じた本部の直宇都から、了解の言葉と引き続きの行動要請が寄越される。

 

「了解イシムラ、終ワリ――4班、聞いたな?行くぞ」

 

 鐘霧はそれを了承し、通信を終える。そして周辺に展開していた4班各員に向けて、指示の声を発し上げた。

 4班の隊員は集合して隊伍を組み直し、それまで戦闘の行われていた一帯を縦断。その先の路地へと駆け込んで行く。

 

「さて。俺等も引き続き、ご一緒するか」

「まだ、序盤を過ぎた辺りという所か……」

 

 一方で、同様に合流再編していた制刻等。その中から、敢日が冗談交じりの声で発し、続け鳳藤が呟き零す。

 

「行くぞ」

 

 そんな二人に制刻が促し、制刻等は4班の後を追った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。