トロフィー『彼/彼女らを照らす光』獲得RTA 作:まっしろたまご
高専へちょっかいをかけに行く道すがら、おかしな男を見た。
一般人なら術式無しは当たり前だけど、呪力量が極端に少ない。というかゼロだった。
ぼんやりと前を見る目、口元の傷。ただのザコかと思ったけど、あれは違う。むしろオレと同じような、何か他とは隔絶された『何か』を感じた。
まぁ、そんなことはどうでもいいんだ。
問題は、高専の敷地内に入ってから。
今までに感じたことのない威圧感。『今の自分では敵わない』、と本能的に悟らせる絶対強者がいた。
「あ、君が悟くん?私、
真っ白な髪を靡かせ、振り返る。
華奢な体、端正な顔立ち。
柔らかな表情を浮かべたまま手を差し出し、友好をアピールしている。
だが、今まで出会った誰よりも強く、恐ろしい。
慌てて握手をしようとして、自分の手が震えていることに気づいた。
生まれた時からもてはやされ、最強として生きることを約束されていたオレが。
まだ術師として任務も受けていないような同い年の女の子に。
「お、おう。よろしく」
圧倒的な呪力量、かなり抑えているだろうがそれでも溢れ出る圧。
『やっと同格が現れた』なんて小生意気なことは抜かせない。そう思った時、オレの中で何かが限界に達してはじけた。
「……術式順転!蒼ッ!!」
五条家相伝の術式、無下限呪術。その順転である【蒼】。術式に呪力を流し込み、ブラックホールのような引力の塊として相手にぶつける攻撃方法。それがいつの間にやら大きく後ろへ飛び退いて『受け』の姿勢に移っていた盲愛へと迫る。
「……術式解放」
並の相手ならそのまま飲み込まれて終わり、一級以上でも明確なメタ術式でもない限り防ぎようもない【蒼】を受ける?なんて馬鹿な選択。これほどの呪力量があっても判断力はまだまだらしい。
———本当に?
一瞬感じた『違和感』それと同時に、ニュートラルな無下限呪術を展開する。念のため、保険だ。
だが、その違和感によって結果オレは命拾いをすることになる。
「ッ……ハァッ!あっぶ……なんで……」
「危ないのはそっちの方じゃん。悟くん。なかなかにダイナミックなスカート捲りだね?」
パンパンと服についた砂埃を払い、盲愛ははにかんで見せる。しかし六眼に写るのはその整った顔立ちではなく、術式の情報だ。
「反射……呪法……」
「へぇ、六眼ってそんなことまでわかるんだぁ。便利だねぇ」
確か、『呪力があるものを弾き返す』、とか、そう言う術式だったか。昔の家系図だかなんだかに、御前試合の話と一緒に書かれていた気がする。
『五条家の人間が、呪力を跳ね返す術式を持つ呪詛師に敗れた』、と。確かその呪詛師には———
「額に縫い目が……無い……?」
「誰と勘違いしてるのかはわからないけど、たぶん人違いだと思うよ。それより、さっきから固まってるけど大丈夫?」
決して、トラウマになったわけでは無い。むしろ、自分と対等に戦える相手の存在に喜びさえ覚えたほどだ。
だが、この幼少時代の敗北は五条悟に深く刻まれ、より一層努力を重ねさせることとなる。
後に、彼らが因縁を持ったまま高専で再会するのはまた別のお話だ。