『仮面ライダー龍騎』
変身者・五河真司(旧姓は城戸)
契約モンスター・無双龍ドラグレッダー(5000AP)
ファイナルベント・ドラゴンライダーキック
特殊なカードは持たないが、ソードベント、ガードベント、遠距離攻撃も可能なストライクベントと基本的な装備のカードはバランス良く備えた強力なデッキ。主に近距離での肉弾戦を得意とする。また、契約モンスターのドラグレッダーは、モンスターの中では大物の部類に入る。
ライダーになりたての頃は、戦闘経験の不足から、全ライダーの中でも高スペックなデッキの力を上手く引き出せないことも多かった。次第に高い戦闘能力を獲得していったが、ライダー同士の戦いに対する考えから本気を出せないことも度々あった。今作では殺し合いを強要されているわけではないため、自分のやるべきことを見据えて全力で戦うことができるようになり、前述のように上手く戦えないということはなくなっている。
また、本作での彼は、ライダー同士の戦いの中で、命を落としながらも答えを見つけたことにより、自分でも気付かないうちに精神的に大きく成長している。
「オレは絶対に死ねない!1つでも命を奪ったら、お前はもう後戻りできなくなる!」
士道は教室に入る前に、彼女に最初にかける言葉を考えていた。
――――――やあ、こんばんわ、どうしたの、こんなところで――――――
それが当初予定していた士道の挨拶だった。だが…
「あ…」
前から4番目、窓際から2列目―――ちょうど士道の席に少女はいた。
物憂げな表情で席に座り、黒板をぼうっと眺めている。半身を夕日に照らされたその姿はあまりに神秘的で、士道の思考能力は一瞬停止してしまう。だが、それも一瞬のことだった。
「ぬ?」
士道たちの侵入に気付いた少女はこちらを向く。
「…ッ!や、やあ―――」
士道がなんとか心を落ち着かせながら手を上げ…ようとした瞬間。
「士道危ないッ!」
士道の体は真司に押し倒される。それと同じタイミングで、少女が無造作に手を振り抜き、先程まで二人が立っていた位置に黒い光線が命中した。
「うおっ!あっぶね~…」
後ろの光景を確認した真司は思わず顔を歪める。その言葉につられて振り返った士道は、あまりの光景に固まってしまった。入口の扉やその先の壁は木端微塵になっていた。
「お前たちは何者だ」
と、不意に声がそばから聞こえた。
「「な!?」」
そこには先程の少女・精霊『プリンセス』がいた。二人が後ろを振り返っていたわずかな時間の間に、少女は彼らのそばに移動していた。
「答えろ」
その迫力の前に二人は反射的に答えようとする。だがそのとき、インカムを通じて琴里からストップがかかった。
(なんだよ?早く答えないと…)
『分かってるわよ。でも今、精霊の精神状態は不安定。下手なこと言ったらお陀仏よ。逆にここで上手くいけば…』
(…!信頼を得られるってことか!)
『そういうこと。少しだけ待ちなさい』
『フラクシナス』艦橋のスクリーンには、精霊の少女の姿が映し出され、その周りには好感度などのパラメーターが表示されていた。その様子はまるでギャルゲーのようである。
そして今、画面中央には選択肢の書かれたウィンドウが表示されていた。これは、令音の操作する観測用
「まずは士道の方からよ。総員、5秒以内に選択!」
別件でこの場にいない海之・秀一・吾郎を除くクルー達が一斉に手元のコンソールを操作する。その結果はすぐに琴里の手元のディスプレイに表示された。
「なるほど…大体みんな私と同じ意見みたいね。このタイミングで冷静な海之がいないのは不本意だけど…多分間違いはないでしょう。士道、聞こえる?こう言いなさい」
そう言って琴里は士道に指示を出した。
「もう一度聞く。答えないなら敵とみなすぞ。お前たちは何者だ」
その声音から二人は、士道と真司が沈黙していることに少女が苛立ってきたのを感じる。このままではマズいと二人が感じたとき、士道のインカムから琴里の声が聞こえた。
『士道、聞こえる?こう言いなさい。人に名を尋ねるときは自分から名乗れ』
「人に名を尋ねるときは自分から名乗れ……って何言わせてんだよ…」
言ってしまってから士道は顔を真っ青にするが、時すでに遅し。それを聞いた途端少女は不機嫌そうに顔を歪める。そして、今度は大きなエネルギー弾のようなものを作りだし、放つ。威嚇のためか、士道から少し離れた場所を狙ったらしく、直接的なダメージは無かった。が、下の階の床まで破壊したその攻撃は、士道の精神面に充分過ぎるダメージを与えた。
『あっれ~?おかしいな~?』
「おかしいなじゃねえ!殺す気か!?」
「士道!何考えてんだよ!そういうこと言ったら相手も怒るって分かるだろ!」
不思議そうな様子の琴里に士道は文句を言い、その士道に真司が文句を言った。
「いや、あれは琴里からの指示で、オレの意見じゃないって!」
「ちょっと考えたら分かるだろ!『マイ・リトル・シンジ』のモモタロ子ちゃんも同じこと言われてキレたの忘れたのか!?」
「オレそれやってねえよ!てか、誰だよモモタロ子ちゃん!名前ひどすぎだろ!」
と、二人の口論がヒートアップしかけたとき、不機嫌そうな「おい」という声が聞こえ、二人は冷静さを取り戻す。少女は再び手の中にエネルギー弾を作り出していた。
「これが最後だ。答える気が無いなら、敵と判断する」
その言葉に二人は慌てて口を開く。
「お、オレは五河士道!ここの生徒だ!敵対する意思は無い!」
「オレは城戸…じゃなくて五河真司!士道の兄弟だ!オレも敵じゃない!」
両手を上げながら答える二人を、少女は訝しげに見つめる。そして数秒後、何かに気付いたかのように「ぬ?」と眉を上げた。
「お前たち…一度会ったことがあるな………?」
「あ…ああ、今月の…確か10日に。街中で」
「おお」
士道の答えに、少女は得心がいったように小さく手を打った。
「お前たちか。思い出したぞ。お前はなにやら姿を変えて、私の
「そうそう。覚えててくれたんだ」
少女の目から、微かに険しさが消えるのを見取って、少し二人の緊張が弛む。
少女は、今度は士道の方へ話しかけた。
「そしてお前は、そいつがいなくなった後におかしなことを言っていた奴だな」
少女がそう言った直後、
「ぎ……ッ!?」
「士道!?」
士道は少女に前髪を掴まれ、顔を上向きにさせられていた。
「…確か、私を殺すつもりはないと言っていたか?ふん――見え透いた手を。言え、何が狙いだ。油断させておいて後ろから襲うつもりか?」
「おい!いくらなんでもそれは…」
「まってくれ…真司…」
真司は士道を掴んでいる少女へ詰め寄ろうとするが、士道がそれを制止する。
彼は少女への恐怖よりも先に、彼女が士道の言葉を微塵も信じられないということに、目の前の少女がずっとそのような環境に晒されてきたことに憤りを感じていた。
「人間は…お前を殺そうとする奴らばかりじゃない!オレたちは、お前と話をするために来たんだッ!」
インカムから、琴里が士道を諌める声が聞こえる。だが彼は止まらなかった。
この少女は、自分が愛されるなんて微塵も思っていないような、世界に絶望した表情をしていた。士道は、その表情が嫌いでたまらなかった。
今まで彼女には手を差し伸べる人間がいなかったのだ。たった一言でもあれば、状況は変わっていたかもしれなかったのに。
だから士道は、自分がその一言を言ってやると決めた。
「オレは、お前を否定しない!」
「!!」
士道の言葉に少女は驚いたように目を見開く。少女は士道を掴んでいた手を離し、士道から目を離した。そして、暫しの間黙った後、小さく唇を開く。
「…シドーといったな。本当に、お前は私を否定しないのか」
「本当だ。それにオレだけじゃない」
士道の言葉に続くように真司も答える。
「オレもだ。きみを否定したりしない」
「本当の本当か?」
「「本当の本当だ」」
「本当の本当の本当か?」
「「本当の本当の本当だ」」
二人が間髪入れずに答えると、少女は髪をくしゃくしゃと掻き、ずずっと鼻をすするかのような音を立ててから、顔の向きを戻してきた。
「ふん。誰がそんな言葉に騙されるかばーかばーか」
「ッ、だから、オレたちは…」
「だがまあ、あれだ」
少女は複雑そうな表情を作ったまま、士道の言葉を遮って続ける。
「どんな腹があるのか知らんが、まともに話をしようとする人間はお前たちが初めてだからな。話くらいしてやらんこともない」
そう言いながら、少女の表情はほんの少しだけ和らいだ。どうやら、気を許してはもらえたようだ。
「ああ、ありがとな…え…と」
そこまで言って士道は少女に名が無かったことを思い出す。士道が言葉に詰まっている様子から、真司と少女も士道が考えていることに気が付いたらしい。
「む…そうか、私と話をするには名前が必要だな。これまでは相手がいなかったから必要が無かったが…シドー、それにシンジといったな。お前たちは私のことをなんと呼びたい?私に名を付けてくれ」
「「え…」」
少女の要求に二人は言葉を詰まらせる。士道はまさか高校生で名付け親になると思っていなかったし、真司も本来は28歳のはずだが、ここでの生活に馴染んでいたため名前を付けるという実感が湧かなかった。と、そこで真司のインカムに通信が入る。
『真司、彼女の外見に合う名前に必要なのは古式ゆかしい優雅さよ。そしてそれにピッタリな名前は…トメ!』
「トメ!きみの名前はトメだ!」
真司がそう告げた次の瞬間、真司の横にあった机とその列の机が全て消し飛んだ。少女の表情からして、よっぽど嫌だったらしい。
「うおお!あっぶね…ってああ!あれオレの机!明日集めるって言われた課題入れっぱなしだったのに!何してくれちゃってんのきみィィィ!!」
「何故だかわからんが、無性に馬鹿にされた気がした」
目に見えて少女が不機嫌になる。全国のトメさんには悪いが、流石に今時の女の子に付ける名では無いだろう。そう思った士道は、「課題ィィィ!」と悶える真司を無視して少女に話しかけた。
「そうだな…じゃあめぐみはどうだ?」
「ぬう…悪くはないが…シンジはどう思う?」
先程まで悶えていた真司だったが、少女に問われたことでようやく我に返る。
「ん?うーん…別に悪くはないけど…めぐみって名前にいい思い出無いんだよな…OREジャーナル社員総出で振り回されたりとか…」
「シンジが言ってることはよくわからんが…なら止めておこう。シドー、すまん」
「気にするな。それなら…十香ってのはどうだ?」
そう言って士道は黒板に『十香』と書く。
「うむ…まあいい。トメよりはましだ」
「おお!それいいな士道!」
どうやら気に入ってもらえたらしい。真司に至っては大絶賛していた。4月10日に出会ったから『十香』という少し安直なアイデアではあったが、どうやら間違ってはいなかったようだ。
「十香…か」
そう言いながら、少女は士道が書いた『十香』の字を真似するように黒板を指でなぞる。すると、少女の指が伝った跡が綺麗に削られ、下手くそな字で『十香』と刻まれていた。
「シドー…シンジ。十香、私の名だ。素敵だろう?呼んでくれ」
「おう!十香ちゃん!」
「うむ!」
真司に名前を呼ばれて満足そうな様子の少女は、今度は士道の顔を真っ直ぐに見つめる。
「シドー…」
少女の―――十香の言葉に士道は若干の気恥ずかしさを覚えながらも、その望みを受け入れる。
「と、十香」
士道がその名を呼ぶと、十香は満面の笑みを見せた。思えば二人が彼女の笑顔を見たのはこれが初めてかもしれない。
その幸せそうな表情に、士道と真司も思わず笑みをこぼすのだった。
同時刻。士道や真司のサポートとは別の用事で天宮市内の大通りを訪れていた海之・秀一・吾郎の三人は、空間震用シェルターに避難していた。
「へえ、もっとぎゅうぎゅう詰めで暑苦しいかと思っていたけど…案外快適じゃないの。ま、でもやっぱフラクシナスに回収してもらった方がよかったけど」
秀一の言葉に海之が答える。
「仕方ないだろう。まさかあのタイミングでモンスターが現れるとはな。空間震が起きればあまり関係無いが、起きる前の避難のどさくさに紛れて人を襲いかねない」
「ま、仕方ないか。戦闘が終わった後は時間的に城戸たちの準備で忙しかっただろうし。無理に戻ろうとしてクルーの仕事増やすのもあれだしね」
彼らの会話の通り、二人がモンスターを退治したときにはすでに、士道と真司の実戦投入に向けた準備でフラクシナス艦内は慌ただしい状態だった。それを見越した三人は無理に艦には戻ろうとせず、こうして他の市民と共に公共用シェルターに避難していたのであった。
「あいつらならきっと大丈夫だ。いい結果をもたらせると出た。オレの占いは当たる」
「それは頼もしいじゃない。…ま、こっちが上手くいかなかった分、あいつらには成功してもらいたいね」
そう言いながら、秀一の表情が険しいものになる。彼らが今回別行動で行った任務は
「しかしあいつも大変だな。
「…正直、今のままでは難しいと思います。根が頑固そうな人でしたし、記憶まで無いとなると…」
「オレも同意見だ。…とは言え、ヤツの記憶を戻せそうな人物を考えても、それこそ城戸か小川恵理くらいしか思い浮かばない。だが、小川恵理はこちらにはいない。ヤツ自身が一緒に連れていくかという神崎の提案を拒否したのだからな」
「全く…ややこしいことしてくれるよアイツも…」
秀一が思わずため息をこぼす。その一言が、現在の海之たちが解決すべき問題の全てを表していた。
「お前は…オレはどうすればいいんだ…。秋山…」
海之の漏らした呟きは、誰の耳にも届かなかった。
おまけ
朝
琴里「おにーちゃん!おはよーだ!」
蓮「とっとと起きろ。お前のいびきでこっちは寝不足だ。安眠妨害で借金を追加しておく」
昼
十香「シドー!一緒に昼餉にしよう!」
大久保「バカ真司!とっとと取材行って来い!」
夜
四糸乃「こんばんわ…士道さん…。十香さんと一緒に…晩御飯…食べに来ました……。あの…ご迷惑でしたか…?」
浅倉「お前の都合なんざ知るか。戦いたいんだよ、オレはな…。不満か?だったらどうする。
真司「もうやだこの格差!」
お読みいただいてありがとうございました。今回はいつもより少し長めになりました。読みにくいと感じた方がいらっしゃいましたら、申し訳ありません。今回士道が主人公らしく振舞っていたかと思えば、真司がほぼ空気となってしまいました。次回は真司が活躍しますのでご容赦ください。
ご意見、ご感想、お待ちしています。特におまけがネタ切れになりかかってますので、意見やアイデアをくださるとありがたいです。