デート・ア・サバイブ   作:亜独流斧

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おまけ
真司「アビスラッシャー!」十香「フカヒレスープ!」
真司「バクラーケン!」十香「イカソーメン!」
真司「ボルキャンサー!」十香「カニクリームコロッケ!」

琴里「…何やってるのあれ?」蓮「オレに聞くな」


士道の決意

「出かけた…?」

 

「ごめんね。ついさっき店から出て行っちゃったんだよ。彼は時々僕やご近所さんにお店を任せて、どこかに出かけちゃうことがあるんだ」

 

そう言って目の前の男・隣のクリーニング屋の店主だという人物は、心底申し訳無さそうな表情を真司たちに向ける。この口ぶりからして、この男も蓮の行き先を知らないのだろう。

 

「本当にごめんね。力になれなくて」

 

「い…いえ、こちらこそ…。突然押しかけてすみませんでした…」

 

そう言う真司の表情はとても残念そうなものであった。

 

「すまん城戸…まさかこんなことになるとは…」

 

「…流石のオレも悪いと思っているよ。休日の朝から踏みつけて、喜ばせた挙句秋山がいませんでしたってのは…すまん」

 

真司のあまりの落胆ぶりに、海之や秀一ですら気の毒さや罪悪感を覚える。一方真司も周囲が真司に気を使っていることに気付き、慌てて元気そうな表情を作る。

 

「ごめん、オレばっかり落ち込んでるみたいな感じ出して。三人も今日はあいつに会いに来たってのに…。オレならもう大丈夫だ!北岡さんに踏んづけられたのは話が別だけど…蓮がこっちにいるってことも、どこに住んでるかも分かったし。ありがとうみんな!」

 

「城戸…」

 

蓮の事は残念だが、いつまでもうじうじしているわけにはいかない。真司たちには今、やるべきことがあった。

 

「ホントはここで待ってたいけど、今は琴里たちに無理言って待ってもらってる状況だ。…今回は帰ろう」

 

「…そうだな。司令からの呼び出しがかかったときは何事かと思ったが、まさか今日精霊が現れるとはな」

 

「…行きましょう」

 

吾郎の一言と共に、海之、秀一が店を後にする。それに続いて吾郎が出て行き、最後に真司が名残惜しそうに店内を一度見回してから三人に続いた。

 

 

 

「さて…オレたちはフラクシナスに戻る。城戸、お前はこれを」

 

そう言って海之は真司にインカムを差し出す。

 

「ああ。オレの役目は二人に気付かれないように護衛すること…だろ?」

 

「そうだ。頼んだぞ」

 

「まかせとけ」

 

そう言って真司は、士道たちが誘導された地点へと向かって走り出した。残った三人もまた、フラクシナスへと引き返すために人気の無い路地裏へと向かう。だが、突然秀一が何かに気付いたかのように、ある一点を見つめながら足を止めた。

 

「先生?どうかしましたか?」

 

不思議そうに吾郎が問いかける。海之も秀一が見ているのと同じ方向に視線を向けるが、特に変わったものは見当たらなかった。

 

「吾郎ちゃん…手塚…悪いんだけどオレ、別行動させてもらうよ。司令には上手いこと言っといて!」

 

そう言って秀一は返答を待たずに走り出した。

 

「おいっ!待て北岡!」

 

「先生!」

 

残された二人は呼びかけるも、秀一はそのまま振り返ることなく走り去った。

 

「どうする。追うか?」

 

「…何か先生なりの考えがあるんだと思います。…オレたちはこのままフラクシナスへ向かいましょう」

 

「…そうするしか無さそうだな。行こう」

 

そう結論付けた二人は、再び歩き出した。

 

 

 

四人が店を去ってから数分後。店に戻って来た蓮にクリーニング屋の店主は声をかける。

 

「おかえり。さっき君にお客さんが来てたよ」

 

「何?…ああ、またあいつらか。オレに歳の近そうな三人組の男だろ」

 

蓮には彼の言うお客さんに心当たりがあった。記憶を無くす前の蓮の事を知っていると言って、何度か訪ねてきた連中のことである。

確かに彼らはデッキのことや自分の性格などを知っている様子ではあったが、蓮は彼らのことを信用してはいなかった。

だが、クリーニング屋から返ってきた言葉は蓮の予想したものとは違っていた。

 

「ん?いや、四人だったよ。確かに歳は近そうだったし、内三人はこの近くで見たことあるような気もしたけど…」

 

「…何?」

 

考えていたものと違う答えに、蓮は思わず自分の耳を疑う。

おそらく『見たことのあるような三人組』というのは彼らのことだろう。だが、四人目の人物については蓮には全く心当たりが無かった。

 

「またオレのことを知っているとか抜かす輩か…?」

 

手近な椅子に腰かけながら、蓮は面倒臭そうに鼻を鳴らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時刻は18時。天宮駅前のビル群に、オレンジ色の夕日が染み渡る。

そんな最高の絶景を一望できる高台の公園を、少年と少女が二人、歩いていた。

少年の方はさほど問題ない。普通の男子高校生だ。だが、少女の方は―――

 

「…ふう。存在一致率98.5%。流石に偶然とかで説明できるレベルじゃないか……」

 

日下部燎子は目を細めながらそう呟いた。その後方から、静かな声が燎子の背に投げられる。

 

「狙撃許可は」

 

そこにいたのはワイヤリングスーツにスラスターユニットを装備し、右手に自分の身長よりも長い対精霊ライフル『クライ・クライ・クライ』を携えた鳶一折紙であった。

 

「…出てないわ。待機してろってさ。まだお偉方が協議中なんでしょ」

 

折紙の問いかけに、振り返ることなく燎子は答える。その視線は先程の少女・精霊に注がれていた。

二人がいるのは精霊がいる公園から離れた、宅地開発中の台地だった。公園から1キロ圏内には、燎子たちを含めてAST要員が十人、二人一組の五班に分かれて待機していた。

 

「…しかし折紙、あんたよく見つけ出したわね。空間震も起こってないし、パッと見は普通の女の子よ」

 

「あそこにいる彼を、五河士道を尾行していた」

 

「…それってストーカーじゃないの?」

 

「私と士道は恋人同士。問題はない」

 

「……まあ深くは聞かないけど、警察の厄介になることだけは止めなさいよ」

 

燎子は折紙の底知れぬ行動力に思わず頭を抱える。とはいえ、その行動力のおかげで精霊を倒す大きなチャンスが巡ってきたのも事実だった。

 

「…!了解。折紙、射撃許可が下りたわ。総員、実戦準備!折紙、任せたわよ」

 

「了解」

 

上層部からの攻撃許可が出たことを確認した燎子は、待機していた全隊員に指示を出す。だが、燎子はそこで違和感を感じた。すぐそばの折紙以外、誰の返事も聞こえてこなかったのである。

 

「ちょっと。何かあったの?誰か応答しなさい」

 

「多分誰も返事はしないと思うよ。オレがちょっと寝かしつけてきたからさ」

 

折紙よりも更に後ろから聞こえてきた声に、思わず燎子と折紙は振り返る。そこにはメカニカルな外見が特徴的な緑色のライダー・ゾルダが立っていた。

 

「あの子がいつもの霊装じゃないし、剣も持って無かったから不安だったけど…ちゃんと変身は出来るみたいだな。良かった良かった」

 

ゾルダは独り言のようにそんな事を呟く。

 

「仮面ライダー…?」

 

「そっ、ライダーはあいつ一人じゃないってわけ」

 

思わぬ状況に燎子は戸惑いを隠せない。折紙もまた驚いた様子を見せていたが、すぐに切り替えてゾルダに問いかける。

 

「…あなたが他の隊員を倒したということ?」

 

「そう。誤解の無いように言っとくと、誰も殺してないし、威力を抑えたから大ケガ負ってる人もほとんどいないはずだ」

 

「どうやって私たちに気付いたの」

 

「昼間にお前を見かけてね。ほんの一瞬だったから気のせいかと思ったけど…気のせいじゃ無かったみたいだな」

 

「あなたの目的は何」

 

「あの二人のデートを邪魔するのを止めさせたいだけさ。よく言うだろ?人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られてなんとやら、ってな。取り敢えずその物騒な銃をしまって、この場から引いてくれない?」

 

「嫌だと言ったら?」

 

「馬に蹴られるよりは痛いだろうな」

 

そう言ってゾルダは銃型の召喚機・マグナバイザーにカードを挿入する

 

『SHOOT VENT』

 

自身の背丈をも上回る巨大な大砲『ギガランチャー』が召喚される。その迫力に思わず燎子は後ずさった。しかし折紙は

 

「精霊を倒せるなら本望。私は引くつもりは無い」

 

そう言って射撃体勢に入る。

 

「なっ!?オイオイ冗談でしょ!?」

 

流石にこの至近距離でギガランチャーを体へ撃ち込んでは、いくらワイヤリングスーツに身を包んでいてもただでは済まない。しかも折紙は射撃に集中するため、随意領域(テリトリー)で防御するそぶりも見せなかった。

 

(浅倉とかだったら平気で撃つだろうけど…流石にそこまでやるのはマズいな)

 

そう判断したゾルダは、ギガランチャーの照準をクライ・クライ・クライに合わせる。だが、その一瞬が隙となった。

 

「させないわよ!」

 

「ぐあっ!?」

 

死角から燎子の放った攻撃に、ゾルダは完全に不意を突かれた。そして折紙はこのチャンスを見逃さない。

素早く精霊に狙いを定め、そして――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕日に染まった高台の公園には今、士道と十香以外の人影は見受けられなかった。

 

「おお、絶景だな!」

 

十香は先程から、落下防止用の柵から身を乗り出しながら、黄昏色の天宮の街並みを眺めている。

フラクシナスクルー達の誘導に従っていった結果、この場所にたどり着いたわけだが、実は士道もここに来るのは初めてでは無い。というか、密かなお気に入りの場所でもあった。

 

「シドー!あれはどう変形するのだ!?」

 

十香が遠くを走る電車を指さし、目を輝かせながら言ってくる。

 

「残念ながら電車は変形しない」

 

「何、合体タイプか?」

 

「まあ、連結くらいはするかな」

 

「おお」

 

十香は妙に納得した様子で頷くと、くるりと体を回転させ、手すりに体重を預けながら士道に向き直った。

夕焼けを背景に佇む十香は、それはそれは美しくて、まるで一枚の絵画のようだった。

 

「それにしても―――いいものだな、デェトというのは。実にその、なんだ、楽しい」

 

不意に、十香が屈託のない笑顔を浮かべながらそんな事を言ってくる。士道は思わず顔が赤くなるのを感じた。

 

「どうした、顔が赤いぞシドー」

 

「……夕日だ」

 

士道は顔を逸らしながら誤魔化す。

 

「どうだ?お前を殺そうとする奴なんていなかっただろ?」

 

「……ん、皆優しかった。今日は本当に有意義な一日だった。世界がこんなにも優しいだなんて、こんなに楽しいだなんて、こんなに綺麗だなんて…思いもしなかった」

 

「そう、か…」

 

士道は口元を綻ばせて息を吐く。だが十香は、そんな士道とは対照的に、眉を八の字に歪めて苦笑を浮かべた。

 

「私は…いつも現界するたびに、こんなにも素晴らしい物を壊していたのだな。メカメカ団が私を殺そうとする道理が、ようやく…知れた」

 

「―――っ」

 

士道は息を詰まらせる。そして十香は悲しそうな表情で続ける。

 

「シドー、やはり私は――――いない方がいいな」

 

言って―――十香は笑う。ただしそれは、昼間見せたような無邪気な笑顔ではなく、まるで自分の死を悟った病人のような―――弱弱しく、痛々しい笑顔だった。

 

「そんなことないッ!!」

 

士道は思わず声を張り上げていた。十香は驚いた表情していたが、士道は構わずに言葉を続ける。

 

「だって…今日は空間震が起きてねえじゃねえか!きっといつもと何か違いがあるんだ!………それに…こっちに現れるたびに空間震が起こるってんなら…だったら帰らなきゃいいじゃねえか」

 

まるで、そんな考えなど全く持っていなかったというように、十香は目を見開く。そんな彼女に、士道は一度でも試したのかと問いかけた。

 

「で、でもあれだぞ。私は知らない事が多すぎるぞ?」

 

やがて十香はそんな事を言った。それは暗に、士道の問いかけに対する答えがイエスだということを示していた。

 

「そんなもん、オレが全部教えてやる!」

 

十香の発した言葉に、士道は力強く答える。

 

「寝床や、食べる物だって必要になる。予想外の事だって起こるかもしれん」

 

「それもオレがどうにかする!予想外の事は起きたとき考えればいい!」

 

十香は少しの間黙り込んでから、小さく唇を開いてきた。

 

「…本当に私は生きていてもいいのか?この世界にいてもいいのか?」

 

「ああ!そうだ!」

 

「……そんな事を言ってくれるのは、きっとシドーだけだぞ。メカメカ団や他の人間だって、こんな危険な存在が、自分の生活空間にいたら嫌に決まっている」

 

「そんなもん関係ねえ!他の人間がお前を否定するなら…オレはそれよりずっと強く!お前を肯定する!!」

 

士道は叫び、そして十香に向かって手を伸ばした。十香の肩が、小さく震える。

 

「握れ!今は―――それだけでいい…ッ!」

 

「シドー……」

 

十香は数瞬の間思案するように沈黙した後、そろそろと手を伸ばしてきた。

そして、士道と十香の手と手が触れ合おうとした瞬間。

 

「――――――――」

 

士道は全身に途方もない寒気を感じた。

 

「十香!」

 

士道は無意識のうちにその名を呼び、十香が答えるよりも早く、彼女を突き飛ばした。そして…

 

「―――――――あ」

 

凄まじい衝撃を感じたかと思うと――――――――――――――士道の意識はそこで途絶えた。




おまけ・その2
真司「ブロバジェル!」十香「中華クラゲ!」
真司「エビルダイバー!」十香「煮付け!」

琴里「…ホントに何やってるのあれ」蓮「…シーフードが好みのようだな」

お読みいただいてありがとうございました。一応念のため付け加えておくと、この世界でも北岡さんは強いです。折紙と燎子を除く8人ものASTを、短時間で気付かれずに倒しています。描写のせいで「ゾルダよえーじゃん」と感じられた方がいらっしゃいましたら、決してそのようなことはございませんのでご安心下さい。
よっぽどやらかさない限り、次回で十香編は終了です。最後まで頑張っていきたいと思います。
ご意見、ご感想共にお待ちしています。
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