デート・ア・サバイブ   作:亜独流斧

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ようやく十香編が終了です。今回は書いていて少し駆け足になってしまったような気がしました。
読み辛さ等を感じられた方がいらっしゃいましたら、申し訳ありません。
真司は変身はしますが、話の都合上戦闘はありません。しかし、アドベントってホント話作る上で便利なカードだなぁ…


空分かつ剣

「シドー…?」

 

十香は横たわっている士道に呼びかける。だが、返事は無い。彼の体には、十香の手のひらを広げたよりも大きな穴が開いていた。

 

「シ―――、ドー…」

 

やはり反応は無い。数瞬前、十香に差し伸べられていた手は、一部の隙間も無く血に濡れていた。

 

「ぅ、ぁ、あ、あ―――」

 

突き飛ばされた十香、血まみれの士道、士道の倒れている位置、そして――――辺りに立ち込める焦げ臭さ。

十香は、状況を理解した。

 

「――――」

 

十香は着ていた制服の上着を脱ぐと、優しく士道の亡骸にかける。

 

(―――駄目だった。やはり、駄目だった)

 

次いで十香はゆらりと立ち上がると、顔を空に向けた。

 

(この世界で生きられるかもしれない、士道がいてくれたなら、何とか出来るかもしれない)

 

(すごく大変で難しいだろうけど、出来るかもしれないと思った)

 

(だけれど)

 

「やはり―――駄目、だった」

 

十香は呼ぶ。霊装を。絶対にして最強の、十香の領地を。

 

「<神威霊装・十番(アドナイ・メレク)>……」

 

周囲の景色がぐにゃりと歪み、十香の体を霊装が包む。

十香は地面に踵を突き立て、そこから巨大な剣が収められた玉座が出現する。十香は跳躍し、背もたれから剣を引き抜いた。

 

「<鏖殺公(サンダルフォン)>―――【最後の剣(ハルヴァンヘレヴ)】!!」

 

十香が吠えた瞬間玉座がバラバラに砕け散ったかと思うと、その破片が十香の持つ剣にまとわりつき、全長10メートル以上はあろうかという、更に巨大な剣と化した。

十香はそれを軽々と振りかぶると、士道を撃ち抜いた弾丸が飛んできた方向へと振り下ろす。

刀身の光が一層強いものとなり、次の瞬間には、広大な台地が縦に両断されていた。

 

「十香ちゃん!よせ!!」

 

十香の後方から声が聞こえた。振り返ると、そこには息切れしながらもこちらにかけてくる真司がいた。

 

「シンジか…済まない。シドーは私を庇ったばかりに……」

 

「分かってる…。だけど、それは十香ちゃんが悪いわけじゃない。それよりも攻撃を止めてくれ!士道だってそんな事望んでない!」

 

「止めるなシンジ…。世界は私を否定した。それだけではない。シドーの命まで奪った。やつは…」

 

そう言って十香は、先程攻撃を放った方向へと目をやる。十香には、そこにいる者達の姿がハッキリと見えていた。

 

「やつは―――(ころ)して(ころ)して(ころ)し尽す」

 

十香はそれだけを告げると、真司の制止を聞かずに一瞬で高台へと移動した。

 

 

 

 

 

「全く…真司、あそこはちゃんと止めなさいよ。周りが人のいない開発中の土地だったのが幸いしたわね」

 

『無茶言うな!事前に聞かされてても、血まみれの兄弟見たらやっぱり動転するっての!!』

 

フラクシナス艦橋の正面モニタには、体をごっそり削り取られて横たわっている士道、怒りに身を任せた様子の十香、そして士道のそばで様子を見守っている真司が映し出されていた。

 

「どうやら秀一が動いていてくれたみたいだったけど…一歩及ばなかったみたいね。ま、お姫様がやられなかっただけマシか」

 

『お前な…そういう発言は不謹慎っていうか…。とにかく良くない。オレだって見るの辛いし、士道本人はもっと辛いんだからな』

 

「…わかってるわよ。私だって、ちゃんと心配はしてるんだから」

 

海之、吾郎、令音、そして神無月を除くフラクシナスのクルーたちは、みな目の前の会話に唖然としていた。

『ラタトスク』の最終兵器であり、琴里や真司にとっては大切な兄弟であるはずの士道。彼が目の前で突然死んでしまったにも関わらず、何故彼らが普段通りに会話出来ているのか理解できなかったのである。

だがその直後、彼らは更に驚くこととなった。突如、士道にかけられていた制服が燃え始めたのである。

しかし、驚くべきはその後だった。制服が焼け落ち、士道の肉体があらわとなる。

 

「き、傷が!?し、司令…これは……?」

 

そう。銃弾によってくり抜かれた傷口が燃えていた。その炎は傷口を見えなくするくらいに燃え上がり―――徐々に勢いを無くしていく。やがて炎が消えた後には、完全に再生された士道の肉体が存在していた。

 

「前にも、それにさっきの真司との通信でも言ったでしょ。士道は一度くらい死んでもニューゲーム出来るって。―――まあ、真司がすぐに理解して落ち着いてくれたのは意外だったけど。てっきり精霊と一緒に暴れだすかと思ったわよ」

 

『まあ…色々な。オレ自身、タイムベントを何回も経験して、死んだと思ってたやつにも会ってるしな』

 

「ふぅん…まあいいわ。あ、そろそろ起きるわよ」

 

琴里がそう言うとほぼ同時に、士道の体がピクリと動く。そして…

 

『…あっちゃちゃ!あっつうう!?…あれ、なんで生きてんのオレ?』

 

「し、司令…」

 

「すぐに士道を回収して。彼女を止められるのは士道だけよ。真司は先に行って秀一と合流しなさい。―――士道は、役割(・・)を説明したらそっちに送るわ」

 

琴里の言葉に真司は力強く頷き、デッキを取り出した。

 

「頼んだわよ、真司おにーちゃん」

 

『任せろ。変身!』

 

真司は龍騎に変身し、十香たちのいる高台へと向かった。

 

 

 

 

 

燎子から見て、状況は最悪だった。待機させていたAST隊員たちはみな、すぐそこにいる仮面ライダーに倒されていたが、この状況では参戦したところで何かが変わるとも思えない。寧ろ、余計な死傷者を出さなくて済むようにしてくれたことに関して礼を言いたいくらいである。

燎子自身は何とか空中へ離脱することが出来たが、精霊が折紙に狙いをつけていること、加えて折紙自身が人を撃ってしまったことによって動けなくなってしまっている事が原因で、折紙は集中砲火を受けていた。随意領域(テリトリー)で防御こそしているが、未だ生きていること自体が奇跡のような状況である。あのライダーがいなければ、今頃既に木端微塵になっていただろう。

 

「折紙!至急離脱しなさい!折紙!」

 

 

 

「だってさ。オレとしてもそこでへたり込んでるよりは、自力で逃げてもらった方が助かるんだけどな…。痛たた…やっぱ馬の方がマシだなこりゃ…」

 

「私が…士道を……」

 

「…ったく、そんなになるなら最初から撃つなっての。ほら、逃げるよ」

 

ゾルダは軽い口調で話すが、既に彼の全身はボロボロだった。ガードベントで召喚した盾・ギガアーマーをギガランチャーに装備し、この砲撃とギガアーマーで攻撃を凌いではいたが、十香の攻撃を耐え続けるというのは無理があった。

 

「…その姿、シンジの仲間か?なぜそいつを庇う」

 

「…ぶっちゃけ一人でも逃げたいとこなんだけど、そうも言ってられないわけよ。あのバカが言ってなかった?『士道はそんなこと望んでない』って。だからかな」

 

「そうか…なら―――――――終われ」

 

そう言って十香は剣を振り上げる。十香の纏うエネルギーがより濃いものになっていくのを感じたゾルダは、思わず死を覚悟した。だが

 

「やめろおおおお!!」

 

突如上空から響いて来た声に、十香は思わず動きを止め、剣を下ろす。そして次の瞬間、十香とゾルダたちの間に割って入るように、ドラグレッダーに乗った龍騎が空中に現れた。

 

「間に合った…こっち来てからドラグレッダー(おまえ)に頼りっぱなしだな」

 

「城戸か…全く遅いっての」

 

「五河……真司…」

 

龍騎の登場にゾルダは少し安堵した様子を、折紙は驚いた表情を見せる。

 

「五河真司…私は、五河士道を…」

 

「そうだシンジ!なぜお前までそいつを庇うのだ!そいつはシドーを……」

 

「分かってる。鳶一さんのせいじゃないとは言わないし、簡単に許したり出来るようなことじゃない。だけど…」

 

真司は答えながら、ガードベントのカードをドラグバイザーに挿入し、ドラグシールドを召喚する。

 

「オレは人も精霊も、みんなを守りたい。誰にも傷ついて欲しくない。オレは今度こそ戦いを止める。それがオレの願いで…士道の願いでもあるんだ」

 

そう言って龍騎は、真っ直ぐに十香の目を見た。表情こそ見えないが、仮面越しに伝わって来る龍騎の真剣な雰囲気に、十香は思わず気圧される。

 

「…そんな盾だけで私を止めるつもりか。私はシドーを殺したその女を許さんぞ」

 

「オレは十香ちゃんと戦うつもりは無いからな。これだけで充分だ」

 

「私を嘗めているのか?いくらシンジでも、邪魔立てするならば…」

 

十香はそう言うと再び剣を振りかぶり、そこにエネルギーが集まり始める。しかし、十香の言葉に龍騎は首を横に振った。

 

「違うよ十香ちゃん。オレの仕事は、あいつが来るまで君を止める事だ。…と言っても、そろそろだと思うんだけど」

 

「……どういう意味だ?」

 

「あいつは…士道はまだ終わっちゃいない」

 

「!?それは一体どういう…」

 

十香が言いかけたその時だった。

 

「十ぉぉぉ香ああああああああああああああああああああああああ――――――ッ!!」

 

上空から聞こえてくる、己の名を呼ぶ声に、十香は思わず耳を疑った。剣を振り上げたまま声のする方へ目をやると、そこには……

 

「シ―――ドー………?」

 

先程撃ち抜かれたはずの士道が、猛スピードで落下してきていた。

ラタトスクからのサポートによって、不意に士道の落下スピードが急激に和らぐ。十香は士道の元へ飛んでいくと、その体を抱き留めた。

 

「シドー…ほ、本物か…?」

 

「ああ……一応本物だと思う。心配かけてごめんな」

 

士道が言うと、十香は唇をふるふると震わせた。

 

「シドー、シドー、シドー…っ!」

 

「ああ、なん―――」

 

士道が答えかけたところで、辺りに凄まじい光が満ちた。十香の握っていた剣が、辺りを夜闇に変えんばかりに真黒な輝きを放っている。

 

「と、十香!?これは―――」

 

「【最後の剣(ハルヴァンヘレヴ)】の制御を誤った!どかかに放出するしかない…!」

 

「どこかってどこだ!?」

 

士道の問いかけに対し、十香は無言で地面の方を見る。そこには、今にも死にそうな様子の折紙がいた。

 

「ちょ、お前らぁ!?なんかこっちチラッと見てたけどさ、まさかこっちに撃ったりしないよね!?」

 

折紙のそばにいたゾルダは、慌てた様子で声を張り上げる。

 

「い、いや分かってますよ!……十香、それは駄目だ。あっちに撃っちゃ駄目だぞ!」

 

「ではどうしろと言うのだ!もう臨界状態なのだぞ!!」

 

そう言っている間にも、十香の握る剣はあたりに黒い雷をまき散らしていた。

その時、どうするべきか思案していた士道の耳元から、インカムを通して琴里の声が聞こえてきた。

 

『ほら士道、さっき教えたお姫様を助けるたった一つの方法。実行しちゃいなさい』

 

「い、いや琴里、あれは…」

 

「どうしたシドー?何か策があるのか!?」

 

士道はぼそぼそと琴里に言い訳をしようとしていたところを十香に見つかってしまう。

士道は先程フラクシナス艦内で、琴里から十香を救う方法を聞かされていた。正直到底信じられるものでは無く、どうにか他の方法で解決しようと思っていた士道だったが、最早この状況では他に選択肢は無い。士道は意を決して十香の問いに答える。

 

「あ、あるにはある…。そ、その、あれだ…!十香!お、オレとき、キスをしよう…ッ!いややっぱ忘れて…」

 

「キスとは何だ!?」

 

「へ?こ、こう…唇と唇を合わせ―――」

 

士道が言い終わらないうちに、十香は何の躊躇いも無く士道の唇に自分の唇を重ね合わせる。すると、その一拍後に十香の剣にヒビが入り、バラバラに霧散して空に溶け消える。

次いで、十香の纏っていた霊装が光の粒となって、空へ舞って行った。

やがて二人は抱き合う形でゆっくりと落下していき、そのまま着地する。

 

「す、すまん!これしか方法が無いって言われて……」

 

「は、離れるな馬鹿者…ッ!!見えてしまうではないか…」

 

そう言って十香は士道をより強く抱きしめる。突然キスされたことや、十香の霊装が消えたことで目のやり場に困ってしまっていた士道は、十香のその行動により一層慌てふためく。

 

「やれやれ。こういうのをこっちじゃ『リア充爆発しろ』って言うんだっけ?」

 

いつの間にか変身を解いた秀一が、からかうように言いながら近づいて来る。その横には何故か鼻を抑えている真司もいた。

 

「き、北岡さん…からかわないで下さいよ。それよりその真司は一体?」

 

ふぃふぃふんば(気にすんな)ほっとふぃげきがつよふぁっただふぇだ(ちょっと刺激が強かっただけだ)

 

「城戸…お前実年齢何歳だよ……」

 

「あ、あはは…」

 

そんなやり取りをしていると、十香が「シドー」と消え入りそうな声を発してきた。

 

「なんだ?」

 

「また、デェトに連れて行ってくれるか……?」

 

その問いかけに、士道は力強く首肯する。

 

「ああ。いつだってな」

 

士道の答えに、十香はこれまでで一番の笑顔を見せたのだった。

 




デート・ア・サバイブ!!

「夜刀神十香だ!皆よろしく頼む」

「いたく、しないで…ください…」

「…精霊が十香一人だなんて、誰が言ったのかな?」

「たとえ世界中を敵に回しても、そいつを死なせたくはないと思う」

「蓮、お前……」

「オレは…力が欲しい。真司たちみたいに、みんなを護れる力が…!」

戦わなければ生き残れない!



お読みいただいてありがとうございました。次回から四糸乃編です。ついに蓮が…!?
ご意見、ご感想、お待ちしています。
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