しかもその割に少し短めになってしまっていますが、どうかご容赦ください。
それとは別に、以前後書きや活動報告で告知したアンケートですが、ファイズコラボと真司&夕弦・士道&耶俱矢ということに決定いたしました。投票して下さった方々、本当にありがとうございました。すでに1話は完成・投稿済みですので、興味のある方はぜひそちらもご覧下さい。
「―――――これが、現段階で言える私と士道、それに『ラタトスク』についての情報よ。とにかく、今重要なのは、『士道には精霊を何とかする力がある』ってこと」
「いや、お前5年前って……まだ8歳じゃねぇか!そんな子供を司令官にする組織なんてあるか!!」
「実際に指揮を執りだしたのはここ最近よ。それまではずっと研修みたいなもの」
「い、いや、そういうことじゃなくてだな…」
琴里の話を聞き終えた士道は混乱していた。確かに分かったことも多いが、それらが新たな疑問を生み出し、結果的に話を聞く前よりも分からない事が増えてしまっていた。
「それになんで、ラタトスクはオレにこんな力があるなんて分かったんだよ!?自分でも気付いていなかったのに」
「そ、それは―――――そう、ラタトスク機関の観測機で調べたの。それでわかったのよ!」
司令官モードとは思えないような歯切れの悪い調子で答える琴里に、士道は違和感を覚える。だが、士道にはそれ以上琴里を追求することは出来なかった。
琴里はいつもとは違う、少し憂いを帯びたような表情をしていた。何か感慨に浸るような、悲しい思い出を思い起こすような、あるいは――――――――取り返しのつかない過ちを悔いるかのような。
妹のそんな表情を見て、士道はこれ以上この話に踏み込んではいけない気がした。
「と、とにかく士道!あなたには力があるわ。その上で選んでちょうだい。―――これからも精霊を口説き落としてくれるかどうかを、ね」
「……少し、考えさせてくれ」
琴里の問いに対し、士道はそう答えるのがやっとであった。
確かに空間震の問題を解決するためには、士道の力で精霊の霊力を封じるか、ASTのように精霊を武力で制圧するという困難かつ士道の納得できない方法を取るしかない。だが一方で、先月の出来事で士道が感じた恐怖心は、士道を躊躇わせるには充分過ぎるものだった。
「ま、今はそれでいいわ」
士道のこの反応は予測出来ていたのだろう。琴里は別段ガッカリした様子もなく、ふうと息を吐いてからそう言うと、隣に座った令音に視線を送った。
「それじゃあ令音、準備を」
「…ああ、任せてくれ。…というか、もうおおむね終わっているよ」
「さすが。仕事が早いわね」
「…ちょっと待て。準備って何のことだ?」
目の前で交わされる不穏な会話に、士道は嫌な予感を覚える。
「え?さっきも言ったじゃない。十香がここに住むから、その部屋の準備よ」
「いや、ちょっと待て!考えさせてくれって言っただろ!」
さも当然、といった様子で返してくる琴里に士道は抗議するが、
「ええ。だからこっちのことは気にせずじっくり考えてちょうだい」
琴里はまるで取り合わない。
「無茶言うんじゃねぇぇぇぇ!!」
「うるさいわね。どっちにしろ精霊用の特設住宅が出来るまで十香にはここにいてもらうしかないのよ」
納得がいかない士道に、琴里はやれやれといった様子で説明する。
「んなこと言っても……大体、年頃の男女が同じ家に住むってのは…」
「じゃあ、自分でそう説明しなさいよ」
そう言いながら琴里は士道の後ろを指さす。それにつられて士道が振り返ると、十香が廊下から不安げな眼差しを士道たちに送っていた。
「…シドー。やはり、駄目か?私が…ここにいては」
悲しそうな瞳で見つめてくる十香に、士道は言葉を詰まらせる。そして結局、
「…わ、分かったよ………」
士道の方が折れたのだった。
「士道…あいつチョロイな~」
「だからお前は一体何を言っているんだ」
同時刻、真司もまた、蓮に彼らが元いた世界に関する全ての説明を終えていた。
「…さっき説明したので全部だ。信じられないかもしれないけど……」
「ああそうだな。異世界だと?まったくもって信じられん」
「何だと!?蓮、お前!」
「信じられないかもしれないと言ったのはお前だろう。確かに所々の辻褄こそ合うが…それだけだ。少しでも期待したオレが馬鹿だったようだ」
淡々と言い放つ蓮に、真司は思わずカッとなる。
「お前なぁ…」
「何だ?ショックか?いきなりそんな話を信じろという方が無理だろうが」
それに、と付け加えて、蓮は話を続ける。
「お前の話が事実だったとして、それでどうなる?お前の話の通りなら、オレはかつて愛していたという女のことは諦めてこちらに来ている。元の世界に帰れるわけでも無いのに、過去のことを思い出してお前らとつるむ理由が無い」
「だけど協力して精霊を…」
「それしたってもうすでにやっている!今更お前らの力を借りるまでもない!!」
「……何だって?」
蓮の思いがけない発言に、真司の怒りは一瞬で収まった。そして代わりに、その発言への疑問が湧き上がる。
「蓮、一体どういうことなんだよ?」
「…さっきオレと五河士道の他に、もう一人少女がいただろう。あいつの名は四糸乃。精霊だ」
「何だって!?ってことは蓮、お前が言ってたのは…」
そこまで言いかけた真司を遮り、蓮は帰れとばかりに入口の扉を開ける。
「これ以上お前に言う事は何も無い」
「だけど蓮…その四糸乃って子の事は…」
なおも食い下がろうとする真司の言葉を遮り、蓮は冷たい声音で言い放つ。
「お前らが他の精霊をどうしようが勝手だが、オレや四糸乃には関わるな。他の連中にもそう伝えておけ」
蓮の強い口調に、真司はこの場でこれ以上何を言っても効果は無いと悟る。
「分かった…。けど、もし少しでも考えが変わってくれたら…、その時は待ってるからな」
真司はそれだけ言い残すと、蓮の返事を待たずに店を出たのだった。
「待っている…か」
真司が店を出て行った後、蓮は先程の会話について考えていた。
真司には全く信じられないと言ったものの、蓮自身確かに思い当たる節があるのも事実なのである。
(最も古い記憶が5年前…だが、オレの記憶がどこを最後に無くなっているのかを、誰かに話したことはない)
この事実は真司たちが記憶を失う前の蓮と、失った後の蓮の両方を知っているという可能性を示すものだった。
そして何より、カードデッキの存在。
四糸乃とよく一緒にいるため、ASTのことや、彼女らが不思議な機械を用いて戦っていることを蓮も知っていた。それに加えて、空間震によって街が破壊されてもすぐに元通りになる。こうした極めて高い技術が存在していながら、どこを探しても鏡の中に入る技術は見つからず、ミラーモンスターを知る者はいなかった。つまり、真司が言ったように、『違う世界からもたらされた技術』という説明が最も辻褄が合うのである。
だが、やはり『違う世界』という一言が、蓮が彼らを信じることを躊躇わせていた。
「…まあ、奴が真実を言っていようが、嘘をついていようが構わんか。オレはオレのやるべきことをするだけだ」
蓮は静かに目を閉じ、かつて彼女と交わした会話を思い出す。
―――――お前は何故戦わない!?その力を振るえばお前が負ける事は無いはずだ!―――――
―――――きっと、あの人たちも…いたいのや、こわいのは、いやだと……思います。―――――
「…ならばオレは、お前を護り抜く。誰が相手だろうと必ずな……!」
ゆっくりと開いた彼の目には、強い意志が宿っていた。
おまけ
浅倉「おい城戸ォ!外伝だかファイズだか知らねえが、さっさとオレを戦わせろ!」
美九「そうですよー!早くして下さーい!」
真司「ご、ごめん…。けどまだまだ先かなー…なんて」
芝浦「ま、いいんじゃない?それだけ楽しみが増えるってことだし」
真司「いや、お前は一生待っても出ないけどな…」
お読みいただいてありがとうございました。なるべく早く続きを投稿出来るよう努力します。
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