デート・ア・サバイブ   作:亜独流斧

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お久し振りです。最後に投稿してから4か月…非常に長い期間が空いてしまい申し訳ありませんでした。
今後も以前と比べて投稿までの間が長くなってしまいそうですが、今回のような事にならないように努力していくつもりですので、これからもお付き合いいただけると幸いです。


ナイトの謎

「そうか…秋山がそんなことを」

 

「ああ。悪い…上手くいかなかった」

 

蓮とのやり取りの後、帰宅した真司は海之、琴里、令音の三名に、士道と別れてからの出来事について話した。真司自身としては、彼に味方になってもらうチャンスを逃してしまったと責任を感じていたが、話を聞いた他のメンバーの反応は違っていた。

 

「いや、そもそもオレたちは最初以外まともに話すら出来ていない。秋山がお前の話を信じるかどうかは別として、少なくともお前はあいつを騙すつもりではないこと、そしてオレたちの目的が伝えられただけでも充分な成果だ」

 

「そうね。それに『ハーミット』、四糸乃と呼ばれている精霊についても情報が得られたわ。正直、その蓮ってライダーのいるところでは、彼女の攻略は難しそうね」

 

「…だが、逆に言うと彼女の身の安全は、他の精霊と比べれば多少は良いとも言えるだろうね。…話を聞く限りでは、彼女は今日も含めて我々の知らないうちに何度か静粛現界をしており、そのうちの何回かは、モンスターに襲われていたのを蓮に助けられている、ということになる」

 

「ハーミット?それが四糸乃ちゃんの識別名なのか?」

 

聞き慣れぬ単語に真司は首を傾げる。すると令音はタブレット端末を操作し、彼女についてのデータを表示させて真司に手渡した。

 

「…そうだ。そこにも書かれているように、彼女は非常におとなしい精霊だ。これまでに起こした空間震も比較的小規模なものが多く、なによりASTに攻撃されても全く反撃しない。それこそが彼女が隠者(ハーミット)と呼ばれる所以さ」

 

「ちょっ、待って下さい!全く反撃しないって!?精霊なら天使があるじゃないですか。別に人を傷つけて欲しいわけじゃないですけど、普通は十香ちゃんのときみたいに反撃するはずじゃ…」

 

「…だが、事実彼女は防御や逃走以外で力を使っていない。理由までは分かっていないがね」

 

「もっとも、だからと言ってASTが攻撃をやめるわけじゃないのは十香の件で学んだでしょ」

 

「そんな…」

 

明確な殺意を持って襲い来る敵を前に、対抗できるだけの力を持っていながら反撃しない。彼女がそうする理由は分からないが、それがどれだけ大変なことかはライダーバトルを経験した真司にはよく分かった。

 

「まあ、彼女の霊力を封印することが出来れば、そんな状況から解放することはできるわ。どのみち次は彼女をターゲットにするつもりだったし」

 

「…とはいえ、どうやって蓮が四糸乃と知り合い、何故彼女を護ろうとするのかも知る必要があるね。今のままだと彼はこちらの介入を快く思っていないが、それさえ分かれば敵対せずに済むかもしれない」

 

「とにかく、現時点でこれ以上考えていても仕方がない。オレは一度フラクシナスに戻って、北岡たちにこの事を伝えておく」

 

「ん。お願いね」

 

色々と課題はあるものの、海之と琴里のそのやり取りで、取り敢えずその場はお開きとなった。

 

 

 

「そう言えば士道は?」

 

海之が帰った後、今更ながら先に帰ったはずの兄弟の姿が見当たらないことに気付き、真司は琴里に問いかける。すると、琴里が答えるよりも先に部屋の入口が開いて、十香を連れた士道が入って来た。

 

「よう、お帰り真司」

 

「士道…ってなんで十香ちゃんも?……まさかさっきまでいなかったのって、十香ちゃんと…駄目だ士道!そーいうのはまだ早い!!」

 

「んなわけあるか!大事な話してるみたいだったから二階にいただけだ!」

 

一人勝手にヒートアップしていく兄弟を慌てて制止させる士道。一方で十香の方は、二人が何を言っているのか分からずに、一人ポカンとしていた。

 

「な、なーんだ…。いや、士道、オレはお前を信じてたぞ?」

 

「まあ、これからするかもしれないけどね。真司、十香は今日からしばらくウチに住むから」

 

「しどぉーう!?」

 

「琴里はもっと丁寧に説明しろ!ていうか真司、お前やっぱり全然信用してないじゃねぇか!」

 

その後、令音から訓練についてのきちんとした説明がなされ、士道の名誉はなんとか守られたのだった。

 

 

 

 

 

「そういや琴里、訓練ってのは一体何なんだ?オレに一体何やらせるつもりなんだよ」

 

士道だけでなく真司も十香が住むことを了承してから(ちなみに真司は最初こそ驚いたものの、基本的に兄妹たちやラタトスクを信用しているので即OKした)およそ3時間後。

その間に士道らは夕食を食べ終え、令音はフラクシナスに帰り、十香は客間に赴いて荷解きを行っており、そして真司は風呂掃除に向かったため、リビングには士道と琴里だけが残っていた。

ソファに腰かけて食後のチュッパチャプスを楽しんでいた琴里は、それを加えたまま唇を動かしてくる。

 

「別に、何もしなくていいわよ」

 

「は?どういうこった?あれだけ訓練訓練言ってたのに」

 

琴里の言っている意味が今一つ理解出来ず、士道は首を傾げる。

 

「んー、正確に言うと、普段通りの生活を送る事が今回の課題……かしらね」

 

「あ?」

 

「基本的に士道の訓練は、精霊とデートすることになったことを想定して、そのときに緊張したりしてミスしないようにすることを目的としているわけよ。要は焦らず落ち着いて行動するための…」

 

と、琴里はそこで突然説明を中断し、何やらボソボソと唇を動かし始める。よく見ると彼女の右耳には、小型のインカムが装着されていた。

 

「……そう、わかったわ。ん…じゃあ……」

 

「琴里?誰と話してるんだ?」

 

「―――ああ、何でもないわ。それより士道、百聞は一見に如かずよ。今回の訓練について、その目で見て理解してもらうわ」

 

「え?それってどういう…」

 

士道が琴里に発言の意味を尋ねようとした丁度そのとき、風呂掃除を終えた真司がリビングに戻ってきた。

 

「終わったぞー。後は湯が沸くまで少し待ってくれ」

 

「ありがとう真司。ところで、戻ってきてすぐに悪いんだけど、トイレの電球を換えてくれない?お手洗いに行きたいんだけど、さっき確認したら切れてたのよ」

 

「?別にいいけど」

 

琴里が何故ずっとここにいた士道に頼まなかったのか、ということに真司は疑問を感じたようだったが、特に何も言わずに予備の電球と作業用の丸椅子を手にトイレへと向かって行った。

 

「なあ琴里、トイレの電球が切れてたなら、なんでオレに言わなかったんだ?ていうか、そもそもこの前交換したばっかりじゃなかったか?」

 

同じように疑問を感じた士道は琴里に問いかける。すると琴里は口にチュッパチャプスをくわえたまま、真司が出て行った方向を顎で示した。

 

「今回の訓練について、目で見て理解してもらうって言ったでしょ?ドアを少しだけ開けて、真司に気付かれ無いように覗いてみなさい」

 

「はあ?」

 

琴里の意図がさっぱり読めず、ますます困惑する士道だったが、取り敢えず言われた通りに廊下を覗き込む。

真司の驚いたような声と、十香の悲鳴が聞こえてきたのはそれとほぼ同じタイミングだった。

 

「なんだ…?ってうおお!」

 

そして士道が状況を理解する前に―――凄まじい音と共に真司の体が宙を舞っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

琴里に嵌められた真司が十香のトイレを覗いてしまい、制裁されているのとほぼ同時刻。

少し遅めの夕食を終えた蓮は、呆れたように溜息をつくと、面倒臭そうに店の入口から外にいる彼女(・・)に向かって声をかける。

 

「……いつまでコソコソしているつもりだ。お前の視線を感じていたせいで、飯も落ち着いて食えなかった」

 

「……その割にはリラックスしていたように感じた」

 

声をかけられた少女―――鳶一折紙は、そう言いながら物陰から姿を現した。彼女自身、蓮に気付かれていたことは自覚していたらしい。

 

「いつから気付いていたの?」

 

「最初からだ。あの城戸とかいう奴と一緒にいたときから、ずっと店の前にいただろう。雨の中ご苦労なことだ」

 

「…そんなに前から気付いていて、どうして何もしなかったの」

 

「別に見られて困る物も無いからな。いちいち対応するのも面倒だっただけだ」

 

折紙の質問に対し、蓮は素っ気なく言い放ち彼女に背を向ける。だが、店の奥に戻ろうとしていた蓮は、折紙の次の一言に動きを止めた。

 

「見られて困らないなら答えて。あなたは何故ハーミットと行動を共にしていたの。それに、あのデッキについても」

 

「……どうやら思っていたよりも前からコソコソしていたらしいな。何が目的だ」

 

先程までの折紙に興味を持っていなかった時とは打って変わって、今の蓮は途轍もない殺気を放ちながら折紙を睨み付けていた。恐らく大抵の人間は目を合わせただけで逃げ出してしまうだろう。

しかし対する折紙も全く怯まず、毅然とした態度で言葉を返す。

 

「精霊と接触している人間や、精霊とも渡り合える力と鏡に入れる能力を併せ持つ装備。これらは精霊を排除する上で、貴重な戦力になる。私たちに協力して欲しい」

 

「ほう。つまり四糸乃をおびき出す餌になれ、そしてお前たちにデッキを渡すか、共に戦うかしろ…ということか。それでオレに何のメリットがある?」

 

「高額の謝礼と最高の待遇を用意する。そもそも精霊は意思を持った災害。対抗する術を持っているなら、出し惜しみするべきではない」

 

「……なるほど、確かにお前の言う通りかもしれんな。それに見返りも魅力的だ」

 

「!じゃあ…」

 

「…だからと言って協力する気は無いがな。帰れ」

 

そう言って今度こそ蓮は店の奥へと戻って行った。

一方残された折紙は、蓮の発言に理解が追いつかず、しばらくの間呆然としていた。が、暫くして我に帰った彼女は、中にいる蓮に向けて問いかける。

 

「何故!?精霊は倒すべき存在!それを…」

 

「それはお前らの考えだろ。正論だからと言って、それをオレにまで押し付けるな」

 

店の奥から返事が返ってきたのはそれが最後だった。それ以降、折紙の呼びかけに彼が答えることは無かった。

 

「どうして精霊を庇うの…。お父さんとお母さんは…精霊のせいで死んだのに」

 

彼女のその呟きは、蓮の耳には届かない。

 

 

 

 

 

店の奥に戻った蓮は、手にした物体をじっと見つめていた。

 

(何故かは分からないが、オレは一瞬あの女にこれを渡そうかと思った。オレ自身には奴に協力する気は一切無かったにも関わらず、だ。これも昔の記憶が関係しているのか…?)

 

蓮が手にしているのは件のカードデッキ。ただし、彼がナイトとして戦う際に使用している物ではない。

白鳥のようなマークが描かれた、真っ白なケース。そこに収まっているのは一度も使った事の無いカード。

それを、一瞬でも彼女に渡そうと思ったことに対し、自分でも戸惑いを感じていた。

 

(遠目からASTの一員として見ていたときには何も感じ無かった。となると…直接話をしたからか?このデッキをオレに渡した奴は、オレに使う人間を見極めさせようとしていたのか?)

 

彼の覚えている最も古い記憶。そこで彼は既に複数のデッキを所持していた。しかし同時に、ナイトのデッキ以外は自分の物ではない、と、なんとなく理解していた。そしてその感覚は間違ってはいなかったと今でも思っている。

下手に他人のデッキを使って危険を冒す必要は無い。そう考えた彼は、残りのデッキを二つ(・・)とも家の棚の奥深くにしまい込んだのだった。

 

「…考えすぎか。最近妙な連中ばかりが集まってきてたせいで、オレも少し疲れているのか」

 

そう自分に言い聞かせた蓮は、白いデッキを元の棚へと片付ける。

彼が持っていたもう一つのデッキ―――――龍の紋章が描かれた黒いデッキと共に。




お読みいただいてありがとうございました。
自分でも思っていた以上に、初っ端のシーンを引っ張ってしまいました。
そして謎のデッキ登場。白々しい?さてさて何のことでしょうか。
次回から少しずつ話が進んでいく予定です。
ご意見、ご感想などお待ちしています。
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