デート・ア・サバイブ   作:亜独流斧

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最近思った事
チェイサー【chaser】…追手、追跡者
『魔進チェイサー』って名前、折紙さんに合いすぎてる気がします。「魔が進む」とか逃げ切れない感が半端ない。
例え士道がカブトやアクセルだったとしても、彼女だけは振り切れない気がします。絶望が士道のゴールだ。

そんなこんなで、今回もよろしくお願いします


新任務

「おーう五河兄弟…ってどうした?なんか二人して死にそうな顔してるが……」

 

朝、真司たちが重い足を引きずって教室に入るなりかけられたのは、殿町の怪訝そうな声だった。

彼らは顔や手など至る所に湿布を貼り付けているうえ、足取りは今にも倒れてしまいそうなほどフラフラになっていた。今の二人を見たら、恐らく殿町でなくとも同じような反応をしただろう。

彼らのその悲惨な姿は、例の訓練で失敗を重ねた証だった。

 

「いやぁ…今朝士道のとばっちり食らっちゃってさ。こいつ朝、十香ちゃんの胸にモゴォ!」

 

「い、いや家で色々あってな…あはは」

 

「そ、そうか…大変だったな」

 

士道は余計な事を喋りそうになった真司の口を目にも止まらぬスピードで塞ぐと、殿町に乾いた笑みを向ける。その顔に何か危険なものを感じ取ったのか、殿町も深く追求はしてこなかった。

 

「そ、そう言えばお前らにも聞いておきたいんだが…ナースと巫女とメイド…どれがいいと思う?」

 

「「は?」」

 

突然のわけの分からない問いに、二人は間の抜けた声を発する。すると殿町は、手にしていた漫画雑誌を二人に渡す。開かれていたのは、巻末のグラビアページだった。

 

「読者投票で次号のグラビアのコスチュームが決まるらしいんだが…悩むんだよなあ」

 

「……ああ、そう」

 

士道が溜息交じりに返すも、殿町はまるで気にしない様子で雑誌を二人に突き付けてくる。

 

「で、お前らはどれがいいんだ?ちなみにオレはナースなんだが…」

 

「じゃあそれで投票すればいいじゃねえか……ええと、じゃあ…メイド?」

 

呆れながらも士道が律儀に答えると、殿町はピクリと眉を動かした。

 

「ど、どうした?」

 

「―――まさかお前がメイド好きだったとはな!悪いがオレたちの友情はここまでだ!」

 

「どうすりゃいいんだよ。めんどくさい奴だな」

 

「冗談だって。それで、真司の方はどれなんだ?」

 

士道のツッコミを軽く流し、殿町は真司に再度問いかける。対する真司は、こんな話にそこまで真剣になるのか、というレベルで考え込んでいた。

 

「うーん……オレ、そもそもあんまりコスプレとか興味ないからなー」

 

「ならもうこの三つ以外でもいいからよ。どんなのが趣味なんだ?」

 

「まあ正直、真司のそういうのはオレも気になるかも」

 

真司とはそれなりに付き合いがある二人、それも一人は同じ屋根の下で暮らす家族であるにも関わらず、二人とも真司のそういった方面の好みについてはよく知らない。そのため二人とも真司がどのような回答をするかに、それなりに興味が湧いた。

 

「うーん…ホントに興味無いからな…あ!でもこの前見た婦警さんは美人だったなー!」

 

「ほう!真司はミニスカポリスが好みなのか!こいつは予想外だな」

 

「オレも正直予想外だったよ。真司の好みって全然知らなかったからさ」

 

「いや~ミニスカっていうか…あの婦警さんが綺麗な人だったんだよ。なんか沢山のミニカーを引き連れて、ロボットみたいな怪人にキックしてたとこ見かけてさ!ビックリするあまり、オレの脳細胞もトップギアになっちゃったよ!」

 

「……真司、お前何を言ってるんだ?」

 

来禅高校二年四組の朝は今日も平和である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シドー!シンジ!昼餉だ!」

 

「……」

 

四限目の授業の終了のチャイムが響き渡ると同時に、士道の机に左右からがっしゃーん!と机がドッキングされた。

右は十香、左は折紙である。ちなみに真司の席は、十香の右隣に位置している。

 

「…ぬ、なんだ貴様。邪魔だぞ」

 

「それはこちらの台詞」

 

士道を挟んで、二人は互いに鋭い視線を向ける。

 

「ま、まあ落ち着けって。みんなで食えばいいだろ…?」

 

士道が言うと、渋々といった様子で十香と折紙は大人しく席に着いた。

取り敢えず、また取っ組み合いの喧嘩にならなかった事に士道はほっとする。十香だけならば真司でも抑える事は出来るのだが、二人の喧嘩となるとそうもいかない。真司の事を慕い、他のクラスメートの言う事にも大抵素直に従う十香と違って、折紙を止められるのは実質士道一人である。その為必然的に喧嘩の仲裁役は士道となり、以前のクッキー騒動の様な肉体的ダメージを負うことも少なくない。

故に、今日は戦闘が始まらなかった事に安堵したのだが…その油断が士道の判断を鈍らせてしまった。

自分の鞄から弁当箱を取り出した二人、そして真司に倣うように士道も弁当を机の上に出し、三人と一緒に蓋を開ける。

 

「……」

 

士道・真司・そして十香の弁当の中身を見た折紙が、目をほんの少しだけ見開いたことと、真司が

 

「お!いつもながら士道の弁当は美味そうだな!」

 

と発言した事で、ようやく士道は己の失態に気付いた。

五河家の弁当は、基本的に士道と真司が交代で作っている(といっても真司は基本的に朝が弱いので、弁当は大抵士道が担当して、真司がその埋め合わせに何かの当番を代わる事が多いが)。

そして一般人が家で料理を作る際、大抵の場合は用意する全員分のメニューを統一する。

ましてや、ただでさえ忙しい朝に朝食とは別に用意する弁当を、わざわざ一人分だけ別メニューになどするはずもなく、士道も真司も、ここにはいない琴里も同じメニューの弁当を持っている。

つまり何が言いたいかというと……

 

「ぬ、な、なんだ?そんな目で見てもやらんぞ?」

 

急遽必要になったもう一人分の弁当―――十香の弁当も、士道たちと全く同じ物が入っていた。

 

「どういう、こと?」

 

折紙は怪訝そうに三人の弁当を見比べながら士道に問いかける。

 

「こ、これは…実はあれだ。真司には悪かったけど、今朝はちょっと疲れてて…そう!朝、弁当屋で買ったんだ。それで、偶然十香もそこに…」

 

「そ、そうだったのかー!そう言えば、どこかいつもの士道の弁当と違うなーって思ったんだよなー!あはは…」

 

ようやく事の重大さに気付いたのか、真司も士道の言葉をフォローしようとする。しかし折紙はそれを

 

「嘘」

 

とバッサリ切り捨て、裏返っていた士道の弁当箱の蓋を持ち上げた。

 

「これは今から百五十四日前、あなたが駅前のディスカウントショップにて千五百八十円で購入したのち、使用し続けている物。弁当屋の物では無い」

 

「な…なんでそんな事知って…?」

 

「それは今重要では無い」

 

「いや、鳶一さん、それすげえ重要だと「五河真司、あなたは黙ってて」いや、黙ってろってそんな…「黙ってて。次は無い」……はい」

 

折紙の発言は明らかに問題があると思った士道と真司だが、彼女の有無を言わせぬ調子に気圧されてしまい、二人揃って何も言えなくなってしまう。

 

「むう、さっきから三人で何を話しているのだ!仲間外れにするな!」

 

状況をよく理解出来ずに置いてきぼりになっていた十香が、横から不満げな声を上げる。

と、そのとき。

 

ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ――――――

 

街中にけたたましい警報が鳴り響き、ざわついていた教室が一気に静まりかえる。

 

「………」

 

折紙は一瞬逡巡の様なものを見せながらも、即座に席を立ち、あっという間に教室を出て行った。

恐らくASTの一員として、精霊の元へ向かったのだろう。―――彼女たち(せいれい)を殺すために。

と、そこで教室の入口から、ぼうっとした様子の声が響いてくる。見ると、白衣を纏った令音が、廊下の方を指さしていた。

 

「…皆、警報だ。すぐに地下シェルターに避難してくれ」

 

生徒たちはみな彼女の指示に従い、次々と廊下に出て行く。そんなクラスメートたちの様子を見て、十香は首を傾げた。

 

「ぬ?シドー、皆どこへ行くのだ?」

 

「あ、ああ……十香は知らないんだっけ。シェルターだよ。学校の地下にあるんだ」

 

「シェルター?」

 

「ああ。取り敢えず説明は後だ。オレたちも行くぞ、十香」

 

「ぬ、ぬう」

 

十香は残っている弁当を名残惜しげに見ながらも、士道や真司と共に立ち上がった。

そして、三人が他のクラスメートたちの後に付いて廊下に出ようとしたところで。

 

「…シン、真司。君たちはこっちだ。…フラクシナスへ向かう」

 

士道と真司は令音に首根っこを掴まれた。令音は他の生徒に聞こえないように声を潜めながら、二人に説明する。

 

「…昨日の今日だ。今後の事についてシンの方は結論は出ていないかもしれないが…だからこそ、君には精霊と、それを取り巻く現状を見ておいてほしいんだ」

 

「……分かりました。行きます」

 

「オレも行きます。そもそもオレはその為にこっちの世界に来たんだし。士道たちの身の安全はオレに任せて下さい」

 

令音は二人の答えを聞くと、眠たげな半眼のまま小さく首肯し、生徒たちが全員列に並ぶのを見てから、昇降口の方を向く。

 

「…二人ともありがとう。では急ごう。空間震まで、もうあまり時間も無い」

 

「は、はい」

 

「しゃッ!分かりました!…あ、そう言えば十香ちゃんは?一緒に連れて行かないんですか?」

 

真司は、他のクラスメートの様子を眺めている十香の方に目を向けながら令音に問いかける。それに対する令音の答えは二人の予想したものとは異なるものだった。

 

「…ああ。十香は皆と一緒にシェルターに避難させてしまおう」

 

「え?それでいいんですか?」

 

士道の言葉に令音は「うむ」と頷く。

 

「…力を封印された状態の十香は普通の人間とそう変わらない。それに、精霊とASTの戦いを見て、自分の時の事を思い出されても困る。…言っただろう?こちらとしては出来るだけ彼女にストレスを蓄積させたくないんだ」

 

「ああ!なるほど~!」

 

「いや、でも…」

 

完全に納得した真司とは対照的に、士道の方はまだ少々不安そうな様子を見せる。が、生徒たちを避難させるために教室へやってきた岡峰教諭から、早く避難するよう声をかけられ、迷っている時間が無いことを悟る。

 

「…ん、捕まっても面倒だ。行こうか」

 

「分かりました…。岡峰先生!十香をよろしくお願いします!」

 

「は、はい!?え、あ、はい。それはもちろん」

 

「シドー…?」

 

十香が、少し不安そうに眉を歪めてくる。

 

「十香、いいか?先生と一緒にシェルターに避難しててくれ」

 

「シドーは、シドーはどうするのだ?」

 

「オレは…ちょっと大事な用があるんだ。先に行っててくれ」

 

「!あっ、シドー!」

 

「五河くん!?あっ、真司くんの方の五河くんと、村雨先生まで!?一体どこへ!?」

 

心配そうな二人の声を背に聞きながら、士道と真司と令音は校舎の外へと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来たわね。精霊はもう出現してるわ。令音、用意を」

 

三人がフラクシナス艦橋に着くなり、艦長席に座った琴里からそんな言葉が飛んできた。

 

「…あぁ」

 

令音は小さく頷くと、艦橋下段のコンソールへと座り込む。

 

「うぉ…やっぱり何回見ても慣れないな。街がこんなになってるなんて」

 

艦橋のメインモニタに映し出されている光景を見て、真司は思わず呟いた。

だがそれも無理のないことであった。吹き飛ばされた建物の残骸に、深く抉れた地面。まるで、その部分だけ空間が削り取られた、とでも言うべき光景が広がっていた。

 

「まあ、これっばっかりはそう簡単には慣れるもんじゃないだろうな。とは言え、今回は比較的小規模なんじゃない?」

 

「え?これで小規模!?」

 

真司と士道には、秀一が何を言っているのか理解出来なかった。それが二人の顔に出ていたのだろう。補足するように琴里は二人に説明する。

 

「よく思い出してみなさい、30年前にユーラシア大陸を襲ったアレを。ま、今のところあそこまで大きな空間震は他に起きてはいないけど、街一つ丸々消し飛ばすくらいの大きさだったらしょっちゅう起きてるでしょ。今回の規模はたかだか数十メートル。これ以上小さな空間震なんて、まず起きないでしょうね」

 

「いや、そうは言っても…そう簡単に割り切れるものじゃ無いだろ」

 

頭では理解出来ても、そう簡単に切り替えることなど出来ず、二人は顔をしかめる。

と、そこで士道は、映し出されていた映像に違和感を感じた。

 

「なあ、今日って雨降ってたか?確かさっきまでは晴れてたと思うんだが…」

 

「あら、士道にしては鋭いじゃない。この雨は精霊が出現してから降り出したもの…正確に言えば、精霊が出現したから(・・・・)降り出したものよ。今回出現したのと同じ精霊が現れたときには、必ず雨が降るの。ほんの数分前まで雲一つ無い快晴だったとしてもね」

 

「雨…。あっ!それに小規模の空間震って…」

 

真司と士道の脳裏に、一人の少女の姿が浮かび上がった。

 

「なあ琴里…もしかしてその精霊って…」

 

「多分二人の考えている通りよ。―――画面拡大出来る?」

 

琴里が艦橋下段のクルーたちに指示を飛ばすと、すぐに映像がズームして、街の真ん中に出来たクレーターに寄っていく。そして、そのクレーターの中心に立っていた少女は、二人が思い描いた姿と完全に一致していた。

ウサギの耳のような飾りが付いた緑色のフード。青い髪と、右手に装着されたコミカルなパペット。

その姿は、二人が昨日見たものと全く変わっていない。

 

「彼女が今回のターゲット、『ハーミット』よ」




設定
強さ比較(戦闘パート)
ライダー=エレン≧精霊(完全・ただし反転体は除く)>精霊(封印後)≧折紙>AST
強さ比較(日常パート)
折紙>>>>>>>その他
ベルトさんが語る『日常パートの折紙』
「士道が絡んだ時の彼女は、ドライブのタイプデッドヒートとタイプテクニックを足したような感じだ。いかなるときもクールかつ的確に障害を排除し、時には誰も制御出来ない程に暴走する。とてもデンジャラスだ(>o<)」

こんなイメージで書いてます。
お読みいただいてありがとうございました。ご意見、ご感想などお待ちしてます。
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