デート・ア・サバイブ   作:亜独流斧

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お久しぶりです。今回もまた間がかなり空いてしまいました。
話に直接絡んではこないですが、今回は龍騎の設定に関して独自解釈が入っています。
…全然関係無いですが、ドライブのハート様ってなんであんなにイケメンなんでしょうか。組織のトップが敵にきちんと頭下げたり、変身前を襲うのは無粋だと見逃してくれたり…。人間以上に「人間としてこうなりたい」って理想像ですやん。
それでは今回もよろしくお願いします


デパートでの再会

「ふぅ…ここでいいのか?」

 

フラクシナス下部に設えられた転送装置で地上まで送られた士道は、右耳に装着した小型のインカムに向かって声を投げた。

 

『ええ、精霊も建物内に入ったわ。二人とも、よろしく頼むわよ』

 

「…おう」

 

「…了解」

 

二人は少し緊張した様子で答えると、インカムから手を放した。

二人は今、商店街の先に聳える大型デパートの中にいた。

十香の件でも実感した事だが、ASTの主要装備であるCR-ユニットは屋内での使用には向いていないらしい。ASTも『ハーミット』こと四糸乃が建物に入ったのを確認しているはずだが、ラタトスクによれば、すぐに建物を破壊して突入してくるという可能性は低いらしく、士道たちは最低でも数分から数十分の間は手を出されずに行動出来る。逆に言えばそのわずかな時間こそ、彼らに与えられた貴重なチャンスということだった。

 

「それで琴里…四糸乃ちゃんは一体どの辺りにいるんだ?それに蓮も」

 

士道はあたりを見まわしながら、インカム越しに琴里に尋ねる。

どうやら二人が送られた階は、ワンフロアまるごと家具売り場らしい。

 

『蓮に関しては判断しかねるわね…。静粛現界の時にしか接触してない可能性もゼロではないし。今のところ外にはASTしかいないけど…まぁ、来るとしたら十中八九ミラーワールドからでしょうね。真司には分からないの?』

 

「残念だけど、オレたちが分かるのはモンスターの出現だけだな」

 

『そう…なら仕方ないわ。出来る限り用心だけはしておいて頂戴。それと、四糸乃に関しては…来た!二人とも、目標の反応がフロア内に入ったわ!』

 

不意に響いた琴里の声に、二人は身体を緊張させた。

それとほぼ同じタイミングで、二人の目の前に件の少女が現れる。

 

『君たちも、よしのんをいじめにきたのかなぁ?』

 

「おわ!ビックリした!」

 

『あれ~?誰かと思ったら昨日のお兄さんたちじゃない』

 

二人の顔をまじまじと見た後、パペットが器用にぽん、と手を打ってくる。

 

「あ、ああ。覚えててくれたんだな」

 

『そりゃーねぇ。お兄さんは昨日、蓮くんと一緒にお話したからね~。それに、そっちのお兄さんなんて、変身しちゃってたじゃない』

 

「おー、あれは他の人には内緒でな」

 

『おっけーおっけー。そこんとこはー、このよしのん(・・・・)の口の固さを信用しちゃって大丈夫だよー』

 

「おっ、サンキューよしのん!そうしてくれると……よしのん?」

 

危うくスルーしてしまいそうだったが、少々パペットの言葉に違和感を感じ、真司は思わず尋ね返す。

確か昨日の士道や蓮の話では、彼女の名前は『よしのん』ではなく『四糸乃』だったはず。

自分の聞き違いかとも思ったが、パペットの

 

『んー?よしのんはよしのんだけど…それがどうかしたのー?』

 

という言葉を聞いて、聞き違いでは無かった事をすぐに理解した。

 

(おい、どういう事なんだよ士道、琴里?あの子の名前は『四糸乃』ちゃんじゃ無かったのか?)

 

(お、オレに言われても…オレだって混乱してるんだから)

 

真司は小声で士道に尋ねるが、士道の方も同じ疑問を感じていた。士道は必死で昨日の蓮との会話を思いだそうとするが、ほとんどが自分や蓮に関する話で、四糸乃に関する話をした記憶は皆無に等しかった。今になってみると、もしかしたら蓮は意図的に彼女に関する話を避けていたのかもしれない。

 

『二人とも落ち着きなさい』

 

慌てる二人の耳元に、インカムを通じて琴里の声が聞こえてくる。

 

『蓮が嘘をついていない限り、彼女の名前が四糸乃というのは間違いないわ。それに、彼女に関して他の事は話さないくせに、名前だけ嘘の物を教えるというのも考えにくいし。よしのんというのは、もしかしたらあだ名か何かかもしれないわね』

 

「あだ名?」

 

『ええ。ここまでよく喋るひょうきん者なら、その可能性も無くは無いでしょ?それこそ考えにくいけど、蓮に付けてもらったとか。……それに、もしかしたら本名を知られるのが嫌って可能性もあるわ』

 

琴里のその言葉に、真司と士道は同じ事を思い出した。先月、十香と出会った時の事である。

出会った当初、名前を持たなかった彼女は、その事に触れられた時に悲しげな表情を見せた。

その後再開し、士道が彼女に『十香』という名前を付けたときには、とびきりの笑顔を見せた。

まだ四糸乃個人や、精霊そのものに対する情報が少ない上に、先の十香の一件もある。現段階では、琴里の言った「何らかの理由で本名について触れられたくない」という説をそう簡単に片付けるわけにはいかなかった。単なる考えすぎならばそれでいいのだが、もしヘマをして彼女の機嫌を損ねてしまっては、その後信頼を築く上で大きな障害になってしまうからだ。

 

『それか、よしのんってのはそのパペットの名前かもしれないわ。それに蓮が呼んでいたのを聞いていたとはいえ、まだ向こうからは名乗ってないのに、こっちが勝手に本名で呼ぶのはあまりいい考えでは無いわね』

 

『…シン、真司。もう名前を知っているのに歯痒いかもしれないが、攻略の中でさりげなく本名を聞きだしてみてくれ。…ただし、あくまでさりげなく、チャンスがあったらでいい。無理に聞こうとしたり、名前を聞く事に集中しすぎても本末転倒だからね。もし名前を聞かずとも行けそうだと判断したら、そのまま攻略を進めてしまって構わない』

 

「「わかりました」」

 

二人は琴里と令音からの指示を受け、一旦通信を切り上げる。

 

『やー、それにしてもお兄さんたち、珍しいところで会うねー。ぁっはっは、おにーさんたちみたいなのは歓迎よー?どーもみんな、よしのんの事嫌いみたいでさー。こっちに引っ張られて出てくると、すーぐチクチク攻撃してくるんだよねぇー』

 

言ってパペットが、またもわははと笑ってみせる。

 

「いやいやいや!笑い事じゃないでしょ、よしのん!それって大丈夫なのか!?」

 

パペットの大笑いに反して笑えない話の内容に、真司は思わず慌てふためく。

 

『おやおや~?心配してくれるなんて、おにーさんなかなか優しいねー。えーっと………ごめんね、お兄さんなんて名前?』

 

「え?…ああ、そういやオレはまだ名乗ってなかったな。オレは五河真司。んでこっちが…」

 

『そっちのお兄さんは士道くんだよねー?おっけー、しっかり覚えたよ』

 

「オレの名前も覚えていてくれたのか。ところでよしのん、よしのんってのは…」

 

士道は出来る限り自然な流れで、よしのんに名前について尋ねようとする。が、残念ながらその試みは失敗に終わった。

 

「!二人とも、話は一旦切り上げて!」

 

(な!?真司、なんでこのタイミングで…って、もしかしてモンスターか?)

 

(ああ…ごめん士道。お前がせっかく名前を聞けそうな絶好のタイミングだったんだけど…かなり近…)

 

士道と真司は再び小声で言葉を交わすが、真司が全てを言い終わる前に、三人の前にモンスターが現れる。

刺々しいその肉体は青い体色をしており、細見の人型モンスターではあるものの、全身を覆うその鎧のような棘のせいで幾分かゴツく見える。頭部からは長い触角が後ろへ伸びており、その手には大きなブーメランを握っていた。カミキリムシ型モンスターのゼノバイターである。

 

「うわっ!いつもより音が鳴ってから出て来るまでが早い!士道、よしのんを連れて逃げろ!!」

 

「わ、分かった!よしのん、行こう!」

 

『わーお!強引に手を引くなんて、士道くんたらダイターン!』

 

真司は士道たちとゼノバイターとの間に立ちふさがり、士道はその場を真司に任せ、四糸乃の手を引いて走り出す。二人の去り際、よしのんの全く空気を読めていないセリフがその場に響き渡った。

 

「ははは…緊張感無いなぁもう。さて…あっちは頼れる兄弟に任せて、オレはオレの仕事をしなくちゃな」

 

じりじりと距離を詰めてくるモンスターを警戒しながら、真司はデッキを取り出し鏡を探す。

元々ここは大型デパート。鏡として使えそうな物は沢山あり、真司もすぐに壁にかけられた姿見鏡を発見出来た。モンスターの出現から発見までがいつもより早かったのも、恐らくそこらじゅうに鏡があるこの状況が原因だろう。

手にしたブーメランを振り回して斬りかかってくるゼノバイターを躱し、真司は鏡にデッキをかざす。

 

「変身!しゃッ!」

 

真司を仕留めようと追いかけて来ていたゼノバイターだったが、彼が龍騎に変身したのを見てその足を止める。そして戦うのは得策では無いと考えたのか、少し離れた場所に設置されていた別の鏡へと一目散に逃げ出し、その中へと飛び込んだ。

 

「ちょっ!おい待て!」

 

このままゼノバイターを逃がすわけにはいかない。龍騎は慌てて、変身に用いた姿見から、ミラーワールドへと入って行った。

 

 

 

 

 

「なっ!?蓮!?」

 

ミラーワールドへ入った龍騎は、目の前の光景に困惑していた。

逃げられないと判断したのか、先にミラーワールドへ来ていたゼノバイターは、ブーメランを構えて戦う意思を示している。そこまではいい。

問題はその背後だ。仮面ライダーナイトが、ゼール系モンスター二体を相手に戦いを繰り広げていたのだ。

 

「!またお前か…という事は、やはり四糸乃もここに…くっ!邪魔だ!!」

 

ナイトも龍騎に気付いたらしい。龍騎はドラグセイバーを召喚し、ゼノバイターとの間合いを測りながら、ナイトに大声で問いかけた。

 

「おい蓮!そのモンスター、この階にいたのか!?さっきは何も感じ無かったけど」

 

「いや、違う。こいつらはオレと戦いながら移動してきただけだ。途中他のフロアにも行ったが、もうここにいる連中以外はモンスターはいないはずだ。……それより馬鹿かお前は」

 

「へ?」

 

「大声を出すから…ほら、行ったぞ」

 

蓮がそう言うと同時に、真司からは死角になっていた物陰から、ギガゼールが二体飛び出してきた。

咄嗟の事に、龍騎に隙が生まれる。そしてその隙を逃さず、ゼノバイターは龍騎にブーメランを投げつけた。

 

「うわ!っててて…」

 

幸い致命傷にはならなかったものの、まともに攻撃を食らった龍騎は吹っ飛ばされてしまう。

しかし、モンスターたちの攻撃は止まらない。龍騎が立ち上がろうとしたところに、今度はギガゼールがドリル状の刃の付いた槍を振り下ろす。龍騎は咄嗟にドラグセイバーを拾い、これを防いだ。

 

「おい蓮!危ないならちゃんと言えよ!」

 

「大声を出すから気付かれるんだ。大体、そっちから何体見えていたのか知らんが、油断していたお前が悪い」

 

二人が口論を続けている間も、四体のゼールたち、そしてゼノバイターの攻撃は止まらない。

本来、ゼール系のように同族で固まって行動しているモンスター以外は、他のモンスターと協力して戦うという事は無い。これは恐らく、ミラーモンスターたちに「餌として狙いを定めた人間を執念深く追いかける」「ライダーと契約したモンスター以外は、基本的にモンスター同士で共食いを行わない」といった習性や、「ミラーワールドの外では短い時間しか活動できない」という制約があるため、自分が確実に餌を手に入れるために、お互いに不要な干渉を避けているからだと思われる。

もし仮に、複数のモンスターが同じ人間を餌として狙ってしまうような事があっても、人間がモンスターより強いという事は有り得ない上、ミラーワールドへ引きずり込めばそれでもうその人間は終わりだ。モンスター同士で餌の取り合いにはなれど、共闘の必要性など全く無いのである。

だが、今は状況が違った。龍騎、そしてナイトを共通の敵とみなした彼らは、互いに協力して二人へ襲い掛かる。龍騎とナイトが気付いた時には、既に場は二対五の乱戦になっていた。

 

「……はぁ。オレまでとばっちりを受ける事になるとは」

 

「人に意地悪な事言うからこうなるんだよ!ていうか、そもそもその四体は元はお前の相手だったんだろ!」

 

「仕方ない。手伝え」

 

「だからその態度!話聞けよ!」

 

龍騎とナイトは戦いの手を休めることなく、背中越しに互いに言葉を投げかける。何も知らない人が聞けば、余裕があってふざけているかのようにも思えるやり取りだが、本人たちは至って真剣であった。

そして彼らは気付いていなかった。自分たちがいつの間にか連携しながら戦っていた事にも、その連携がどんどん上手くなっていっている事にも。




なかなか思うように話が進まないですね…。次回はもう少し話が進むように努力します。
いつも更新が遅く、楽しみに待って下さっている方には申し訳なく思っています。もうすぐ夏休みに入るので、なんとか時間を見つけていきたいとは思っているのですが…。
お読みいただいてありがとうございました。ご意見、ご感想などお待ちしています。

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