龍騎がミラーワールドに入ると、そこには先程のモンスターに加えて、基本的な形は似ているが、より頑丈そうなモンスターも待ち構えていた。
「な!?もう一匹いたのかよ!」
先程真司が体当たりしたのは、レイヨウ型モンスターの「ギガゼール」。そしてもう一匹の方は、ギガゼールと同じレイヨウ型ではあるものの、より大きなサイズと頑丈そうなボディが特徴の「オメガゼール」と呼ばれるモンスターだった。
しかし、相手が複数でも龍騎は冷静だった。いつもは「バカ真司」などと呼ばれてしまっている彼だが、流石は最後の一日まで生き残ったライダー。子供サイズでありながら、ギガゼールとオメガゼールの両方を相手取り、体術で確実に追い詰めていく。そして…
『STRIKE VENT』
「どりゃあああ!」
ドラグレッダーの頭部を模した武器「ドラグクロー」を装備し、そこから放たれたドラグクロー・ファイヤーを受けたギガゼールは爆死した。
「よし!」
龍騎は残るオメガゼールの方へと向き直る。残るはオメガゼール一匹だが、そう簡単にはいかない。オメガゼールが何かを叫んだかと思うと、あたり一帯の建物の影からギガゼール、それと「メガゼール」と呼ばれるレイヨウ型モンスターが数匹現れた。
レイヨウ型のモンスターたちは、基本的に2体以上の群れを作って行動する性質がある。その中でもオメガゼールは、ギガゼールらを率いるリーダー的な役割を担っている。
「こいつら、火事に巻き込まれた人たちを狙って集まったのか!」
その言葉を合図にゼールたちは一斉に襲い掛かってくる。
「くっ!」
『SWORD VENT』
龍騎はドラグセイバーを装備し、ゼールたちを迎え撃つ。しかし、流石に数が多すぎた。ゼールたちの連携を前に、龍騎は防戦を強いられる。
「なら…これでどうだ!」
『ADVENT』
「ガアアアアア!」
龍騎がカードをセットすることにより、ドラグレッダーが召喚される。呼び出されたドラグレッダーは、ゼールたちを炎とその巨体で薙ぎ払う。
ドラグレッダーの援護もあり、徐々にゼールたちの数が減っていく。気付けば、残るは例のオメガゼールを含めて3体になっていた。
『FINAL VENT』
「はぁぁぁー…」
仮面ライダーたちの必殺技・ファイナルベントのカードをドラグバイザーにセットし、龍騎は構えをとる。
そして掛け声と共に飛び上がり、空中で体を捻りながらキックのフォームをつくり、
「たあああああ!!」
ドラグレッダーの吐いた火球と共に、ゼールたちへと凄まじい蹴りを放つ。龍騎のファイナルベント・ドラゴンライダーキックである。
ゼールたちは咄嗟に背を向けて逃亡を図る。が、いくら素早い彼らでも、技が放たれてから逃げようとして間に合う攻撃ではない。3体とも後ろからキックを食らって爆発した。
「よっしゃ!」
ゼールたちの生命エネルギーをドラグレッダーが捕食したのを確認して、龍騎はミラーワールドを脱出した。
外に出ると、先程の兄妹が気を失って倒れていた。
「な!?おい、大丈夫か!?」
真司は必死に呼びかけるが、反応がない。だが、安定した呼吸をしている上に外傷もないところを見ると、命の危険があるわけではなさそうだ。
「そいつらは気を失っているだけだ。命に別状はない」
その声で真司は士郎の存在に気が付いた。
「神崎…一体なにが…」
「お前がミラーワールドへ入ったのと入れ替わるように、『奴』が戻ってきた。そいつらから自分に関する記憶を消すために。俺もモンスターに気を取られていて、気付いたときにはもう遅かった…」
「な…なんでそんな…」
「…城戸真司。お前には全てを話しておこう」
まず、お前も気が付いていると思うが、ここはお前が元々いた世界ではない。……その顔を見ると、気付いていなかったようだな。とにかく、そういうことだ。
この世界と元の世界は、ミラーワールドを間に挟む形で存在している。そしてお前も知っての通り、ミラーワールドに普通の人間が自分の意思で出入りすることはできない。つまり、こちらと元の世界の両方に行くことができるのは、俺やモンスターのようにミラーワールドの中に住む者たち、そしてデッキを持つライダーたちだ。
だが、出入りできるといっても理論上の話だ。お前たちライダーも仕事などがある一般人である以上、その行動範囲は決まっていた。だからそれほど実感が湧かないだろうが、ミラーワールドは世界全体がもう一つ存在しているようなものだ。それがこちらの世界とお前が元いた世界の二つ存在している。一言で『ミラーワールドを間に挟む形で』と言っても、それは二つの世界の間に地球が二つあるようなもの。
つまり、二つの世界は行き来するには遠すぎる。それが可能なのは俺くらいだ。…そう、お前をこの世界に運んだのは俺だ。
そして、体の異変に関してだが、それについてはお前は答えを知っているはずだ。
「それって…タイムベントか!?」
「そうだ。お前をこの時間のこの場所に連れてくるために、タイムベントでお前をこの時間へと戻し、デッキを持たせ、そして運び込んだ。」
「なんのために…」
「一つはお前にさっきのモンスターを倒させるためだ。先に説明したように、ミラーワールドは広い。この世界に近いこちら側には、俺と優衣が生み出した存在であるミラーモンスターは少ない。だが一方で、こちら側には俺の支配力が及ばない。だからライダーであるお前に力を借りる必要があった」
「そんな理由が…。それじゃ、他の理由ってのは?」
「そこの兄妹…五河士道と五河琴里にとって、全てが始まった日。そこにお前を立ち会わせるためだ」
そう言って士郎は、精霊と呼ばれる存在について、そして琴里に何が起きたのかを語った。
「そんなことが…。でも、いま琴里ちゃんに精霊の力はないんだよな?なんでなんだ?それに士道にも何かあるのか?」
「それについては今伝えることはできない。だが、いずれ分かる。そしてお前には士道たちを守って欲しい。士道の力が、いずれ必ず必要になる…。精霊を救うために。」
いまだ分からないことだらけの真司は、完全に納得したわけではなかった。だが、人を守ることに真司が反対する理由もなかった。
「わかった。前みたいにライダー同士で殺し合えとかなら絶対やらないけど…二人を守るためになら戦う。」
「すまない…頼む」
今まで「戦え」とばかり言い続けてきた士郎の変化に、真司はどうしても違和感を感じてしまう。だが、士郎のそんな変化が嬉しくもあった。
「それで、オレはまずなにをすればいいんだ?」
「ん?…ああ、まずは…」
「火事に巻き込まれて気を失っていた子供たちを助けてくれて本当にありがとう!」
「は、はぁ…」
「本当にありがとうございます。オレも琴里も完全に意識がなかったから…あのままだったらどうなっていたか」
「おにーさん、ありがとう!」
真司はあの後、二人を火の中から外へと脱出させた。そして、火災のことを知って飛んで帰ってきた二人の父親に出会って、二人を無事に返すことが出来た。…のだが、父親と、目を覚ました兄妹から、何度も繰り返しお礼を言われ、戸惑っていた。
「それで、ご両親にもお礼を言いたいのだが、今はどちらにいらっしゃるのかな?」
「え…と、実は…」
真司は心苦しい思いをしながらも、適当な話をでっち上げて、両親がいないということを話した。
(お前は今、小学校高学年の姿だ。そして当然、この世界に家も親族もいない。そういうわけだ、近くで二人を守るためにも、何とかして五河家に転がり込め)
真司の脳内で先程の士郎の指示が再生される。
(無茶苦茶言うよなあいつ…なんかキャラ変わってる気がするし…)
確かに士郎の言うことはもっともな話だし、モンスターから二人を守ったのも事実だ。なのだが…
「それは…本当に大変だったね。よし、真司君…うちに来なさい。これからきみは、うちの家族だ!」
「そうしてくれるとオレも嬉しいよ!歳も近そうだし、よろしく真司!」
「い、いいんですか?あ、ありがとオゴォ!」
「よろしくね、真司おにーちゃん!」
「痛って…ああ、うん。よろしく…」
何の疑いも無く真司に笑顔を向ける3人に、真司はひたすら心の中で謝り続けた。そして、実年齢23歳ながら良い子にすることを誓うのだった。
おまけ
耶俱矢「しかしモンスターの名前は微妙なのばかりであるな。バクラーケンとかオメガゼールとか…もっと我を満足させるものはおらぬのか」
琴里「蓮に契約モンスターの名前を聞いてみたら?」
耶俱矢「蓮?あのコウモリか?クックック…大方なんちゃらバットとかであろう」
琴里「ですって蓮。正解は?」
蓮「闇の翼ダークウィング」
耶俱矢「やだカッコイイ…」
蓮「素が出てるぞ」
お読みいただいてありがとうございました。最初のゼール軍団にサバイブ使うか迷いましたが、3話で奥の手使ってたらこの先大変かと思い、今回はナシでいきました。
次回から十香編突入です。個人的には十香が一番好きなので、しっかりと十香の可愛さが伝わるように頑張りたいと思います。