「お、落ち着いてくださいぁーい!だ、大丈夫ですから、ゆっくりぃー!おかしですよ、おーかーしー!おさない・かけない・しゃれこうべーっ!」
そう言って生徒を誘導しているのは、士道や真司のクラスの担任である岡峰珠恵教諭・通称タマちゃん先生である。
真司たちが帰り支度をしていた際に響き渡った空間震警報。それにより、現在学校に残っていた生徒たちは、地下に造られた空間震用のシェルターに避難しているのだった。
「大丈夫かな…鳶一のやつ」
士道が心配そうにつぶやく。
先程士道たちは、皆が避難していく中、一人反対方向の昇降口に向かっていく鳶一折紙の姿を見かけていた。その際に士道は呼びかけたものの、折紙は「大丈夫」とだけ言って去って行ってしまった。
「まあ、本人が大丈夫って言ってたし…警報が鳴ってるって分かってて外に居続けたりしないだろ。…たぶん」
「そうだよな…ん…?」
真司の言葉に士道は少し引っかかるものを感じた。そして数秒考えた後に違和感の正体に気付いて戦慄する。
士道は、己の嫌な予感が外れることを願いながら、ケータイのGPS機能を起動させる。が、その予感は当たってしまっていた。
「真司…朝に琴里が言ってたこと覚えてるか?」
「朝…?T-ウィルスと、デラックスキッズプレートと…」
と、そこまで言ってようやく真司も気付く。
「まさか…」
(空間震が起きてもファミレスがテロリストに占拠されても絶対だぞ!)
「琴里のやつ…まだファミレスの前にいる……」
「な、なんだよ、なんだってんだよこれは…ッ」
士道と真司は、琴里を探しに街中を駆け回っていた。その途中、進行方向が眩い光に包まれたと思ったら、二人は爆音と強烈な衝撃波に襲われた。
そして二人が目を開けると、そこに先程まで見えていた街並みはなかった。全て跡形も無く消滅していたのだった。
「これが…空間震…」
あまりの光景に、真司はあたりを見回す。と、そこで奇妙なものに気付く。クレーターのように削り取られた街の中心に、玉座のような何かが鎮座していた。そして、その謎の玉座の肘掛けに当たるであろう部分に、足をかけるようにして立っていたのは…
「おい士道、あれ…」
「女の…子?」
その少女は、お姫様のドレスのような不思議な恰好をしていた。その手には、身の丈ほどあろうかという大剣が握られていた。
だが、そんな事はどうでもよくなってしまうくらい…その少女は、暴力的なまでに美しかった。
少女はこちらに気付いたのか、真司たちの方を向き、ゆっくりと手にした剣を振りかぶる。そして、その剣を真司たちの方に向けて、横薙ぎにブン、と振り抜こうと…
「って、なんかヤバいって!」
真司は咄嗟に士道を引き寄せ、地面に伏せる。結果的にその行動は正しかった。二人が伏せた直後、頭上を刃の軌跡が通り抜けていったと思うと、後方にあった家屋や店舗、街路樹や道路標識などが、みな一様に同じ高さに切り揃えられていた。
「「…な!?」」
士道は理解の範囲を超えた戦慄に心臓を縮ませた。そして様々な修羅場を潜り抜けてきた真司でさえ、目の前の光景に驚愕していた。
(今の攻撃…ライダーに変身しててもまともに食らったら危ない…。士道を連れて早く逃げないと―――)
「―――お前たちも…か」
「…えっ!?おわぁー!」
突然頭上から聞こえてきた声に、真司は思わず間の抜けた叫び声をあげる。そこには、一瞬前まで存在していなかった少女が立っていた。
「―――君、は…」
呆然と。士道は、声を発していた。
「名、か。―――そんなものは、ない」
少女はどこか悲しげに答える。その顔はひどく憂鬱そうな―――まるで、今にも泣き出してしまいそうな表情をしていた。
だが、少女は何かに気付いたように視線を上に移す。それにつられて真司と士道も上を向くと…
「んな……!?」
二人ともこれ以上ないくらいに目を見開き、士道は思わず声を漏らしていた、。
上空には、まるで機械を着ていると言っても差支えないような、全身をボディースーツで覆われた人間が何人も飛んでいた。だが、士道と真司が驚いたのはそこではなかった。なんと上空の人物たちは、士道たちの方へミサイルらしきものをいくつも発射してきたのだ。
「「うわぁぁぁぁぁ!」」
二人は思わず叫び声を上げる。
だが―――数秒経っても二人にダメージは無く、意識もハッキリしていた。二人が恐る恐る上空を見上げると、まるで見えない手にでも掴まれたかのように、ミサイルが空中で静止していた。
「…こんなものは無駄と、何故学習しない」
そう言って、少女が剣を握っていない方の手を上にやり、グッと握る。するとミサイルは圧縮されたかのように、その場で爆発した。
その後も次々とミサイルが撃ち込まれる。が、その全てが少女には通用しない。状況を飲み込めていない真司と士道から見ても、この場ではこの少女が最も強いということは明らかだった。
だが、士道も真司も別のことが気になっていた。
「なんであの子…あんな顔してるんだ…」
士道は、少女の表情が気になっていた。この場で誰よりも強いはずの少女は、先程見せたような悲しげな顔をしていたのだ。士道の目には、この少女が疲れ、悲しんでいるようにしか見えなかった。
一方、真司はあるものを探していた。
「くそ、こんなときに…どこだ…?一体どっから出ようとしてんだよ…」
真司が探していたもの、それは『鏡』であった。
少女が最初にミサイルを破壊した直後、真司は例の音、つまりモンスターの出現を感じた。だが、辺り一帯は先程の空間震の影響で鏡どころか何も残っていない。そのため、モンスターの現れる場所を予測するどころか変身することすらままならない状況であった。
(このままじゃ誰が襲われるか分からない…。だけどこんなドンパチやってる状況じゃ、誰かが襲われてから動いたんじゃ間に合わないかもしれない…どうすりゃいいんだよ…)
と、そこで真司と士道の思考は一度中断した。何故なら、少女と戦っていた人間たちの中に、見知った顔を発見したからである。
「鳶一―――折紙…?」
士道が思わず声を漏らすと、折紙がちらとこちらを一瞥する。
「五河真司と…五河士道?」
そして怪訝そうな声音で、返答するように二人の名前を呼ぶ。
だが、折紙はすぐにドレス姿の少女の方へ視線を戻し、そしてそちらへ向かって一気に加速した。
そして折紙はそのまま、いつの間にかその手に握られていた光の刃のような武器で少女に切りかかる。が、少女はそれを躱し、反撃とばかりに剣を振り下ろす。そこから二人の斬り合いがはじまった。
折紙の登場に真司と士道は暫し放心していた。だが、我に返った真司は、二人の戦いをやめさせようと動く。
「おい!よせって!なんでお前ら戦ってんだ…って、あれは…」
そのとき、真司はようやく探していたものを見つけた。折紙と戦闘中の少女の剣。その表面に、一瞬だったが、その場にいるはずのない存在が映っているのを確かに見たのだ。
「うおおおおお!二人とも止まれえええ!」
真司は咄嗟に走り出していた。その叫び声に、今まで真司たちに気付いていなかったボディースーツの一団も、二人に接近する真司に気付く。
「な…そこの少年、危険よ!止まりなさい!」
集団のリーダーと思われる女性が、接近しながら呼びかけるも真司の耳には入らない。
そして、そんな周りの状況の変化を感じた少女と折紙は、互いに相手に集中しながらも、ほんの一瞬だけ周囲を確認する。しかし、叫びながら接近してくる真司を見た途端、さすがの二人も一瞬動きが止まる。
そしてその瞬間、少女の剣からミラーモンスターが出現し、二人に襲い掛かった。
「「なっ!?」」
完全に不意を突かれた二人は反応出来ず、その攻撃をモロに食らってしまう。…はずだった。
「うおりゃあ!」
だが、そうはならなかった。間一髪のところで真司はモンスターに跳び蹴りを食らわせ、剣の表面からミラーワールドへ押し戻した。
「真司?いまのは…一体…」
士道が近づいてきながら真司に問いかける。
「士道、あいつはオレに任せろ。お前はその子のそばにいてあげろ。向こうは沢山いんのに、こっち一人じゃかわいそうだからな」
「え?いや、うん…。って、オレに任せろって一体何するんだよ」
士道の問いに答える代わりに、真司はドレスの少女に呼びかける。
「ごめん。悪いんだけどさ、オレが戻ってくるまでその剣出しっぱなしにしといてくれる?もしどこかに片付けたりするんだったら、代わりになんか、鏡みたいに映る物出しといてくれると助かるんだけど…」
「う、うむ…わかった…」
まだ状況についていけていないのか、少女はポカンとした表情をしていた。
とは言え、ミラーワールドからの出口を確保するための約束を取り付けることが出来た真司は、それ以上何も言わず、剣に向かってデッキを構える。
「変身!」
Vバックルにデッキを挿入し、真司は仮面ライダー龍騎へと姿を変える。
「しゃッ!」
そして真司は、呆気にとられる周囲を尻目にミラーワールドへと入っていった。
おまけ
浅倉「イライラするんだよ…」
十香「ぬ…そうなのか…すまぬ……」
浅倉「いや…うん、分かればいい」
浅倉「オレをイラつかせるな!」
四糸乃「ご…ごめん…なさい…。許して…下さい…」
浅倉「いや…その、うん…こっちこそごめんね…おにいさん怒鳴ったりして…。焼きそば…食うか?」
士道(ピュアってスゲエ…)
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