真・恋姫†無双~神獣と黒き御遣い~   作:ポチ&タマ

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 あっ 野生の ミミッキュが 現れた!
 ミミッキュは 仲間になりたそうに こっちを見ている!


第1話「どこだよ此処」

『これからの旅路に必要だと思われる道具をバッグの中に纏めておきました。貴方とともに生きた、かつてのポケモンたちも一緒です。ここから先は私の管轄外となりますが……貴方の旅路に祝福を』

 

 そう言って、その神々しい白きポケモン──アルセウスは小さく笑った。

 

「生前は邪神邪神って言われてたけど、なんだかんだいい奴じゃねぇの」

 

『創造神なだけあって心の広いお方でしたね』

 

 そうテレパシーを送りながら微笑むのはサーナイト。

 俺の手持ちじゃないんだが、なんやかんやあってうちの子になってしまった訳ありポケモンだ。

 サーナイトの言う通り、俺と彼女は本来この世にいない存在である。どんな事情があったのか分からないが、アルセウスが蘇らせてくれたらしい。流石は創造神だ。

 

「しかし、まさか二度も転生を経験する羽目になるとはなぁ」

 

 一度目は所謂現代の世界。如月流合気体術という道場の第十二世総師範として百人以上の門下生に体術を初めとする武術を教えてきたオッサンである。

 如月流は三百年の歴史を誇る古武術で、体術に限らず棒術、槍術、手裏剣術、弓術など様々な武器術も納めている総合武術だ。総師範としてすべての武器術は網羅しているし、個人的に他流派や他国の武術なども習い、研鑽を積んできた。

 年に一度、人間ドックを受けていたため体調管理にも気を使っていたのだが、死因は思い出せない。

 

 二度目の生はまさかのポケモンの世界だ。ポケモンは俺も好きでそこそこプレイしてきた。ガチ勢ではない。

 ゲームとしては楽しんでポケモンバトルをしていたが、一匹の生命として生きるポケモンたちと接するうちに、彼らを使役してバトルさせるという行為が如何に残虐なのかと思い知る。

 そのため一般的なトレーナーとしては風変わりな人生を送って来たと思う。他のトレーナーのように問答無用でポケモンを捕まえる真似はせず、モンスターボールに入れる時には必ず同意を得ていたし、バトルも本人?たちが望まない限り積極的に行わなかった。

 ポケモンリーグにも興味がなかったからバッジ集めはしなかったが、それはそれとして戦うことは好きなため、生前と同じく如月流の研鑽に努め、ポケモンたちを傷つけるのは嫌だけど戦うのは好きという手持ち仲間とともに切磋琢磨し合った。

 そのため、ゲーム時代で言うなら仲間たちはみんな八~九十代レベルに至ることが出来たし、俺との連携も以心伝心の域に達することが出来た。もしかしたら、それが慢心を生みあのような事態に陥ってしまったのかもしれないが……。

 

 聞いたことのない悪の組織にポケモンたちを奪われ、身柄を拘束された俺はとある地下闘技場でデスバトルの日々を送るハメになってしまったのだ。

 ポケモンと人間、あるいはポケモン同士、人間同士でどちらかが死ぬまで戦わせる。ポケモンや人間たちの断末魔を肴に酒を飲む、上流階級のクズどもの遊びだ。

 如月流を納めていたおかげでそこそこ生き残って来た俺だが、最後は無念の死を迎えることになる。今でこそサーナイトだが、当時ラルトスであった彼女と出会ったのはその頃の話だ。

 

 そして、なんの因果かアルセウスにより今回二度目の転生を果たしたわけなのだが、やけに体が若々しい。生前は三十代後半だったのに、今は二十歳くらいまで若返っている。

 この場合は転生じゃなくて転移か? この年に至るまでの記憶はないし。

 持ち物はアルセウスが渡してくたリュックのみ。

 ていうか、なんで仕事着のスーツ姿なんだ……。

 

『ご主人様、他の子たちは?』

 

「えーと、ちょっと待ってな……お、あったあった」

 

 リュックの中を確認する。見た目は持ち運びが楽な小型リュックなのだが、アルセウスが手を加えたのか積載量が滅茶苦茶広い。登山用リュックの最大積載量が100Lって聞いたことあるけど、それ以上あるんじゃないか?

 チャックを開けるとすぐにモンスターボールが目に入った。苦楽を共にした仲間たちだ。

 ボールにはそれぞれ名前入りのシールが貼ってあり、誰がどのボールに入っているのか一目で分かる。とりあえずボールを十個取り出して専用のベルトに装着。

 

「んーと、後は“回復の薬”と“元気の塊”、“モーモーミルク”に“何でも治し”……」

 

 一通り中身を確認してみたが、明らかに俺の手持ちにはないアイテムも入っていた。恐らくこれもアルセウスが用意してくれたのだろう。木の実系とか全種類入ってるし、なんなら折り畳み自転車やキャンプ道具まであるんだけど、すげぇな。

 これらが小型リュック並みの大きさに収まるんだから、アルセウスパネェ。まあ重量はそのままだから滅茶苦茶重いんだけどな!

 

『これでどうですか?』

 

「おっ、サンキュー」

 

 サイコキネシスでアシストしてくれたおかげで随分と楽になった。リュックを背負いなおした俺は、改めて腰に付けたボールからポケモンたちを呼び出す。

 

「久しぶりだなお前ら──って、うぉおおおおっ!?」

 

 ボールから解放した瞬間、ポケモンたち──マスカーニャ、ブラッキー、ルカリオ、アブソル、ゾロアーク、デカヌチャン、ミロカロス、ボーマンダ、ミミッキュ、ニダンギル──が一斉に詰め寄ってきた!

 各々の鳴き声が被さり不協和音となっているが、俺の存在を確かめるように抱き締めてきたり、頭を擦りつけてくるその姿から随分心配をかけたのだと分かる。

 

「……悪かったな、お前たち」

 

 一匹一匹心を込めながら頭を撫でて、詫びる。ちゃっかりサーナイトも頭を差し出しているが、流れに沿って撫でてやった。

 一頻り抱き締めたり、頭をグリグリしてきたり、頬擦りしたり、顔をペロペロしたりしてようやく満足したのか、最後に元気よく一鳴きすると自らモンスターボールの中へと戻っていく。

 やはり賢い奴らだ……俺もそろそろ現実を直視しなければならないからな。

 ちなみにニダンギルだけは定位置である腰にくっ付いている。

 

「さて、改めてだ……どこだよ此処!」

 

 そう、アルセウスの手によって蘇生させられ転移したのはいいのだが、見渡す限り人っ子一人どころか人工物すらない荒野だった。

 

『あちらに山が見えますけど……』

 

「見たことのないタイプの山だな。俺もイッシュ地方やカロス地方には行ったことあるけど、全然見覚えがないタイプだ」

 

 遠目に山々が見えるのだが、見慣れた丘陵ではない。どちらかというと、前世の中国にありそうな険しい山だ。

 そびえ立つ岩山があちらこちらに隆起しており、地平の果てまで赤茶けた荒野が広がっている。

 吹きすさぶ風で砂埃が舞う。目元を手で多いながら再び周囲を見回し、ふと気づいた点があった。

 

「……ポケモンたちはどこだ?」

 

『そういえば見ませんね……』

 

 人気のない地域なのは分かる。

 道も整備されていないのだから余程の辺境なのだろう。

 だが、それにしては野良ポケモンの一匹もいないのはおかしい。人里離れたところにこそ生息しているものなのだが。

 

『──! ご主人様、人が倒れてます!』

 

「マジか!」

 

 サーナイトの声に慌てて振り向く。彼女が指さす方向には確かに小さな人影が倒れていた。

 

「おい大丈夫か!」

 

 倒れているのは小学生くらいの女の子だった。紫髪をデフォルメされた髑髏の髪留めで無造作にまとめており、何故か縞々のビキニに異様に丈が短いスカート。右腕の肩から先を覆っているぶかぶかな袖。オフホワイトのマフラーという格好をしている。

 そして、傍らに倒れている巨大な戦斧。少女の身の丈はある。

 状況が読めない。えっ、なんでこの娘こんなところで倒れてるの? もしかして転移した際に巻き込まれた?

 

「……とりあえずサナ、“いやしのはどう”を頼む」

 

『分かりました』

 

 サーナイトが翳した手から緑色の波紋が広がり、少女の体を癒す。

 もし外傷を負っていたとしても、これで回復するはずだ。骨折などの重症は治せないが。

 

「……んぅ……むにゃむにゃ……」

 

「よかった、一先ず大事なさそうだな」

 

 サーナイトにも感謝の言葉を延べ、とりあえず少女をどうしようか考える。が、考えるまでもなかった。

 

「……こんなところに置いていけないよな」

 

 果てまで広がる青空には雲一つなく、周囲には民家らしきものもない。

 野生ポケモンの姿も見えないが、恐らくどこかに隠れているだけだろう。少女も手持ちのポケモンがいるだろうが、気絶しているとなると何時襲われるか分かったものではない。

 

「……とりあえず、移動するか」

 

 いつまでも此処にいても仕方ないし。

 ボーマンダに頼んで少女ごと近くの町へ送ってもらおうと思ったその時だった。

 

『──! ご主人様、誰か来ます!』

 

「お、マジか!」

 

 サーナイトの声に振り返ると地平線の果から人影が現れた。

 どうやら今俺たちが立っている場所は窪地らしい。

 現れたのは奇妙な服装をした三人組の男だった。

 

「……誰だぁ?」

 

『さあ……旅の方でしょうか?』

 

 黄色いバンダナに同色のカンフーパンツ。ランニングシャツという格好。リュックやバッグなどは持っておらず、手には何故かフォルシオン……いや、青龍刀かアレは。

 モンスターボールはポケットの中だろうか。青龍刀は野生ポケモンや悪の組織対策の護身具だと思うが、武器を携帯するのは珍しい。一般的に手持ちポケモンが護身具の代わりだし。

 それにしても三人とも同じ服装な上、色も同じとか。どんだけ黄色が好きなんんだよ。

 俺たちの姿に気づいた彼らは何故か驚愕の表情を浮かべた。

 

「な、なんだアイツ……人間、か……?」

 

「バッカお前、あんな人間がいるかよ! バケモンだ!」

 

「ひぃっ! ば、化け物……!」

 

 何故か彼らはサーナイトを見て怯えているようだった。

 ていうか、化け物はないだろ化け物は。

 

『化け物……やはり私は……』

 

「いやいやいやいや、化け物なんかじゃねぇよ。こんなに綺麗な化け物が居てたまるかっての」

 

 落ち込むサーナイトの背中を擦って励ますと、イエロー野郎どもがまたいらんことを言い出す。

 

「ひぃぃぃぃっ! しゃ、喋ったあああ!」

 

「やっぱりバケモンだ!」

 

「助けてくれええええっ、お母ちゃああああんっ!」

 

「テメェら、ちと黙ろうや。な?」

 

 うちの子を苛めた落とし前はつけさせてもらうぜ。

 歩法の一つである縮地法で逃げ出そうとする三人の前に素早く回り込み、意図を察して抜剣したニダンギルのうちの一本を振るう。

 そして静かに剣を納刀。鍔鳴りの音が響くと同時に、一斉にズボンが落ち、質素なパンツがお目見えした。

 

『ひいいいいっ!』

 

「うちのサナは可愛い、だろ?」

 

 なあ? と微笑むと、顔色を真っ青にした野郎どもはブンブンっと音がする勢いで首を振った。

 

「それにしても化け物呼ばわりはねぇだろうに。育てるのは確かに難しいが、サーナイトくらい珍しくねぇだろ?」

 

 レベル三十まで育る必要があるが、今時珍しいポケモンではない。まあ色違いならその限りではないが、うちの子はノーマルだし。

 しかし彼らは困惑した表情で。

 

「さ、紗ぁ内藤、ですか……?」

 

「い、いやぁ、あっしは見たことも聞いたことも……」

 

「お、オラもだ。妖怪なんて初めて見るべ……」

 

 恐る恐るといった様子でサーナイトの顔色を伺う野郎ども。

 ここまで怖がられるとは想っていなかったのだろう、少し気落ちした様子のサーナイトは俺の後ろで静かに佇んでいた。

 

「おいおい妖怪って……ポケモンだよポケモン。お前さんたちも手持ちがいるだろう?」

 

「ぽ、ぽけ……?」

 

「おいおい、まさか……」

 

 ここでようやく双方の食い違いに気づく。

 とある可能性に思い至った俺は、顔が引き攣ってくのを感じながら訪ねた。

 

「……ちと訪ねるが、ここってパルデア地方だよな?」

 

「ぱる……? えっと、ここは苑州の陳留ですが……」

 

「えんしゅうのちんりゅう? どこだそりゃ」

 

 えんしゅうのちんりゅうだなんて聞いたことない地名だ。

 やはり、これは──。

 

(異世界転移か……)

 

 そういえば転移する前にアルセウスが「ここから先は私の管轄外ですので」って言ってたが、あれは違う世界だからってことか。

 となると、この世界にはポケモンが存在しない可能性が高い……。

 

「あの……?」

 

「ちょっと待て……ん?」

 

 考え込む俺に困惑した声を掛けてくる男だが、不意に倒れていた少女と目が合った。

 

「…………おはよ?」

 

「おはよう。どこか痛むところはないか?」

 

「んー、大丈夫……。……あ、落ちてきた人」

 

「落ちてきた?」

 

 寝転がった少女は体を起こすことなく、そのまま指で空を指す。

 

「お空に流れ星が落ちてきたから、見に行ったらね……シャンの頭に落ちてきたの」

 

「マジか」

 

 やはり転移に巻き込まれたようだが、空から落ちてきたって……アルセウスゥゥゥゥ!

 俺は地上にやってきてから意識が戻ったから分からなかったが、普通に考えて墜落死するだろ! これだから邪神って言われるんだぞオイ!

 

「あー、シャンちゃんだっけ? すまん、巻き込んじまったみたいだ」

 

「……っ!」

 

 念のため癒しの波動を使っておいて良かったわ。絶対怪我してただろ。

 ホッと安堵していると、何故か顔を強張らせたシャンちゃんは、モソモソと体を動かした。

 体のあちこちをペタペタ触り、小さく息を吐く。

 

「どうした?」

 

「ううん、へーき……うん、大丈夫みたい。……まあ、そういうこともあるよね……」

 

 サーナイトが治してくれたから怪我はないはずだ。あったとしてもまた治してもらおう。

 ていうか中々起きないなこの子。なんだかマイナスイオンを放ってそうだし、マイペースな子だ。

 

『あの、ご主人様?』

 

「……おー。その人、誰?」

 

「シャンちゃんはちょっと待っててな。どうしたサナ」

 

 それまで黙って成り行きを見守っていたサーナイトが小さく声を上げた。

 彼女は明後日の方を指さし、恐る恐る言う。

 

『さっきの人たち、行ってしまいましたが……』

 

「……あー、そういえば居たな」

 

 完全に忘れてたぜ。

 見ると野郎どもはかなり遠くまで逃げおおせたようだ。特に追い詰めるほど用がある訳ではないし、このまま見送ることにする。

 それはともかく、野郎どもはサーナイトを見て化け物呼ばわりしていたが、シャンちゃんはリアクションが薄いな。

 まあマイペースなこの娘らしいけど。

 

「サナ、一旦ボールに入っていてもらえるか? 外にいると面倒なことになりそうだ」

 

『……? 分かりました』

 

 不思議そうな顔で首を傾げるサナに手でゴメンと謝り、モンスターボールの中へ戻ってもらう。ニダンギルは一見するとただの西洋剣にしか見えないから大丈夫だろう。

 赤いレーザーに導かれてボールの中へ消えていったサーナイト。その非現実的な光景を身にしてシャンちゃんの目が輝く。

 

「おー……お兄ちゃん、今のなに?」

 

「あー、話すと長くなるから今度な。っていうか、お兄ちゃん?」

 

「だめ?」

 

「いや、ダメじゃないが」

 

 残念そうな顔で言われたら断ることなんて出来ない。

 バッグの中や腰につけたボールたちが揺れるが気にしない。

 

「ならお兄ちゃんも、シャンでいい」

 

「お、おう」

 

 そんなに嬉しそうに言われると、なんだかこっちまで照れくさくなる。

 それにしても妹か……俺、前々世含めて一人っ子だったから、何気に嬉しいかも。

 

「それでお兄ちゃん、どこに行くの?」

 

 足元に転がっていた戦斧を軽々と片手で拾い、担ぎ上げるシャン。

 推定三十キロはありそうなのに、それを片手で持ち上げるとか。その細腕のどこにそんな力があるんだ……。

 

「お兄ちゃん?」

 

「あ、あぁ。行き先か……行き先なぁ……」

 

 正直、この世界にやって来たばかりだから行き先もなにもあったものじゃない。

 まずは情報が必要だ。

 近くに街がないか聞こうとした、その時だった。

 

「大丈夫ですかー?」

 

「こんなところに居ましたか、探しましたよ香風」

 

 不意に間延びした女の子の声が聞こえてきた。

 振り返ると、ウェーブが掛かった金髪ロングの女の子と、眼鏡を掛けた少女、そして槍を手にした白服の女性が歩み寄ってくる。

 どうやらシャンの知り合いのようだ。

 

「そこの御仁、中々の腕前があると見ました。どうです、私と一つ手合わせを」

 

「星ちゃんいきなりですねー。風としては、隣にいた奇妙な女の人が気になるのですよー」

 

「私も気になりますね。人ではない何かが一瞬で消えたのも」

 

「未知なるものに興味を示すのは軍師たる所以か。そういう点では風も稟も立派な軍師ですな」

 

 好戦的な笑みを浮かべる白服の女性、名前は星といったか。槍もかなり使い込まれているし、何気ない足さばきも武人のそれだ。それだけでもかなりの使い手と見て取れる。

 一方で眠たげな目をしているが鋭い光を放つ金髪の女の子。名前は風ちゃんと言うそうで、名は体を表すというが、掴みどころのない感じは風そのものだ。

 そして興味津々といった様子で風ちゃんの発言に同意する眼鏡の子が、稟ね。

 

「すまんが、手合わせをしている暇はあまりない。風ちゃんと稟も、すまんがまた今度にしてくれ」

 

「…………ひゃっ!?」

 

「……っ!」

 

「貴様ッ!」

 

「あー……」

 

 その瞬間、思わぬリアクションを見せる各々。

 風ちゃんと稟は何故かビックリした顔をし、星に至っては鋭い目で槍を向けてくるほど。

 唯一シャンだけが「あー、やっちゃった……」と言いたげな雰囲気を醸し出してボーっとしている。

 

「あのね、お兄ちゃん──」

 

「いきなり人の真名を呼ぶとは、どういう了見だ……っ!」

 

「は?」

 

 怒気をこれでもかと漲らせながら矛先を俺へと向ける星。その後ろに隠れた風が袖で顔を隠しながら睨みつけてくる。稟に至っては眼鏡からビームを飛ばしてくるほどの形相だ。

 

「て、訂正してくださいっ」

 

「訂正しなさい!」

 

「訂正? えっ?」

 

 星たちの敵意にニダンギルが抜剣しようとするが、鞘を軽く叩くことで抑えてもらう。

 じりじりと間合いを詰めてくる星にどうするべきか困っていた時、小さく裾を引っ張られた。

 

「お兄ちゃん、訂正したほうがいいよ」

 

「お、おぉ。よくわからんが、訂正する」

 

「…………結構」

 

 何を訂正するのか分からんが、とりあえず怒りの矛先は下げてくれたらしい。

 星の後ろで風たちも大きく肩を下ろす。

 俺もニダンギルがブチギレなくてよかったと肩を撫で下ろす。

 

「はふぅ……。いきなり真名で呼ばれちゃうなんて、ビックリしましたよー」

 

「真名? 真なる名って書くのか?」

 

「……もしや、真名をご存知でない?」

 

 俺の言葉に眼鏡のつるををクイっと持ち上げた稟が、鋭い目で訪ねてきた。

 まったく知らないと言うと、彼女たちは何故か一様に驚いた顔をする。

 その一方で、シャンだけは「やっぱり」と言いたげなのは何故だ。

 

「……真名というのは、親から与えられた神聖な名前です。その名を口にして良いのは、真に心を許した者のみ」

 

「知っていたとしても口にしてはいけないのが真名ですー」

 

「許可なく口にしたら首を刎ねられても文句は言えん。それほど神聖な名前なのだ」

 

「初見殺しもいいところじゃねぇか……」

 

 危うく星の真名まで口にするところだったぜ。

 そんなに大切なものなら人前で口にするなよ、と言いたいところだが、恐らくこれは一般常識的な風習なのだろう。前世で例えるなら真名を知らない=ポケモンを知らないレベルだと思う。

 暗黙の了解として社会的常識になっているのなら、文句を言ったところでどうしようもない。

 小さくため息を吐いた俺は、とりあえず三人から名前を聞き出すのだった。




 取りあえず、ストックが切れるまで投稿します。
 ポケモンも恋姫も好きな同士は評価して♡


【サーナイト ♀】
 名前:サナ
 サーナイトの名前から拝借。決して鳴き声ではない。

<生態 ピクシブ百科事典参照>
 胸部には胸から背中を貫通する赤色の特徴的な器官が存在する。この器官は横から見るとハートマークを縦に半分にしたような形になっており、ラルトス、キルリアにも同様の器官が体の一部にある。メガシンカ後の説明だが、この器官は「サーナイトの心を実体化したもの」とされている。
 見るからに女性的な姿をしているが、♂♀比率は1:1なので♂のサーナイトも存在する(かつてスマブラでも突っ込まれたことがある)。
 第4世代のエルレイド登場以降「サーナイト=♀」というイメージが定着しているが、それでも♂のサーナイトを愛好する人がいるのは確か。
 心の通い合ったトレーナのためなら空間を捻じ曲げてでも己が命を捧ぐという忠義の士として有名。図鑑説明ではそのような忠誠心の強さが語られるが、意外にも野生における生態はまったく書かれていない。

 ラルトス時代には「明るい感情を察知した際に人間に近寄ってくる」とあり、キルリア時代で「明るい感情からサイコパワーのエネルギーを得ている」とある。これら図鑑説明と進化前の生態から、サーナイトは「明るい感情をたくさん浴びて信頼を築き上げたパートナーの元で進化し、今までの恩返しとして信頼できるパートナーを守るポケモン」と解釈できるだろう。
「ひ弱だった進化前から強力なポケモンに進化する」ことから、「守られる側から守る側へ」という立ち位置の変化が見て取れる。
 良く言えば人間社会に適応した進化をしたといえる。逆に言うと人間への依存度が極めて高い。
 エルレイド含め、進化系統全てで野生での生態がよく分かっていないのも珍しい。もちろん野生種も存在するが、その生態がよく分かっていない以上何かしらのパートナーの存在なくしては長くは生きられないのかもしれない。野生個体は雪原や雪山など、比較的寒いところの出現が多くなりつつあるが、こおりタイプは持っていない。
 いずれにしても「他者への依存度が高い」「誰かを守るために生きる」ポケモンといえる。
 なお、これほどまでになつき進化が似合うポケモンもそうはいないにもかかわらず、進化方法は至って普通のレベルアップだったりする。
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