真・恋姫†無双~神獣と黒き御遣い~   作:ポチ&タマ

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 野生のミミッキュが 仲間になった!
 ミミッキュは 嬉しそうに 体を揺すっている!


第2話「曹操って女だっけ?」

「趙雲に程昱に戯志才ねぇ」

 

 趙雲と聞いてここが三国志の世界という当たりはつけたが、正直三国志に関しては全然知らないんだよな。

 劉備、関羽、張飛の三人が義兄弟であることと、劉備陣営に諸葛孔明、趙雲、馬超がいること。後は魏の曹操と呉の孫権しか知らん。それと最終局面の赤壁の戦いか。

 それ以外は全くもって知らないし、そもそも三国志に興味すらなかった。

 だから三人の名前を聞いた時、趙雲と聞いて「マジか!」と思ったが、程昱と戯志才に関しては「誰それ」が正直な感想だ。すまん。

 そんな三人は自分に仕えるに相応しい主を探す旅の最中のようで。つい先ほど、路銀を稼ぐためと再び旅立ってしまった。

 シャンこと香風こと徐晃も、一緒に旅をしていたのだが、何故か俺についてくる羽目に。理由を聞いても「お兄ちゃんがお兄ちゃんだから」としか言わず、そもそも何故真名を預けたのか聞いても「お兄ちゃんだから」としか答えず。大体このやり取りで香風がどういう子なのか分かったと思う。

 

「お兄ちゃん、さっきの教えて」

 

「あー、ポケモンのことか?」

 

「そう、それ」

 

 趙雲たちと分かれた後、適当な街へ向かおうという話になって早々にこんなことを訪ねてきた。

 まあ、移動まで時間はあるし、そろそろ説明するか。

 そう思ってサーナイトが入ったモンスターボールを取り出したところ。

 

「ん……」

 

「お?」

 

 砂煙を巻き上げながら騎馬の集団がこちらに向かってきているのが目に入った。

 出鼻を挫かれて少し不機嫌になる香風。そんな彼女を他所に、一団が目の前で止まる。

 

「華琳様、コイツらですか!」

 

 周囲を取り囲む騎馬の群れから、男勝りな女が声を張り上げた。長い黒髪をオールバックにしており、手には大剣が握られている。

 そんな彼女の声に答えるように、一糸乱れぬ動きで道を開ける騎馬の群れ。

 そこをゆっくりと歩くのは二人の女の子だ。

 

「……どうやら違うようね。報告によれば、連中は黄色い布を被った三人組の男だそうよ」 

 

「どうしますか? 連中の一味の可能性もありますし、捕らえますか?」

 

 ツインテールの金髪を縦巻きにした女の子の言葉に、後ろに控える長身の目隠れ女性が訪ねる。

 頭一つ分小さいツインテールの少女は俺たちの顔をジッと見つめると小さく首を振った。

 

「逃げる素振りがないし、連中とは関係なさそうね。それに二人とも、落ち着き払っているわ。有象無象の輩なら、この状況で落ち着いてなんていられないでしょう」

 

「我々に怯えているだけでしょう、そうに決まっています!」

 

 ツインテールの子の発言に溌溂と答える黒髪オールバックの子。

 うーん、黒髪の子はどことなく残念臭がするなぁ……。

 

「このお嬢ちゃんたち、どちらさんだい?」

 

「多分、この地の太守様だと思う」

 

「太守?」

 

 相変わらずぬぼーっとした顔の香風に訪ねてみると、意外とちゃんとした答えが帰って来た。頭もぬぼーっとしている訳ではないようだ。

 聞き覚えのない単語の意味を訪ねようとした時だった。怒気と殺気が浴びせられたのは。

 振り返るとコメカミをひくひくとさせたツインテールの子と、殺気を駄々洩れにした黒髪の子がにらみつけている。

 

「誰がお嬢ちゃんですって……?」

 

「貴様アアアアア! 華琳様に向かってなんだその態度はッ!」

 

 激高した黒髪の子は大剣を上段で振り上げると、欠片の躊躇いも見せずに真っすぐ振り下ろして来る。脳天直撃コースだ。

 反射的に体を開き太刀筋から身を退かしながら、鞘から飛び出たニダンギルを掴む。

 前に出た香風が戦斧で受け止めようとする中、寸止めでカウンターを放とうとして──。

 

『ご主人様に何をするんですかっ』

 

 モンスターボールから飛び出たサーナイトのサイコキネシスが炸裂した。

 

「なっ!」

 

「……っ!」

 

「なんと……!」

 

 見えない手で掴まれているかのように、黒髪少女の剣は香風の戦斧に衝突する手前で止まっている。大剣を握る少女の腕に血管が浮かんでいることから、なんとか動かそうとしているのだろうが、サイコキネシスに絡めとられた剣はビクともしない。

 突然顕れたサーナイトの姿に金髪ツインテールの子と長身目隠れの子が驚きの表情を浮かべている。

 サーナイトの肩を軽く叩いてサイコキネシスを解除させると、黒髪少女は大剣を構え直して金髪の子の前に立ち塞がった。同時に目隠れの子が弓に矢を番えて、サーナイトに狙いを定める。

 ざわめいた騎馬隊の人々も武器を手に、威嚇してきた。

 

「──随分なご挨拶じゃねぇか」

 

 サーナイトを守るように前に出た俺は、静かにニダンギルを引き抜く。意識して笑みを浮かべているが、コメカミには青筋が立っていることだろう。

 

「アンタが何者か知らねぇが……無抵抗の人間を即殺すのがそっちの流儀かい?」

 

 テメェら、すでに俺の間合いだぜ?

 妙な動きをしたら即その首を落とす。そのつもりで殺気を放つと、黒髪と目隠れの子はますます警戒した様子を見せる。

 だが、ツインテールの子はこの殺気の中、表情一つ崩さず言い切った。

 

「いいえ、違うわ。非礼を詫びましょう」

 

 そう言うと、俺に頭を下げる。慌てた様子を見せる黒髪の子たち。

 

「頭を上げてください華琳様、こんなものに頭を下げる必要なんてありません!」

 

「黙りなさい春蘭! 確かにこの男の言う通り、これは私の流儀ではないわ。非礼を詫びるのは当然のことよ。……私の部下が失礼したわね。私は性を曹、名を操、字を孟徳。この地の太守を務めさせてもらっているわ。よければ貴方たちの名前を教えてくれないかしら?」

 

 そう言って頭を上げ、俺の目をしっかりと見据えてくる。強い意志の光が宿っており、心の強さが垣間見えた気がした。

 まさかこの子が魏の曹操とは。ていうか、曹操って女だっけ?

 駄目だ、三国志まともに調べたこともないから、その程度の基礎すら分からん。でも劉備たちが男だっていうのは分かるぞ!

 

「へぇ……俺は如月優司。こっちはサナだ」

 

『……』

 

 サーナイトはペコリと頭を下げると、目隠れの子のように俺の後ろで後方警備をし始める。どうやら黒髪の子の行動が彼女の心配性を刺激してしまったらしい。

 下手したら他の子たちも出てくるなこりゃ、と遠い目をしていると、ぬぼーっとしていた香風も丁寧に頭を下げた。

 

「性を徐、名を晃、字を公明と申します。以前は長安で騎都慰を務めておりました、今は暇をいただき野に下っております」

 

「香風、ちゃんとした挨拶も出来たのか……」

 

「えっへん」

 

 ぬぼーっと香風からは想像もつかないほどの丁寧さだ。

 

「如月優司……性が如、名が月、字が優司かしら」

 

「いや、性が如月で名が優司だ。俺のいた所では字や真名の風習がなくてな。好きに呼んでくれ」

 

 如月優司という名は前々世のものだが、この世界の風習に合わせるとそんな感じになる。前世の名前だと【ユージ】だけになってしまうし。

 字と真名がないというのはこの地においては異様なようで、目隠れの子が小さく繭を顰めた。

 

「字と真名がない……?」

 

「……それも気になるところだけど、そっちの子は?」

 

 やはりというか、曹操はサーナイトが気になるようだ。

 確かにこの世界が三国志ならポケモンなんて存在しないはずだし、最初に遭遇した黄色の野郎どもの化け物発言も、許せないが分からないでもない。

 だが、サーナイトのことを説明するとなると必然的にポケモンのことも話さなければいけないし。それはここで話すような内容でもないため今は遠慮願おう。

 

「あー、サナに関しては話と長くなるから、後でいいか? どうせ俺らを連行するんだろ?」

 

「あら、私たちに同行いただけるのかしら?」

 

「こっちも情報が欲しいんでね。等価交換ってやつだ」

 

 そう言うと、曹操は納得したように小さく頷いた。

 

「なるほど。いいわ、私の客人として迎えましょう。秋蘭は半数を率いて周りを捜索。まだ連中の手掛かりがあるかもしれないわ。春蘭は私と一緒に一時帰還するわよ」

 

「はっ!」

 

「御意」

 

 こうして俺たちは、曹操とともに待望の街へと向かうことになったのである。

 

 

 

 1

 

 

 

「──さて、じゃあ改めて俺たちについて説明するか。香風も気になってるみたいだしな」

 

 個室のある酒屋に入った俺たちは席に座ると改めて、自己紹介をする。

 

「さっきも話したが、俺の名は如月裕司。ここではない別世界の生まれだ」

 

「別世界?」

 

「想像しにくいだろうが──」

 

 断りを入れて皆の茶器を借りた俺は、それを座卓の上に乗せていく。

 

「世界ってのは何も一つだけじゃないのさ。こんな感じで似たような世界がこの世にゃある」

 

 ここが今俺たちがいる世界たとしたら、この隣にあるのが俺とサナが生まれたポケモンの世界だ。

 お猪口を指さしながら分かりやすく説明する。

 俺たちが生まれた世界には野生動物のようにポケモンと呼ばれる生物が存在しており、人にはない人知を超えた力を持っていること。

 そんな彼らの力を借りてバトルを繰り広げるポケモントレーナーの存在。

 とある事件に巻き込まれて死んだが、創造神の力によって蘇りこの世界に送り込まれたことなど。

 特に話しても問題なさそうなことは一通り説明する。

 

「……なるほど。私たちが居るような世界が複数存在するのね」

 

「俄には信じられませんが、実際に見聞きしたことのない生き物が目の前にいますからね……」

 

「ふーむ? よく分からんが、あまり見慣れない服装だな」

 

 話を聞き終わった曹操たちの反応は各々で違った。

 曹操は面白そうなものが転がり込んできたとでも言いたげな顔でサーナイトと俺に視線を向け、目隠れの少女──夏侯淵は興味深そうな目を向けてくる。

 夏侯淵の姉である黒髪の女──夏侯惇は、俺のスーツを見て首を傾げた。

 香風は純粋に驚いているようで「これがポケモン」と目を輝かせながらサーナイトの腕を指で突っついていた。

 

「そんで、俺の世界にはポケモンが滅茶苦茶いてな。正式に確認されているだけでも五百種類以上はいる。サナもそのうちの一種族で、正式にはサーナイトっていうんだ」

 

『サナの名前はご主人様に付けていただきました』

 

「喋る……いえ、頭の中に語りかけるような感じね……。ぽけもんというのは皆、彼女のように意思疎通が出来るの?」

 

「大体は出来るがテレパシー……頭の中に語りかけることができるのは限られてるな。サナも含めて普通は動物のような鳴き声でしか話せないから」

 

「サナ、サーナ」

 

「……まさかとは思うが、彼女の名前は鳴き声から取ったのか?」

 

 サナの声を聞いて胡乱な目を向けてくる夏侯淵。

 いや、そういう人もいるが俺の場合は種族名から拝借したぞ。サーナイトに進化するのを知っていたし。

 

「随分と可愛い鳴き声ね」

 

「だろう?」

 

『もう、ご主人様ったら……!』

 

 娘を褒められた父親のようにドヤ顔をすると、照れたサーナイトに肩を叩かれた。そういう初々しい反応も好きだ。

 

「人知を超えた力って、何ができるの?」

 

 興味深そうにサーナイトの服?を手に取りながらの香風。

 サーナイトは困ったような顔で香風と俺の間を目が行ったり来たりしているが、本人は嫌ではなさそうだからそのままにしておく。

 

「その種族によって得意な分野は分かれるが、そうだな……サナ」

 

 サーナイトにお願いしてサイコキネシスを発動してもらう。

 座卓の上に並べられた茶器が一斉に宙に浮くという光景に、曹操たちは今日何度目かになる驚愕の表情を浮かべた。

 

「これは……」

 

「茶器が浮いてる……」

 

「なんと面妖な……」

 

 それまで難しい顔をして聞いていた夏侯惇も驚きの声を上げている。

 それぞれの席に茶器が移動し、音も立てずに静かに置かれると、曹操は小さく呟いた。

 

「……使えるわね」

 

 その言葉を耳聡く聞き逃さなかった俺は、思わず鋭い視線を走らせてしまうが、それもしょうがないかと考えを改める。

 サーナイトの──ポケモンの力を目にすればそれを利用したいと考えるのが普通だ。

 ゴーリキーとかは建設現場で重宝されているし、本人たちの気質的にも合っているから健全で対等な関係にある。

 曹操たちが俺の嫌いなタイプの人間でないことを祈ろう、そう思いながら茶器に淹れたお茶を飲み干した。

 

「しかし、異なる世界からどうやってやって来たのだ? 扉があるわけでもないだろう」

 

「それが俺にも分からないんだよな。気づいたらこの地に立っていたというか。香風の話によると空から落ちてきたらしいが」

 

「うん。流れ星を見てたら空からひゅーって落ちてきた」

 

「……よくそれで無事だったな。それもぽけもん、とやらのおかげか?」

 

「だな。あと香風、改めてありがとうな」

 

 香風が受け止めていなければ今頃俺は、アルセウスの元へUターンしていたことだろう。

 改めて香風に礼を言って頭を撫でる。何故撫でられているのか分からないのか、小さく小首を傾げた香風だが、特に嫌そうな反応は見せていないからナデナデを続行した。

 ていうか髪質いいな。サラサラしていてとても手触りが心地良い。

 

「さっきから気になっていたんだが、その入れ物はなんだ?」

 

 妙にサーナイトの視線が気になる中、不意に夏候惇が声を上げた。指差す先には脇に置いたリュックがある。

 

「これはリュック。俺の世界で一般的に普及されている持ち運び用の入れ物だよ。この中にはさっき言ったモンスターボールや傷薬、ポケモンたち用の飯とかも入ってる」

 

 ちなみにこれがモンスターボールな。そう言ってリュックからモンスターボールを取り出して見せる。

 

「おいで、メーク」

 

「ブイっ」

 

 呼び出したのは古参の一匹であるイーブイ。呼び名はメークリヒカイトから頂戴してメーク。可能性のポケモンだ。

 進化前は弱いと言われているイーブイだが、そんなの関係ねぇ!

 強いからではなく、好きだから一緒にいるんだ!

 まあ、うちのイーブイはレベル九十の域に達しているからかなり強いけどな!

 

「ブーイ!」

 

「おっと」

 

 俊敏な動きで俺の胸に飛び込んでくるイーブイ。抱き留めると、喉を鳴らしながら頬を擦りつけてきた。

 そういや、イーブイとも久しぶりの邂逅なんだよな。今度手持ちの皆を一斉に呼び出して、久しぶりに交流を深めるか。

 

「ほらメーク、皆に挨拶しな」

 

「ブイ!」

 

 元気よく鳴き声を上げたイーブイは俺の胸から飛び出すと、各々の足に擦り寄った。

 猫がマーキングするように顔を擦り付けるその仕草に、曹操たちの顔も緩む。

 どうよ、うちの子可愛いだろ?

 

「あら可愛い」

 

「これもぽけもんなのか?」

 

「ほぅ、見事な毛並みだな」

 

「おー、ふわふわ」

 

 優しい手付きで撫でられてイーブイもご満悦な様子。曹操たちもイーブイの可愛らしさにメロメロだな。

 一周回って俺の元へ戻ってきたイーブイを抱き留めようとすると、横から伸びた腕が友を掻っ攫った。

 見ると何故かサーナイトがイーブイを強奪している。胴体を持ち上げられてぶらーんとしているイーブイも、何故か険しい目で威嚇しているのだが。何を睨み合ってんだお前らは……。

 よく分からん争いをしている彼女たちを見てどこか得心がいったように頷く曹操は、俺に微笑みを向けてきた。

 

「懐かれてるわね」

 

「愛情を持って接してるからな」

 

 それは自信を持って言える。俺たちの間には確かな絆があるのだと。

 絆の形が戦友なのか家族なのか友達なのかはポケモンそれぞれだが。

 

「メークはまたな」

 

 不毛な争いを続けているイーブイをボールの中に戻す。赤い光に導かれてボールの中へと消えて行く光景に、曹操たちは興味あり気な顔を見せるが、ロジックなんて知らんから何も話せねぇぞ。

 

「そのぽけもんたちは今どのくらい居るのかしら?」

 

「あー、ざっと二十匹くらいだな」

 

「二十!?」

 

「それほど小さな入れ物に収まっているのなら、それくらい携帯できても可笑しくはないか」

 

 驚きの声を開ける夏侯惇に、さもありなんと頷く夏侯淵。

 俺の裾を小さく引っ張る香風は可愛らしい質問をしてきた。

 

「さっきの子みたいなのも、まだいるの?」

 

「ああ、いるぞ。ただ紹介するのはもうちょっと後だ」

 

「ん」

 

 ずずっと、お茶を飲んで一休み。

 本場の烏龍茶を飲むのは初めてだが、結構苦味が強いんだな。俺的にはサン○リーの方が好きだ。

 さて、これからどうするかな。ここが三国志の世界だと判ったところでストーリーはさっぱりだから、今後どのように物語が進むか分からんし。

 

(あー、旅するのもいいかもしれねぇなぁ……。丁度自転車とキャンプ道具あるし。観光と洒落込むのも悪くねぇ)

 

 問題は路銀だ。サバイバル生活でもいいが、折角中国にいるんだから本場中華の味を堪能してみたい。

 前世ではバトルが好きな子でバトったり、演武や叔父から教えてもらった簡単な手品とかを披露して稼いでいたからなぁ。

 こっちは武芸者が多いから演武はあまりウケないだろうし、精々が手品か?

 

(ありがたいことに現地人の香風がいることだし、彼女と相談しながらのんびりやるか)

 

 あちっという声が聞こえてきそうな動きでお茶から口を離すサーナイトを見ていると、不意に曹操がこんなことを呟いた。

 

「それにしても、創造神に死者蘇生、挙句の果てには“送ってもらった”なんてね。これでは管路の言葉を否定出来る材料が益々なくなったわね」

 

 主人の妙な発言に夏侯淵たちも反応を見せる。

 

「華琳様、もしやあの噂を?」

 

「あんなの、ただの妄言ですよ華琳様! 御使いを乗せた流星がやってくるなんて」

 

「はぁ……」

 

「姉者……」

 

「ん? どうしたんだ秋蘭? 華琳様まで」

 

「ここにいる。流星に乗ってやって来た御使い」

 

 抑揚のない声で香風が指差してくる。その先は何故か俺に向けられていた。

 なんのことだか分からずサーナイトと顔を見合わせるしかない俺を他所に、夏侯惇が驚愕の表情を浮かべる。

 

「なっ──! コヤツが御使いだと!?」

 

「春蘭あなたね……今まで何を聞いていたの?」

 

「如月の話を聞く限り、そうとしか思えないぞ姉者よ……」

 

「なんの話してんだ?」

 

 御使いがどうのと、今一分からんし。

 話を知っていそうな香風に訊ねると、期待通り教えてくれた。

 

「アルセウスゥ……! 七面倒臭ぇことしやがって……っ」

 

 いや、この場合この世界を管理する神か。いや、その神に話を通したのはアルセウスだから、やっぱり奴が悪い!

 とはいえ、俺たちの存在を大々的に周知してくれたという意味では助かったと言わざるを得ないわけで、非常に複雑な思いだ……。

 

「大体なんだよ、神の遣いって……別に俺たちはアルセウスの遣いでもなんでもねぇし」

 

『神獣ですか……。烈空さんたちでしたら分かりますが、私なんかが神獣を名乗るなんて恐れ多いですよ』

 

 香風から聞いた噂というのは、頭が痛くなるような内容だった。

 管路とかいう占い師が発端の噂話で、その内容は──。

 

【世が乱れ争いの兆しが産まれる時、天の御遣い流星に乗り現る。神の獣を従いし黒き天の御遣い、乱世を鎮めん】

 

 戦乱の世を収める人が流星とともに現れるとの話で、それが俺なのだと。

 黒き、というのは多分仕事着として着用しているブラックスーツから来ているんだろうなぁ。ちなみにネクタイの色はワインレッドだ。

 しかし、ポケモンが神獣扱いとは、ずいぶんと格が上がったもんだ。まあ、ガチモンの神もいるけどさ。

 

「事実がどうであれ、この噂は民草の間で広く知れ渡っているわ。そして、この世界にぽけもんが存在しない以上、貴方たちは否応なく注目を浴びるでしょう」

 

「うん。洛陽でも広まってた。街の人も話してたし」

 

「……なるほど。そりゃ、ありがたい話だ。俺にゃ無縁だがな」

 

 まあ、所詮噂は噂。

 管路だか甘露煮だか知らんが、掌の上で踊る気はねぇよ。

 取りあえず情報を得たため席を立つ。情報料じゃないが、礼として“サイコソーダー”をやるよ。この時代に炭酸飲料はまだねぇだろ?

 そう言い、リュックから取り出した瓶を三本、テーブルの上に置く。

 あ、そういえば。

 

「曹操って普段魏にいるんだろ? いつ帰るんだい?」

 

 ていうか魏ってどこにあるんだ? もしかして、もう魏に入国していたりする?

 そう尋ねると、夏候惇と夏侯淵は「何を言ってるんだコイツは」と言いたげな顔を見せた。その反応からして、やはり既に入国してるっぽいな。

 しかし、肝心の曹操の反応は違った。

 

「──貴方、どうして魏なんて言葉を知ってるの」

 

 ポケモンの世界の話をして時も大きく表情を崩さなかったのに、今は唖然とした顔をしているのだ。

 

「三国志なんだから、魏があるのは当たり前だろ?」

 

「さんごくし? 一体なにを言って──ちょっと、待ちなさい!」

 

「折角来たんだ、しばらくこの世界を堪能させてもらうとするぜ。縁があったらまた会おう」

 

 お茶、ご馳走さん。

 そう言い、何か喚いている曹操から早々に立ち去るのだった。

 ……最後サムいな。




 基本的に一日一話でお送りします。


【イーブイ ♀】
 名前:メーク
 ドイツ語のメークリヒトから拝借。意味は可能性。まんまじゃんと言ってはいけない。

<生態 ピクシブ百科事典参照>
 最大の特徴は「進化ポケモン」の分類が示すように、進化の石や特定の場所、時間によって進化するポケモンが変わる事である。進化によって多くの可能性を秘めた、正に可能性の獣と言っても過言では無い。
 これは周囲の環境の影響を受けやすい極めて不安定な遺伝子を持つためであり、一部の鉱石や天体・精神から発せられる放射線により容易に突然変異し、様々なタイプのポケモンに変わる事で、各地の厳しい環境に適応する事が出来ると言われている。本編ゲーム中で特性の1つに「てきおうりょく」があるのも証左と言えるかもしれない。
 それ故「ポケモンの進化」というメカニズム自体の秘密を解き明かすカギとして、昔から注目している研究者も多い。

 ちなみにイーブイの進化先は以下の通りである。
「みずのいし」を使用してシャワーズ。
「かみなりのいし」を使用してサンダース。
「ほのおのいし」を使用してブースター。
「リーフのいし」を使用でリーフィア。
「こおりのいし」を使用でグレイシア。
 朝・昼・夕方になつき進化でエーフィ。
 夜・深夜になつき進化でブラッキー。
 フェアリータイプのわざを覚えた状態でなつき進化でニンフィア。
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