真・恋姫†無双~神獣と黒き御遣い~   作:ポチ&タマ

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 ポケモンたちは 嬉しそうに 花を受け取った!
 お礼を言われて ミミッキュは 照れている!


第4話「孫堅って誰だ?」

 拉致されていた女子供を無事救助した俺たちだが、その後少し面倒なことになった。いつぞやの時のように騎馬隊がやって来たのだ。

 どうやらこの賊たちを追っていたようで、曹操の時とは違い感謝の言葉を投げかけた隊長と思わしき人物――孫策という褐色肌の女性だ――だが、サーナイトたちの姿を認めるや否や、同行を求められた。

 

「貴方たちが黒き天の御遣いと、その神獣ね。ふぅん……妖にしてはおどろおどろしさがないし、かといって神々しいというわけでもないけど。うーん…………うん、決めた! ねえねえ、行くところってある? ないなら私のところに来ない? 母様も貴方たちに会いたがってたし、今回の報酬も出るわよ」

 

 一応徐州に向かってはいたが、何が何でも行きたいわけではないし、報酬が出るならということで頷いた。

 それに、彼女の目が気に入った。サーナイトやマスカーニャという人型ポケモンならまだしも、ボーマンダにさえ臆することなく、それどころか目を輝かせて「この子たちが神獣? すごく可愛らしいじゃない」と撫でるほどだ。

 興味関心を示していた曹操でさえ警戒心を宿していたのに、驚いたことにこの孫策って人の中にはそれがない。人の心が読めるサーナイトがそう言っていたから間違いないだろう。ここまでポケモンに対して無警戒なのは香風以来だ。

 

 拉致されていた女子供の大半は近隣の村々の被害者だが、賊の本拠地が別にあるらしく、そこを襲撃することに。

 リーダー格の男を脅し、サーナイトのテレパシーで場所を割り出した俺たちは、乗り掛かった舟ということで同行し、本拠地を襲撃。

 孫策や後から合流した副官の女性――黄蓋が率いる兵たちは、見事な連携で賊を討伐していった。

 中でも隊長である孫策と黄蓋の実力はかなりのもので、実戦で磨き上げた武は明らかに達人級。流派は分からないが中国武術の剣技の色が見て取れる。

 

「貴方たちやるじゃない! 天の御遣いがここまでの武芸者だとは思わなかったわ! それに、徐晃もかなりの実力ね!」

 

「姉ちゃんほどの達人にそう言われるとは、嬉しいねぇ!」

 

「ん、孫策様ほどじゃない」

 

 俺も負けじと剣を振るい、賊の腕や首をバシバシと斬り飛ばしたものだ。生身の人を斬る感覚は前世で嫌というほど味わったため、今更人の命を奪うことに躊躇いはない。それに今回は救いようのない悪党どもだからな。

 香風やサーナイトたちの助力もあり、鎮圧するまでの時間は短かったと思う。

 捕えられていた人たちのほとんどは孫策の母が治める呉郡とやらの被害者であるらしく、彼女たちを送ってから孫策の母の元へ向かうことに。

 その際に賊が使っていた馬車を利用したのだが、馬がボーマンダに怯えて逃げ出してしまったため、仕方なく彼が引くことになった。

 不満気なボーマンダだったが、お礼に“モモンの実”と“特性サンドイッチ”をご馳走すると言うと無言で引いてくれた。

 ちなみに、そのままではサイズ的な問題で引けないため、馬車の持ち手の部分を尻尾で巻き付けて引くことに。

 

「見てみて祭! 私、龍に乗ってるわ!」

 

「龍の上というのも悪くないですな」

 

「シャンも乗る」

 

 ボーマンダの上に乗ってはしゃぐ孫策。一緒に乗っている子どもたちとなんら変わらない反応なんだが、本当にこれで二十歳なのか?

 

「にゃにゃにゃにゃにゃ! ふしゃーっ!」

 

「サナサナサナサナ! サナーっ!」

 

 俺も馬車に乗車させてもらっているのだが、俺を挟む形でマスカーニャとサーナイトが仁義なき戦いを繰り広げている。

 少し凝った体を解しながら一息ついていると、サーナイトが甲斐甲斐しく世話を焼き始めたため、マスカーニャが嫉妬心と独占欲を露わに抗議し始めたのだ。

 この二人はライバル意識が高く、事あるごとに争うためもはや日常の一部になっている。

 争うって言っても可愛らしいバトルばかりで本気の戦いではないし、今も猫パンチを繰り広げているだけだ。

 ちなみにこういう時のサーナイトは何故かテレパシーで翻訳してくれないから、何を言っているのかは俺も分からない。

 仕方ないなコイツらは、とでも言うようにニダンギルが小さく震えた。

 

「いつもご主人様を取り合っていらっしゃるのですね。ふふ、神獣様も可愛らしいですね」

 

 何故か俺をご主人様呼びしてくる女性が微笑ましそうな顔でこちらを眺めている。

 メイド服のような恰好をしたその女性――名を孫乾と言い、初見で真名を預けるという中々ぶっ飛んだ人だ。

 真名の価値を肌感覚で実感出来ない俺だが、たぶんポケモンの世界なら、初見の人に長年苦楽をともにしてきた相棒をいきなり預けるような行為なのかもしれない。

 しかも俺に仕えたいとの話で、何を考えているのやら。サーナイトによると俺たちを騙したり利用するといった考えは持っていないようだが。

 まあ香風も早々に真名を預けてきたけど、あの子はなー……。

 

「ご主人様、そろそろ村に着きますわ」

 

 朗らかな微笑みから、その奥に隠しているものを見抜くのは難しい。

 一度は断ったのだが、この様子だと諦めていないみてぇだな。

 猫パンチの応酬から言い合いへと発展するサーナイトたちに割って入りながら、小さくため息を吐くのであった。

 

 

 

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 拉致被害者を全員送り届けた俺たち。

 ボーマンダを始めとしたポケモンの姿に驚き怯えていた村人だが、孫策さんが件の噂である天の御遣いとその神獣であると説明すると態度が一変。全員跪き、感謝の言葉を口にし始めたのだ。

 そこまでしてもらう程のものではないため、早々に頭を上げてもらったが、中には祈りを捧げる人もいて。これからも村を守ってくれ、平和に導いてくれと無理難題な注文をされた。

 そんなのが行く村々で起こるものだから、今の治世はどうなっているのか大変疑問に思うところである。

 香風から聞いた話だと、政府である漢王朝はもはや末期状態。天下を統べる為政者たちは己の蓄財にしか目を向けず、かなり腐敗が進んでいるとのことだ。大統領的存在である帝も実質十常従という部下たちの傀儡らしいし。

 どの世界いつの時代も、人間は同じ罪を犯すものなのだと呆れたよ。

 

「着いたわ。ここが母様が治める地、建業よ。マンダロウちゃんもありがとうね」

 

 孫策が優しく首を撫でると、嬉しそうに喉を鳴らすボーマンダ。

 今俺たちは揚州丹陽郡の建業という街にやって来ていた。

 現代やポケモンの世界と違い、街をまるごと城壁が囲っている。古代中国の街はこのような形で外敵から備えているらしい。

 街の人を混乱させるためボーマンダたちにはボールに戻ってもらう。テレパシーで人の悪意を見抜くことが出来るサーナイトも、一旦ボールの中だ。

 

「すごいわねー。どうやって入ったのそれ?」

 

「ふぅむ。あれほどの大きな龍が、これほど小さな入れ物の中に入るとは……」

 

「入れ物も小さくなったり大きくなったりと、天の国は不思議な技術があるのですね」

 

 ボーマンダほどの巨体が手のひらサイズのモンスターボールの中に入る光景に、驚きの色を隠せない女性陣。

 城に通され割り当てられた部屋に案内された俺たち。もちろん部屋は香風たちとは別々だ。

 武器は流石に所持出来ないということで、使用人の人にニダンギルが持っていかれた。まあそうだよな。これならボールに戻しておけば良かったぜ……。

 いつ城の人が来るか分からないため、サーナイトたちにはもう少しボールの中で我慢してもらう。そろそろ全員出してあげたいものだ。

 バッグの中身を整理して待っていると、不意に扉が開いた。

 

「やっほー優司。休めてる?」

 

「邪魔するぞ」

 

 孫策と黄蓋だった。ノックくらいしてほしいものである。

 彼女たちの後から、眼鏡を掛けた黒髪の女性も入ってくる。この人も孫策たちと同じく褐色肌だ。

 この地の人特有の肌色なんだろうな。

 

「ふむ……この男が?」

 

 眼鏡越しに鋭利な目を向けてくる黒髪女。胡散臭い人を見るような怪訝な視線だ。

 ていうか、この時代になんで近代的な眼鏡があるんだよ。メイド服といい訳わからん。

 

「えぇ、黒き天の御遣いよ」

 

「どこにでもいる普通の男のようだが」

 

「でも見たことのない格好をしてるじゃない、真っ黒だし。それにここに来るまで龍に乗せてもらったのよ?」

 

「龍?」

 

 ボーマンダの背に乗せてもらったことを自慢げに言う孫策。

 傍で話を聞いていた黄蓋がフォローする。

 

「あぁ。こやつの元には神獣がいてな、その内の一匹が龍なのじゃ。儂と策殿も背に乗せてもらったぞ」

 

「……にわかには信じられません」

 

「奇術を使う神獣もいたな」

 

「いたわね! あれ凄かったわ、全然わからないもの」

 

「……それは神獣か?」

 

 そもそも神獣ではないし、マスカーニャも奇術師じゃないけど本人の趣味がマジックだから何も言えねぇ。

 会話が終わるまで大人しくしていると、黒髪の女性が話しかけてきた。

 

「いくつか質問させてもらうがいいか?」

 

「あいよ」

 

 客人用の椅子があるが、腰かけず立ったままの三人。

 俺だけ座っているのもなんだか気まずいため、自然と立ってしまった。

 

「私は周瑜、字は公瑾。孫家にお仕えする軍師だ。お前の名は?」

 

 ふむ、周瑜っていうのか。すまんが、孫策や黄蓋の時と同じく全然ピンと来ない。

 しかし、こんな若い子が軍師を務めているとは。孫策たちといい、メッチャ若者が活躍する時代なんだな。

 

「あー……性は如月、名は優司。字と真名はない」

 

「字と真名がない?」

 

「へー、珍しいわね」

 

「俺の国では性と名前だけだったからな。つーか字や真名の存在はこっちに来て初めて知ったわ」

 

 特に初見殺しの真名呼び。

 他所の国からやって来た人は必ず引っかかるだろこのトラップ。

 

「ふむ……誰かから教えてもらったのか?」

 

「あぁ。とあるお嬢ちゃんにな」

 

「どこの生まれだ?」

 

「日本ってところだ。ここからだと、そうだなぁ……次元の壁を超えた向こう側、って言えばいいのか?」

 

「次元の壁?」

 

「あー……少し難しい話になるが」

 

 そういえば、この世界に降り立ってからの出来事を話すのはこれで二度目か。

 曹操に話した会話内容を思い出しながら、此処とは異なる世界で死んだこと。そして創世神の力によってこの世界に送り込まれた旨を話す。

 流石に異世界の話は信じられない様子だったが、じゃあポケモンは見たことあるのかというと、何とも言えない顔で口を噤んでしまった。

 

「ふぅむ……にわかには信じられんが、徐晃の言っていた話と確かに合致するのう」

 

「それに、ぽけもんもこの世界には居ないわよね。うん、私は信じるわ」

 

 屈託のない笑顔でそう言う孫策だが、何故そこまで愚直に信じることができるんだこの子は……。

 能天気なのか、それとも心の奥底では何か考えがあるのか。サーナイトがいない今ではその奥底を覗くことは出来ない。

 

「私はそのぽけもんとやらを見たことないが……それは今ここにもいるのか?」

 

「あぁ居るよ。誰か紹介しようか?」

 

「頼む」

 

「あっ、マンダロウちゃんは止めてよ! 部屋の中すごいことになっちゃうから」

 

「それくらい分かってるよ。……来な、ナハト」

 

 さすがにこんな狭い部屋の中で巨体ポケモンは出せんわ。

 腰のモンスターボールから呼び出すのは一匹のブイズ。

 モンスターボールから光を伴って現れたその子に周瑜は小さく目を見開き、孫策は笑顔を浮かべ、黄蓋は興味深そうに目を細める。

 

「――っ! これは……」

 

「ほう、このようなぽけもんもいるのか」

 

 紹介するのはイーブイの進化系の一匹、ブラッキー。

 猫のような体型に楕円体の耳や尻尾。闇夜に溶け込めるように全身は真っ黒で両耳と額、尻尾、両足の腿にリング状の黄色い模様がある。

 血のように赤い目はしばしばと瞬いており、小さくあくびをした。

 

「……ブラァ?」 

 

 眠たげな眼で「何か用?」と問いかけてくるブラッキー。

 もしかして、寝てた? だとしたらすまん。

 

「ほら、おいで」

 

「ブラ……」

 

 軽く屈赤子を抱くように腕で揺り篭を作りながら軽く屈むと、大きく跳躍するブラッキー。

 すぽっと見事に腕の中へ納まると秒で眠ってしまった。

 本当に眠かったんだな……。

 

「可愛いわねー」

 

 すやすやと眠るブラッキーの頬を指先でつつく孫策。

 顔を顰めて寝返りを打つブラッキーを見て流石に引いてくれた。

 

「ふむ……これが神獣か。確かにこのような生き物は書物でも見たことがない」

 

「そうでしょ。やっぱりこの子たちは神獣で、優司は黒き天の御遣いなのよ。まあ、詳しい話は母様の前でしてもらうことになるけどね」

 

「そうじゃな」

 

 孫策の言葉に異論はないようで、周瑜も小さく頷いた。

 ブラッキーをボールの中に戻した俺を前に、少しだけ真剣な顔をした孫策が口を開く。

 

「それじゃあ優司。今から母様と会ってもらうけど、準備はいい?」

 

 この会話の流れでいきなり謁見とは思わなかったぜ……。




【ブラッキー ♂】
 名前:ナハト
 ドイツ語で夜を意味する言葉。中二病を擽られる単語で気に入っている。

<生態 ピクシブ百科事典参照>
 月の波動を受けてイーブイの遺伝子が変化し、闇夜の生活に適した体へと進化した姿。
 血のように赤い瞳は、夜間でも獲物の姿をハッキリ捉える暗視能力を持っている。
 狩りの際はその黒い体毛で闇に溶け込み、じっと獲物の隙を窺った後に奇襲をかけ、喉笛目掛けて喰いかかる。
「げっこうポケモン」の分類通り、全身にある輪っか模様は月光を浴びるとほのかに輝く性質があり、その身に秘められた不思議な力を発現させる。この光には近寄る者を恐れさせる効果があるようで、獲物に襲いかかる際や、敵への威嚇時などにも光っている様子が確認できる。
 その他、全身の毛穴から毒素の混じった汗を噴き出す事もでき、緊急時にはそれで目潰しを仕掛けて身を守る。
 その怪しくもシックな情感漂う容姿に惹かれる者も多く、ブイズ特有の可愛さも完備しているため、エーフィとは別ベクトルで高い人気を博している。ポケモン・オブ・ザ・イヤーではブイズ最高の5位を記録している。
 ♂比率が圧倒的に高いにもかかわらず♀が求められがちなブイズにあって、順当に♂で育てたがる人が多いことも特徴と言える。
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