真・恋姫†無双~神獣と黒き御遣い~   作:ポチ&タマ

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 ミミッキュは マスカーニャのマジックに 夢中だ!
 自分もやってみたいと マスカーニャから マジックを教わった!


第5話「職業、種馬」

 通された謁見の間は、全てのポケモンを解放することができるくらいの広さがあった。

 上座には玉座があり、妙齢の女性が足を組んで頬杖をついている。下座には三人の女がいて、入室した俺たちを品定めするように見ていた。

 ていうか、これまで出会った人たちって軒並み女なんだけど、何で? しかも美人だし。昔の日本は男尊女卑の社会だったけど、古代中国は女尊男卑だったとか?

 その割には三国志に登場する有名人は、俺が知る限りだと皆男だったはずだが……曹操は女っぽいけど。

 

「ほほう、貴様が天の御遣いか」

 

 玉座に腰掛けた妙齢の女性――恐らく孫堅が鷹揚に声を掛けてきた。

 なるほど、歴史に名を残した偉人なだけあって風格と威厳を感じさせる。

 少しでも気を緩めれば呑まれてしまうだろう。

 意識して深く呼吸をしながら、孫堅の目を正面から見据えて答える。

 

「そう、呼ばれているようですな」

 

「ほぅ……」

 

 何かに関心したようで、ニヤっと笑みを浮かべた孫堅はくつくつと笑った。

 この人も孫策たちと同様に美しい女性だが、モデルのような美しさというよりも虎やライオンのような、肉食獣の美に近い。

 射抜くような鋭い眼光を向けながら、軽く微笑みを浮かべる孫堅。

 

「見たところただの孺子のようだが」

 

「もう、母様。そんな目で睨んだら優司が怖がっちゃうんじゃないの」

 

「ゆうじ? それがこの者の名か。分かっていることを話せ」

 

「ハッ!」

 

 先ほどの部屋でのやり取りや、賊討伐での出来事を踏まえて黄蓋が端的に説明し、軍師である周瑜も自分の見解を述べていく。

 じっと話を聞いていた孫堅は「なるほどな」と一つ呟くと自己紹介を始めた。

 

「オレは呉郡太守、孫堅文台だ」

 

 やはり孫堅だったか。

 

「如月優司です」

 

「賊を討伐し呉の民を救ってくれたこと、礼を言う。後ほど褒美をやろう」

 

「ありがたい話ですな」

 

 路銀だとどのくらい貰えるんだろうか。そろそろ金銭感覚も身につけないとな。

 

「それでだ、貴様はまことに天の御遣いで間違いないな?」

 

「あー、自分は確かに神の手によってこの地に送られました。ただ何かを果たせなどの使命は言い渡されていません」

 

「ほぅ、神にか」

 

 俺の言葉を聞いて益々笑みを深める孫堅。笑みは笑みでも獰猛なそれだけどな。

 一方で黙って話を聞いている見知らぬ女性たちは、それぞれ異なる表情を浮かべていた。

 胡乱気な目で明らかに信じていない目と、何か楽しそうなものを見つけたような目と、のほほんとした笑顔を浮かべて何を考えているのかわからない目。

 まあ、普通信じないよなこんな与太話、と思いながら遠い目をしていると、次いで孫堅はこんなことを言ってきた。

 

「ならばそれを証明して見せよ。貴様が神から遣われし者だという証明を」

 

「……んじゃあ、御前で失礼しますよっと」

 

 一番手っ取り早いのは、この世界この時代に存在しないものを見せること。

 なんだか自己紹介の代名詞となってきたモンスターボールを取り出した俺は、中に居るポケモンたちを開放する。

 

「俺たちの世界に存在するポケモン。んでコイツらは俺の相棒たちです」

 

 解放したのはサーナイトとアブソル、ミロカロスだ。

 

「サナ」

 

「シャー」

 

「ホァ~」 

 

 サーナイトとアブソルは俺を守る様に一歩前に出る中、ミロカロスは俺とまた触れ合えて嬉しいのか体に巻き付いてきた。

 ミロカロス、ちょっと時と場所を考えてくれ。

 ご満悦なミロカロスに「出し抜かれた!」と言いたげな顔で彼女を引きはがそうとするサーナイト。

 そんな二匹の様子を横目に小さくため息をつくアブソルと、なかなか愉快なことなってしまい。

 それまでピリついていた空気が少しだけ弛緩した気がした。

 

「なんと、これが神獣……妖の類ではないだろうな?」

 

「あら~、可愛い子たちですね~」

 

「へぇ、この子たちが件の神獣? ふふ、御遣い君に懐いてるのね」

 

 一部、妖と疑っているが、初見の女性たちも初めて目にするポケモンの姿に驚いた様子だ。

 念力まで使って引き離そうとするサーナイトに、巻き付ける力を強めて抵抗するミロカロス。

 相対的に、俺の体がヤバイことになってるんすけど……あ、アブソル、止めて……。

 

「シャ……」

 

 仲間の痴態に我慢できなかったのか、それとも戦友である俺の情けなさに呆れたのか。

 小さく息を吐いたアブソルは、頭の角で二匹を小突き、仲裁に入ってくれた。

 

「はっはっ、面白れぇ! やはり天は俺に縋ってるようだな!」

 

 上機嫌な様子で高笑いする孫堅。一体なんのことだ?

 

「よかろう、如月優司。貴様を天の御遣いと認めてやる!」

 

「……ありがとうございます」

 

 認められたところでだから何だと思うが、それを口にすると要らぬ騒ぎが生じるのが分かるため黙っておく。サーナイトが隣で頷いているのが印象的だった。

 

「それで如月よ。貴様、何をしにこの地に参った」

 

「ん? 報奨金を貰うのと、旨い物を食うため」

 

「はっはっ、正直な奴よ! よい、金はたんまりくれてやろう。呉には旨いもんが山ほどあるぞ!」

 

 一頻り笑った孫堅だが、次の瞬間表情をガラッと改める。

 鋭い眼光を放ちながら、どこかこちらを試すような顔で鷹揚に言い放った。

 

「それはそうと。如月が従えている神獣たち、そいつらを孫呉に捧げろ」

 

「……あ?」

 

「ちょっ、母様!?」

 

「神だろうと妖だろうと使えるものは何でも使う。それが覇者の行く道よ」

 

 勝気な笑みを浮かべる孫堅に何やら孫策が詰め寄っているが、俺はそれどころじゃなかった。

 捧げる? こいつらを? 長年、苦楽をともにしてきた大事な友を、仲間を、家族を渡せだと?

 

「……テメェ、なめてんのか?」

 

 目上の人というのも忘れてブチ切れてしまう俺。

 殺意が沸き起こり、無意識のうちに腰のニダンギルに手が伸びるが、チッ……預けたままだった。

 俺たちのやり取りを聞いていたサーナイトたちも臨戦態勢を取ると、孫策たちも一斉に武器を構える。

 緊迫した空気が流れる中ただ一人、孫堅だけは顔色を変えず、ジッと俺たちを眺めていた。

 

「何も手放せってわけじゃない。その力を孫呉のために使えと言っているのだ」

 

「……ポケモンを戦争の道具に使おうって腹積もりかい?」

 

「神獣の力があればオレの野望も一段と飛躍するからな」

 

 そう言ってニヤっと笑みを浮かべる孫堅。俺の嫌いな奴らの姿と一瞬被って見えた。

 硬く拳を握り締めた俺は、ふてぶてしい笑みを浮かべる孫堅を睥睨する。

 

「どいつもこいつも、ポケモンの意思を無視してテメェの都合を押し付けやがって……。テメェのような輩にうちの子を預けるなんて考えただけで虫唾が走るぜ……!」

 

「貴様っ、文台様になんたる態度を――!」

 

「うるせぇっ!!」

 

 ちびっ子が何か喚いていたが、殺意を込めて一喝すると口を噤んだ。

 緊張した顔で武器を構える孫策たちと、上座から無言で見下ろしてくる孫堅に視線を向けた俺はハッキリと告げる。

 

「報奨金はいらねぇ。すぐにここを出る」

 

「それを許すとでも思うか? 貴様らがオレの軍門に下らないなら、このまま野放しにするわけにはいかん。この場で殺すぞ?」

 

 ここにきて初めて剣を取り、立ち上がる孫堅。

 その体から強烈な殺気が溢れ出し、鋭い眼光とともに浴びせられる。

 一瞬、殺気に当てられて体が硬直するが、すぐに己に喝を入れると睨み返した。

 

「それはこっちのセリフだ……」

 

 腰につけたボールからポケモンたちが飛び出してくる。

 仲間であり家族である愛するポケモンたちは、俺を守るように周囲を囲むと孫堅たちを威嚇した。

 総勢二十匹のポケモンたちによる威嚇は孫策たちの度肝を抜いたようで、明らかに怯んだ様子が見て取れる。

 そして孫堅は――。

 

「……ふっ……ふはっ! ふはははははっ! はーっはっはっはっはっ!」

 

 何故か滅茶苦茶爆笑していた。

 殺気を霧散させて剣を収めた孫堅は、上機嫌な様子で言葉を続ける。

 

「面白れぇ! このオレを相手にこうまでハッキリと啖呵を切るとはな! 気に入った!」

 

「……俺ぁ、アンタが嫌いになったがな。で、どうすんだ。殺んのかい?」

 

「殺るわけねえだろ、何も益にならねえ。孺子! さっきの言葉は撤回する。だがその代わり――」

 

 孫堅が続けた予想外な言葉に思わず呆気にとられる俺。ざわつくポケモンたち。

 そしてマスカーニャを始めとした一部が猛抗議をするのであった。

 

 

 

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 その後の話だが、大変遺憾なことに孫堅の下で世話になることとなった。

 理由は三つ。一つはポケモンの力を宛てにしないことを確約したこと。状況によっては頼るかもしれないが、それも強制ではなく決定権はこちらにある。

 二つ目は食い扶持を稼ぐことが出来、勉学を学ばせてもらえること。客将という立場で雇われた俺は、文武官として孫堅の下で働くことになった。孫堅の話だといずれ戦場にも立つ話らしい。まあその辺は想像できていたため思うところはあれど異論はないな。ついでに兵法や政略など色々と叩き込んでくれるとのことだ。

 三つめは、ポケモンたちと一緒に暮らせる家を持たせてくれたこと。離れのような場所があるらしくそこを自由に使っていいと言われた。念のため下見をしてみたが、一軒家ほどの大きさで、ポケモンたちの住まいとしては申し分ない。

 

 俺としてもポケモンたちと一緒に長閑な生活が送ることさえ出来ればそれでいいし、今後動乱の世が訪れるのであれば、身の回りの安全と平和を確保するために尽力することも厭わない。

 先の一軒で孫堅が嫌いになった俺だが、ポケモンたちとの生活を鑑みて奴の下で働くのも吝かではないのだが。

 あちらさんはクソ面倒な条件を提示してきやがった……!

 

「今日より天の御遣いの子胤を我が家、我が臣どもにばら撒け!」

 

 孫呉の血筋に天の御遣いの血を入れるということで、自分の娘や家臣たちを孕ませろとの達しが来た。実質的種馬である。

 自分の娘すら道具扱いするのかと、沸々とした怒りを覚えた俺だが、肝心の孫策たちは何故か納得顔で反論しなかった。

 それどころか――。

 

「優司が何人か孕ませたら、呉に天の血が入ったと喧伝できるものね。庶人の心にも孫呉の人間に対して、畏怖の感情が自然と起こるだろうし」

 

「はっはっはっ! 堅殿も良き案を出す! 如月、おぬしも男冥利に尽きるというものだろう?」

 

「文台様がお決めになったことだ、仕方あるまい」

 

「如月さんとの赤ちゃんですか~。きっと可愛いらしいんでしょうね~」

 

「如月くんならお姉さんも考えちゃおうかな。胆力も実力もあるみたいたし」

 

「文台様の案は効果的ですが、孫権様はきっと納得しないでしょうな」

 

 と、何故か乗り気だった。最後まで抵抗を試みたが、孫堅に「貴様はただ飯を食らう気かっ!」と正論を言われてしまってはぐうの音も出ない。

 いや、ちょっと待て。勢いに呑まれて頷いちまったが、客将として働くんだからタダ飯じゃねぇじゃん……!

 

「改めてよろしくね、孫呉の種馬さん♪ でも、嫌がる女の子を無理矢理するなんてのは駄目よ?」

 

「んなこたぁ分かってる。ていうか種馬は止めろ、いやマジで」

 

 結局、いい笑顔で挨拶してくる孫策に俺が折れる羽目となったのだった。

 なお、マスカーニャを始めとした一部ポケモンたちの猛抗議は今も続いている。




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