真・恋姫†無双~神獣と黒き御遣い~   作:ポチ&タマ

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 失敗してしまった マジックだが ポケモンたちから 大きな拍手!
 ミミッキュは 大いに 照れた!


第7話「ヌーちゃんは“デカハンマー”禁止な」

 戦は終始一方的な展開で、我々の圧勝で終わった。

 城に近づくにつれて矢が降ってくるが、統率の取れた一斉射ではなくバラバラに射るため隙だらけ。普通に目視で避けることができるレベルなので、降り注ぐ矢を避けながら城門に迫る。

 一番槍を務めた総大将は馬鹿力を発揮して、十メートルはある梯子を一人で掛けるというドン引きな所業を行い、瞬く間に城壁に侵入。兵士たちも次々と梯子を掛けて城壁に上がると敵を斬り捨てて行った。元はただの農民とはいえ賊になったからには情け無用。向かってくる賊も降伏する賊も皆纏めて斬首するその様子に、そんな声なき声が聞こえた気がした。

 俺たちはサーナイトの“テレポート”で一瞬で城壁の上に移動。冥琳が言っていた通り黄巾党のほとんどが戦闘経験がない一般人、ないしは野盗崩ればかりで脅威は微塵も感じない。

 わざわざ如月の技を使うまでもなく、剣を振るえば人が倒れる。そんな戦いだった。

 極めつけが、うちのポケモンたちである。

 

「お、おい止めろ! 俺は味方だぞ!」

 

「ち、違うんだ! 体が勝手にっ……う、うわああああっ!」

 

「ぎゃあああああ! 熱いっ、熱いよおおおおおっ!」

 

「ごふっ……!?」

 

“サイコキネシス”や“念力”で敵の体を操って同士討ちを図ったり、“テレポート”で死角に移動しながら至近距離からの“マジカルフレイム”と“シャドーボール”で的確に仕留めていく無慈悲なサーナイト。

 

「来るなっ、来るなあああああ!」

 

「長延! くそっ、また殺られた!」

 

「なんなんだよコイツ! ただの獣じゃないのか!?」

 

“電光石火”と“フェイント”のコンビネーションにより残像すら残さないほどの速度で細かく動きながら、“辻斬り”と“切り裂く”で急所を狙う神速のアブソル。

 

「死ね化け物! ぐふっ」

 

「まさかコイツら噂の神獣じゃーーがはっ」

 

「ま、参った! だから助けてーーぐえっ」

 

 冷静に敵の攻撃を“見切り”、如月流の体術で捌きながら的確に“カウンター”を当てる一撃必倒のルカリオ。

 サーナイトもアブソルも、死と隣り合わせの生活を過ごしてきただけあり、命を奪う行為に微塵も抵抗がない。唯一ルカリオだけが不殺を貫いているが、ある意味それがもっとも残酷かもな。これから先、ずっと障害を負って暮らすことになるのだから。

 普段は優しくて可愛い彼女たちだが、一度敵と認識すると何処までも冷酷になれるところが一般的なポケモンたちと違う点だな。敵に対して、うちの子はホント容赦ない。

 

 雪蓮たちも無双の活躍を見せ、黄巾党の兵士たちを次々と斬り捨てたが、一際目立ったのはやはり孫堅だ。

 アイツ……信じられないことに一頻り暴れまわった後、一人で壁の向こう側に降りて城門を内側から開けたんだよ。大将がすることじゃねぇぞマジで。

 縦横無尽の活躍っぷりに味方の将兵までが呆気に取られてるし、こりゃ雪蓮たちも日頃から苦労させられている訳だ……。

 こうして五千の賊を鏖殺して城を取り戻したのだった。

 

 

 

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 初の合戦、初陣にしてはよく出来た方だと孫堅を始めとした将たちにお褒めの言葉を頂いた。孫堅は総大将自らが突撃してどうすると皆から叱られていたが、馬耳東風って感じだったがな。

 サーナイトたちの働きっぷりも見ていたらしく、さすがは神獣だと褒められて案外満更でもない顔だったのが印象的だった。

 先の戦で呉の守りは堅いと判断したのか、それ以降増援を送ることがなくなった黄巾等。呉郡の外では好き勝手に暴れ回っているようだが、今のところ呉に踏み入る様子は見られないということ。

 近々、大規模討伐の令が下されるだろうから、それまで休んでおけと冥琳から言い渡された俺だが、現在訓練場で粋怜を相手に模擬戦を行っていた。

 愛用の武器と化しているニダンギルは一つのみ。流派的に二刀流より一刀流の方がやり易いのだ。

 

「はっ!」

 

 粋怜の武器は穂先が鈍器となった奇妙な槍?だ。これを槍と言っていいのか分からんけど。

 重心が先端にあるため、かなり重い一撃を放ってくる。まともに受けるとニダンギルでもヤバイだろう。

 

「シッ!」

 

 体を半身に開いて突きを回避した俺はそのまま旋回し、下段の斬り払いで足元を狙う。それを跳躍して回避する粋怜だが、この技はこれで終わりではない。

 さらに体を巻き込み勢いを殺さず一回転。下半身のバネを利用して立ち上がりながら下段から上段に掛けての逆袈裟を見舞う。

 これぞ如月流剣術・鮮花(あざか)

 

「くっ……きゃあ!」

 

 槍を引き戻して柄で受け止めた粋怜。着地した瞬間を狙って押し込むように掌底を放ち、バランスを崩した所で喉元に片手の平突き。

 

「……はぁ、参ったわ。お姉さんの負けね」

 

 喉元に切っ先を突き付けられた粋怜は、苦笑をしながら肩を竦めた。

 まさか俺が勝つとは思っていなかったのだろう。観戦していた将兵たちがどよめきの声を上げる。

 

「ほほぅ、あの粋怜に勝ちよったわ」

 

「だから言ったでしょ、優司は強いって! 優司ー、今度は私と戦いましょっ!」

 

「むっ! 策殿、抜け駆けは感心しませんぞ。ここは儂が稽古を」

 

「貴様ら、オレを抜かして好き勝手言うんじゃねえ! おい優司、オレが相手をしてやる!」

 

 正直、粋怜との戦いは結構ギリギリだったんだが、武人としての血が疼いたのか、どいつもこいつも獰猛な笑顔を浮かべてやがる。

 小さくため息をついて鞘に収めた俺は、まるでメイドのように傍で控える美花とサーナイトに歩み寄ると、スーツのジャケットとネクタイを預けた。

 

「持っていてくれ」

 

「畏まりました、ご主人様」

 

『はい、ご主人様』

 

 何も考えず手前にいた美花に渡したのだが、それがいけなかったのだろう。

 受け取ろうと手を伸ばした状態で固まってしまったサーナイト。表情も笑顔で固定されており、その状態でぎこちなく顔を美花の方に向ける。

 ていうか、笑顔のままって怖いぞ……。

 

『……ご主人様のお召し物は私が預かります。ご主人様の“最愛”のポケモンである私が』

 

 その言葉を聞き、何を思いついたのだろうか。

 一瞬「あっ、そうだ」と言いたげな顔をした美花は微笑みを浮かべると、いつの間にかジャケットの袖を掴んでいたサーナイトに言い放った。

 

「サナ様のような素敵な奥様に慕われて、ご主人様もさぞ幸せでしょうね」

 

『お、奥様……!?』

 

「あら、違うのですか? てっきりそうなのかと。このような雑事を奥様にお頼みするなど恐れ多いですわ」

 

『……残念ですが、私はご主人様の妻ではありません。もちろん、私はいつでもお嫁さんになる準備はしてますけど……』

 

「まあ、それは素敵ですね。お似合いだと思いますよ」

 

『そ、そうですか?』

 

 頬を染めて体をくねらせるサーナイトを余所に、ちゃっかりジャケットを回収している美花。取りあえずジャケットの袖が破られる事態は回避したようだが、メイドの強かさを垣間見た気がしたぜ……。

 未だに誰が俺と勝負するかで揉めている雪蓮たちを眺めていると、裾を引っ張られた。

 振り返ると身の丈を超えるハンマーを担いだデカヌチャンが立っており、側には香風の姿が。

 

「ん? どうしたヌーちゃん」

 

「ヌチャンヌチャン!」

 

『ええっと、香風様が持っている斧とどちらが優れているのか勝負したいようですね』

 

「香風と戦いたいってことか?」

 

「ヌチャン!」

 

 俺の言葉に大きく頷くデカヌチャン。思わず視線を彼女の持つ自慢のハンマーに向けてしまう。

 デカヌチャン――進化前のカヌチャン時代からだが、彼女の持つハンマーは自身で一から手掛けた特別性だ。

 カヌチャンの種族は納得がいくまで改良をし続ける職人気質で、ハンマーに物凄い自信と愛着を持っている。肌身離さず携帯するのはもちろん、トレーナーにさえ触れられるのを嫌がるほどだ。俺も機嫌が良い時にしか触らせてもらえない。

 そんなデカヌチャンだが、個体ごとに性格が違うのと同じで、彼女たちが持つハンマーもそれぞれ個性がある。

 

(ヌーちゃんのハンマーはなぁ……)

 

 彼女とは幼少期からの付き合いで手持ちの中では最古参メンバーの一人。モン〇ンを始めとするゲーム知識や戦術面でのアイデア出しなどをして品質改良を行ってきた。

 その結果、殺意マシマシなハンマーの出来上がりである。

 

(ていうか、これハンマーか?)

 

 ハンマーというより、大剣の先端に金槌を取り付けたような感じなんだが。

 デカヌチャンは打撃だけじゃなく斬撃も取り入れようと考えたらしく、金槌の反対側に刃を取り付けたのだ。デザインもしっかりとしていて、見た目的には切っ先以外の刃を潰し、峰の部分が金槌になっている剣だ。

 俺的にはハンマーというより大剣の部類に入るんだが、デカヌチャン判定ではハンマーらしい。

 まあ独創性でいえば他のデカヌチャンより未来を爆走しているし、これでいて戦闘能力もしっかり向上しているけど。

 問題なのは、果たしてこれを模擬戦とはいえ味方に向けていいか、そこに尽きる。

 しかし、意外にも香風はやる気満々なようで、心なしか普段より目を輝かせているように見えた。

 

「シャンも戦ってみたい」

 

「香風がいいなら構わねぇが、そうだな……ヌーちゃんは“デカハンマー”禁止な」

 

「ヌチャ!?」

 

「いや、それ味方に使う技じゃねえから」

 

“デカハンマー”は脳のリミッターを一時的に解放しデカヌチャンが持っている膂力を最大限に活かした、一撃必殺の技だ。大人が小枝を全力で振るうかのように振るう速度も早く、一撃で地割れを作るほどの力がある。その分、反動が大きいため連続で出せないというデメリットもあるけど。

 そんなものを人間が食らえば即死だし、香風の持っている戦斧でも下手すれば壊れるだろう。敵ならまだしも味方に振るうものではない。

 お互いの実力が分かっていればまた違うんだろうけどな。

 デカヌチャンも一応は納得したようで、しょうがないと言いたげに溜め息を吐いた。

 

「おっ、今度はチビと香風か」

 

「武器は戦斧と……大剣?」

 

「ヌーちゃんと言ったか。あの身なりからは想像も出来ん力じゃな」

 

「私塾に通うくらいの幼さなのに、すごいわねあの子。何処からあんな力が出てるのかしら?」

 

 いつの間にか孫堅、雪蓮、祭、粋怜の武将組は観戦モードに。変わり身早ぇなオイ。

 雷火、冥琳、穏の軍師組はデカヌチャンが持つ武器に注目していた。

 

「あのぽけもんが持っている剣は、見たことのない作りじゃな」

 

「一般的な直剣とは根本から異なりますね。それに先端部の金槌、あの溶接技術だけでもかなりのものだと思われます」

 

「はい。まるで分厚い剣と槌をくっつけたような形をしてますね~。天の世界の神器でしょうか~?」

 

 言われてみれば、デカヌチャンの鍛冶技術ってかなり凄いな……。

 メッチャ太いけど人間と同じく五本指で手先は器用だし、炉を一から作ってしまうほど鍛冶技術も軒並み高い。

 今まで自前のハンマーしか作って来なかったけど、もしかしたら鍛冶師としての腕前も一流なのでは……?

 物作りに興味があるなら雪蓮に頼んで職人を紹介してもらうのもありだな。そんなことを考えながら俺もデカヌチャンたちの戦いを観戦する。

 ルカリオを始め、人型ポケモンたちには如月流の体術などを教えており、中でもデカヌチャンはカヌチャンの頃から鍛錬を重ねてきたこともあって戦闘術はピカ一だ。

 

「ヌチャンッ、ヌチャンッ、ヌッチャン!」

 

「くっ、うっ……お、重いっ」

 

 自慢の膂力でハンマーを振り回すデカヌチャン。これは“ぶん回す”だな。しかも闇雲に振り回すのではなく、スイングで発生する遠心力を上手く利用し次の攻撃に繋げている。

 苦し気に攻撃を受け流す香風だが、中々のディフェンスだ。接触時に斧を逸らすことで上手く受け流している。

 

「今度は、こっちから行く!」

 

 次の一撃を受け流すのではなく躱した香風は、大きく踏み込むと斧を横薙ぎに振るう。

 デカヌチャンの方が背丈が低いため自然と下段への攻撃となるが、デカヌチャンは咄嗟にハンマーの柄の部分――大剣の峰で受け止めた。

 

「ヌチャッ……!」

 

 思っていた以上に香風の力が強いのだろう。地面に二本の線を引きながら後退するデカヌチャン。

 間合いを詰めてくる香風に対して“天使のキッス”を発動した。

 

「ヌチャ~ン♡」

 

 口元に手を当てると『チュッ♡』と投げキスを送ったのだ。ご丁寧にウインク付きである。

 ポケモン――それも異性が相手だと精神的に効果抜群な技だが、人間相手では効果は今ひとつのようだ。

 

「……?」

 

 一瞬首を傾げた香風だが、何事もなかったかのように詰め寄ると斧を振り下ろす。

 慌ててステップして避けたデカヌチャンは、ボンッと湯気が出るくらい顔を真っ赤にすると、無茶苦茶にハンマーをぶん回し始めた。

 いや、どう考えてもお前さんの自滅だろ。

 

「ヌチャーンっ!」

 

 もはや八つ当たりに近い“ぶん回す”は、先ほどと違って理合いもクソもなく、読んで字の如くぶん回すだけで。

 香風ほどの武人が相手だと、それは悪手の一言に尽きる。

 

「――っ!」

 

 ハンマーを受け流す際に外力を加えてデカヌチャンのバランスを崩した香風。

 よろめいたその隙をつき、戦斧の刃を首筋に添えた。

 

「シャンの勝ち」

 

「ヌチャ……ヌチャ…… ヌチャァァァン!」

 

 勝ち誇る香風を前に呆然としていたデカヌチャンは、プルプルと体を震わせると滝のような涙を流して俺の元に駆け寄ってきた。

 ひしっと足に抱きついて、びえええんと泣き声を上げるデカヌチャン。

 

「ヌチャンッ、ヌチャンッ……!」

 

「おー、よしよし。大きくなったと思ったが、お前さんもまだまだ子供だなぁ」

 

 陽気な性格だが、何かある度に泣きついてくるのはカヌチャンの頃からの癖だ。

 デカヌチャンになって図体はデカくなったが、こういう所は全然変わっていない。

 突然泣き出したデカヌチャンにどこか気まずそうに声を掛けてくる香風。

 

「あの、ごめんなさい」

 

「あー、良いって良いって。ヌーちゃんは昔からこんな感じだから。良い勝負だったぞ」

 

「香花もヌーちゃんも、どっちも良い戦いだったわ!」

 

「うむ。ヌーちゃんの体はある種の利点じゃな。体格差がありすぎて返ってやり難くなる」

 

「そしてあの怪力よ。香風もそうだが、見た目からは想像もつかん剛の者よな」

 

「敵に回ると厄介な相手ね」

 

 観戦していた雪蓮、祭、炎蓮、粋怜が一様に頷く。さすが武将たち、小柄な体躯の利点をよく分かってる。

 まあ、同時に間合いが短いというデメリットもついてくるんだが、そこはデカヌチャンの腕の見せ所だ。

 くっ付いて離れないデカヌチャンをなんとか引き剥がそうと奮闘するサーナイトたちを見ながら、そういえばスーツとかの洗濯ってどうすりゃ良いんだろうと思いを馳せるのだった。




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【デカヌチャン ♀】
 名前:ヌーちゃん
 デカ“ヌ”チャン。一文字取った、ただそれだけ。

<生態 ピクシブ百科事典参照>
 カヌチャンの最終進化形。本体は髪の量が大幅に増え、むっちりした肌質も相まって、さながら桃色の原始人である。
 自慢のハンマーはナカヌチャン時代からさらに大きく立派なものになり、重さも100kgを超えた。ハンマーを含めた重さを112.8kgとするなら、ハンマーは本体の10倍前後の重量があるといえる。
 そんな重たいハンマーを軽々振り回すほどのパワーを得ただけでなく、知能も高くなり性格も豪快になった。野生下の生態は非常に物騒で、ブリザポスよろしく欲しいものは力ずくで奪い取って住処に持ち帰るという。
 寝る時はハンマーを倒して、その上で足を組んで眠る。主となったトレーナーにすらハンマーは触られたくないようで、ウォッシュしようとするとやめろと言わんばかりに手を前に出して嫌がる素振りを見せる。

 ガラルでは空の王者であったアーマーガアはパルデアではめっきり姿を見せないのだが、それはデカヌチャンが地上から岩をハンマーで殴り飛ばしてアーマーガアを撃ち落とそうとしてくるため。結果としてパルデアではそらとぶタクシーの仕事ができず、イキリンコに代わってもらう羽目になっている。
「はいよるいちげき」を覚える辺り、デカいハンマーを持った状態でも敵に勘付かれずに仕留める術を持っているらしい。
 他にも「フェイント」や「ねこだまし」、「イカサマ」などを覚えることから技巧派の一面が窺える。
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