真・恋姫†無双~神獣と黒き御遣い~   作:ポチ&タマ

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 ミミッキュの 可愛らしさに ポケモンたちは メロメロだ!
 トレーナーは 元から メロメロだ!


第8話「ミミッキュは可愛い」

 人間がそうであるように、ポケモンにも性格があり個性がある。

 ゲームでは性格はステータスに影響を与える重要な要素であったが、現実世界ではそんなことはなくポケモンの個性の一つに過ぎない。

 サナことサーナイトは“おとなしい”性格だが、同時に心配性で過保護だし。

 フジことマスカーニャは“きまぐれ”な性格だが、独占欲が強くて嫉妬深い。

 白夜ことアブソルは“れいせい”な性格で、プライドが高くて少し意地っ張り。

 このようにポケモンも人間と同じように、個性豊かな生き物なのだ。

 

 何故、このような話を取り上げたかと言うと、それはとある日に起きた出来事だった。

 呉郡に侵入して街を占拠した黄巾党を殲滅した、その三日後。

 雷火から字を学ぶための教科書として絵本をいくつか渡された俺は、意外と楽しく勉強を行っていた。

 古代中国の絵本も日本の昔話のような物語で、俺の知らない話がごまんとある。まだ文法などは頭に刷り込めていないが、何度も繰り返し読んでいくうちになんとなく、共通した漢文が分かるようになってきた。

 その日も、新たな物語が描かれた本を手に取り、文字の勉強をしようとしたのだが――。

 

「やっほー優司。ちゃんと勉強してる~?」

 

 酒壺片手に雪蓮がやって来た。既に飲んでいるのか頬が薄っすらと染まっており、酒気がこちらまで届く。

 昼間っから飲んでいるのかと、やや呆れた視線を向ける中、確かな足取りで近づいてきた雪蓮は俺が広げようとしていた絵本を目にするとケラケラ笑い始めた。

 

「あっ、これ懐かしいー! 私も小さい頃よく読んだわね〜」

 

 異様に狭いパーソナルスペース。雪蓮の胸が二の腕に接触し、その柔らかな感触に思わず意識が集中してしまう。

 コイツを始め、孫呉の女って結構発育いいんだよな。それでいて皆、美人な上妙に露出の高い服着てるし……。

 

(そういや俺、こいつらの種馬を命じられたんだよな……。いや俺自身、無理矢理関係を迫るような真似しねぇけど!)

 

 俺も健全な一人の男。生前含めてこの世界でも童貞で、女の子に興味はあるわけで。

 改めて美女な雪蓮とそういう関係になるかもしれないと思うと、意識せざるを得ないーー。

 

「……おい雪蓮、胸が当たってるんだが?」

 

「んー? あらホント。でも、優司なら別にいいわよ。将来、私の婿になるかもしれないんだしねー」

 

「……っ」

 

 指摘すれば離れてくれると思ったのだが、まさか逆に押し付けてくるとは。

 悪戯っ子が浮かべるような笑みで揶揄う雪蓮。

 

「あらま、優司顔真っ赤じゃない。……ははぁーん、さては優司って童貞ね?」

 

「はぁ……あぁ、そーだよ。お前さんは只でさえ美人なんだから、あまり童貞をからかうな」

 

「え……び、美人?」

 

 正直に答えると、何故か雪蓮はキョトンとした顔をした。

 まさかコイツ、無自覚だったのか?

 

「もしかして自覚なかったか? あぁ、周りの人たちも美女ばかりだから気づかなかったのかもな。お前さん、結構な美人さんだぞ」

 

「えっ、ちょ……」

 

「雪蓮は只でさえ距離感が近いんだから、あまり意味深な行動すんなよ。俺のような童貞は勘違いしやすいんだから」

 

「えっと、その……勘違いって……?」

 

 そこまで指摘してようやく自覚したのか、慌てたように離れる雪蓮。

 なんで俺がこんなことをと思うが、もうここまで来たなら言ってしまえと半ばヤケクソで告げた。

 

「あー、だからお前さんが俺に惚れてるんじゃないかってこと。言わせんなよ恥ずかしい」

 

「〜〜〜〜っ」

 

 顔を真っ赤にした雪蓮は分かりやすく話題を変えてくる。

 明るく陽気で大人なお姉さん的な態度を取っている彼女だが、こう見えて意外と初心なんだな。

 冷静にそう分析する一方で、そのギャップにヤベェと思ってしまう俺もいるのだった。

 

「こ、これってあれよね! 天の世界から持ってきた道具が入ってるのよね!」

 

「お、おう。……リュックな。そのチャックを引っ張って開けるんだ」

 

「へぇ、こうやって開けるんだ。何が入ってーー」

 

 ワクワクした顔でリュックの中を見ようとする雪蓮だが、急に固まってしまった。

 何事かと肩越しに見てみると、いつの間にかリュックの中に入っていたミミッキュが雪蓮を見上げていた。

 

「キュッ」

 

「きゃああああ!」

 

 リュックを開けた途端にホラーチックなポケモンが出てきたら、そりゃ驚くだろう。

 可愛らしい悲鳴を上げた雪蓮は俺の後ろに隠れてしまった。

 リュックから顔を出したミミッキュは俺の方を見ると、嬉しそう鳴き声を上げて近づいてくる。

 

「キュ〜ッ!」

 

「こ、こっちに来たわよ優司!」

 

「そう怯えんな。この子が悲しむ」

 

 足元に擦り寄って来たミミッキュを抱き上げると、怯えている雪蓮に向き合わせる。

 

「この子はミーくん。ミミッキュってポケモンの一種だ。ほらミーくん、挨拶しな」

 

「キュッ」

 

 のそのそと体を動かしたミミッキュは、体の中から一輪の花を取り出すと雪蓮に手渡した。

 マスカーニャ産の挨拶代わりの花。ピカチュウを模した縫いぐるみの中にストックしてあるらしい。

 可愛らしい花を手渡された雪蓮はキョトンとした顔をしている。

 

「これを、私に?」

 

「キュキュッ」

 

「……優しい子なのね。驚いてごめんなさい」

 

 花を受け取った雪蓮は表情を緩めると、ミミッキュの頭を優しく撫でた。

 

「ありがとう、大事にするわね」

 

「ーー! キュ〜ッ!」

 

 余程嬉しかったのだろう。喜びの鳴き声を上げたミミッキュは大きくジャンプすると雪蓮に飛びついた。

 慌てて抱き溜める雪蓮。喉を鳴らす勢いで雪蓮の胸に頬擦りしている。

 男だとやらしい絵面だが、ミミッキュが相手だと微笑ましい気持ちになる。彼らのバックボーンを知っていると尚更だ。

 

「人懐こいのねこの子。でも、これって縫いぐるみよね? なんで縫いぐるみを被ってるの?」

 

「あー、それはな……っと、話してもいいか?」

 

「キュッ」

 

「……オーケー。それじゃあ、雪蓮にも知って貰おうか。ミーくんの可愛らしさを」

 

 本人から許可を得たため、存分にミミッキュについて語ろうじゃないか。

 

「まず、こいつを見てほしい」

 

 もはや不要となったロトム不在のスマホを起動し、一匹のポケモンのデータを映し出す。

 画面に表示されたポケモンは電気ネズミのポケモン、ピカチュウ。その愛狂しさで多くのトレーナーを魅了してきた、ある種の伝説を築き上げた種族だ。

 図鑑に表示されたピカチュウは、スーパーマサラタウン人で有名なサトシ氏のポケモンである。

 

「あら、可愛い子じゃない! 優司のところには居ないの?」

 

「残念ながらな。んで、このポケモンはピカチュウっていうんだが、見ての通り可愛らしいだろ? 一時は社会現象になるくらい人気でなぁ……」

 

 そして、一方のミミッキュはメチャクチャ臆病な種族で、特に己の正体を知られるのを極端に怖がる。常に何らかの被り物の中に隠れており、人前に決して姿を見せないのだ。

 そのため、アローラ地方では正体を見た者は呪われるという噂が流れるほどで、昔からミミッキュたちは怖がられていたのだと思う。

 

「そんなミミッキュだけど、みーんな寂しがりな性格しててよ。やっぱり自分たちも人間と仲良くしたいと思うわけで、そんな時に現れたのがピカチュウよ」

 

 ピカチュウの格好をすればトレーナーと仲良くなれるんじゃないか、そう考えたミミッキュたちはこぞって彼らの縫いぐるみを作り、ピカチュウに化けた訳だ。しかも自分で採寸や修繕も熟してしまえるくらいには手先が器用だし。

 しかし、ミミッキュたちの期待を裏切りトレーナーたちの反応は冷やかーーというか、一層怯えが悪化した。

 ピカチュウを模した手縫いの縫いぐるみが余程怖かったのだろう。ミミッキュは完全に恐怖の対象となってしまったのだ。

 さらにはミミッキュの正体を暴こうと無理矢理ピカチュウの縫いぐるみを剥ごうとし、その姿を目にして顔を真っ青にするトレーナーも続出。

 こうしてミミッキュの汚名が加速するのだった。

 

「雪蓮の方からもミーくんを気にかけてやってくれ。今でこそ、ここまで人懐こくなったが基本的にミーくんは臆病でな、自分の姿に自信を持てないでいる。けど、寂しがり屋だから人との触れ合いに飢えてるんだ」

 

 かといって、無理矢理布を捲るのは禁止な。

 ミミッキュの逸話を聞いた雪蓮は目を潤々させながら、腕の中にいる彼をギュッと抱き締めた。

 

「なんて健気なの! もー、可愛すぎっ」

 

「キューッ!」

 

 抱き締められたミミッキュは嬉しそうに鳴き声を上げた。

 ふっ。これでまた一人、ミミッキュファンが増えたぜ……。




 ストックが切れたので補充期間に入ります。
 半年以内に更新できればと思います。

【ミミッキュ ♂】
 名前:ミーくん
“ミ”ミッキュ。一文字取った、ただそれだけ。

<生態 ピクシブ百科事典参照>
 ピカチュウを模した黄色っぽいボロ布を被った姿をしており、その正体は謎に包まれているという、色々な意味で異質なポケモン。
 かぶっている布は浴びると体調を崩してしまうほど苦手な日光を防ぐ役目があり、布や首が破損した場合は中身の本体が夜なべで繕うらしい。そのため深い森の中など日の射さない暗い場所を好んでいる。
 光属性としての面が強いフェアリータイプとしては異質であり、むしろ闇の面が強いゴーストタイプとしての要素のほうが強いポケモンである。

 この布を被るもう一つの理由として、人間と仲良くなりたいという願いからというものがある。
 自らの不気味な姿や生態から周囲に避けられていたミミッキュは、(リアル)20年前に流行したピカチュウグッズを見て、「ピカチュウに化ければ人間と仲良くなれるのでは」と考え、このような擬態を行うようになったという。
 そのため、ピカチュウブーム以前はどんな姿だったのかは不明。日除けのために何かしらは被った姿だったと思われる。
 一見かわいらしい姿と健気な生態の一方で、アローラ地方には「布の中を見ようとするとミミッキュに呪われてしまい、謎の病に侵されてしまうため絶対に見てはならない」という言い伝えがあるという。
『サン』の図鑑説明にも「その中身を見た学者は恐怖のあまりショック死した」と記載されており(『シールド』では"謎の病気"が原因となっている)、実際アニメ版でもニャースが中身を度々視界に入れてしまってはあの世へ逝きかけている。
『バイオレット』の図鑑説明には「ポケモンだと 認識されたのは 最近のこと。 それまでは 布を 被った おばけと 思われていた。」(原文ママ)だという設定が語られており、ポケモン世界にはゴーストタイプのポケモンとは別に「おばけ」の概念が独立して存在しているようである(初代の「ゆうれい」のようなものか?)。
 もしくはいわゆる未確認生物のような扱いであったのだろうか。

 初心者でも描きやすい可愛く親しみやすい見た目や、健気さとダークさが両立した設定、そして対戦においても大活躍している事などから、新参のポケモンでありながら擬態元にも劣らない爆発的な人気を集めている。
 そして2020年の人気投票企画「ポケモン・オブ・ザ・イヤー」ではなんとピカチュウ(19位)を差し置いて第7世代出身として最高の総合3位にランクインした。
 翌年の投票企画「キミにきめた」でも、19位と順位を落としたものの圏内入りをキープ。第7・8世代も対象になった「ポケモン・オブ・ザ・イヤー」「キミにきめた」両方において、圏内入りを果たした第7・8世代のポケモンは、実はミミッキュだけである。第7世代の象徴といっても過言ではなかろう。
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