「行ってしまわれるのか…。」
心地の良い青風が吹き抜ける晴天の元、俺はアイリッシュ王国を旅立つことにした。
「あぁ、とても世話になった。」
ウィスキー城の正門で寂しそうに見つめるウィスキーに、ケジメをつけるように俺は頷く。
「勿論、ウィスキーには恩があるし、あれから過ごした2日間はとても楽しかった。国を上げての祭りや城での宴会はとても楽しかった。本当に二日も経ったのか疑うくらいに一瞬だった。」
「このまま、この国で、この町で過ごしてくれてもいいんだぞ?」
遠くを見つめ黄昏る俺に、ウィスキーは名残惜しそうにそう口にした。
「―本当に、ここで暮らしたいくらいだ。だが、友よ。 俺は、この能力で夢を見ている者を夢から目覚めさせなければならない…。」
「…そうなのか。 ふっ…どうやらそれが君の、真君の“
「まぁ、そう言うことになるのかな。」
「そう言うことならこの私が止められるわけもないな。 大志を、“夢”を抱きし者は誰であれ止めてはならぬ。私もこの国の王として多くの困難を乗り越えてきたが、それは大きな野望と“夢”があったからだ。」
そう言うとウィスキーは軽く肩を落とし、俺を優しい目で見つめた。
「ウィスキー…。」
「真君、私は決して君を忘れることはない。よき友を持てたことを誇りに思うよ。」
ウィスキーはそう言うと俺の前に片手を差し出した。
「―あぁ、俺もだ。ありがとう、ウィスキー。」
俺は差し出された手をしっかりと握ると、固く握手を交わした。
「行先は決まっているのかい?」
握手を終え、いざ旅立とうとしている俺にウィスキーはそう尋ねた。
「行先は決まってない。ここに辿り着くときもだが、適当に歩いて探すとするよ。ウィスキーからもこんなに食料を貰っちゃったわけだしさ。」
俺はそう言うと食料と寝袋が入ったリュックを背負いなおした。
「まぁ、“ウィスキー”は少し重いが、友から貰った品として大切にするよ。」
「フハハ、あぁ、是非ともそうしてくれ。」
ウィスキーはそう言うと、真っ青に晴れ渡った空を見つめた。
「彼女は、もう寝ている頃かね…。」
どこか遠い目をしたウィスキーにつられて俺も空を見上げる。
「あぁ、きっと良い“夢”を見れているだろうね…。」
きっと俺は、長い悪夢を見ていたんだ。何かに脅かされて、何かに追われて…。
きっと彼女もそうだった。けれど、今は違う。
「ウィスキー、世話になった。行ってくる。」
俺はそう言うと、新たな一歩を踏み出した。