歩き出した俺の足は、次の土地を求め着々と、疲れを知ることなく前へと歩みを進めていた。
「結構歩いたな…。」
のどかな広野をただひたすらに歩いていた俺は、ふと立ち止まり周りを見渡す。
優しいが肌を撫でるだだっ広い平原。ファンタジーの世界にして完璧だ。
「アイリッシュ王国といいウィンブルといい…どうもこう、俺の好きな感じのファンタジー世界ばかりだったな…。そろそろ日本にでも戻りたいところだぜ…。」
俺はそう言って野原に座り込む。いくら疲れ知らずの足だとしても休息は必要だ。
「ふ~…今日中には次の街に辿り着きたい所だな…。」
「―――のだ……!」
俺はウィスキーから貰ったパンに噛り付く。ふと、ウィスキーを思い出す。
「ウィスキー…凄かったな…。あれで人間って…。」
ふっ…とにやついたが、ファンタジー世界だったらあり得るのかもしれないな。
「――ぜ分からんのだ!」
…ん?何かさっきから聞こえるような…。
「―だからっ…~っ、話の通じん奴め!」
誰だ…誰かが大声で話しながらこっちに来るな…。
しっかりとは見えないが、ぼんやりと、ちょいと遠くで大声で話している奴がこっちに向かって歩いてきてるな…。
そいつは段々とこちらに近づいてきて、やがて俺の前へとやって来た。
「―人…。何故ここに…。」
深い隈を浮かべたそいつは俺の前でそう呟くと、ぴたりと歩みを止めた。
綺麗な白衣を身に纏い、チュッパチャップスを舐めているそいつはじっと俺を見つめると、ぶつぶつと独り言を話し始めた。
「世界線α…世界線β…いや、世界線λ…?有り得ない…。有限世界線のバタフライエフェクト…。」
「あ、あの~…すいません…。」
「む、すまない。少し考え事をしていてね。君、どうやってここに来た?」
「どうやって…歩いてきましたが…。」
「そうではない、どうやってこの世界に?」
「どうやって…い、言われてみれば確かに…。 確か東京の家にいたら突然目の前が暗くなって…。」
まぁ、どうせこの世界の住民に東京とか言っても分からんとは思うが…。
「何っ!?東京の何処だ!」
「え!?あ、秋葉原…。」
突然の剣幕に驚いた俺が出身を言うと、その男は爛々と目を輝かせ、不敵な笑みを浮かべて見せた。
「奇遇だな、この私も秋葉出身だ。 ―もしや、お主も“Traveler”か…。いやそうだろう、答えんでも分かる!」
「は、はぁ…。」
な、なに言ってんだこいつ…。
「して、迷子の迷子の“Traveler”よ…!お主ならこの現象にもある程度の見解がありそうだな。聞かせてもらおうか!」
「…え?」
白衣の男はチュッパチャップスを勢いよくかじると、大声で俺に再び問いを投げた。
「だからッ!お主もしてきたのだろう!“タイムトラベル”を!」