「アネモネっ!ここで待ってろ!」
俺はそう言うと外へと駆け出す。流れゆく人の目と街の風が俺に纏わりつく。
場所は分かってる。やるべきことも…!
「アネモネ!」
俺は勢いよく部屋へと駆け込む。
「な、何よ…。」
「凶静燐、俺がTime machine作成を手伝う。アネモネはここに居ろ。」
「ちょ、ちょっと待って…。何急に?」
「いいから!!俺は未来から来たっ、アネモネは俺の言うことに従っていればいいんだ!」
「…そ、か。分かった…。」
少し遠い目をした凶静燐に話しかける。
「早速取り掛かるぞ。」
「の作成が……今完成した。」
「何ともその辺は分からないけど…理論上はこれでTime Travelが…」
PCに表示された数値を見つめるアネモネに、椅子を回転させ振り返った凶静燐は自信に満ちた顔で返答をする。
大丈夫だ…俺達と戸塚の接点はない。アネモネはずっとここに居たし…大丈夫なはずだ。
プルルルル…プルルルル…。
「あら、電話だわ…。ちょっとごめん、電話してくるね。」
「あ、あぁ。」
取り敢えずはこれで【世界線Σ】に行ける…。が、まぁ
「凶静燐。アネモネが電話終わったらTime machineを発動させ」
「―逃げてっ…!!!」
アネモネの声が、遠くの方から響いて、ラボに届いた。と、同時に一発の発砲音。ラボ内にアネモネの悲鳴が、遠くからしっかりと響き轟く。
「くそっ…この世界線もか…!!」
何で…接点はないはずなのに…!
「クソッ!!」
俺は装置を被る。
「放熱20.558…!事象重複領域削減完了…!」
頭痛が俺の脳内を駆け巡る。
ラボの扉が勢いよく開けられる。砂埃舞う階段をゆっくりと戸塚が降りてくる。
入ってきた戸塚は口パクで俺を見て伝える。
「無駄だよ」
「またかよォォッ!!!」
バサッと白衣をなびかせた凶静燐は、世界に向けて思いっきり叫ぶ。
その瞬間、俺の意識は途切れた。
「やはりね。私は貴方もTime Travelerだと踏んでいたの。口が軽いガキは――」
「うるさいッ…!」
俺は再び街へと駆け出す。体に、心に、俺に纏わりつく全てを真っ向から無視して。
それから俺は数えきれない程の世界線を移動し続けた。
材料の仕入れ場所を再び変えた世界線。
戸塚を迎え撃つ世界線。
全てを捨てて逃げだす世界線。
いくつもの世界線を旅し、俺は俺を見失いつつあった。
いくつもの世界線を旅し、世界が俺を殺し続けた。
いずれ俺がいくつもの世界からいなくなった。
いずれ俺がいくつもの俺からいなくなった。
だから、俺は俺を見つけた。
だから、俺は答えを見つけた。