カランカラン…。
「すいませ~ん…。」
中に入ると多くの時計に囲まれ、奥にポツンと木の椅子が置かれた部屋に出た。
「…なんなんだここは…。」
「いらっしゃい。」
戸惑っていた俺のすぐ後ろでぼそっと声が聞こえた。
「!?」
俺は勢いよく後ろを振り返る。
「…い、いない…。」
声が聞こえたはずのそこには誰もいなかった。
「お客さん、特別だね…。この世界の人じゃない。」
「誰だ…どこにいる…!?」
確実に聞こえるはずの声、だが、どこから聞こえているのかが全く不明確…。
何が起きているのか戸惑っている俺に追い打ちをかけるように囲んだ時計の針は勢いよく回りだす。
「漸進的にも遊びや遊び、夢に思いは及ばず。」
声は段々と大きくなり、意味不明な事を語りだす。
「あれは何かと問いただし、声の意味は求めることにも喧しい。」
俺の影が段々と立ち上がり、数を増やして俺を囲い込む。心なしか笑い声にも聞こえる影の声に恐怖を感じつつ、どうすればいいのかと焦っていた。
「努々忘れるべからずの夢に日の丸は燃え、煌煌と晄る人生には赤黒き血の指指。」
「何が…起きているんだ…!」
意味不明な言葉と影に囲まれ、だんだんと意識が朦朧になる。
「囲まれ囲まれ夜行道、辿るは絢爛華麗な夢街道。」
その場に座り込んでしまった俺は、次第に目を閉じる。影の笑い声は段々と大きくなり、時計の針は目にも止まらぬ勢いで回りに回る。瞼が眼前を覆い、視界には暗闇が広がった。薄れゆく意識。喧騒の中、何も考えることの出来なくなった俺は死を悟る。
その時、刹那の静寂。あの声が聞こえた。
「夢を、見ているな?」
「…っ!!」
目を覚ました俺は時計に囲まれた部屋の真ん中で、木の椅子に腰かけていた。
「目を、覚ましましたか。」
「…あなたは…?」
声のした方を見ると一人の老人が立っていた。
「私はここの店主…名は名乗るほどの者では…。」
「俺は…一体ここで何を…。」
「あなたは、暫しの間私に夢を見せられていまして。」
「…どうゆう…。」
「覚えていますでしょうか、先ほどまでの出来事を。」
「あ、あぁ…なんだか意味不明な事が次々と…。」
「あれは私が見せた夢でして…。」
意味不明な事を語る老人に俺はまだ夢を見ているのではと頬をつねる。痛い…。
夢を見せるとか、老人の正体とかいろいろと気になることは多いが…
「俺はなんで急に夢を見せられたんだ…。」
「今回、夢を見せたことにはしっかりとした意味がありまして、樫木さんにはこの世界に蔓延る夢から人々を救っていただきたく…。」
ここまでくると老人が俺の名前を知ってることには全くと言って驚かなくなったが、因果が全くと言って分からん…。
「…ま、まぁ断る意味はないし受け入れておくか…。」
「ありがとうございます。では早速語らしてもらいます、夢を見ている人の特徴や覚まし方について…。」