夢の世界の向こう側   作:original

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夢の収束及び発散

World line change complete [世界線δ]

[世界線δ] 観測時間 13:30:28

 

 「やはりね。私は貴方もTime Travelerだと踏んでいたの。口が軽いガキは――」

 「アネモネ。今日は電話が来ても出るな。電話もかけるな。これはTime Travelをするための必要条件だ。」

 「え、えぇ……。分かったわ。」

 「それと凶静燐、俺に着いてきてくれ。」

 「ここは…?」

 「戸塚工業だ。」

俺と凶静燐はラボから飛び出すと戸塚工業に向かった。

 「おう、俺が戸塚だが…どうした?初めて見る顔だが、何か用か?」

戸塚工業に入った俺達は、早速戸塚を呼ぶと本題を切り出した。

 「突然で申し訳ないですが、俺は貴方が誰だかを知っています。」

俺がそう告げた瞬間、戸塚は驚く素振りを全く見せることなく話を続けた。

 「そうか。」

 「貴方は俺達が完成させたTime machineを奪う為に俺達のラボを襲撃する。」

 「あぁ、その通りさ。」

 「共犯者はアネモネ。そうだな?」

戸塚は俺達の方からスッと目を逸らすと、少し考えて口を開いた。

 「――愚問は、控えておくとしよう。 そうか、君は実現させたんだな。Time Travelerの夢、不純物の混じりが無い、世界線を。」

 「あぁ、傲慢で自分勝手な世界線だがな。」

 「と、なると私は不必要かな。 成功には犠牲が付きもんだ。こうなってしまった以上俺に出来ることはこれしかないか―――」

 

戸塚は机の中から一丁の拳銃を取り出すと、自分のこめかみに押し当てた。

 

 「凶静燐、行くぞ。」

 「――あ、あぁ…。」

 「すまない、君。あの子に伝えてほしいことがある。」

 

幸せに生きてくれ…

 

凶静燐と俺は戸塚工業を後にした。と同時、一発の銃声が街に鳴り響いた。

 「帰ったぞ。」

 「おかえり、随分長かったわね。」

ラボに戻った俺と凶静燐は材料を持ってTime machineの前に座り込むと早速作業に取り掛かった。

 「ね、その材料はどこから仕入れたの?」

 「アネモネ。戸塚って人とさっき会ってな。」

アネモネは少し驚くと、動揺した声色で俺に尋ねる。

 「っ…戸塚おじさん?」

 「説明は省く。その戸塚って人は遠くに行くことになったらしくてな。アネモネに伝えてほしいことがあるって。」

 「――そか、おじさんは何て?」

アネモネは何かを悟ったのか、少し落ち着いた顔と声で俺にそう尋ねた。

 「…幸せに生きてくれ、とのことだ。」

アネモネはその言葉を聞くと、地べたに座り込み悲しさと苦しさを押し殺したような声で静かに泣き出した。

 「凶静燐、このTime machineが完成したら俺は【世界線Σ】へと旅立つ。恐らくその世界線では俺と凶静燐、そしてアネモネの三人は出会わなかったことになるはずだ。」

 「――あぁ、その通りだ。それに準じて、俺たちのこれまでの記憶はその世界線ではなかったことになる。」

 「…そうか。【世界線α】や【世界線β】よりもさらに過去、根本の記憶に戻ることになる、そういうことだな?」

 「あぁ、そういうことだ。」

俺と凶静燐の会話が終わり、ラボを静寂とアネモネのすすり泣く声が包む。

暫くの時間Time machineをいじり続け、今までと変わることなく無事に完成する。

  「よし、取り敢えずこれで完成だな…。」

そう言って立ち上がった凶静燐は、少し背伸びをするとTime machineを見つめ口を開いた。

 「理論上はこれで出来る…。人類が夢にまで見た――」

突然口を瞑んだ凶静燐は、俺の方を見ると照れくさそうにニッと笑って見せた。

 「このセリフ、お前は何回も聞いてきたんだよな。」

 「あぁ、このくだりも二回目だ。」

俺がそう言うと凶静燐はフッと笑って見せた。完成したTime machineの前で立ち尽くすアネモネの目の端は少し赤くなっていた。

 「これがTime machine…世界の夢…。」

 「あぁ…。だが、この先の未来、世界がこれを手にする事はない…。」

不変の未来を…不変の不幸を…不変の絶望を…

 「不変の全てをここで終わらせるッ…!!!」

  「[世界線δ]から[世界線Σ]。観測機—RP310BB、放熱18.107、計測時間16:12:11…事象重複領域削減準備。 これより、[世界線移動法第四次元間転送法]を開始する。」

凶静燐はそう呟くと、PCのEnterを押した。ウィィィン…と静かな音を立て動き出す機械。

 「放熱19.224。」

アネモネが俺を見つめて、少し名残惜しそうに口を開く。

 「これで、こうやって話すのは最後になるんだよね…。」

 「あぁ、そうなるな。」

 「私はここ数時間の記憶しかないけど、全くそんな気がしない…。なんか色んな話をした気もするし、色んな所に行って、色んな事があった気がするの…。」

 「――アネモネ…。」

 「だから最後に伝えたい…。ありがとう。それと…私が言うのもすごいおかしいし、言っていいのか分からないけど……」

 「放熱20.558…事象重複領域削減完了…!」

どの世界線よりも強い頭痛が俺の脳内を駆け巡る。

 「ッ…!」

凶静燐がPCの画面を見つめたまま、力強く、されど寂しそうに呟く。

 「…さぁ、世界よ…。お前たちが欲した力は俺達と共に永遠に封印されることとなるだろう…。だが、世界よ。―――フッフッフ…これだけは伝えておこう…。」

 

  

「お前たちが望んだ夢は、今!【再構築】されるッ…!!」

 

その瞬間、俺の意識は途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

  

ずっと好きだったよ

 

 

 

 

 

 

[世界線δ] to [世界線Σ]

[世界線Σ] 観測時間 16:15:11

 

 

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