幻夢龍討伐から一週間が経ち、始まりの街スペルの活気は完全に戻っていた。レイスとユウキの容態は完全に回復し、一昨日までうなされていたランス部隊や防衛部隊のおっさんたちも今日になって元気にビールを飲み干している。俺の心配も少し返してほしいくらいに…。
「真ぉ!もっと飲もうぜ!なんつっても今日はギルド大団長様のウィスキーさんの奢りなんだからよぉ!」
ダァンッ!!!!
「ア!?ウィスキーだぁ!?」
俺が立ち上がると共に、ギルド(兼酒場)の扉が勢いよく開いた。
「やぁやぁ諸君!楽しんでるかね!!!」
そこには妙に見覚えがある酒瓶を持った男が立っていた。そう、ウィスキーである。
「な、何でウィスキーさんがここに…!?」
「む、君はいつぞやの。何故と言われても、私はここの大団長だからね。」
「は、はぁ…なるほど。」
マジで何者なんだこの人…。酒瓶片手にマルチタスク過ぎるだろ。
「そんなことよりも君。」
全体との乾杯を終え、俺の横に座ったウィスキーはなんだか未来を見透かした目をして俺に問いかけてきた。
「行くべきところがあるんじゃないのかね?」
「行くべきところですか…?」
「あぁ、いつまでもこの国に…この世界に留まっている訳じゃないんだろう?」
「確かに…俺の力を今この瞬間も欲している人もいるはず…。もうこの国には俺の力は…。」
泥酔状態のユウキが割って入る。
「えぇ~!もういなくなっちまうのか真ぉ~…ヒック…。」
ウィスキーは悩み惚けている俺を見るなりいきなり立ち上がった。さっきまで活気づいていた酒場を一瞬の静寂が包む。
「皆の者!真は今日を持ってこの街を出ることになった!」
その一言に酒場が騒めき出す。
「うむ、我々にとってはとても残念な事ではあるが…もう決まってしまったことは仕方ない。だが、我が同士と戦い、この国の安寧に貢献してくれた真のこれからの行く末を我々は祈ろうではないか!」
ウィスキーはそう言うとテーブルに置かれた酒瓶に手を伸ばす。
「これからの真の旅路に光あらんことを!改めて、乾杯!!」
「「「 乾杯! 」」」
酒場に一気に勢いが戻る。
「さぁ、真!準備を整えろ、正門まで送り届けようぞ。」
「ウィスキーさん、何から何まで本当にありがとうございました。」
「なあに、礼には及ばん。一度だけではなく二度までも、感謝する。」
「真ぉ!元気でやれよ!俺はいつでも待ってるからなぁ…ヒック!」
「あ~ぁ…全く飲み過ぎなんだから…。真、心配しないで。ユウキには私から後でしっかりと言っておくから。」
レイスはそう言うと静かなる怒りの矛先をユウキに向けた。
「ま、いなくなるって言っても私はちっとも寂しくなんてないんだけども…元気でやってちょうだいよね。」
アリスはそう言うと、そっぽを向いて顔を赤くした。
「あぁ、みんなありがとう!またここに戻ってきたら、その時はまたよろしくな!」
俺はそう言うと、始まりの街スペルを後にした。