重い瞼が開くと、まず最初に空に散らばり輝く星が俺の目に飛び込んできた。裏路地に倒れこんだ俺はゆっくりと立ち上がり周りを見渡す。先程までいたはずのスーツの男は跡形もなく消えていた。
「俺はアイツを夢から覚ます事が出来たのか…?」
俺はまだ近くにあのスーツの男がいるのではないかと不安になりつつも裏路地を後にした。転生一日目にして中々濃い一日だったが、何故だか夜のウィンブルを歩く俺の胸には、言葉にしがたい達成感があった。俺はそんな余韻に浸りつつも、あの店に向かっていた。何故だかは全くと言って分からない。初めての依頼を報告に行く…そういう訳でも無く、強いて言えばこの世界で唯一夢の事を知っている人に共感を求めに行くような、俺でも出来たと言いに行くような、そんな感じ。
しかし、店があった場所に着くと、あの店は跡形もなく消え、ただの空き地になっていた。正直絶望とまでもいかない喪失感の風が俺の胸に優しい顔をして吹きつける。考えてみれば今日泊まる場所もお金もない。俺は再びウィンブルの街を歩き始める。
どこに行くという訳でも無いが、取り敢えず最初に俺を助けてくれたルインの元にでも行ってみようかな…。
「噓…だろ…。」
門へとたどり着くと、そこには鈍器のようなもので何度も強く殴られたルインの死体があった。正直ルインなのかも分からないほど悲惨な姿ではあったが、死体の近くに転がっていた栄養ドリンクを見て俺は確信してしまった。
「“ウィンドゥ”」
俺はログを開き、アイテム欄からルインから貰った栄養ドリンクを取り出す。俺はルインの傍に栄養ドリンクを置く。せめてもの弔いと言うべきか。ルインを殺したやつに少しでも同情していた俺が馬鹿だった。
あの金属バットに付いていた血はルインのだったのか…。
俺は街を後にした。もう戻ることはないだろう。
勘違いをしていた。今になって知ってしまった。
夜の草原をただひたすらに歩く。ネットに投稿されているファンタジー小説のような敵を倒せるような能力はない。その辺にいるような雑魚モンスでもイチコロだ。それくらい、現実世界のまま転生したら成す術がないということを俺は孤独と共に噛みしめる。
永遠と続いているように感じる草原。目的地と言えばウィンブル以外の街。淡々と、ただひたすらに歩き続ける。そんな俺に見向きもせず、ただ時間は他人のように過ぎ去っていた。
「―――あれは…。」
日が明け、体力の限界が見えてきた頃だった。遠くに建造物が見えた。はっきりとしない目を擦り、最後の力を振り絞ってその建物に向け走る。城だ、大きな塀と、中央に堂々と建てられた大きな城…!街だ…!
ふらつく俺の足。今にでも閉じてしまいそうな瞼。
バタッ………!!
街を目の前にして俺は、勢いよく前へと倒れこんでしまった。