「―っ…。ここは…。」
俺は目を覚ますと見知らぬベットの上で寝ていた。
「青年よ、ようやく目が覚めたか。」
声がした方を見ると、一人のおじさんがこちらを見ていた。おじさんと言うよりはイケオジ…。酒瓶を片手に持ったそのイケオジは、スッと立ち上がるとベットで困惑している俺にそっと手を差し伸べた。
“ウィスキー”と名乗るその男は、酒瓶を傾け、“ウィスキー”を喉へと流し込んだ。見る所50半ばくらいだろうか…。所々交わっている白髪と目元の皴が貫録を感じさせる。
「その、ウィスキーさん。ここはどこなんですか?」
「ここかい?私の城の病室さ。本来は傷ついた国軍兵を休ませる場所なのだがね。」
ん?待てよ…今何て…?
「今…『私の城』って…。」
「あぁ。ここは我が国【アイリッシュ王国】のウィスキー城だ。名前だけで申し遅れたが、この国の国王を務めさせているウィスキーだ。改めてよろしく頼む。」
ウィスキーはそう言うと目尻に皺を波打たせ微笑んだ。
ウィスキーの許可を得て、ウィスキー城を周ることにした俺。中庭のような場所へと出ると、周りを一周するように大きな城壁と城の部屋の数に驚かされた。
「すっげぇ…まさかこんなところに来れるとは思わなかったぜ…。」
しかし、俺の脳内にはさっきから一つの疑問が脳を離れずにいた。
何故俺なんかを?倒れていたからといえ、この国の王と二人きりで城内の病室なんてに…?下手したらテロかもしれないだろうに…。日本ならまずあり得ない…。
「おや、奇遇だね。」
俺が中庭に生えた木の下で思考に耽っていると、後ろから声がした。
「ウィスキーさん。何故俺がここにいると…。こんなに広かったら探すのも大変だろうに…。」
「言っただろう?奇遇だね、と。私もこの場所が好きでね。昼からここで飲むのが最高なんだ。」
そう言うウィスキーの片手には“ウィスキー”が握られていた。
「なるほど…結構自由なんですね。」
「あぁ、最近はこの辺も平和になったからね。」
「へぇ~…あ、そういえば」
何故俺を城の中に? そう言おうとした、その時だった。
突然、快晴だった空が見たことのないほどに紫に染まり、不穏な風が俺とウィスキーを撫でながらは去っていくような、不気味な空気が流れ始めた。戸惑っているのも束の間、アイリッシュ王国全土にとてつもなく巨大な“鯨”の咆哮が響いた。
ウィスキーは喉へと“ウィスキー”を流し込むと、不敵な笑みを浮かべ空を見つめた。
「―――来たか。」
その瞬間、紫に染まりしその空に扉が現れた。