「ふぅ…来れたみたいだな。アイツの夢の中。」
正直、夢の神ってだけで、夢を見ているわけではないだろうから一か八かだった。が、入れてよかった。
「しかし…こんな世界だったとは…。」
俺は周りを見渡す。真ん中には紫色のベッド。多くの人形たちがこちらを見ている。天井にはたくさんのベッドメリー。オルゴールからは幻想即興曲が優しく流れている。
扉はあるが、窓はない。メルヘンチックで優しいような雰囲気だがどこか
「…薄気味悪いな。」
あの殺人サラリーマンに比べたら、狂気に満ちてはないし、意味わからんことを話すやつもいない。だからこそ、この夢を覚まさせる方法が思いつかない。
「取り敢えず…扉開けてみるか。」
―ガチャ…。
キィーと音を立てて扉が開く。扉を開けた先には、同じような光景が広がっていた。
「同じ部屋…か。」
俺は周りを見渡す。真ん中には紫色のベッド。多くの人形たちがこちらを見ている。天井にはたくさんのベッドメリー。オルゴールからは幻想即興曲が優しく流れている。
「特に変わったところは…」
俺は部屋を少し歩く。
ん?何だこの違和感…。
誰かに見られている…。
この部屋には俺以外誰もいないはずなのに。
「っ…!?」
強い視線を感じた俺は後ろを振り向く。枕元に置かれたフランス人形が俺を見つめていた。
俺はさっき確かに扉から移動したはずだ。その時も俺の方を向いていたから、誰かが動かさない限り…自ら…
その時、隣り合った2体のフランス人形が微笑を浮かべる。
「夢のまた夢、神を夢見し彼女は永遠の夢を見る。」
「夢に夢見るが故の悪夢。夢を夢見る夢見心地の新天地。」
クソッ…どの夢でもあるみたいだな、この意味わからん戯言は。
しかし今回ばかりは案内してくれるわけでもないから意味わからんな。
「取り敢えず先にでも進むか…。」
―ガチャ…。
キィーと音を立てて扉が開く。扉を開けた先には、同じような光景が広がっていた。
「同じ部屋…か。」
俺は周りを見渡す。真ん中には紫色のベッド。多くの人形たちがこちらを見ている。天井にはたくさんのベッドメリー。オルゴールからは幻想即興曲が優しく流れている。
「また同じ部屋か…。」
違和感。さっきと違うことと言えばフランス人形がこっちを見ていないこと。しかし、それが違和感の原因ではない。
俺は再び部屋を歩いてみる。耳を澄ませてみる。もしかしたら誰かが話しているかもしれない。話し声は聞こえない、聞こえるのはただゆっくりとした幻想即興曲だけ。
「ん…?待てよ…。」
俺はオルゴールから流れる幻想即興曲に耳を傾ける。
次第に減速していく幻想即興曲。段々と不気味になり、やがてオルゴールの音色は止まる。
「―止まった…。」
無音になった寝室。ベッドメリーがゆっくりと回っている。どうすればいいか迷っていた、その時だった。
オルゴールが再び音を奏でだした。ただ、さっきみたいな音楽ではなく…どこか人の声のような…。
「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ」
加速していくにつれ音も大きくなるオルゴール。女性の断末魔のような声がゴォォォという音と共に流れる。
「熱い熱い熱い熱い熱い…!!!何で私が!何であんなゴミ共にっっ…!!!!」
「何だこれ…オルゴールから何でこんな音が…。」
「絶対に許さない…!絶対に許さな」
――きぃぃぃ…。
それまで恐怖そのもののような音を流していたオルゴールは、突如として甲高い金属音を出して全く音を出さなくなった。
「何だったんだ…。俺は何を聞いたんだ…?」
軽く恐怖を感じていた俺は再び扉のノブに手をかける。
―ガチャ…。
キィーと音を立てて扉が開く。扉を開けた先には、同じような光景が広がっていた。
「同じ部屋…か。」
俺は周りを見渡す。真ん中には紫色のベッド。多くの人形たちがこちらを見ている。天井にはたくさんのベッドメリー。オルゴールからは幻想即興曲が優しく流れている。
「いつまで続くんだ…。」
例に漏れず違和感は感じるが、オルゴールに聞き耳を立てても、人形を見ていても異変は感じられない。
異変を見つけられず、途方に暮れていたその時だった。
「貴方は、誰?」
「うわぁっ!?」
いつの間にかベッドに座っていた少女が俺に話しかけてきた。
「何故ここに居れるの?」
その少女は、真っ直ぐな眼で俺を見つめそう問いかける。
「俺は…」
「ねぇ、少し相談をしたいんだ。」
「―あぁ、何だ…?」
「外ではね、戦争が起きているみたい。毎日、憎み、悲しんでる。」
「そう…なのか。」
「それでね、相談。」
彼女は不敵ににんまりと笑う。
「“人間”は“神”にはなれないのかな?」
彼女はそう言うと、スッと瞬く間に消えていった。
何故か先に進まなければならないような気がした。
―ガチャ…。
キィーと音を立てて扉が開く。扉を開けた先は外だった。
風が強く吹く。目の前には燃え尽きた建築物。その真ん中らへんに、一人の少女。さっき話していた少女だ。
俺は少女の目の前まで歩みを進める。彼女は裸足で、瘦せこけた頬や腕に煤が付いていた。暗く深いクマを浮かべたその少女は、無表情で話し始める。
「…私、ずっと寝れてないの。戦争は、続いてて、私は“神”になんてなれなかったの。」
俺は、開いた口が塞がらなかった。あまりにも悲惨なその姿に思わず少女の手を握る。
「私、絶対に許さない。神になるのなんて夢のまた夢。ねぇ、この戦争。誰と誰が戦ってると思う?」
「…わ、分からない…。」
「人間とね、神様なんだって。」
少女はそう言うと、不敵な笑みではなく、にっこりと無邪気な笑みを浮かべた。
「ねぇ、私を殺して。」
「…は?」
「夢から覚めたいの。それが本音。神になんてなりたくないし、神になんてなりたくなかったの。」
俺は、彼女の細い首筋に手を伸ばす。満面の笑みを浮かべた彼女の瞳から、一粒の涙が流れ落ちた。