魔法少女のお助けヒーローをやめたくて   作:うてなにお兄ちゃんって呼ばれたい

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第2話 

 

 『いってきます』と義妹のうてなは、今日も憂うつそうに朝早く出かけていった。

 

 要領はあまりよくないが宿題はちゃんとやるし、美化委員の仕事だって必ず行くし、まさしく自慢の妹と言える。授業中の落書きや、魔法少女に関する趣味でちょっと夜更かししちゃうなんて、中学生あるあるだ。

 

 授業中だってのに急に出勤させられる正義のヒーローやヒロインよりずっと、普通の中学校生活を送れているだろう。

 

 隣町に行ったとき悪の組織と警察隊員が争っているのを横目に、正義の変身アイテムを拾ったのが運の尽きだった。女の子が魔法少女の姿に憧れるが、別に男子はタキシード姿に憧れているわけじゃない。いくらモテたいからって、王子様キャラをやろうとも思わない。

 

 ただ隣町で悪の組織がいる以上、この町にもいつか来ると予想していたが、やはり料理もヒーロー活動も下準備が重要だ。

 

 こんな風にいつ最悪の事態が起こるか分からない。

 

「変身……」

 

 思わず内心舌打ちをしてしまった。

 

 変身なんて1秒で簡単に終わらせて瞬間移動してみれば、入学式で見覚えのある校舎じゃないか。

 

 つまり今回は、うてなが直接狙われる可能性もある。昨日から義母上にも何か秘密を隠しているみたいだが、厄介なことに巻き込まれてなければいいが。

 

 幸いなのはまだ授業中だから、うてなが教室にいてくれることか。

 

「私は悪を切り裂く一輪のバラだ! 花を怪物にするなど言語道断!」

 

 植物系の怪物のツルを手刀で切断して、状況を確認する。

 

「か、仮面タキシード……うぅ…」

「遅くなってすまない! 全員無事か!」

 

 マゼンタがうっとりした声で反応してくれる。

 

 特にアズールの瞳は光を失っていて、彼女の緑の髪は乱れている。コスチュームにダメージはないようだが、痣が残らないような尻叩きによって、スカートから見えるお尻も真っ赤に染まっていた。

 

「あへぇ……」

「アズール! クールなキミがここまでやられるとは!」

 

 頬も真っ赤で汗まみれ、ヨダレを垂らしている。その身体を紳士的に抱き起こして、比較的無事なサルファの横に寝かせた。女子中学生にしてはかなり発育がいいようだが、別に義妹で見慣れている。

 

 そして。

 

「若い女の子の肌はピチピチしてフレッシュだ!」

 

 強制力なキザな台詞を口にしながら、花の怪物を蹴り倒す。こういう怪物を浄化する技なんてないとはいえ、まあこういうのは叩けば元に戻る。白い手袋に包まれた拳でコア的なやつを殴れば、白とピンクの花に戻った。

 

 うてなが水やりした花をよくも。

 俺は珍しく怒りの感情を自覚した。

 

「花を穢す者は、この仮面タキシードが許さない!」

 

 この怪物を作ったのはあの悪の女幹部たちだろう。認識阻害で顔は見えないが、なんともエロい格好だ。

 

「あわわわ……」

 

 サキュバス的なやつなのだろうが、一般的な妖艶さからはかけ離れている。程よい大きさの胸を隠しきれておらず、腕で隠そうとして『むぎゅっ』てなっている。少女から恥じらいを感じ、小さな翼やツノはチャームポイントまである。

 

「ごめんなさいぃ…… 花は大切にしますからぁ……」

「へぇ、噂通り強いねぇ」

 

 女幹部はなぜか自分のズボンを手で抑えたが。

 

 それにしても、隣に浮遊している黒いぬいぐるみは俺を面白そうに見てくる。あまり悪意的なものは感じず、それでいて策士タイプという感じだな。魔法少女にマスコットは付き物であるように、悪の女幹部にもマスコットがいるようになったか。

 

「貴様、一体何を企んでいる!」

 

「どどどどどうしたら!?

 ちぎっては投げられる!?

 女幹部ヒネリジャーされる!?」

 

「万事休すってやつだね。逃がしてもくれなさそうだ」

 

 マスコットは面白がっているだけだ。

 ごくりと女幹部は息をのんだ。

 

「でも彼は紳士だ。謝ったら許してくれるかもね」

「あ……アハハ……もうどうにでもなれぇ……」

 

 不適な笑みを浮かべながら女幹部は、自分の十字星のステッキ的なやつを重ねた手のひらに乗せて、こちらへ近づいてきた。

 

悪いことした私をこれでお仕置きしてください

 

「……ふむ」

 

 紳士的には断るべきなのだろう。

 まあ、見逃す代償として覚悟があるようだし。

 

「よかろう。見逃す代わりにお仕置きタイムだ」

 

「えっ!? いいんですか!?」

 

 見逃すことを喜んでいるのか、それともお仕置き自体を喜んでいるのか、なぜか嬉しそうだ。悪に加担するよう誘惑する気はなく、むしろ純粋にお仕置きを求めてくるなんて、この新人女幹部は天性の才能を持っているようだ。

 

 このステッキは先ほどまで魔法少女たちに使っていたらしく、振るとなかなかしなりがいい。

 

「唯一の武器を取られちゃった…… んっ」

 

 女幹部は背を向けて、もじもじと身体を揺らす。

 

 その台詞はずるいだろ。

 タキシードのズボンがきつく感じる。

 

「来い。ここは人目が多い」

 

 こんなにワクワクすることは、魔法少女に邪魔されるのが癪だからな。俺には治療的な魔法もないから、魔法少女たちには自分でおうちに帰っていただこう。『あっ……』って引き止める声をガン無視して、女幹部の肩を持って連行する。

 

 やってきたのは体育倉庫で。

 ここならば誰にも見られないだろう。

 

 マスコット的なやつはスマホ片手に付いてきたため、さすがに動画撮影は注意しようとしたが。

 

「えっと、優しくいじめてください」

 

 もう俺の理性が壊れた。

 

「いいだろう。今回のことをちゃんと反省しろ!」

 

「あひぃん!?」

 

 パンッと気持ちいい音が鳴った。

 女幹部の身体はビクンとのけぞった。

 

「魔法少女の尻を叩いて喜んでいたのか!」

 

「ひゃ、ひゃい! しょうでしゅ~!」

 

 パンッ パンッとちょうどいい加減でお尻を叩く。

 女幹部といえど、女性に痛いことはしない。

 

 そうだ。

 これは紳士的なことなのだ。

 

「キミ自身がするのも、私からされるのも、どっちも好きなんだろう!」

 

「うひゃぁ! ごめんなしゃい~!」

 

 この女幹部はこういったシチュエーションを望んでいるわけだ。決して強い痛みに喜ぶわけではなく、そこを勘違いしないのが紳士だ。

 

 彼女は恥ずかしがって口元を手で覆うが、叩く度に甘い声が漏れ出ている。

 

「許そう! 私はピュアーな心を持つ者の味方だ!」

 

「あんっ! しあわせでしゅ~~!」

 

 気づけば10分くらいお尻を叩いてしまっていたようで、一度中断すると彼女は前向きに倒れていく。その細い腰に腕を回して、彼女の身体を支えた。

 

 背中が見えるコスチュームでその美しい肌が見えている。

 

 

 

「ふぅ……」

 

 

 

「はふぅ……」

 

 

 

 さっきまでパタパタしていて、今はしなっている翼を指でなぞってみれば、『んっ……』と女幹部からまた甘い声が漏れ出た。彼女は続きを期待するように、肩にギュッと力を入れたが、ここで関係を終わらせるのはもったいない気がした。

 

「今日はここまでだ」

 

「はへぇ? どうしてですか?」

 

 タキシードでその汗まみれの身体を隠すように包む。

 

 認識阻害であまり顔は見えないが、その頬は真っ赤で、うっとりとした金色の瞳が見えた気がした。

 

「授業が終わってしまうからだ。キミのそんな姿をギャラリーには見せないさ」

 

 俺のアソコも限界だし。

 

「はいぃ…… やっぱり優しいんですね、仮面タキシードさまぁ……」

 

 その姿がどこか義妹に重なりそうで。

 俺は首を振った。

 

「彼女のことは任せてもいいか?」

 

「もちろんだよ。ちゃんと部屋に戻しておくけど、見逃していいのかい?」

 

「えっ! ちょっと! 拡散だけはやめてください! 私も被害を受けるじゃないですか!」

 

 黒いマスコット的なやつは動画撮影したスマホで、いつでも拡散できるような画面を見せる。脅しになるか試しているのだろうが、別にヒーローとしての印象なんてどうでもいい。むしろ面倒だから下がってくれ。

 

「ふむ。私のイメージなど構わないが、彼女の姿を世に広めたくはないな」

 

「うぅ~ 仮面タキシードさまぁ……」

 

「やめておくよ。やっぱり一筋縄ではいかないようだ」

 

 『完全に正義側ってわけでもないみたいだね』って黒いマスコット的なやつは面白がっている。これからもこの女幹部を使って俺を誘惑するのだろうが、悪事に直接加担する気はなく、悪の組織に従う気もない。

 

「ふっ、私のお仕置きで済む程度の悪事に留めておくんだな。また会おう」

 

「はいぃ~ ♡」

 

 目がハートマークになっていた気がしたが、漫画やアニメでもあるまい。

 

 

 

 

 ふぅ、少し自室に籠るか。

 まだ義妹が帰ってくるまで時間がある。

 

 あの女幹部にまた会えるといいな、なんて珍しくヒーロー活動が楽しみになっていた。

 そして認識阻害があった女幹部に、うてなの顔を当てはめてしまいそうになり、慌てて俺は首を振った。

 

 

 

 

 





???「はふぅ…
   なんかちょっと楽しかったし…
   気持ちよかったな…

   鍵はちゃんと閉めたよね。

   んっ 仮面タキシード様… お兄ちゃん…」

 
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