小学生なのに濃い人生を歩んでいると感じるこの頃。
高学年に上がった時に事件は引き続き起きる。
「おい、
「汚ねーな、逃げんなよ」
男子が女子に触れたかと思うと、廊下で騒いでいるそんな騒ぎ。
よくあるイジメ。
しかし、よくあるで済ませていい問題でもありません。
子供の歪みは大人でも引きずる。
かくいう私も、そうした経験はあります。
一番最初に人間関係に疲れて命を絶った背景は、その影響もあるかもしれません。
人に嫌われたくない。
他人に求められる自分でないといけない。
そうした自分を演じようとして結果として、限界を迎えて――
顔を知ってる知ってないに限らず、私は知らずの内に手を伸ばしていた。
「まったく……子供ですね」
「……誰?」
「同じクラスの張ですよ。椎名ちゃんですよね」
「うん、そうだけど……私と関わると、イジメられるよ?」
椎名
こう考えると不幸自慢ではないですが、自分はまだマシだと思える。
それに彼女はこんな境遇でも他人を思いやることが出来る。
今は弱っているとは言え、心が強いと思う。
しかし、それでも――
「私には……仲間がいるので。ただ、それでも待っているだけじゃダメですよ」
「でも、どうしたら――」
「助けてと一言あれば、それでいいんです。人の心なんて読める人はいないんですから」
自身が何かを変えようとしなければ、何も変わらない。
義を見てせざるは勇無きなり、とは言うものの……ここで助けてしまえば次も助けて貰えるなんて思われます。
安心と停滞は違うものですからね。
戦乱の時代では自ら立ち上がる者が多かったので、そういう人の強さを私は知っていますから。
「いつでも手を取る気はありますよ」
という意味ありげな言葉を残して私は適当に男子を追っ払ってから去る。
少しぐらいヘイトをこっちに向ければ負担も少なくなるでしょう。
と、思っていたら――
「リン、最近は椎名を気にかけてるみたいだが」
放課後にうちの軍師――大和からお声が掛かった。
「何ですか? 仲間が巻き込まれるかもなんて、言葉は聞きたくありませんよ」
「…………」
その言葉に大和は黙る。
図星でしょうね、知り合いと仲間の区別をしてる彼は手の届く範囲を理解している。
「カズは私が守ります。それに、仲間を巻き込みたくない理由も分かります。でも、大和……それはある意味で仲間を信じていないことになります」
「どうしてそう言えるんだ? 守るにも一緒にいる訳じゃない。リンの考えだろ」
「みんなは、そんなに弱くないでしょ。それにモモ先輩もいますから、どうにでもなります。イジメている連中に同調してる連中を引き込んだり、同調させなければいいんです。そうすれば自然と、どうにでもなります。一番は親ですね、まともな親であればみっともない真似をしてる子供は叱るのが道理です」
「……そこまでやる必要あるのか? 椎名に」
「いや、どこでも誰でも一緒ですよ。見て見ぬふりが多すぎるんですよ、大人でも。私は覚悟がありますが、他の人はどうか分かりませんから聞いてからでもいいと思います。キャップは、仲間がそうしたいなら迷わず走れる男なので聞かなくても分かりますけどね。あと私も」
さすがに私の独断で動く訳にはいかないので、こうして仲間の頭脳である大和が声を掛けてくるの待っていたのもあるんですけどね。
大和も何度か椎名とあの空き地で出会ってるのは知っています。
一番、あの空き地を鍛錬とかで使ってるのは私ですしね。
声を掛けようとしても気配でも感じてるのか、見つからないようにしてますし無理に追いはしてません。
「大和……軍師と言うのであるならば、果断に決断してください。私はついていきますよ」
軍師という立場を私はよく見てきましたからね。
だからこそ、信頼して実行してくれる忠実な存在がどれだけ重要かを理解している。
まあ、この世界ではお遊びの肩書だとしてもです。
私の言葉にどこか複雑な顔をする彼。
「少し、考えさせてくれ……」
迷いますよね。
子供なのに決断しなきゃいけないなんて。
夕方……大和と椎名があの空き地の奥に行くのを見掛ける。
鍛錬と思っていましたが、いい機会です。
私は気配を殺して近付く。
空き地の奥、道から見えない木の陰に。
「やっほ、元気ですか」
『――!?』
不意打ち気味に声を掛けて、2人して驚きの表情。
「……ご、ごめん。もう……」
「大丈夫ですよ。何もしません」
椎名は逃げようとしてましたが、私はその前に彼女の腕を掴む。
「何してるんだよ、リン」
「たまたま見掛けただけです」
大和に当たり前のように聞かれて、私はそのままの状況を返す。
「もしかしてデートでした?」
「……デーー!?」「ちげーよ!」
椎名は何だか、狼狽して大和は大声で否定。
ん~……
お姉さん、何だかいじらしいです。
って、何を考えてるんですか私は……
ちなみに中身はババアなんて言ったら私の三国的な価値観で叩き斬ります。
「大丈夫ですよ、誰にも何も言いません。仲間ですらね」
「……リンは信用できる。大丈夫だ」
不安そうにする椎名に対して大和がそう説明する。
「なに話してたんですか? ちなみに本のことなら任せて下さい。愛読書は『孟子』です」
「小学生が読む本じゃねー」
「黙ってください、
「理解できない凡人は正気に戻れという。狂ってるのは世界さ」
その私と大和のやり取りに、椎名は少しだけ笑った気がした。
それから読んでいる本の雑談。
こうして話してる時の彼女の表情には安心が見える。
居場所のない中で安らげる場所を見つけた。
そんな表情だった。
だが、事件は起きる。
「あ……あぁ……」
椎名がクラスの代表として飼育していた水槽にいる魚。
それが、水死体となって浮かんでいる。
腐敗した生臭さと、濁った水が教室を渦巻く。
彼女はあの水槽の魚を大事にしていた。
飼っていた猫が亡くなり、その隙間を埋めるようにしてだがあの魚を大事に育てていた。
水槽のヒーター、循環の為のポンプ……汚くなる前に手入れをしてエサも忘れることなくあげていた。
大きくなる魚、順調に増えてもいたし何だかんだ癒しにもなっていた。
「うわ、きたねー」
「やっぱり椎名菌だ。移って死んだんだよ」
「におうからそれ捨ててきなさいよ」
女子も男子も、面白半分にそうに嘲笑っている。
「……手伝いますよ」
もう、これ以上は見てる方も限界です。
ここまで放置したのは、助けてしまうと視野の狭さはきっと改善しなくなってしまうと思っていたからです。
ですがそれも、私の自惚れでしょう。
「……うん」
別に今じゃなくてもいい。
そう思えば、私ももう少し早めに行動すべきでしたね。
力なく頷く椎名を見て、私は後悔する。
戦場で見る機とはまた違う難しさです。
教室から水槽を退避させて、それから校舎裏の何も使われてない掘りやすそうな場所へ。
泣きながらも死体を埋めて墓を作っていく椎名。
思入れがあったのは彼女で、私はそれを少し手伝うだけ。
「ごめんね……ごめんね」
原因はヒーターの故障で、何も悪くない。
こういうことをしそうな人間はいても、罪の立証を出来る材料はない。
それにここの担任は見て見ぬ振りだ。
イジメなんてありません(笑)です。
イジメられてる人間がつけるバッジみたいなのが配られてますが、こんものつけたら余計にイジメられるので根本的な解決にはなっていません。
「あーあ、椎名。お前のせいで魚が死んだんだぞ」
と、ぞろぞろガキ共が分かりやすく来た。
「違う!! 誰かがヒーターを――」
頭が良い椎名は、ヒーターが壊れる訳がないと否定する。
それもそうです……手入れしてたのは彼女なんですから。
「何しに来たんですか? お墓の前でくらい静かにしてください」
「なんだよ、かばうのか? 外人の癖に」
「日本人ですよ、名前が中国っぽいだけで」
「こいつも椎名菌にやられてんだぜ。いずれ死んじゃうんじゃないの?」
……どうしましょうかね。
子供相手に熱くなるのもバカらしいですけど。
古い時代の分かりやすい方法でやりますか。
子供って言うのは、暴力がヒエラルキーみたいなところありますし。
すぐ近くには大和もいる。
「椎名さん、どうして欲しいですか?」
「……え?」
「私はいつでも大丈夫です。ただ、この手をどうして欲しいか……言って下さい」
私の言葉に、大和も覚悟が決まりつつある。
椎名は迷って、一度伸ばしてた手を引いた。
「もう、嫌だよ……助け……て」
だけど、すぐにその手は延ばされて私の手を確かに掴んだ。
「分かりました」
「なんだよ、お前。椎名の味方をするのか?」
「はい、します。悪の怪人に出てくるザコがいい気になるのが嫌なので」
「あ? だったらお前の仲間もイジメてやるからな。お前の仲間たちも椎名菌にやられてるって――いでええええ!」
先制したのは彼らの近くに立ってた大和。
「お前……今何て言った?」
男ですね。
仲間がやられそうになった瞬間に、手を出すとは。
「仲間を巻き込もうとしたのか……オイ、ああ?!」
そのまま腕を捻り上げて1人を地面に押し付け転がす。
「いでででで!」
当然ながら大和が無防備なので1人が襲い掛かろうとする。
しかし、そうはさせないっと。
注意がそっちに向いてる間に私は襲い掛かろうとした1人に飛び蹴り。
「ふっ!」
で、蹴った足の反動でバク転してその勢いでもう1人に両足蹴り。
「うわああ!」
2人転倒したところで、私は軽く構える。
さてと……大和が囲まれなければ何とでもなりますね。
そう思っていれば、男が颯爽と風のように来た。
「様子を見に来てみれば、喧嘩の最中とはな」
翔一――キャップが現れた。
さながらヒーローのように。
「俺、助太刀に参上! 大和にリン、ずるいぞう。俺も混ぜろ」
「残念ですけど、既に2人です」
「実力を隠してヒーローっぽいことを。だが、助太刀こそヒーローの華……お前には負けねえぞ!」
「何を競ってるんですか……言ってる間に3人目ですよ」
私は、掌底で顎をやって腹に肘を一発。
振り抜いてないので大丈夫です。
それでも痛いですけどね。
大和も囲まれないように立ち回り、先頭に来たヤツを殴り倒してる。
私がいるので、数人いた子はすぐに片付いた。
「お前ら、こんなことして……」
「腕か指一本、やってもいいんですよ♪ ほら、事故って怖いですよね」
「ひ、ひいいいいい!?」
とびきりの笑顔で私は脅す。
そして、そのままじっくりと指がミシミシと音が鳴るまで曲げてやる。
「弱い者いじめなんてダサいですから、やめましょうね? 分かりました? 分からない? じゃあ、関節さよならします?」
「分かりました! 分かった! から、やめてえええ!」
そのまま中途半端な脅しをしたヤツは悲鳴と共に走り去る。
まったく、もう少し根性出して欲しいですね。
……出されても困りますし、どんだけ覚悟決まってる子供ですかって話ですけど。
「さて、片付きましたね」
と、私が振り返るとガクブルしてる2人。
「リンって、怒ると怖いのな」
「…………」
感情を口に出すキャップと、今後の付き合い方を考えてる目をしてる大和。
別にそこまで怖がらなくていいでしょうに。
こちとら、本気の10分の1も出してないですよ。
もし、本気出したら間違いなく目をつけられそうですけど。
だって……子供で出す殺気じゃないですし。
何年戦って来たと思ってるんですか。
気を取り直して、椎名の所へ向かう私達。
「椎名さん……涙拭いて」
「……直江君」
それから安心させるように大和は、椎名に抱き着いた。
「おおっ!?」
あまりに唐突な光景にキャップは目を見開く。
私はというと、それはやりすぎな気がするとばかりに危惧する。
「今まで……ごめんね。これからは、大丈夫だ。俺が……俺達がいる」
「……!」
「もう、イジメなんてさせない」
その大和の言葉に、キャップは納得する。
「あー、それ関係か。なんか可哀想だったもんな」
「ファミリーに加えられないかな?」
「俺はいいぜ」
大和の相談にあっさり承諾するキャップ。
ですよね~
さすがはキャップと言うべきか、迷いのない男ですよ。
こうして風間ファミリーに椎名が加わり、高校までの間の7人プラス1人が出来上がった。
小学生の割にはそんな波乱万丈で奇天烈な関係が作られた私の新しい仲間。
しかし、とうとう私にも事件が起きることになりました。
中学生に上がり、金曜集会が出来た。
例の廃墟ビルにも馴染みが出てきた頃です。
私のことを怪しむ人が出てきました。
言うまでもなく、大和です。
子供の頃は背伸びしてる子供程度だったでしょうが――
『うーん……リンって、何か隠してる?』
『何ですか、藪からスティックに』
『ネタで答えなくていいから』
『それは、隠しごとなんてあるでしょ。生理の周期とか』
『そう言うのじゃないから!』
『まあ、冗談はともかく。ありますよ。誰だってあるでしょ?』
『そうだが……』
なんて探りを入れられました。
適当に答えましたけど、前世の記憶なんて答えても困るでしょ。
言われても、そうなんだー程度でしょうし。
別に隠す理由も何もないんですけどね。
言ったところで何かが変わる訳でもないですし、不安があるかどうかと聞かれればありません。
でも、何というか……反応しそうなのは1人いますけどね。
ちょっとMOMOYOは勘弁して欲しいです。
それに私は武将であって武道家ではない、で通してるので。
つまりは武術はやってないと言ってます。
既に立ち振る舞いからバレてますけど。
まあ、私の場合は本当に武道とか武術とか"武の
なので……この世界のその道の人に言ってはなんですがスポーツではなく"殺しの道具"と変わりありません。
だからこそ、あまり戦いたくありません。
加減できる相手ならともかく加減できない相手だと、実力に余程の差が出ない限りは望まない結果を生むわけです。
さて、どうやって私の秘密を打ち明けようか……さらっと言ってもいいんですけどね。
もう、みんな考えられる年ではある訳ですし、私の話す事が理解できない訳ではないと思うので。
そんなことを私は廃墟ビルの上で思う。
ここの空の星はあの世界と比べてあまり見えませんね。
♦ ♦ ♦
などと、鈴空が黄昏ている時に廃ビルのファミリーが集まる集会所では――
「最近、リンの様子がおかしい」
大和が本人の心情とは別に深刻そうに切り込む。
別に本人は隠すつもりが無くて、秘密を打ち明ける機会をみているだけなのだが……ファミリーの中では深刻な悩みがあると捉えられていた。
「アイツが悩むなんて余程のこと……もしや彼氏か?!」
「ガクトじゃあるまいし――いや、そもそもガクトはそんなアンニュイな雰囲気に合わないな」
「どういう意味ですか、モモ先輩!」
と、岳人を適当にイジる百代。
しかし、その言葉に満場一致で同意するファミリー一同。
いつもの彼の扱いだが、嫌な理解のされ方に少し泣ける。
そんな中で一子は少し思い当たる節があるのか答える。
「ん~……リン姉って確かに不思議な感じよね。武道してから分かるようになってきたけどリン姉ってすごく強いし、キレイって言うか……」
「私なんか、初めて会った時からビンビンだぞ。ただ単に強いって言う感じじゃない、洗練されてるってやつだ」
「なんでちょっと、オヤジっぽい言い方なんだか。でも、ただ単に強いと何が違うの?」
武道を学んでいない代表として、百代の言葉に卓也がそう質問する。
その言葉にどう答えようかと百代が少し悩む。
「そうだな~……モロやみんなに分かりやすく言えば、単純な強さって言うのはレベルだ。で、洗練さって言うのは熟練度みたいなものだと思ってくれ。特定のスキルがないと転職できないみたいなのあるだろ? ドラ○エみたいな」
「つまり、レベルとは別に上がるステータスみたいな感じだね。何かしらの技能でもアマチュアからプロまであるみたいな」
「そんな感じだ。だから、強いというよりは上手いってやつだな。技の強さより完成度って言って伝わるか分からんが」
卓也の言葉に答えながらも百代が出てきた疑問をそのまま述べる。
「だからこそ、リンの動きは完成されすぎてる。今となっては隠してるが、小学生の時には既に長年に渡って修行してた武道家みたいな極致にある。あの年でそんな極致にあるのは正直、疑問だ。じじいも見抜いてたしな」
川神 百代が所属する川神院――武道家の総本山と呼ばれる場所で総代と呼ばれるトップに君臨するのが彼女の祖父――川神
その彼が鈴空に出会った時に呟いた言葉は『……驚いたの』の一言。
それがどういった意味かを百代は理解していた。
そして、懸念する
「うん、でも……リンは話さないんじゃないかな? だから、秘密を打ち明けるか悩んでる。察しもいいし、私達が疑問に思うことを既に予測してても驚かない」
「おいおい、それなら話すまで待ってていいんじゃね? 話したくなったらその内言ってくれるって。どんな秘密があろうと、リンはリンだ」
キャップ――翔一はいつも通りに全員の言って欲しいことをズバリと言う。
その言葉に誰もが静かに頷くが――
「ちょっと……リン姉の所に行ってくるね」
一子だけは、居ても立っても居られない感じで屋上へと向かう。
「何だかんだで私よりお姉ちゃんだよな、リン。少し妬ける」
「いいじゃないか、姉さん。姉が2人いるみたいなものだ。それに、女子の中で一番付き合いはワン子が長いからしれっと言ってくれるかもしれん」
少しいじける姉(百代)に大和はそうフォローする。
「ん~、気になるなら覗いてみるか?」
そこで何を思い立ったのか、キャップが立つ。
「いや、気配で気付かれるでしょ……」
と、卓也は懸念するが――
「大丈夫だ。私が上手く気をコントロールしてバレないように気配を覆い隠す」
「本当になんでもありだな、この人」
すぐに百代の超技術で解決した。
場面は変わり、屋上。
付き合いの長い一子が外へ出る。
長い空色の髪を揺らして転落防止の柵にもたれて景色を見ている鈴空を見て、一子は近付く。
「リン姉……」
「なんです、カズ」
近付いて隣になったところで話し掛ける。
鈴空は屋上に来た時点で気付いていたが、あえて振り返ることもなくそのまま外を見ていた。
小さな湖の向こうに見える工場地帯、そして星空。
話題の出し方がよく分からずに詰まる様に切り出す。
「えっとその、最近……何か悩んでるのかなって思って」
「別に特にありませんよ。なんです、心配で気になりました?」
「そうと言えば、そうなんだけど……」
「そんなに深刻じゃないですよ、別に悩みというより私の秘密をいつ話そうかってだけです。どうせ、気付いてる人もいるでしょうし」
「エスパー?! エスパーなのね!? 何で分かるの?」
「それは、自分の立ち振る舞いとか色々と自分が人からどう見られてるかを考えれば分かりますよ。カズも武道を学び始めて分かってきてしまってますし」
その言葉に一子は言葉が出てこなくなる。
どう言えばいいのか、どう聞けばいいのか……よく分からなくなってくる。
そもそも話上手な部類ではない一子には難問であった。
心の中では大和ヘルプ状態である。
しかし、そんな狼狽した一子の様子を鈴空はジト目で見る。
「何を百面相してるんですか……」
「へ? いや、星空キレイだなって……あはは……」
「カズは花より団子でしょうに。私の秘密を知りたいなら最初からそう言って下さいよ」
「うぅ……でも、リン姉話しにくいのかと思って。あ、でも……どんな秘密があってもリン姉はリン姉だから」
「まったく、気の使い方が下手なのに心配はするんですから」
そのままわしゃわしゃと一子の頭を撫でる鈴空。
本当の姉妹のような光景に、こっそり見てる野次馬組は――
「なんだろうな、この甘酸っぱい感じ。ワン子は私の妹なのに……」
「むしろリンの方がモモ先輩より姉だろ……いいよなぁ、クール美女」
「よし、ガクトをこのまま屋上から湖に向かって放り投げよう」
「聞き捨てならない、クール美女は私のポジション」
「京は不思議系も入ってるよね……」
「そう。だからワンダーウーマンでもある、不思議な体験を約束するよ大和」
「今はリアルが大事なのでお友達で」
「お、それよりも何だか秘密が打ち明けられる予感だぞ」
などとざわめき始める。
そして、鈴空は――
♦ ♦ ♦
気配は分かりませんが、絶対のあのファミリーは見てるでしょ。
仲間を心配してるところもあるでしょうが、そこまで深刻な顔してましたかね?
アンジャッシュ状態な気はしますが。
ちょっとだけ誤解されるような言い方でもしてやりますか。
「カズ……私はね、既に2回死んでます」
「…………え?」
「これが3回目の人生って言ったら、驚きますか?」
「………………」
きょとんとする一子。
間違いではないですけどちょっと言い方が変化球過ぎましたかね?
前世の記憶と経験があるって言った方が良かったかもしれません。
でも、間違ってもいませんし。
改めて考えるとどう伝えたものでしょうかね。
割とノリと勢いで変化球を猛スピードでぶん投げちゃいましたけど。
「あ、はは……驚き、だけど、何て言うかどう答えていいか……分かんない」
「ですよね。でも、伝えるのは不安じゃありませんでしたよ。カズが言ってくれたように私は私です。みんな、そう思ってくれると信じてますから……そうでしょ?」
ワザとらしく私は屋上の扉の方に視線と言葉を投げ掛ける。
そうするとゆっくりと扉が開いてぞろぞろとメンバーが出てくる。
百代だけは、どこか自信喪失な感じですが。
気配を感じなかったのは、彼女が何かしらの技でも使っていたのでしょう。
「マジか……あれでバレるのか」
「カマかけですよ。どうせ見てると思ってたので、経験は私が
「――なっ?!」
その言葉にショッキングとばかりに涙目になる百代。
やられた、って感じですね。
武道家なだけあって今のところは直接的な勝負で負けてなくても、負けず嫌いですね。
「しかし、3度目の人生……転生ってやつか?」
「え? そんな漫画やアニメみたいなこと本当にあるの?!」
大和は冷静に私の言葉を分析している。
モロはというと、分かりやすいオタク的な反応ですね。
「前世の記憶ならバッチリですよ。信じるかどうかは知りませんけど」
「色々と聞きたいけど、何となく納得してしまう。思い返せば子供にしては妙に落ち着いてたし……」
私の言葉をあっさりと受け入れる冷静な頭脳を持ってる京。
同様に、大和も何となく納得してるみたいです。
「3度目の人生ね……でも、リンはリンだろ。それよりも、過去にどんな人生だったかの方が俺は気になるぜ!」
キャップは相変わらずですね。
私が前世の記憶を持ってることに何の疑いもない。
まあ、そんな嘘を言わないくらいには信じてるというか、分かっているんでしょう。
そして、そこ聞きますか……
別に答えたところで何かが変わるとは思えませんが。
「仕方ありませんね。エンターテイメントにお答えしましょう」
私は柵の上に軽く飛び乗り、絶妙なバランスで立ち上がって全員に見えるように大きく名乗りを上げる。
「この世界においては、張 鈴空! 最初の名は立花 空! 二度目の生では姓は張、名は
私の3度目は青春が始まる予感です。