ビターエンド後ゲーム原作世界に無駄tsモブ転生した僕は犠牲となった主人公のツンデレヒロインと仲間のヤンデレ双子姉妹を元気づけたいのだが、勘違いにより曇らせを加速させてしまう話   作:Atlantis

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14 研究所 2

「あっ、真壁さん……」

 

 少女は、僕の姿を確認すると少し驚いた様子を見せる。そして、しばらく沈黙した後、口を開いた。……なぜか、頬を赤く染めながら。

 

「あっあっ……その……」

 

 もじもじしながら、どこか様子もおかしい。

 

 ……もしかして、体調が悪いのだろうか?  一瞬そう思ったが、ここがあの所長の研究所だということを思い出して考えを改める。

 

 ……彼女の様子は明らかに普通じゃない。所長に何かされている可能性を否定できない。

 

「大丈夫? 顔が赤いけれど」

 

 心配になった僕は、彼女に声をかける。すると、彼女はビクッと体を震わせた後に、僕から顔を背けた。

 

「……別に、大丈夫」

 

 僕から顔を背けたまま、彼女はそう答える。……やっぱり様子がおかしい。

 

 そもそも、この時間帯にこの研究所にいるのは何故なのだろうか? 平日の昼間である今、普通なら小学校にいるはずだ。

 

 ……もしかしたら、彼女はよくない環境下にいるのかもしれない。

 

「全然大丈夫じゃなさそうだけれども」

「……別に、大丈夫。薬の作用でちょっと顔色がおかしいだけだから」

 

 彼女は、僕の言葉を突っぱねるようにそう答えた。

 

「薬?」

「……」

 

 僕の言葉には反応せずに、彼女は沈黙する。……やはり様子がおかしい。

 

「ちょっとごめんね」

 

 そう言って僕は彼女の額に手を当てる。すると……

 

「ひゃう!」

 

 彼女が可愛らしい悲鳴を上げ、そのまま固まってしまう。

 

「……熱があるみたいだね」

 

 彼女の額が熱かったので、僕はそう判断した。

 

 しかし、彼女はそれを否定する。

 

「熱なんかない」

「……本当?」

「うん」

 

 そう答える彼女だが、やはり様子がおかしい。温度を確かめる前と比べて、さらに顔が赤くなっている。

 

「……どうして、こんな所にいるの?」

 

 僕は、彼女に質問する。

 

 彼女のような子が、どうしてこんな所にいるのか。何のために彼女はここにいるのか。……彼女は、ここで何をされているのか。

 

「……」

 

 しかし、彼女は沈黙する。答えたくないのだろうか、それとも……

 

「ふぉ、ふぉ、ふぉ。面白そうな事になっておるのぅ」

 

 そんな僕たちのもとに、軽快な足取りの所長がやって来る。

 

 僕たちの方を見て、彼はニヤリと笑った。彼の目はまるで新しいおもちゃを見つけた子供のような輝きを宿している。

 

「ワシの時よりも、さらにほおが赤く染まっておる。……なるほどのぅ。これは興味深い」

 

 所長は、あごをさすりながら何かを考えているようだ。その様子を見て、僕は彼がまた何か良くない事をしていたことを察してしまった。

 

 ……僕の予想が正しければ、彼女はおそらく被験体だ。そして、彼は彼女を使って何かの実験を行っている。

 

「所長、これは一体どういうこと? この子に何をしたの?」

 

 僕は所長に問い詰めると。すると、彼は悪びれる様子もなく答えた。

 

「そう慌てるでない。軽く惚れ薬を飲ませただけじゃ。実験に必要じゃったのでな」

 

 液体の入ったビーカーをユラユラと揺らしながら微笑む所長。

 

 ……惚れ薬。その単語を聞き、僕は察した。僕の脳裏に浮かんだのは、先程の彼女の様子。……あの症状は、惚れ薬の作用によるものだったのか。

 

 原作で登場した時はギャグシーンで使われていた惚れ薬だが、いざ実際に目にすると恐怖を感じる。

 

 ……彼の実験がどのような成果をもたらすのか、僕にはわからない。

 

 しかし、彼女の人権が脅かされている事、そして彼女がヤバイ目にあっている事は、僕にでも理解できた。

 

 僕は彼女を守るように所長の前に立ち塞がる。

 

 すると、彼は僕の行動に驚いた様子を見せた。

 

「一体何のつもりかね?」

「こんな小さな子に実験をするなんて……」

 

 僕は、所長に抗議する。しかし、彼は僕の言葉など全く気にも止めていないようだ。

 

「ふむ、確かに君の言う通りかもしれんな」

 

 彼は僕に対して肯定的な態度をとるが……

 

「じゃが、ワシは研究者じゃよ?  都合のよい実験台を目の前にして大人しくなんかしておれんわ」

 

 彼はニヤリと笑ながら、そう言い放った。

 

「それにのぅ、ワシは彼女の意思をキチンと尊重しておるのじゃ」

「え……」

 

 彼のその言葉に、僕は耳を疑った。

 

 ……この子が、自分の意思でここにいる? そんなことがあるのだろうか?

 

 少女の方を向いてみる。

 

 彼女は、僕の方を見て何かを伝えようと口を開こうとするが……

 

「……」

 

 すぐに口を閉じてしまう。そして、少し悲しげな顔をした後、俯いてしまう。

 

 しばらくしてから、彼女の方から口を開いた。

 

「ありがとう、真壁さん。でも、これでいいの」

「えっ……それでいいって……」

 

 僕は困惑する。彼女の考えが全く理解出来ないのだ。

 

 そんな僕に対して、彼女は続けた。

 

「会えなくなった家族の代わりに、所長は衣食住を保証してくれる。だから、それに見合う事をボクはするだけ」

 

 そう言いながら、彼女はこちらをの方を見つめる。

 

 その視線には、悲しみが込められてるように感じた。

 

 家族と、会えなくなってしまったなんて……なにか、深い事情があるのだろうか?

 

 悲しい現実に、僕は何も言えなくなってしまう。

 

 そんな僕に対し、彼女はさらに言葉を続けた。

 

「それに、彼の実験が成功すればボクの「代償」をどうにかすることが出来るかもしれない。だから、所長の実験に付き合うことはボクにとっても良いことだってことに最近気づいたの」

 

 彼女は、ハッキリとそう断言する。

 

 ……「代償」って、確かビターエンドルートの剣君が背負うことになる重すぎる重荷だったような……彼女も、それを背負っているというのか?

 

 つまり、彼女は……自分の「代償」をどうにかしてもらおうとして、ここに通っているという事なのか?

 

「ふぉ、ふぉ、ふぉ。そういうことじゃ。いわば、ワシと彼女はビジネスライクな関係。互いが互いの利益になるように動く、最も合理的な関係性じゃ」

 

 困惑する僕を他所に、所長は高笑いしながらそう話す。

 

 ……かなりいびつな形ではあるが、お互いにメリットがあるという事は事実だろう。所長は理想の実験台を思う存分扱うことが出来るし、少女は住まいを保証された上、「代償」から解放される可能性が生まれた。

 

 2人の問題は2人に任せたほうがいいのかも知れない。

 

 所詮僕はオタクのモブでしかない。複雑な事情をどうこうするような事なんて出来ない。

 

 そもそも僕と彼女は赤の他人。彼女を心配する必要なんて無いじゃないか。

 

 僕の理性は、僕にそう告げる。……しかし、僕の感情はそれを拒否していた。

 

 目の前にいるのは、少し前に知り合ってしまった少女。そして、彼女はまだ幼い女の子だ。

 

 そんな子が、自分の意思でここに通っている。

 

 ……それは、とても悲しい事なのではないか?

 

 彼女の顔をもう一度見る。

 

 薬によって彼女の頬は赤く染まり、一見恋をしているかのようだった。

 

 けれど、よく見てみるとその瞳は寂しげで諦めや悲しみを訴えているように感じる。

 

「……」

 

 ……僕の心はズタズタに引き裂かれるような痛みを訴えていた。

 

 気付いたときには、体が動いていた。

 

 少女と所長の間に入り、彼女を守るように両手を大きく広げる。

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