ビターエンド後ゲーム原作世界に無駄tsモブ転生した僕は犠牲となった主人公のツンデレヒロインと仲間のヤンデレ双子姉妹を元気づけたいのだが、勘違いにより曇らせを加速させてしまう話   作:Atlantis

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5 原作主人公視点

 

 

「ごめんなさい。分からないわ。……あなたは、誰?」

 

 お母さんからの言葉によって、既にボロボロだったボクの心は崩壊した。

 

 死者蘇生の願いの代償として、何もかもを失ってしまった。その中でも最もつらかったのが、人間関係の損失だった。

 

『今までの僕』と『今のボク』。誰一人として、その二つを結び付けることが出来なくなっていた。

 

 過去の思い出や、僕にしか分からないようなことを話してみた。だけど、お母さんは困った顔をして、首を傾げるだけだった。

 

 家族や昔からの男友達にも同様のアプローチを試みたが、誰一人としてボクのことを剣崎剣と認めてくれる人は居なかった。

 

 ……心に穴が開いていくような感覚を抱いた。今まで築いてきた大切な関係を、ボクは失ってしまったのだ。

 

「どうせ、分かってもらえないなら……」

 

 やがて僕は、分かってもらう事を諦めたのだ。これ以上傷つきたくなかったし、知らない人に話しかけられてもみんな困るだろうし。クラスのみんなにも、ボクの事を話さないことにした。

 

 ボクは、僕であることを諦めた。

 

 

 

 ……そんな時だった。ボクの前に彼女が現れたのは。

 

 ボクを助けるために、限界を超えた願いの力で凶悪な男に立ち向かった少女。彼女はボクに優しく微笑みながら手を差し伸べてくれた。

 

 その姿を見て、かっこいいと思った。そして、心のどこかで彼女に憧れた。

 

 彼女なら、ボクの新しい場所になってくれるかもしれない。……そう、思ってしまった。

 

 だからボクは、彼女と関係を結ぶことに決めたのだ。

 

 ……関係を紡ぐためにも、彼女の事を知る事が必要だ。その為に彼女の夢を聞いてみることにした。

 

「願いの力、すごかった! お……真壁さんの夢について聞かせて!」

 

 姉扱いしてしまうのを何とか避けつつ、真壁さんに夢を聞く。恥ずかしそうにしながらも、、口を開いてくれた。

 

「異能管理学園の、先生になること、かな? 異能関係の事で悩みがある子の相談とかしたり、みんなの事を見守ったりしたいんだ」

 

 そう言ってはにかむ真壁さん。……かっこいいなぁ、きっといい先生になるだろうな。

 

 ……気になる。もっと彼女の事を知りたい。

 

「きっかけとか、あるの? 色々と聞かせてよ!」

「うーん。きっかけは内緒。でも、そうだね。やっぱり強い思いと願いを持つ生徒たちを見守って生きていたいからかな。あとは、そうだね……異能関連の不幸が無くなるように、かな。ちょっとしたすれちがいによって、異能が暴走することもあるから、そういった不幸を減らしたい。みんなには不幸になって欲しくない。幸せになって欲しいんだ」

 

 彼女の言葉に、思わず胸が高鳴る。彼女も、ボクと似たような夢を持っているんだ……

 

 ……でも、あれ? どうしてだろう。彼女の言葉が、どこか胸に引っかかる。

 

「……すれ違いって、例えば?」

 

 恐る恐る、彼女に尋ねる。どうしてか、心臓がドキドキと高鳴っていて落ち着かない。

 

 真壁さんは、少し考えるそぶりをした後、口を開いた。

 

 ……どうしてか、彼女の瞳がボクのことをまっすぐ見据えているように感じた。

 

「……そうだね。例えば、親愛。相手を慕い、心を許すこと。そういった気持ちがすれ違ってしまうと悲しい事になってしまう。……特に能力者はね」

 

 彼女の言葉に、胸がずきりと痛む。……どうしてか、僕の顔からは血の気が引いていて、指先が微かに震えていた。どうして、ボクはこんなに動揺しているのだろう。

 

……彼女は、そんなボクに気付かないように言葉を続ける。ゆっくりと口を開いては閉じるを繰り返しながら。彼女の表情は穏やかで、優しくて……でもどこか寂し気で。

 

「お互いに大切に思いあっている人がいたとします。お互いがお互いの事を信頼していて、思いあっているけれど……。ある時何かしらの理由により、片方の子はもう片方の子と距離を置き始めてしまう。そうしているうちに、逆に距離を置かれた子は悲しい思いをしてしまう。……それが能力者の場合、悲しみがどんどん膨れ上がって願いの暴走を引き起こし、取り返しのつかないことにつながってしまうかもしれない」

 

 そう言って、彼女は儚げな表情を浮かべる。

 

「まあ、これは例えばの話だけどね。もしかしたらあったかもしれない世界線の話」

 

 そう言って彼女は優しく笑った。その微笑みに、ボクは何も言うことができなかった。

 

 ……藤崎さん。それに、重谷姉妹。松谷さんに、それから……

 

 自分だってわかってもらえないのが怖くて、クラスの大切な人たちと話すのを避けていた。心配されているのは分かっていても、それでも怖くて、何も言えなくて。

 

 でも、それじゃダメだ。

 

 1年の間に、彼女たちと確かな絆を結んだんだ。お互いの事を信頼し、思いあっている。だからこそ、ちゃんと話さないといけない。無言でいなくなってしまうなんてそんなのはダメだったんだ。

 

 ……だから、ボクは勇気を振り絞る必要がある。

 

 どうにかして、ボクは元気だって、みんなに伝えなきゃ。

 

「ありがとう、先生! 決心がついたよ」

 

 そう言ってボクは立ち上がり、その場から立ち去ろうとした。

 

 

「……あっ、そうだ」

 

 彼女と別れる前に、これだけは渡そうと思った。

 

「よかったら、このアクセサリーを貰ってほしい」

 

 そう言ってボクは、白い髪飾りを彼女へと差し出した。これは剣崎家に伝わる特別な髪飾りであり、剣崎家の人間が気に入った女性に渡すとその人を守ってくれるという伝承がある。彼女との関係がずっと続いていくことを願って、彼女にこの髪飾りを贈りたいと、そう思ったのだ。

 

 ……彼女は笑顔で頷くと、それを受け取ってくれた。

 

「ありがとう! 大切にするね!」

 

 そう言って微笑む彼女を見て、ボクは胸が温かくなった。

 

「……良かった」

 

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