「ワカモ♡♡♡」「ひぇっ」   作:紫彩

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ぶっ飛んだ事が連発すると、人は割と受け入れることが多い。

「うぅ、ん……」

 

 

住み慣れた隠れ家で目を覚ますわたくし。

長く独房で過ごしたわたくしにとって久々のベッドは心地よいものでした。

ベッドだけではなく、住み慣れた環境での就寝、それはとても大切なもの、と再認識するほどに。

 

……唯一違うものあるとするなら、嗅ぎ慣れない、いい匂いがすることでしょうか。

食欲を誘う、こんがりとした匂い。

 

その匂いの方向へ目を向けると、そこには

 

 

「ふふ~ん♪ふふふふ~ん♪」

 

 

鼻歌を歌いながら、フライパンを動かしている先生がいました。

何故ここにいるのか。正直言って分かりませんが、少し早いかもしれませんが、もう諦めることにしました。

 

ベッドからのそりと起き上がりながら、話しかけます。

 

 

「……おはようございます、先生」

「あ、起きた?おはよう、ワカモ。もう少しで出来るから待っててね」

 

 

机には一人分のご飯とお味噌汁が。きっと今作っているのは目玉焼きでしょう。

 

 

「……あの、先生」

「どうしたの?」

「先生の分は、無いのですか?」

「え?食べて……いいの?」

 

 

逆に何故駄目だと思っていたのか。その理由を聞いてみると、

 

 

「だって、勝手にキッチンとか使っちゃったし……」

 

 

とのことでした。

律儀なのかどうか分からないその性格に、ため息を吐きながらも、構いませんと伝えました。

 

 

「……っ、ワカモ、ありがとう!」

 

 

その時に見られた先生の嬉しそうな顔が、何故か頭から離れませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝食を食べ、服装を整えてから街へと繰り出すわたくし達。

今日は暴れる気は一切、というより、先生と出会ったあの日からその欲が薄くなっていてしまったため、仮面は着けずに出てきました。

 

つまり、あまり目立たず過ごせるはずだったのですが……

 

 

「ねえ、あれって……」

「噂のシャーレの先生じゃない?」

「じゃあ隣の人って誰?」

 

 

わたくしの腕に引っ付く先生によって、そんな時間は過ごせなくなりました。

わたくしの私服は珍しい和服とはいえ、着ている者がいないわけではありません。これより奇天烈な格好の人などごまんといますし。

 

ですが、先生は別です。キヴォトスでは初めてと言ってもいい、外から来た大人でありますから。

それだけじゃなく、恰好。スーツ姿のスタイルのいい女性で、キヴォトスでも綺麗と判断される方でしょう。

 

そんな方が、キヴォトスの子どもに、抱き着いて歩いていたら?

 

 

目立たないはずがない。

 

 

「どうしたの?」

 

 

本人はつゆ知らず、のようですが。

はぁ、とため息を吐きながら、持っていた日傘で先生を隠しました。

 

 

 

今現在歩いている場所は、隠れ家がある内の一つのトリニティの学区内です。

わたくしの格好とは真反対でしょうが、どうせ先生がいる時点でどこでも浮きます。

 

今日の目的は、日用品の調達。長らく離れていてしまったため、多少補充をしておかなければならなくなっていました。

そのために、ショッピングモールまで向かっていますが、黙っていくのもどうかと思い、先生と対話をしてみることにしました。

 

 

「先生、一つ思ったのですが……」

「なになに、何でも聞いて?」

「シャーレのお仕事は、如何されているのでしょうか?」

「さあ?」

 

 

足が止まり、唖然とした顔で先生を見てしまいました。

わたくしもなぜこんな反応をしてしまうのか、一切分かりませんが、それはおかしいでしょうと感じました。

 

しかし先生はあっけらかんとした表情で答えました。

 

 

「だってさ、疲れるじゃない、仕事って」

「は、はぁ」

「キヴォトスって、犯罪ばっかり起こるじゃん?」

「まあ、はい」

「それを対処しなきゃいけないんだよ?それだけじゃ無くて、クソみたいなカイザーも相手しないとだし、子ども達にも神経すり減らして適切な距離取らないといけないし……そこまでしても、繰り返すことになるし」

「と、とりあえず、先生という職業が大変なのは伝わりました」

「それにね」

 

 

先生は腕を掴んだまま、顔を合わせてきて、こう続けました。

 

 

「ワカモが傷つく可能性が一つでもあるなら、やりたくない」

 

 

……分かりません。

何故こんなに、わたくしの事を思っているのか。

普通、初対面からこんなに愛を重く伝えるものでしょうか?恋愛のれの字も知りませんが、ここまで引っ付いてきて、尚且つ周りを気にせず、全てを投げ出すかのような発言を取る……

 

ハッキリ言って、異常です。

 

 

「……うっ、何か刺さった気が……」

「大丈夫!?」

 

 

と、ともかく。いろいろ気になることはありますが、今は……ただ、交流するしかない。そのように思いました。

 

 

 

「先生?」

 

 

 

 

ふと、そんな声が耳に届きました。

二人でその声の持ち主の方へ目を向けると、そこには一人の少女が立っていました。

 

 

トリニティのお嬢様を表すかのような、純白な翼。

 

 

明るく、活発、しかしどこか儚げな印象を与える桃色の髪。

 

 

華奢のように見えて、見抜ける者には見抜ける、力強い身体。

 

 

驚愕、困惑、喜び、様々な感情が渦巻く表情。

 

 

先生を呼んだ、ということは先生のお知り合いなのでしょうか。

ならば、気乗りはしませんが、話を聞いてみるのはいいのではないでしょうか。そう思いました。

 

 

ですが。

 

 

「本当に……先生、なの……?」

 

 

しかし。

 

 

「……った……良かった……!」

 

 

わたくしの脳内では。

 

 

 

「ミ……カ……?」

 

 

 

今すぐその場を離れろと、警鐘を鳴らしていました。

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