クラス転移に巻き込まれた用務員だけど、生徒たちがみんないい子   作:匿名

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どういう意図があったのか、かぁ

 

 

 

 2日目は部屋の整理と書籍や魔法関連の機材の運び込み、過去の勇者や魔王に関する資料をまとめたところで時間切れとなった。やっぱりちょっと残念な夕食を食べて、生徒たちの中に暗い顔をしている子がいないか確認していく。昨夜と違って励まして回る必要もないくらいには生徒のみんなは元気になりつつあった。この先はわからないけれど、この子たちなら大丈夫だろうと思わせられるだけの意思の強さがある。

 僕の方はどうかと言われると、やっぱりちょっと凹み気味だ。自分に何ができるのか、とか。この子たちにとって必要な大人であれるのか、とか。顔には出さないようにしつつ、朝のやり取りのことを思い出して失敗してしまったなと思ってしまう。

 

「のう、ヨウムインさんよぉ。少し良いかの、老人の話に付き合ってはくれぬか」

 

 一人の騎士が食事を終えた僕に話しかけてくる。全身を甲冑に覆われているので判別付きにくいが老いた男性の声だった。

 

「はい。なんでしょうか」

「勇者様と教皇様とのやり取りで、ちぃとばかり気になったことがあっての。たぶん誤解の種になるんじゃないかと思ってな」

 

 甲冑兜に手を当てながら「嘘じゃあ言ってなかったんじゃあと大事になったら面倒じゃし」とぼやく。アレイシアのことは詳しくないけれど粗野というか荒っぽい口調と身振りからして、厳格な騎士ではないのかもしれない。声からしてベテランではあるのだろうけれど。

 

「ワシらの国に魔王が来ると教皇様が神託を受けたことは、誰もが知っておる。それゆえに、多くの民や貴族はアレイシアを捨てて去って行った。国王も王妃もじゃ。王家の血を引くとはいえ教皇様が、国のトップなのは統治者が出払っておるからじゃ。そのことに反発もない……そのようなものも立ち去った国だからじゃ」

 

 老騎士の人がこちらの眼を見つめる。僕は頷いて話を促す。

 

「残ったのは老いたもの、歩けぬもの、行き場のないもの。そして、教皇様と共に戦わんとしたものだけ。教皇様は弱者と死を覚悟した配下を守るために、去って行ったものたちの故郷を守るために召喚を行った。そなたらを困らせるためではないことを理解してほしいのじゃ。あるいは、最初にヨウムインさんを押しのけたのも、戦場となるアレイシアから逃がそうとする意図があってのことかもしれぬ」

「いやぁ、それはそう理屈付けるのは無理があるかと」

「はっはっは。無理かのぉ。そうじゃのう。あまりにこちら側の考え方じゃからの」

 

 押しつけがましいところもなく老騎士の人は穏やかに語る。それはちょっとミュールさんを美化しすぎなんじゃないかなと思いつつ、彼女の傍にいる人たちからは信頼されている。滅び去ろうとしている国を最後まで守ろうとする君主。そういう人だと思って考えたら、僕を逃がそうとする意図が……無理がありそうな気がする。運び出そうとした騎士も結構乱暴だったし。

 

「どういう意図があったのか、かぁ」

 

 もしくはどういう意図があれば納得できるのか、か。ラベルを貼るように、考え方を変えるだけで意味が変わるものなのか。

 そこまで考えて、ふと思いついたことがあった。生徒のみんなのために僕ができること、力も知恵も交渉力もないなりに協力できそうなこと。これが生徒たちに贈ることのできる心づけになれば良いと言えることが、あった。

 

「騎士さん」

「何じゃあ?」

「教皇様とちょっと話がしたいのですが、どこにおられるかご存じですか」

「執務室におると思うが、ヨウムインさんと勇者様を離さないように言われておる。用があれば出向くと言っておられたから、ワシが使者の代わりをしよう」

 

 よいしょと腰をあげた老騎士の人に何か先に伝えておくことはあるかと言われたので、お金の話になるので帳簿を持ってきてほしいと頼む。ヨウムインさんは魔王討伐の報酬に金銀財宝を望むんじゃの、と言われるけれど……そうであるともそうでないとも思っているので、曖昧に微笑む。

 

「ちょっとした意図を付け足すだけです。生徒のみんなが無事に帰るためのおまじないのような」

 

 これはただのおまじない。僕にできるちょっとしたやり方でしかない。みんなを喜ばせたり帰るための力になれば良いと願う、ちょっとした意図したやり方。大したことじゃないけれど、僕にできることだから……やってみよう。

 

 

 

 





出席番号13番
 黒木義道 文芸部
「読書会とか詩の展示とか文化祭でやりたいってときに、実績がないからダメって言われてたのを小さい教室を取り付けてくれた恩があります。古典文学と異世界転生ものを大胆にアレンジした詩吟を披露したときには驚いていましたが、ちゃんと吟味していただけましたし。頭ごなしにあれこれと言わずに、まず試してくれるところがあって……え、話は短めに? いや、もっと話したいことがあってですね。あれは春の部活勧誘のときのこ……」

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