クラス転移に巻き込まれた用務員だけど、生徒たちがみんないい子   作:匿名

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この場合外国人助っ人選手ってことになるの?

 

 

 

 いくつかの部屋を整理して個室のように使えるようにはなったけれど、全員が自然と談話室に集まっていた。

 生徒それぞれにやることが増えてきたからか、個室で調べものを続ける子とかが出てくるかもしれないと思っていたのだけれど、まとまって行動しようという考えが根強いのかもしれない。落ち着いたからか、バイト代の話や帰ったら何をするかの話題で盛り上がっているグループもある。

 

「用務員さん、ちょっと話せますか?」

「うん。大丈夫だよ」

 

 僕に話しかけてくる子もいた。ここだと枕が変わって寝付けない、とか。バイト代ありがたいっす俺はメンチカツをめちゃめちゃ喰いたいっす、とか。魔法で測ったんですけど身長がちょっと伸びたみたいです、とか。3ーA組のみんなの他愛のない幸せな話を聞いていく。その中には、個別で相談に乗ってほしいというものもあって、急ぎでなければ後回しにさせてもらうことになる。寝る前となると、念のための点呼とか明日の予定とか今後のための話を詰めておく必要があって、話の途中で離席することも多いからだ。実務的な話を終えてから、その子たちの話を聞くことになる。ただ、先ほど個別で話したいと言っていた子たちは全員が同じ話をしたいのか集まってきていた。

 

 小林さん、橘くん、穂乃村さん、藤崎さん、相沢くん。

 5人とも揃って話をしたいと言っていたけれど、堰を切って話し出したのは相沢くんからだった。

 

「用務員さんはミュールさんのこと、どう思います? 俺はちょっと納得できないことがあるんすよ」

「彼女も最初に失敗したけど正式に謝ってくれたから落ち着いて……」

「そーいうのじゃなくて。野球部の俺抜きで野球しだしたんすよ!」

「……どういうこと?」

「ミュールさんが色んなところに顔を出しに来てくれたときに、私たちのスポーツについて話題になったの。それで、野球とかサッカーとかバスケとか色々と説明したんだけど、男子の何人かが実際にやってみようって言いだしたのよ」

「物質生成の能力を無駄使いしてボールとかネットとか作って、亜空間転移の能力とかで場所も確保してたわ。バカみたい」

「背中に宇宙とか恐竜とか出しながらテニスやってるのは本当に意味がわからなかったな」

「たぶんラノベか漫画の影響なんじゃない? ミュールさんが笑ってくれたから良いけど」

 

 僕が聞き返すと、他の4人が事情を説明してくれた。

 

「みんな遊ぶ時間を作ってたのは良いね。ずっとドタバタしてたから遊べてなかったから安心した」

「いや、遊びすぎなんですよ。3-A有志とアレイシア野球騎士団の野球対決とかしてたし」

「なんで野球部の俺を抜きで野球するんだ! 俺がはぶられてるんだけど!」

「野球部だからじゃない? 実力ありすぎると対決にならないし」

「全力で手を抜くから、本気で野球がやりてえよぉぉぉぉ!」

 

 相沢くんの叫びに、眉をしかめる3人。橘くんだけは仕方がないなと言わんばかりの顔をしていた。僕もちょっとだけわかる。運動部の子は毎日運動してないと、なんとなく動き足りなくなるよね。

 

「なので、俺は次にミュールさんたち野球騎士団が集まる時に向こうのドラフト一位指名を受けたくて、用務員さんにお願いしにきたんす。3-A側が俺をチームに入れてもらえないなら向こうで外国人助っ人になるっす」

「大丈夫だけど、この場合外国人助っ人選手ってことになるの?」

 

 たぶん、野球チームそのものが正式なものじゃないから難しいとは思うけれど。いや、ミュールさんがいるから異世界初の正式な野球チームになる可能性は高そうではあるか。一応、どうするのかは聞いてみよう。

 

「用務員さん」

「うん。どうしたの?」

 

 相沢くんが橘くんに野球ができなかったことへの愚痴を繰り返している横で、藤崎さんが小林さんと穂乃村さんに肩を支えられながら、僕に話を切り出してくれる。

 

「わたしは、ミュールさんたちが話しかけてくるのが信用ならなかったけど、男子が遊びでブラックホールテニスとか恐竜バスケとかやってるのに巻き込まれてたり、一緒に野球やってみたり。手芸の話でちょっと盛り上がったりしてるうちに、疑えなくなってきちゃったんだ。誘拐してきた悪い人なんだって思ってたのに……いつのまにか、一緒に泥だらけで笑っちゃってて」

 

 わたしがここの人たちをどう思ってるのか、わからなくなっちゃった。

 藤崎さんはそこまで言うと、問題の答えを求めるように僕をじっと見つめる。それは助けを求める目だったけれど、僕の言う事なら正しいと言わんばかりの不安定な縋り方にも見えた。

 

「僕が言えることは答えにはならないとは思うけれど。もし疑いきれないと思ったのなら、もう一度チャンスをあげてみるのはどうかな?」

「チャンス?」

「信じてみたいと思い始めたのなら、もう一度チャンスを与えてみるって考え方かな。気持ちが楽になるかもしれない」

「今の用務員さんは、どう思ってるの?」

「また追い出されたりしない限り、ミュールさんたち異世界の人を含めたみんなで協力したい。それから、生徒全員揃って元の高校に戻りたいかな。そのためにできることを頑張るよ」

 

 僕は隕石をどうにかする魔力とかがあるわけじゃない。知力があるわけでも、交渉力に長けるわけでもない。でも、生徒のみんなが不安にならないようにとか、後押しをしてほしいとか、気持ちの切り替えをしたいとか。そういった小さなことで助けてあげられたらと思う。泥臭いやり方かもしれないけど、何もやらないよりは良いと信じてる。

 

 

 

「(私が心を覗けるからって、最後の言葉を飛ばしましたね)」

「(用務員さんも含めてみんなで帰りてえな。そろそろラーメンが喰いてえ)」

「(夜食でインスタントとかも帰らないとできないよな)」

「(これから私たちも小さなことから助け合えたらいいね)」

「(うん。みんなで協力して、ミュールさんたちにも助けてもらって、みんなで帰ろう)」

 

 

 





出席番号15番
 佐藤裕一 バスケットボール部
「休憩時間だったら、実は一緒にバスケやってくれたりもするんですよ。全然上手くないですけど、だからこそ楽しそうにバスケやってくれる用務員さんのことが嫌いになれないっていうか? なんとなくバスケ仲間って感じですね」

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