クラス転移に巻き込まれた用務員だけど、生徒たちがみんないい子   作:匿名

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オ、レ、ダイジョウブ。ツヨイ。タベル。モグモグ!

 

 

 

「みなさまに最初にお伝えするのは、この度異世界勇者様を召喚するに至った経緯についてです」

 

 召喚そのものが誘拐と誤解されかねないものですので、とミュールさんがため息をつく。

 いや、実際に現状は召喚の儀とやらでミュールさんや鎧の人たちのところ……体育館くらいの広さの礼拝堂に運ばれたのだ。意識が途切れることもなく一瞬で別の場所に移動した時点で超常現象であることには間違いない。最初に言っていた大魔術というのも、疑いの余地がないレベルだ。魔法でも使わない限り、1クラスと僕をまとめてこんな不思議現象に巻き込むことはできないだろう。

 

「この手のパターンだと、魔王討伐。侵略戦争への対抗手段。神のお告げとかかな? 異世界転移とかじゃなくて、召喚なのも気になるポイント。変化球だと、召喚って呼び方だけで展開が変わるから」

 

「展開が変わるってどういう感じ?」

 

「例えばミュールさんとわたしたちは会話できてるけど、それは翻訳魔法か何かの効果であって、召喚ってのは訳した時のニュアンスが違うみたいな。英語で悪魔召喚とかの意味を日本語で翻訳すると、悪魔って部分が抜けてたりするんだよ。そんな感じで、正しい意味で伝わってるとも言い切れないときがあるかも」

 

「……前列の女性のお二方。誤解を招かないためにも先にお伝えしておきますが、わたくしたちは皆様に敵意を持っていたりはしません。ご協力いただきたいとは思っていますが、酷いことをしようとも思っておりません。それを踏まえて、ちゃんと意図をお伝えしたいと思うのですがどうでしょう?」

 

 3-Aの藤崎ちゃんと吉田ちゃんの横やりと、話を戻そうとするミュールさんのやり取りの中で、そっと何人かの男子生徒が僕のそばに来てくれた。スポーツで頑張ってる子だったり、筋トレを頑張ってる子だったりするし、たぶん僕を守ってくれようとしてるのだと思う。凄く頼りになる、頼りになりすぎるくらいに。

 

「わたくしたちが皆様をお呼びした理由は、先ほどのお二人がお話していたように『魔王討伐』が主となります。かつて、このアレイシアの地に宇宙より魔王が舞い降りました。その時の宰相により異世界勇者様が召喚され、魔王が討伐されたと書物にあります」

 ……うちゅう? 結構ファンタジーというよりは、SFっぽい話になるのだろうか。宇宙を観測してるって、文明がちゃんとしてないと難しいと思うし。いや、でも天文学って考えるとファンタジーみたいな世界でもありふれた話なのだろうか。

 

「当時の記録はあまり残ってはおりませんが、魔王は即座に侵略を行い、複数の国が壊滅したとあります。それほどの脅威に対して異世界勇者様がなぜ効果的だとみなされたのかは定かではありませんが、当時の異世界勇者様も強力な魔力を持ち、天地を揺るがすほどの激闘の末に、魔王は滅ぼされました」

 

「つまり、昔の宰相さんが異世界召喚したから今回もってこと?」

 

「その通りと言っていいでしょう。前例があるのは大事なことです。それに今のわたくしからも皆様の力を強く感じます……ご自身でも湧き上がる力を感じられる頃合いでしょう」

 

 大いなる勇者の力はヨウムイン様以外に宿っているようですねとミュールさんが告げると、守ってくれている男子生徒たちがミュールさんからの視線からかばうように前に立ってくれる。君たち、ちょっといい男すぎない? 僕のこと大事に守ってくれるのはわかるけど、ここまで優しいと自分がちょっと恥ずかしいくらいだよ。

 

 

「ああ。俺もしっかりと感じる。なんかこう、パワーみたいなのが身体の中にあるって」

「私も。感覚が過敏というか。五感がすっごい広がってるみたいな」

「内なる獣の声が聞こえる。叫びだしたくなるような、強い衝動が、確実にある」

「……なんか強くなってるけどヤバくなってない? だいじょうぶ?」

「オ、レ、ダイジョウブ。ツヨイ。タベル。モグモグ!」

「いや、これは何人かふざけてるでしょ。そういう人は私の治癒魔法とか使ってあげないからね!」

「すぐに自分の力が治癒魔法ってわかるんだ……」

 

 

 何人かの生徒たちが自分の力を感じているようで、少し騒がしくなる。

 

「わたくしたちを超越した力の持ち主である、異世界勇者様。そのお力添えを頂きたく召喚した。というのは理解できていただけたと思います」

 

 ミュールさんの言葉に、生徒たちは頷いていた。

 僕にはないけど、3ーAのみんなは凄い力があるのだというのが実感できたのだと思う。その力でミュールさんたちは、どのくらい強いのかどうかわからない魔王を倒してほしいと言っているのだ。

 

 





出席番号3番
 井坂伴次郎 帰宅部
「俺が何かしてもらったとかはないけど、ダチが巻き込まれた時にめちゃめちゃお世話になったのは忘れねえ。俺らを変な目で見ない先生が増えたのも用務員さんのおかげだし、自然と頭も下がるってもんよ」


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