クラス転移に巻き込まれた用務員だけど、生徒たちがみんないい子   作:匿名

7 / 15

お気に入りや評価、感想に誤字脱字の報告ありがとうございます。
今後とも楽しんでいただければ幸いです。




ちょっと男子ー!! よし、一度言ってみたかったセリフが言えて満足したわ

 

 

 

 翌朝の目覚めはスッキリとは言えなかった。

 僕は当直室での寝起きのときにも寝つきが良いほうではない。談話室では既に起きている何人かの生徒が集まって雑談に盛り上がっていたようだった。どうやら目覚めが早かった子たちで集まるような感じで過ごしていたようで、ちゃんと睡眠はとれていたようだった。夜更かしをしていたのは僕だけだったようだし、眠そうなのも僕だけなんだと思う。

 特に何時に起きるとかは話していなかったけれど、僕の意識がはっきりしだした頃にはみんな目を覚ましていて、何人かはベッドメイクまで始めていた。

 

「いや、凄い。ベットメイクとかできるんだ……?」

「用務員さんおはよー」「穂乃村が知ってたから真似してやってるんだ」「用務員さんって意外と朝起きるの遅いんすね。遅刻っすよ」

 

 いやいや僕は寝坊したわけじゃないから、と軽く返すと生徒たちも軽く笑った。小さなやりとりだけど、普通の生活から離れて不安になりがちな状況。体調を崩したり精神的に辛かったりしていてもおかしくない。この子たち自身もそう思っているようで、離れた位置で座っている子に積極的に声をかけてるグループもいたりする。ちゃんとしているように見えて、みんな学生だから元気そうに振舞っていても、じっとしているだけでは悪い方へ考えてしまうかもしれない。

 さっきまで集まっていた早朝に起床したグループに声をかけて、何かできそうなことはないかと話すと驚くようなことを言われてしまった。彼ら彼女らいわく気分転換に一番優れているとオススメされて僕がみんなの前に立って声を上げる。

 

「というわけで、朝練がない組の運動不足解消や、文化部の健康のためにもラジオ体操をすることになりました」

「「「「林間学校の朝の流れみたいになってる!!!!」」」」

 

 本当に課外授業みたいになってるんだけど、それは意識しているというよりも学生がまとまって行動するのに一番やりやすい方法なだけなんだろう。先生たちによって、ちゃんと考えられているんだなって思う。

 

 

「朝練ないの楽だわー。やんねーと不味いのはわかるけど、こういう朝を味わうとダラダラしたくなる気持ちがわかる」

「そうは言いつつお前とか休みの日も早起きしてランニングしてるじゃん。休みの日は寝とけよ」

「習慣になっちまうと勝手に目が覚めるからしゃーないだろ。運動してねーと次に運動するのがキツくなるじゃん」

「そこでちゃんとやるんだったらダラダラ過ごすのに向いてねーよ」

「ちょっと男子ー!! よし、一度言ってみたかったセリフが言えて満足したわ」

「真面目にやりなよとは言えないもんね。みんな喋りながらしっかり体操してるし」

「ぜーっ……ぜーっ……真面目に体操しても私はたいりょくがついていかないー……」

「体操で息切れするのは、絶対に運動不足なんだからがんばれがんばれー」

 

 

 いっちにーさんしー、と声をあげつつ運動部組に身体の動かし方を教えてもらいながら周囲の様子を観察する。帰り際のミュールさんに頼んでいた朝起きて顔を洗うための洗面所の準備や、朝食の用意のために談話室の外では少し騒がしい音がしている。ラジオ体操をしている生徒の中には、動きながら魔法で作ったと思われる水の球体に顔を突っ込んで洗顔している子とかもいるようだ。体操しながら顔を洗うのは危ないので、後で注意しておかないといけないかもしれない。

 夕食と変わらない朝食を食べながらトイレに行きたい子はいないか確認したり、談話室の外で待機していた鎧の騎士にこれからの動きについて打ち合わせたりと細々としたことをすませていく。夜のうちに話がついていたのか騎士の態度も落ち着いたものに変わっていた。昨日の今日の変化だったので少しびっくりしたけれど、態度が柔らかくなったうえで謝ってもらったので、根に持つのも失礼だろう。これから話をするうえで、仲が悪くなっていては困ることも多いはず。大人として、しっかりと謝罪を受け入れた。まあ、言ってたことは魔力がないとか用務員って何なんだとか僕がわざわざ怒るようなことでもなかったからなのかもしれない。生徒たちへの罵倒だったりしたら、すぐには許せなかっただろう。

 

 みんなの支度が整ったところで、ミュールさんが入ってくる。昨日とは違う儀礼用に見える赤い布を何層も重ねたような衣装。頭には夜にはなかった金細工の皇冠。昨日と同じく左右と後ろには騎士が定位置を保って立っている。

 

「おはようございます。ミュール・ドライアドール・アレイシア様」

 

 こういうときに最初に喋るのは立場が高い方か低い方かわからない、と思いながら僕は正装を整えたミュールさんに話しかけた。

 その辺りも踏まえて、僕たちと異世界の人たちとでこれから先のことを調整するために。

 

 

 

 





出席番号7番
 大山大吾 将棋部
「将棋部って人が集まんないから一緒に指してくれたりしたね。用務員さんは全然強くならなかったけど、いちから勉強してくれたことは忘れないよ。事実上の将棋部顧問だ」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。