クラス転移に巻き込まれた用務員だけど、生徒たちがみんないい子   作:匿名

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でも、俺たちには関係ねえって言っても、ちゃんと頼まれると断れねえよこれ

 

 

 

「魔王っていうから、てっきり銀髪理知的イケメンとか美少女とかだと思ってたっ!」

「あんたのそれは偏りすぎでしょ。というか、ラノベやマンガの読みすぎ」

「異世界召喚ファンタジーのノリじゃないよね。どちらかというとハリウッドなSFって感じ」

「どうやって隕石が降ってくるってわかったんだろ。天文学進みすぎとか?」

「進路を逸らして魔力を削ると無くなるっていうけど、物理的に石そのものは残るよね」

「そもそも降ってくる隕石に攻撃って言ったって、距離とか位置とかどうするの? 計算するの?」

「昨日、即座に複数の国が壊滅したって言ってたけど流星群が直撃したってことなのか?」

「あーっ! わかんないことが多すぎ! この話は調べてまとめてから話そうよ!!」

「「「りょうかーい」」」

 

 

 生徒のみんなが一斉に喋りだすかと思いきやすぐに落ち着いていく。突然の話に混乱してしまってざわついてしまっただけで、ミュールさんの話を遮ってしまったことを謝ってから話が進んでいく。

 言い伝えや対処法をまとめると、やっぱり隕石みたいに宇宙から落ちてきてそのまま国に直撃して滅ぼされている、という話らしい。どうして国に直撃するのかというのは隕石に込められた膨大な魔力が関係してるらしいというのはわかっているけれど、詳しくは不明。帰宅方法である帰還の儀は魔法を使った後にあふれ出す膨大な量の使用済み魔力みたいなものに儀式そのものに使う魔力があれば機能するらしい。だから儀式が出来るミュールさんと騎士たちがいて、生徒のみんなが魔法を使い続ければ今からでも帰れる可能性はあるとミュールさんは言った。魔王を倒さなくても、帰ることができなくもないと。

 

「そのうえで、私たちに謝らせていただけますでしょうか。本来無関係である皆様を巻き込んで、私たちのために協力してもらいたいと押し付けたこと。そして、生徒のみなさまとヨウムイン様を無理に引き離そうとしたことを」

 

 ミュールさんは目を伏せ頭を下げる。騎士たちも合わせるように一斉に足を整えてお辞儀をする。

 

「突然のことだったと思います。この世界にいきなり召喚されるということがみなさまにとって望ましいことではないと理解したうえでアレイシアは、召喚の儀を行いました。私たちにとって必要となる大いなる魔力も望んで得たものでないことも、みなさまの反応から察することができました。まことに申し訳ありません」

 

「そのうえで、重ねてお願い申し上げます。どうかアレイシアを魔王の危機よりお救い下さい。このままでは国を、家を、故郷を失うことになる私たちに慈悲を頂きたいのです。代価として差し出せるものは何でも差し出します。どうか、どうか……」

 

 静かな室内にミュールさんの嘆願が響いていく。

 いや、静かなようでいてわずかに音がミシミシと鳴っていた。それは、騎士たちの握りこぶしから。食いしばった歯からだ。泥をかぶるのは自分たちだと言っていた彼らが、ミュールさんの助けになることができていない無力感に苦しんでいるのが、僕には心からわかる。誰かの力になりたいと頑張っても、その人の足をひっぱることしかできなかった自分への情けなさ。何も成しえなかった自分への憎悪。恩を仇で返すような愚かさへの怒り。どれも僕には染み入るように知っていた。

 

「よ、用務員さん……」

「うん」

 

 対応に困る生徒のみんなに短く応えると、僕は前に出る。心は決まっていた。

 

 

「(異世界召喚ものだと引き受けることになるんだけど……どう?)」

「(ど、どうするんだろこれ)」

「(でも、俺たちには関係ねえって言っても、ちゃんと頼まれると断れねえよこれ)」

「(向こうも国家規模の大災害のために無理言ってたってことだし)」

「(俺たちに求めてるのも、規模が大きいけどスコップ使った土木作業みたいなもんなわけで)」

「(そうなると、やっぱり引き受けておくべきだよね)」

「(うん。やっぱりそうなるよね)」

 

 

 一人の佐伯市立高校用務員として、きっぱりと僕はミュールさんたちに。

 

 「断ります。子供たちの大事な命を危険から守るために、僕たちは働いています。ですので、私にできることは生徒のみんなが無事に帰るために協力することまでで、彼らに危険が及ぶようなことに協力することはできません」

 

 一国を代表したミュールさんに、生徒たちを守る大人としての立場を示した。

 

 

 

 





出席番号9番
 小田剛 サッカー部
「用務員さんって意外とサッカーできるんだよな。下手だけど楽しんでボールに喰らいついてくるっていうか。へとへとになりながらも俺たちとのサッカーを楽しんでくれてるのがわかると、悪い気持ちにはなんないよな。また一緒にサッカーしてぇなぁ」

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