やってしまった感が否めない…!
…ハァ…。
不幸だわ…。
おはよう。私の名前はリイン。
忘れている方も多いんじゃないかしら?
…って、誰に言ってるのかしらね…。
今、私はクエスト地に向かうために龍車に乗っている。
ギルドからのお達しで、クエストに参加出来る上限の四人で挑むためだ。
他の三人とは現地で会う事になっている。
…それにしても、本当に不幸だわ…。
あのカモネギからおさらばしたまでは良かったんだけど…あの後から色々と不幸な事が多過ぎる気がするわ…。
人や流通の多いバルバレと言う所に行こうとしたら、ダレン・モーランとか言う変わった古龍に襲われて。
武器や防具が無かったから、インナーで追い払ったのをギルドに目をつけられて。
しつこいギルドの勧誘から逃げていたら我らの団と言う旅団にスカウトされて。
雰囲気が良かったからあっさりと承諾して。
見た事も無い変化を遂げた豚猿を狩り倒して。
その原因のモンスターを追って。
謎の竜を一匹、やっとの思いで倒して。
かと思ったらもう一匹を倒せとギルドから言われて…。
…本当にもう、散々だわ…。
しかも、つい最近見つかったブラキディオス亜種との同時狩猟って…。
ギルドのクソヤロー共によると「万全の体制で挑みたいから、お前は強制参加」だそうだ。
…私…切れても良いわよね…。
それに、私的にはゴア・マガラよりブラキ亜種の方が恐ろしいわ…。
もう2回もブラキ亜種に会ったけど、どっちも有り得ない変化を遂げていたもの…。
一匹目は…なんと言うか、弄ばれていた感じだったわ。
幸い、何故か直ぐに勝てたけど…絶対何かあるわよ…あれ…。
二匹目は、在ろう事か水中から出てきたのよ。
どう考えても異常じゃないかしら?
…一応、アグナコトル等の前例があるから、納得は出来なくも無いけど…。
あれから色々考えてはみたけど、この先、絶対に相手にしたく無かったのよね…。
なのにそれが強制参加だなんて…。
…駄目駄目。こんなにネガティブになってたら"表"にも影響が出ちゃうわ。
そんな事を考えていると、龍車の番をしていたアイルーから声をかけられた。
「ニャー?にゃにか悩みごとでもあるのかニャー?」
「…なんでも無いわよ。」
「ニャー…それにしては顔色がすぐれないですニャー。
やっぱり、今回のクエストは難しいですかにゃ?」
「そうね…苦戦しそうではあるけど、負ける気は無いわ。
これでもベテランで通っているの。
失敗なんて恥ずかしいじゃない?」
「…そんなもんですかにゃー…。」
「そんなもんよ。」
それに、私の事を唯一理してくれている"彼"も来るしね。
彼にだけは悟られないようにし無いと…。
…いつからかしらね、あの人にここまで惹かれたのは…。
私の表を一目で見破った時?
バレた後も変わらずに接してくれたから?
唯一気を許せる人だったから?
…いえ、多分全部ね。
いざという時、少しでも抵抗出来るようにと入ったハンターの学校で出会ってから、気がつけば彼の側にいた。
家が貧しくて、両親が死んで、借金が出来て、どうしてもお金が欲しくて、でも仕事が無くて。
娼婦だった母親譲りの美貌を利用して男に取り入る事を覚えて。
相手を騙すためについていた嘘が、いつの間にか仮面のようになって。
調子に乗って取り入った男が大物の闇ギルドのマスターで。
散々な目にあって危機感を覚えて。
それからというもの、どうしようもなく凝り固まった仮面を作ってしまって。
…もうどうにでもなれ、と、この世界の残酷さに挫けそうになって、打算的に入った学校に入った時。
彼が現れた。
彼は私の仮面をあっさりと外してこう言った。
『お前のして来た事は当分許せねぇ。
別に男を誑かした事を言ってるんじゃねぇぞ?
お前が、お前自身を偽って来た事が許せねぇんだ。
どんなに不幸な出来事があっても、自分を偽ってしまったらそれまでだ。
自分を偽っている限りは絶対に立ち直れねぇんだよ。
…まぁ、全部爺ちゃんの受け売りだけどな。』
…最後で台無しにする辺りが彼らしいわね…。
けれど、私は彼の言葉に救われた。
だって彼は許してくれたから。
そして同時に叱ってくれた。
親が居なくて、止める人が誰もいなかった私を止めてくれた。
それは私にとっての道しるべにもなった。
そんな事があってから、私は事あるごとに彼の所を訪ねていた。
自分を偽って男を騙していた時、愛なんて微塵も感じなかった。
みてくれだけのハリボテに簡単に騙される。
そんな男共を愛する事なんて出来る訳が無い。
…愛を知らなかった私は、恋も知らなかった。
だから、彼を訪ねる理由が恋心だったなんて、あの時の私は思いもしなかっただろう。
それに気づかず、簡単に離れてしまった後でやっと気づいたんだ。
偽る事が癖になっていた私は、いつの間にか自分自身の心も偽っていた。
バルバレに来てしばらくした後、突然涙が出てきた。
二日間、訳も分からずに泣いて、旅団の皆にみっともない所を見せて、心配されて、嗚咽の混じる声で相談して、皆に笑われて…。
「お前さんは恋をしとるんだな!いやはや、こりゃめでたい!」
と、団長に祝福されて。
…今思えば、私はとんでもない惚気話を口走っていたのだろうか?
そうでなければ、あんな風に笑われないはずだし…。
…あぁ、恥ずかしい…。
…と、まぁ、こんな風に色んな事があったのだ。
停滞していたあの日々が嘘のようだ。
毎日を生きて過ごすのがとても楽しい。
もう、あの時のように溜め込んだりはしない。
自分自身を偽る事もしない。
あの時、彼に出会ってから、私はこんなにも変わっていった。
嘘のようで本当な毎日を過ごす内に、私はある決心をした。
私から彼に告白する。
するのはこのクエストが終わってから。
だからやり遂げる。絶対に。
弱音なんて吐いてられないもの。
「…よしっ。」
「にゃ?いい顔ですにゃ♪悩みが解決したようでにゃによりにゃ♪
それと、もうすぐでつくから用意するといいにゃ。」
「わかったわ。ありがとう。」
「どういたしましてにゃ〜」
…さぁ、私の負けられない戦いが始まるわ…。
彼女の恋が実るといいですねぇ…。
一応ヒロインですし。