マグマの温度は800度から1200度位あるらしい。だがそれは現実の話であって、この世界におけるマグマの温度はそれよりも遥かに高いと見ていいだろう。何故なら、あの超人さん達ですらダメージを受ける程なのだから。
…そう、阿保みたいに高いのだ。それはもう、ボート代わりに乗っている卵の殻を溶かし始める程度には。
という訳で瀕死である。溶けた卵に穴が開き、ズブズブと沈んでいる。へるぷみー。しかし、無闇に動けばイビルジョーにパクリである。どうしろと。
粘性の高いマグマは底なし沼と同義だ。足を突っ込んだだけで抜けなくなり、尻尾まで浸かれば先ず脱出は不可能。よって俺は、意地で卵の淵に立っている。情けないにも程があるが、他にどうしようも無い。
あ、イビルこっち見た。あはは〜楽しかったなぁ…いや、楽しく無いね。なんでこんなしょうもない走馬灯見なきゃならん。…うわ、そう言えばガキの頃こんな事あったな〜…はは。
…ふぅ。さて、走馬灯も終わり、呆気なく俺の第二(?)の人生(?)も終わりを迎えて…。
「グルル…」
…思ってたより痛く無いんだな。死ぬ時ってこんな感じかぁ…。…んな訳ねぇじゃん。あれ?なんで俺喰われて無いの?なんでそんな躊躇してんの?もしかして助かったとかそんな感じか?
…あぁ、よく考えてみたら、こいつマグマで皮膚焼かれてたじゃん。流石の超生物と言えど、この高温には耐え切れないのか?
…よし逃げよう。全力で逃げよう。俺は意を決してマグマにダイブ。甲殻の焼ける嫌な音を聞きながら、全力で向こう岸までもがく様に泳いだ。
岸に付き、それはもうアドレナリン全開の状態で這い上がり、ボタボタと身体から流れ落ちるマグマすら気にせずに岩陰へと潜り込む。
そこでプルプルと震えながら潜むこと数分。イビルは重々しい足音を立てて去っていった。…穴を掘らずに何処へ行ったのだろうか…。もしかしてウロコトルのいたあの断崖絶壁か?…イビルヤベェ。ラスボスヤベェ。あんな所ですら歩けるんですか。流石ですね。…悪魔ェ…。
助かった…まぁ、一先ず助かったのだろう。身体中にマグマがへばり付いたせいで、物凄く動き難い事を除けばだが。
…不幸だ…。普通、ここは親が一番先に出会う存在でなければならないのに、それがあの悪魔だとは…。恐らく、あの卵の親は喰われたか逃げ出したに違い無い。あんな怪物相手にしたら普通逃げる。俺だって逃げる。あんなもん相手に出来る訳が無い。
さて、ヘタレるのはここまでにしよう。
俺はなんとかあの悪魔から逃げ切った。逃げ切ったが…割と問題は山積みである。どう暮らすだとかどう生きるだとかは一先ず問題じゃ無い。人間より遥かに頑丈なこの身体ならば、雨晒しだろうと眠れるだろう。今、最も問題なのは…。
「(ギュルルルルルゥゥウ……。)…。」
…飯だ。有り体に言えば餌。兎に角腹を満たす物が必要である。割と、と言うよりかなり切実な問題だ。…また死にそう…。
飯…ブラキディオスは確か肉食だった筈だ。
だがしかし、その肉を喰うにはイビルを倒さなければならない。…何その無理ゲー。…いや、そう悲観する事も無いかもしれない。幾ら空腹だと言っても、今すぐ死ぬ訳では無いだろう。
だったら行動あるのみだ。俺は意を決してイビルの後をつける。もしかしたら食残し位は残っているかもしれない。
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…これは…酷い。何が酷いって、その食残しの多さがだ。多分、あの小さな口では全てを喰らうのは無理だったのだろう。地面に落ちた切れ端…様は頭や尻尾…から見るに、文字通り一噛みで腹の辺りを持っていたに違いない。そして逃げ出さないように顎に力を込め…この有様といったところだろう。…エッグイな。
…まぁ、何だ、さっきまでイジメも良いところな歓迎をして来た奴等が、こうも容易く食い散らかされると、割と堪える。…どんだけ強いんだイビルジョー…。
まぁ、おかげで物が食える。本来なら感染症だとか寄生虫だとか気にする所だろうが、ぶっちゃけそんな物気にしていられない。そもそも今の俺はモンスターだ。この程度で腹を壊すとか先ず無いだろ。寧ろ有ったら有ったでこの世界のモンスターは例外なく絶滅している筈だ。流石に人間は無理だろうが。…いや、まてよ?確か生肉でさえ食ってしまえるスキルが有ったような…。…止めよう。ハンターの人外さをこんな所で再確認したく無いわ。
さぁいざ実食…と行きたかったが…。強烈な酸性を含む唾液のせいで、殆ど食べれる所が無い…。辛うじて嘴とか尻尾とかが食える程度だ。ふっざけんなイビルジョー。
しかし腹が膨れただけ僥倖だ。いや、ホントにマジで。例え初の食物がイビルジョーの食いかけだとしても、餓死するよかマシだ。
さて、飯が食えた所で寝る場所を探そう。死ぬ気で行けばあのマグマの川も渡れるみたいなので、さっき隠れたあそこで寝ればいい。…探す必要無かったな。
本音を言えば眠りたく無い。起きてみればイビルの腹の中とか死んでも嫌だ。…って、死んでんじゃん。腹の中=バッドエンドじゃん。…いやいや、そうじゃ無い。そういう事を言いたいのではなく、純粋に寝るのが怖いのだ。かといって寝ない訳にもいかない。起きていれば起きているだけ体力を消耗するからだ。
俺は寝床まで泳ぎ、何時もの癖で枕を手で掻き寄せようとして…枕が無い事に気付いた。仕方が無いので丁度いい岩を両腕で抱え込んで寝る事にする。
…あ、これいいわぁ…。程よく暖かくて…尚且つジャストフィット。うん、よく寝れそうだ…。
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頭にクリティカルヒットした噴石に叩き起こされ、若干不機嫌になりながらも起床。…クソ…今度寝る時は穴でも掘って寝よう…。
…さて、これからどうしようか。