もんすたーな世界にもんすたーで転生?   作:ひなあられ

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遅くなってすいませんでした。


ある夫婦の会話。

ー朝ー

辺りに柔らかい光が満ち、冷えた空気をゆっくりと温めていく。

立ち並ぶ木造の家々は寝静まり、物音一つ聞こえない。

 

ここはハンター達の集う場所。ギルドに保護された特殊地域である。

建てられた建物はどれも同じ形をしており、長方形に一つのドアと窓しか付いていない。

唯一違うのは表に出された小物と表札くらいだろうか。

 

突如として静寂が破られた。

 

破った主は一人の女性。

流れるような黒髪、端正な顔立ち、均等のとれた身体つき。

道行く人々の八割は振り返るだろう絶世の美女である。

 

昼間は人の熱気が漂うであろう大通りの真ん中を、騒がしい足音と共に駆けていく。

その足音は『アルン』とかかれた表札の前で止まった。

…何故かその下に『リイン』とかかれた表札が強引に打ち付けられているが…。

 

 

「アルン!」

 

勢い良く開けられる扉。

何度もそのような開け方をされたせいか、壁にドアノブの跡がくっきりと付いている。

 

「んぁ?なんだよこんな朝っぱらから。前にも言ったが、俺の親に挨拶とかはしなくて良いんだぞ?」

 

面倒くさげな声と共に成年の男性が起き上がる。

端正とは言えないものの、それなりに整った顔立ちをしていた。

会話から察すると二人は夫婦らしい。

 

「そっちじゃ無いわよ!それもしなきゃいけないけど、これの方が重要よ!」

 

「あぁ、するんだ…面倒クセェ…。ん?おいおい、クエスト用紙を持ってきちゃダメだろ。」

 

「だーかーらー!よく見なさい!」

 

「あー、はいはい。…なになに?シュラノワール?黒闘竜?なんじゃこりゃ?」

 

「…はぁ〜…。なんでこんな抜け作が私の夫なのかしら…。その下の説明をよく見なさいよ…。」

 

「下?…えーと…。砕竜に酷似した近似種?…あっ!」

 

「そうよ、リベンジ戦が出来るって事よ!」

 

「成る程ねぇ…。でもまぁ、今直ぐには行かないけどな。」

 

「…当たり前でしょ…。この前見たアレを超える強さなんて、私達には無いんだから…。」

 

「へいへい。んで?ならなんでこれを見せたんだよ。」

 

「えーと…あまり詮索し無いって約束してくれる?」

 

「?わかった。約束する。」

 

「…ハァ…。(私の言う事を無条件で信じてくれるのは嬉しいんだけど…もう少し心配ぐらいしてもいいじゃない…。)」

 

何かを含んだ溜息と共に、その女性はある組織について語り出した。

 

「実は、そのモンスターを密猟しようと言う計画が何処かで進められているみたいなの。

まだ何処の組織かはわからないけど、その情報が本当だとしたらとても許される物では無いし、貴方の目標でもあるって言ってたから…。」

 

「…何だと?(組織の野郎共、俺の嫁になんかしたんじゃねぇだろうなぁ?今度レイスターさん呼んで壊滅させるか…。)」

 

嫁が嫁なら旦那も旦那。

言外の会話のいちゃつきっぷりが半端ない。

この夫婦に自重の文字はあるのだろうか?

 

「ほら、あの時ハンマー使いがいたじゃない?」

 

「…いたっけ?」

 

「居たの!…あいつの口調が組織の下っ端っぽい口調だったのと、ハンターランク以上の武器を持っているのが気になって、あの後尾行したのよ。

そしたらハンター街を出て有名な裏組織の扉を潜っていったわ。

十中八九スパイと見て間違い無いわね。」

 

「…どうやって計画を知ったんだよ…。」

 

「詮索は無しって言ったでしょ?

あえて言うなら昔の技術をちょこっと…ね。」

 

「おー怖。

で?なんでその計画の話を?」

 

「…今日、朝一で大老殿からお誘いがあったわ。

これがその手紙。」

 

「んー?何々?

『貴殿たちに依頼した黒闘竜の続報をここに記す。

読んだ後は直ちに処分せよ。

匿名からの通報で、悲しきことにギルド内に裏切り者が存在する事が判明した。

その者を捕らえ尋問を行った所、最近話題となっている黒闘竜を密猟する旨の発言があった。

現在のギルドナイトは、この問題に対処出来る程の人員を動員する事が出来ない。

よって『古龍喰らい』を中心とする特殊部隊を結成。

その際、『古龍喰らい』本人が貴殿たちの同行を求めた。

大変特殊な事例ではあるが、ギルドナイトはこれを許可。

参加するかしないかは貴殿たちの判断に任せる。

金色に輝くリオレイアが全容を見せた時、闇の暗殺者がそちらに向かう。

参加する場合は万全の状態で戸口に立っていてくれ。

以上だ。』

…何だこりゃ?集合時間が意味不明だな。

てか、この匿名の通報って…。」

 

「私に決まってるじゃない。

それよりも行くの?行かないの?」

 

「行くに決まってるだろ。

密猟なんざあってたまるかってんだ。

もしかしたらレイスターさんの戦いが見れるかもしれないしな。」

 

「わかったわ。

なら今のうちに準備しちゃいましょう。

今日の夜にお客さんを待たせちゃったら悪いからね。」

 

「え?集合時間わかったのか!?」

 

「誰でもわかるわよ!

今夜月が登りきった時に黒い馬が引く馬車に乗れって事でしょ!

子供でもわかるわよそんなこと!」

 

「え?え?」

 

「とにかく!さっさと用意する!」

 

「は、はいぃぃ!」

 

こうしてこの家は喧騒に包まれた。

男の面倒くさがるような声と、女の叱りつけるような声。

まるで何年も過ごした夫婦の会話だ。

 

 

彼らはまだ知らない。あの竜の本気を。

彼らはまだ知らない。あの竜の異常さを。

彼らはまだ知らない。あの竜の怒りを。

そして知ることとなる。その全てを。

 

だがそれはまだ先の話である。

 

あの竜の全てを見た時、彼らは何を思うのか?

それはまだ誰にもわからない事である…。





二人のプロポーズについては、多分何処かで書くと思います。
作者はリア充でないため、リア充の思考がワカリマセン。
文書構成におかしな所があっても、目を瞑って貰えれば嬉しいです。
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