一晩ぐっすり眠って朝。
リーロックさんの容態も安定し、再発症の恐れも無いと考え、出発の時となった。
今はおっさんと情報交換中である。
「狂竜ウイルス?それがリーロックの掛かった病気か?」
「多分な。原因はある竜。
ゴア・マガラっつー名前だ。
特徴は厨二臭い言動と真っ黒な体。
ヒラヒラマントみたいなボロボロの翼と、古龍にそっくりな骨格を持ってる。
見た事無いか?」
「…!あぁ、あるぞ!確かトサカの引きこもり野郎の方向に飛んで行った!
…となると…危ねぇな。
あいつらは基本密集して行動してやがる。
そんな所で感染が起きたら、一瞬で全滅だぞ!」
「…トサカ野郎?」
「ん?知らねぇのか坊主。
ここからずーっと西にある樹海に住んでる、セルレギオスっつー名前の飛竜だ。
狂暴と言うより凶悪って感じの奴らでな、他の竜や人を見かけた途端、阿呆みたいに鋭い鱗を飛ばして来るんだよ。
まぁ、奴らのテリトリーにさえ入らなければ、比較的大人しい部類に入るんだがな。」
「…あぁ、上空を絶賛群れで通過してるあいつらか…。」
「…は?」
俺がそう呟いた途端、地面に幾つもの影が出来る。
やがてそれは地上を埋め尽くす程の黒い影となり、昼間だと言うのに夜のような状況になった。
見上げれば無数の飛竜が集団で移動しており、一定の距離を飛んだ後、散り散りに飛び去っていく。
「な、なんだってんだありゃあ!?
あいつらは滅多にテリトリーを出ないんだぞ!?
何でこんな…っ!坊主!危ねぇ!」
「んぁ?」
ガキキキカキキキキキキキキキン!!!
降り注ぐ刃の雨あられ。
いつの間にか、上空を旋回していたセルレギオスの群れが、俺に向かって一斉射撃を行ったようだ。
俺をドーナツ状に旋回している為、俺の真上は青空が広がっている。
…俺に悟られないようにしたんだな、これ。
「…」
「お、おい、大丈夫かぁ?坊主。」
「…うん、モーマンタイ。無傷だ。」
「そ、そうか。」
少しの間様子を見ることにする。
すると、一匹のセルレギオスが、全身を松ぼっくりの様に逆立てて俺に突っ込んで来た。
…何故に臨戦態勢?
俺、なんかしたか?
「おい、坊主。気配を消す位しろよ。
んな事してたらあいつらの気に触れるだろうが。」
「何それ、気配とかってあんの?
俺、もっぱら嗅覚とか聴覚に頼ってたんだが。」
ドグオゥッ!
「グギャァァアア!?」
襲ってきたセルレギオスを横殴りで吹き飛ばし、更に緑化粘菌で黙らせ(物理)つつ、おっさんに続きを促す。
飛んで行ったセルレギオスは、樹林に激突。
そのまま森の一部と化した。
便利だな、緑化粘菌。
「龍脈で自分を覆うようにして隠れるんだよ。
まぁ、攻撃されてる間は意味ねぇが。」
「先に言えよおっさん。
どーすんだこれ。」
「…坊主なら大丈夫だろ、うん。」
「なんだその根拠のない自信。
これでも結構ピンチなのになぁ…。」
今度は二頭同時に襲って来たので、爆破粘菌を使い一纏めに黙らす(物理)。
セルレギオスは黒焦げになりながら宙を舞い、前方の樹林へダイブした。
「圧倒的に有利じゃねぇか、坊主。
こんなゴミ屑みてぇに吹っ飛ばされる奴らじゃねぇんだが…。」
「へー。こんな軽い突進かます奴らがねぇ…。」
四頭のセルレギオスが、タイミングをずらして攻撃してきた。
前方二頭が横っ腹に突進を、後方二頭が鱗を飛ばす。
いい加減殴るのが面倒だったので、最大咆哮を放って吹き飛ばしておいた。
セルレギオスは全方位に吹き飛ばされ、またもや樹林にダイブする。
…いっそ一纏めに散らしちゃおうか。
鉄鉱石どこだ?
「確かにこの程度、俺も全滅出来るけどよぉ…。
そこまで軽々とは出来んぞ。」
「(ズボッ!)あ、出来るんだ。
その割に氷海で死にそうになってたね。」
「ありゃしょうがなかったんだよ。
あのハンターとやり合う前に、変な棒切れ振り回して光線を撃つ奴と戦ったんだからな。
ったく、なんだったんだあの光線は…。
龍脈エネルギー纏って無かったら貫通してたぞ…。」
「(モキュモキュ)…それって、転生者じゃねぇの?
ほら、呂布…じゃ無かった、ラオ爺が引きずってたモザイク。」
「なんだそりゃ?俺はラオの老師とはここんとこ会ってねぇぞ?」
「(バチッ…バチッ…)あ、あの時おっさん居なかったんだ。
悪りぃ。勘違いだったわ。
多分ミラルーツが言ってたと思うけど。」
「…そういやぁ…そんな事聞いた記憶が…。
って、坊主、何してんだ?鉄鉱石の塊なんざ食って…。」
「(ペッ…バリッ…バリッ…。)んー?あぁ、これ?
こうするんだ…よっ!」
ゴッッーーーーーッッッツオオオオオオオオォォォォォォンンンン!!!
レールガンを超えた、レールガンのようでレールガンじゃないレールガンのような何かが、セルレギオスの群れを穿つ。
この前のアレは予想外の物が出来上がったせいで、全力とはいかなかったが、今回は違う。
正真正銘全力の一撃だ。
弱まった状態でさえ闘技場の床を全て蒸発させたそれは、圧倒的威力を持って天を貫いた。
貫通した箇所は群のど真ん中。つまり一匹のセルレギオスも居ない。
だが。
それが超威力のレーザーだと話は変わる。
凄まじい熱量によってレーザーの周りに白い輪が浮かび、衝撃波が空気を割いていく。
輻射熱と衝撃波を伴う強烈な突風。
そんな物を飛行中に受けたら?
それは古龍でもない限りバランスを保つのは難しいだろう。
つまり、セルレギオスがどうなったかと言うと…。
「おいおい、なんだよそりゃあ…。
いつの間にそんな技覚えたんだ?セルレギオスが全滅じゃねぇか。」
「偶然出来た技だよ。
一応闘技場の床ぶち抜いたヤツだから、威力は折り紙付きだと思う。」
一匹残らず空から叩き落とされ、樹林に墜落していくセルレギオス。
レーザーに近過ぎたのか、体が焦げた個体もいる。
…自分でやっといて何だけど、不憫だなあいつら。
「…あぁ、そう。
んで?どうするんだ坊主?」
「…この大群の原因を探してみる。
あのゴキブリ野郎をかっ飛ばすまで諦めんよ。」
「そうか…気をつけろよ。」
「へいへい。そんじゃまたね。」
「おう!またな。」
おっさんに二度目の別れを告げて、セルレギオスの大群の元を探すべく走り出す。
墜落したセルレギオスを飛び越えながらダッシュだ。
…後ろでおっさんがセルレギオスと戦ってる…。
復活したセルレギオスに襲われてんのか…悪い事したな…。
って、おっさんも一撃で倒してんじゃん。俺と大差ないじゃん。
あ、おっさんの背後を取ったセルレギオスが黒い何かに引かれた…。
うん?…あれって…リーロックさんかよ!?残像しか見えないんですけど!?強すぎたろリーロックさん…。
…まぁ、あの夫婦は問題無さそうだな。
さーて、こっちはこっちで何かするか…。
ーーーーーーーー
「200匹目!」
「ザギャァアアア!?」
…多いな…。
できるだけ多く潰しておけばあっちの負担も減るだろうし。潰しておいた方がいいんだろうけど、いい加減面倒になって来た。
てか、多くねぇかこいつら!?
どんだけいるんだよ!
俺の通った道が黄土色に染まってるんだぞ!?
しかもまた来たし!龍脈で隠れる事も出来ないじゃん!
あぁもう面倒くさい!全力全開!
「ゴァォァァアアア!!(狂竜粘菌解放!)」
スッ…。
右足を一歩前に。
全身の筋肉を緊張させ、ダッシュの姿勢を取る。
爆破粘菌を発動し、爆発寸前まで溜め込む。
それらを一気に解き放ち、全力のダッシュを開始する。
ドガンッ!
大地を吹き飛ばし、一歩で長距離を爆走…と言うか、低空飛行する。
上から降り注ぐ鱗も、突進してくるセルレギオスも俺を捉える事は叶わず、どんどん後ろに引き離していく。
セルレギオス達が慌てて俺を追うが、全く敵わない。
むしろ衝撃波にやられて吹き飛ばされている。
…やっぱり爆破粘菌使っても空飛べないなぁ…。この体重が問題か…。
だけどそのおかげで、慣性の法則により一歩で長距離を進めている。
こういう時重いのは便利何だけどねぇ…。戦うときは重心移動で何とかなるし、尻尾も使えば立体起動も出来る。
だけど、空を飛ぶのは憧れるよなぁ…。あのぐるぐるコックも空飛べてたし、夢では無いと思うんだけど。
てか、どこまで続くんだこの大群。
このまま行くと、砂漠に出るんだけど…砂漠だけは勘弁だよ?
砂漠に関しては苦い思い出しか無いんだよ。
ディアブロスに返り討ち食らったり、迂回して水没林に迷い込んだり、飯は不味かったり…。
とにかく、いい事一つも無かった訳で。
…でも、あんましそういうの言ってらんないよなぁ…。
不死となると、居場所が問題になる。
その上で砂漠はもってこいの場所なんだよ。
誰も来ないし、住んでる大型の竜は少ないし、隠れる場所は多いし、何よりただっ広い場所だから自由に活動出来る。
これ以上に無い物件だ。
うん?よく考えてみたら、砂漠以外に住むとこ無さそうだぞ?
…まぁ、行ってから決めるか。
時間はたっぷりある訳だし。問題無いだろ。