もんすたーな世界にもんすたーで転生?   作:ひなあられ

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ある王国より第三王女

とある王国のとある城。

国の周りが砂漠に囲まれているせいか、砂色にくすんだその城から、今日も元気な…と言うより喧しい声が聞こえてくる。

 

「い〜や〜じゃ〜!」

 

「お嬢様ぁ!なりませんぞぉ!

この爺、命に代えても!お嬢様をお守りせよと国王様より承っておるのですからな!」

 

「爺はいっつもそれじゃ!妾はもう7歳じゃぞ!?一人で狩場に行くなど造作もないことじゃ!」

 

「ですから!それが駄目だと言っておるのです!

お嬢様にもしもの事があったら…。」

 

「爺は過保護過ぎるのじゃ!」

 

一人の少女…いや幼女と、一人の老人が言い争っている。

いつもの光景なのか、使用人達は苦笑いしながら通り過ぎていく。

新人のメイド達がオロオロしながらその様子を見守っているが、彼女達の立場では意見もはばかられるのだろう。

結局王女が諦めて、地団駄を踏みながら部屋に篭るのを遠目に見る事しか出来ていなかった。

 

『わがまま第三王女』

彼女はそう呼ばれている。

この国の民と違い、くすみの無い金の髪を持ち、その青い瞳は好奇心に溢れ、一時として留まらない豊かな表情をたたえている。端整な顔立ちとしなやかな体を持ち合わせ、健康そのものな彼女の周りには、いつも笑顔が絶えないのだ。

 

だが、そんな彼女にも悪癖が存在する。

それ故に、ハンターの間からは敬遠されており、『わがまま第三王女』などという不名誉なあだ名をつけられているのだが…。

 

その悪癖と言うのが…。

 

「何故爺はいつもわかってくれないのじゃ!?

ちょっと狩場に遊びに行くと言うだけじゃろう!」

 

これである。

部屋に篭った第三王女は、天蓋付きのベッドに潜り込みながら爺への愚痴を呟いていた。

ちょっと狩場に遊びに行く。本来なら考えられない発言である。

大の大人、それもハンターと言う特殊な訓練を受けた屈強な者達が、命をかけて向かう戦場。

それが狩場である。

 

そんな狩場に"ちょっと"行ってくるなど、正気の沙汰では無い。しかも"遊びに行く"なんて以ての外だ。

 

だがこの第三王女。幼い頃より、元ハンターだった国王に連れられて狩場に行く内に、狩場がすっかり遊び場のようになってしまったらしい。

父親に教えられた狩場で優先すべき行動を全て覚え、尚且つ自分自身で編み出したモンスターの対処方も合わさり、並みのG級ハンターよりも上の実力を持つ。

…まぁ、『狩る』では無く『逃走』『隠密』の面に関してなのだが…。

 

それ故に、モンスターに対しての価値観も常人より優れており、生温い現代育ちの転生者なんかよりもしっかりとした人生観も持ち合わせている。

 

絶える事無き好奇心と、圧倒的な行動力。

更には緊急時に冷静な対処と判断もできる。

上の二人の王女とは質の違う、言うなればカリスマを持っているのだ。

その為、『わがまま第三王女』と言われながらも、民からの好感は高い。

…それでもハンターからの評判は良くないのだが…。

 

「こうなれば、妾一人でも行ってやるわ。

しかし…どうしたものか…。

隠し通路は塞がれてしもうたし、窓のカーテンも外されてしもうた…。

ふむ…ならば…。」

 

数分ほどベッドに突っ伏していた王女だが、どうやら抜け出す妙案を思いついたらしい。

ベッドから前方宙返りしながら飛び起きた後、部屋の入り口のドアに駆け寄り、ドアの上の枠に陣取った。

 

「だ、誰かー!た、助けてくれなのじゃー!

服が、服が破けてしもうた!」

 

そして大声で叫ぶ。

勿論服なんて破けていない。

だが、王女の狙いは別にあるようだ。

 

『お、お嬢様ぁ!?』

 

『だ、ダメですよ!ここは私が行きます!』

 

『な、何を…。』

 

『お嬢様の裸を見たいんですか!?』

 

『…ぬぅ…。』

 

ギィ…。

 

「お嬢様!大丈夫ですか!?

…あれ?お嬢様ー?何処に…。」

 

「すまぬ、少々眠ってもらう。」

 

「え?」

 

無警戒にドアを開けたメイドの背後に音も無く着地して、後手に素早くドアを閉める。

そしてメイドの首筋へ迷い無く手刀を叩き込んだ。

 

トスッ!

 

「…キュゥ…。」

 

パタン。

 

「…さて、変装じゃ。」

 

ーーーーーーーー

 

「ふふ…上手くいったわ…。

やはり爺の奴、老眼が始まっておるのう。この妾の顔すらわからんとは。年寄りじみてるなどと言い訳をするからいけないのじゃ。」

 

この第三王女、もはやお転婆の域を超えているような気がする。

城に侵入するのは並大抵の事ではない。つまり、抜け出すのも同じくらい難しいという事である。

流石第三王女。俺たちに出来ない事を平然とやってのけた。そこに痺れも憧れもしないが。

 

「さて、これからどうしたものか…。

そうじゃ!久方ぶりに砂漠に行くとしよう!

こんなにも近くにあると言うのに、あまり出向かない事が多いからのう。」

 

余談だが、王女の服装はメイド服である。

丈を合わせる為に服を破いたようで、色々とアンバランスな服装になっているが、彼女は大して気しないだろう。

 

王女はハンターギルドの裏手にある龍車小屋に出向き、アイルーにマタタビをふるまってネコタクの契約を結んだ後、颯爽と王国を後にした。

ネコタクの行き先は道中でも決められる為、ひとまず王国を出る事を優先したのだろう。

かなり手慣れた手腕を発揮しているが、これも日々の積み重ねなのだろうか。お転婆の名は伊達ではない。

 

「にゃにゃ?さ、砂漠ですかにゃ?」

 

「そうじゃ。…マタタビはもうないからの。」

 

「にゃー…そう言う訳じゃにゃいんですにゃぁ…。

今砂漠は超限界態勢が敷かれてて、かにゃりあぶにゃいんですにゃ。」

 

「なんじゃその超限界態勢とは?」

 

「にゃにゃ。最近出来た新しい制度にゃ。

ここの所、開拓地の、それはそれは恐ろしい竜がこの地を転々としているそうにゃ。

確か『刻竜、unknown』…最近正式名が決まったらしいですが、にゃーは知らにゃいですにゃ。

それと、最恐の竜と名高いイビルジョーを超える竜の存在もあるらしいのですにゃ。

その名も『黒闘竜、シュラノワール』。戦闘力は未知数にして最恐。刻々と攻撃方法が変わる危険な竜として、ギルドか危険視している竜ですにゃ。

その竜が今まさに、砂漠へと足を踏み入れようとしているらしいにゃ。」

 

「なんと!?それは見てみたいのう!

猫!早く出発するのじゃ!」

 

「にゃにゃぁ!?はにゃし聴いてたかにゃぁ!?

今砂漠は立ち入り禁止!G級ハンターですら入れにゃい魔界と化してるにゃよ!?

しかも調査員ですら退避してる状況にゃのに、一介のネコタクのにゃーには無理にゃ!」

 

「好都合ではないか!

今ギルドの監視は薄いと言う事じゃろう?

さぁ、行くぞ猫!」

 

「…にゃ…にゃぁ…。

どうなっても知らにゃいにゃよ?

ベースキャンプに送ったら、にゃーはおさらばするにゃ。」

 

「それでも良いわ。

御託はいい。さっさと出発するのじゃ猫!」

 

「…リョーカイにゃ…。(給料が大ピンチにゃ…。)」

 

ネコタクの猫が世知辛い思考を始めた頃、砂漠に"あの"竜が足を踏み込んだ。

こうなってしまえば、彼女とあの竜の接触は避けられない。

その出会いが、後に大きな騒動を巻き起こす事も知らずに…。

 

余談だが、王女は王国を出ると同時に自身の身分を明かしていた。

既に逃亡の片棒を担いでいる事を自覚させ、引き返せないようにしたのだろう。

流石第三王女。あざとい。

 

ーーーーーーーー

 

クエスト名:

手に負えないお転婆達

 

場所:旧砂漠(昼)

報酬金:100000000z

クエスト成功条件:第三王女の救出

 

依頼者:第三王女付きの爺

内容:

お、お嬢様がまた城を抜け出してしまわれた!

しかも超限界態勢の敷かれている旧砂漠に!

お嬢様にもしもの事があれば、爺は、爺は…。

…ハンター諸君にお願いいたす。どうかお嬢様を救ってくだされ!

 

ーーーーーーーー





記憶が戻ってからのブラキさんに個性を与えています。
…まぁ、気付いた人は少ないと思いますが…。
この話にブラキさんは出て来ない?
細かい事は良いんですよ。

具体的に言えばまっさらであやふやな感じから、荒れて少しヤクザっぽく。見た目的にも、吊り上がった目が死んでおり、凄味が増しております。

次回…と言うより『カオスな露天商』の話から喋り方が変わって困惑している人もいると思い、ここに書かせていただきました。
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