狂心始動。
緑化粘菌を爆破粘菌へシフト。
竜菌核のチャージ停止。
…排熱機構起動。
ガシュン!…ドッッッツツ!!
立ち上る白煙が視界を塞ぐ。
夜となり、明るい満月が辺りを照らす。
朧げな光に白煙が煌き、霧となって拡散した。
世界から色が抜け、モノクロに変わる。
一歩、踏み出す。
鎖を出した転生者の背後が黄金に揺らめき、大量の武器が射出される。
その武器群は俺の体に触れると共に爆散。
転生者は勝ち誇ったドヤ顔を決めているが、頭おかしいんじゃなかろうか?
爆散したのは、武器が当たったからではなく、武器が触れた瞬間に粘菌が爆発したからだと言うのに。
勿論俺には傷一つなく、そのままもう一歩前へと歩みを進める。
今度は俺の左腕を斬り飛ばした転生者だ。
刀を構え、こちらに向けて走ってくる。
俺の左側から武器を振り、首を切ろうとしているのか。
…甘い。
爆破粘菌を纏う俺に、炎属性なんて通らない。
たとえそれが爆炎を伴う一撃だとしても、爆発で言えば俺の方が確実に上。
案の定、刀を弾き返されて呆然としていた。
前へ。
俺の尻尾を切った光の転生者が、俺の背中に蹴りを入れる。
当然、爆炎と共に吹き飛ばされ、視界の端に黒焦げの人影が転がった。
前へ。
一方○行もどきから生えた黒い翼が俺の全身を包む。
地面が削られ、暴風が吹き荒れ、視界が塞がれるが、俺の体に触れた途端にその黒い翼に紅い脈が走り、爆散した。
怯えたようにこちらを見上げる転生者。
…くだらない。
そんな程度の攻撃、当たってもなんの障害にならない。
何故その程度で勝ち誇れるのか、教えて欲しいくらいだ。
暫くして、一方○行もどきの隣に刀を持った転生者が現れ、一方○行もどきを抱えて俺から距離を取った。
俺の背後からも二人の転生者も飛び出し、俺の遥か前方に四人全員が固まる。
「おいどうする?なんかやべえぞ。」
「俺が全員の攻撃に反射を掛けりゃいいだろうが!
ピカピカの実は出来ねぇが、他の奴にはかけれる。
最大火力で総攻撃すりゃぁ、流石のあいつも無事じゃすまねぇだろ。」
「…それもそうか。
そうと決まりゃ、やる事は一つだな。
来いっ!乖離剣エア!」
「俺は流刃若火の能力を使えるんじゃねぇ。
全斬魄刀の能力を使えるんだ。
これはその能力を使って作ったオリジナル斬魄刀!
いくぜ!混沌の剣!卍解!」
「…熱系の攻撃は相性が悪そうだな…。
まぁ、一点集中すればいけるだろ。
ヤサカニノマガタマ!収縮!」
「はっ!チリも残らず吹っ飛んじまえよ!
白い翼!」
…うるさいなぁ…。
集中出来ないじゃん。
今左腕生やそうとしてんのに。
あぁ、やっぱ無理か。
いくら回復に特化した緑化粘菌でも、欠損の大き過ぎる所は無理みたいだ。
角はいけたけどな。
はぁ…。やっぱ爆破粘菌と右腕で頑張るしか無いのか…。
…ん?
そういえばナズチ三姉妹が古龍についてなんか言ってたな。
古龍の体はエネルギー体で、組織や細胞を構築しているのは全部龍脈エネルギーなんだったか?
エネルギーが物質化したのが古龍。そうじゃないのが竜。
…少し古龍に片足突っ込んでる俺なら、左腕と尻尾を龍脈エネルギーで代用出来るんじゃ…。
やってみるか。
幸いにも狂竜粘菌の影響で、考える時間ならたっぷりとある。
ついでにエネルギーも、腕と尻尾を食った分、竜菌核も合わせれば膨大な量を誇っている。
先ずは欠けた体に意識を集中。
そこに有り余る龍脈エネルギーを流し込む。
ただ流し込むだけでは流れてしまうので、腕の形と尻尾の形を意識し、そこに止めるように流す。
ーパキリ…パキリ…。ー
お?少し感覚っぽいのが戻ったな。
この調子で圧縮していくか。
放出する量を上げ、放出したエネルギーを圧縮。
少し靄が見えてきた。
物質化する前兆かな?
ーバチッ…パリッ…。ー
あり?感覚は完全に戻ったのに、まだ物質化しない…。
えぇい、こうなりゃ全力で叩き込むまでだ。
ついでに全粘菌のエネルギーもぶち込んじまえ。
暫く粘菌使えなくなるけど、回復するまで逃げ回るくらい造作も無いわ。
そぉいっ!
ーバキリ…ゴッッーーッッツツ!!ー
…ありゃ?
なんか全然腕っぽく無いぞ?
いや、確かに腕っちゃ腕なんだけど、真っ黒なオーラをガンガン振りまいていると言うか…なんというか…。
アレだ。バーサーカーのオーラみたいな?
ゆらゆらと不定期で、何処と無く炎に見えなくも無い。
てか、緑化粘菌の緑の炎だよこれ。
完全に真っ黒だけど。
あ、尻尾もそうなってたわ。どーすんのこれ。生やすのは成功したけど、もっと厄介な事になったぞ。
あぁでも、一応物質化は成功してるみたいだ。
よかったよかった。
…うん?なんだあのとんでもない武器群は。
しかも灰色の斬撃や真っ白な翼、果ては極太ビームまであるぞ。
…あっ!転生者か!
すっかり忘れてたわ!どうでも良さ過ぎて!
どうしよう…。この腕、なんかとんでもない力を秘めてるのはわかるんだけど、どんな効力を持っているのかまるでわからん。
今回は俺の把握できる粘菌の域を超えてるし、調整の仕方とかまるで予想出来ない。
…やるしか無いよなぁ…。
全てのエネルギーを腕と尻尾に持っていかれてるので、俺自身の筋力しか頼れない。
出来る事と言えば、ただ思いっきりぶん殴る事だけ。
さぁ、いっちょやりますか!
殴る。ただ殴る。
振り抜くまでの最短距離を拳が通るように。
右足を前に。
震脚。
腰を通じて左腕に力を。
そして…。
「ゴァァァアア!!(ふっ飛べクソ野郎共!)」
左腕を振り抜いた。
先ず、振り抜いた拳の先の空間が割れた。
ガラスを打ち砕いたかのようにヒビが入り、地面に達した所でその進行を止める。
次に起きたのは攻撃群の消滅。
丁度真ん中の辺りが打ち抜かれ、そこを基点として円形状に吹き飛んでいく。
衝撃波とおぼしき物がその周りを取り囲み、地面を粉砕、消滅させながら進む。
だが、微妙に上にそれたみたいで、転生者の真上を擦りながら遥か遠くに飛んで行った。
あ、雲に大穴が。
うん、俺は何も見ていないよ。きっと気の所為さ。
転生者が呆然とそれを眺めている。
無理もないよな。自分達が出せる最大火力が一撃だし。
つーか俺は覚醒○ヴァか。
左腕で敵を吹き飛ばしたあのシーンか。真っ黒だけど。
「なんなんだよ…なんなんだよテメェはよぉ!
クソが!俺が…俺こそが最強なんだよォォォオオオ!!」
叫びながら突っ込んで来る一方○行もどき。
…これは…コンボを叩き込まざるおえないな。
どうせ願いの中に最強の肉体でも頼んだのだろう。
もしくは鍛える程強くなるとか?どっちでもいいけど。
突っ込んで来た一方○行もどきを右腕で殴り、地面に叩きつける。
高過ぎる威力故に、地面から跳ね上がる転生者。
すかさずイビル直伝ショルダータックルをかまし、更に前方へ吹っ飛ばす。
…ここまでやって骨も折れないとか…どうなってんだし。
反射か?反射なのか?その割に俺の甲殻に傷は無いけど…なんでだろ?
右足を引き、半回転。
変化した尻尾を振りぬき、斬撃を飛ばす。
ここに来てやっと転生者の左足を斬り飛ばせた。
どんだけ頑丈なんだよ。まぁ、チリも残さず吹き飛ばすけどな。
「ギャァアア!?!!?あ、足が!」
尻尾や腕の攻撃は効きそうだな…うし、やろうか。
体勢を立て直し、ダッシュで距離を詰める。
ジャンプして前方宙返り。そのまま逆サマーソルトを放ち、転生者を地面に叩きつける。
またもや跳ね上がった転生者に、今度はサマーソルトを放ち、上空へと打ち上げる。
もう叫ぶ気力すら無いのか、無気力に空中を漂うだけとなった。
両腕を斬り飛ばされて気でも失ったのか?
させない。気を失ったまま死ぬなんて、そんな幸せな死に方させる訳無いだろ。
「ーーッッツツアアァァ!!(起きろ糞野郎!)」
「ぐ…?み、耳が…あ?腕が…無ぇ?なんでだ?」
流石に鼓膜を破れば起きるだろうな。
さて、絶望のうちに死んでもらおうか。
落ちてくる転生者。
俺が左拳を引き絞って待ち受けるのを見て、最初は驚愕、次に憤怒、そして、俺の目線に落ちてくる頃には、絶望の泣き顔となっていた。
容赦?欠片もしませんが何か?
ーーッッッッッツツツオッッッッ!!
一応捉えた感触はあったが、直ぐに消えてしまった。
多分、蒸発とかそんなレベルで消えたんだと思う。
どうでもいいけど。
さぁ、残りは三人、覚悟しろ…うん?どうせ殺すんだから覚悟もクソも無いな。
なら…せいぜい怯え、震え、泣き叫ぶ準備でもしてろやカス共め。