「着いたの。どうやらここを野営地にしたようじゃ。」
「…未知の樹海に逆戻りかぁ…。」
「…む?
すまん、少し席を外すぞ。」
「了解。」
王女が龍車からおり、森の中へと姿を消した。
まぁ、あの王女なら大丈夫だろ。一年くらいなら余裕で生きてそうだわ。
「お嬢様ぁァァァアア!!!」
…なんかまた濃いのが出てきたなぁ…。
なんでこんな所に執事がいるんだよ。
場違いにも程があるだろ。王女?知らん。
寝たふりでもしてやり過ごすかぁ…。
「お嬢様ぁァァァアア!!何処にいらっしゃるのですか!?お嬢様ぁァァァアア!?!!
…む?この草の窪み…お嬢様の物に間違いない!
今行きますぞ!お嬢様!!」
「…なにあれ怖い。」
いや、本当怖い。
執事なの?それともストーカーの類いか?
草の沈み込み具合で確信するなよ…。
どっちにしろ寝たふりする必要なかったな。
「…おい、何故ここにいる。黒闘竜。」
ぼんやりと執事が走っていった方向を見つめていると、何処かで聞いたことのある声で話しかけられた。
話しかけられたのは俺っぽいので、無意識に答える。
「そりゃ王女に助けられた恩を返そうと思ってたからだよ。いつの間にかここまで来てたけどな。
あと俺の名前は一歌だ。」
…ん?
黒闘竜?今の俺って人型…。
振り返ってみるとそこにいたのは…。
「ぬぉぅいっ!?」
「どうした?何かあったのか?」
「過去に俺の角を砕いた奴が現れれば普通驚くっつーの!
ナチュラルに声かけてんじゃねぇよ!」
「そういうものなのか?今まで会ってきた奴らは、寧ろ旧友に会ったかのような反応なんだが…。
それに、お前の角を砕いた後も一回会っているだろう。」
「あの時は酒の席だったし、こっちもバレてないと思ってたんだよ。
大体自分の体を斬り飛ばされて、『懐かしい』とか思えるのは古龍ぐらいだろ。
ラオ爺そうだったし。」
「…そういえばそうだな…。」
ビビった…。物凄い自然に敵から声かけられたわ…。
別に嫌いって訳じゃないんだが、この人は底が見えないから少し苦手だ。
それに前世の記憶が戻ってきた今ならわかるが、この人ってあんまり攻撃に向いてないように思える。
寧ろ防御一徹?って感じだ。
重心が全くブレてない。つまりは自然体でそこに立っているってことだ。
いつでも動けるように立つならば、少なからず重心が動く。
土踏まずの辺りを無意識に浮かして立つんだよ。
俺がそうだしね。
このタイプは兄貴に近い。動ではなく静。待ちの佇まいだ。
…てことは、この人の真価って居合切り?
うわぁ…間合いに入りたくないわぁ…。
「それで?この地になんの用だ?」
「…あー…。黒蝕竜追っかけてんだよ。
この辺りも前まではかなり侵食されててさぁ…。結局空振りだったんだよねぇ…。」
「前までとは…?」
「いやぁ…この樹海の秘密をチョチョイとね。
安心しなよ。ここら一帯は浄化されてるしな。」
「はぁ…。お前の仕業か…。」
「何が?」
「いや、取り敢えず感謝する。
お前のおかげで打開策が見つかったのだよ。」
「…ふーん…。」
「ではまたな。次会う時を楽しみにしている。」
「俺は会いたくないんですけど…。」
…なんの話だったんだろ…。打開策って何?
それに擬人化のこと知ってたのかよ。油断出来ねぇ…。
ともかく、ここを移動した方が良さそうだな。
擬人化も解いて森に隠れるとするか…。
王女には悪いけどここでお別れだね。
黒い龍脈の根源がこの近くにある…。
それを見つけ出してゴキブリ退治しないとな。
…まぁ、どう見てもアレだよね。あの黒いドームだよね。
こんな遠くからでも見えんのかよ。
禍々しいオーラ放ってるから間違いなさそうだ。
とにかく近くに行って見るかぁ…。
ーーーーーーーー
「準備はできたか?」
「完璧ですよ!」
「…本当にこれでいけるんですか?レイスターさん。」
「あぁ、100%いける。
あの科学者達を信じるんだな。
それと…気力は十分か?」
「あぁ、いつでもいけます。
レイスターさんに教えてもらった新しい力、存分に使ってやりますよ!」
「その力は体力の消耗が激しい。
使うときはパートナーとの連携を忘れるな。」
「わかっていますよレイスターさん。
…行きますか?」
「…あぁ、行こうか。」
…さて、私、いや、俺も覚悟を決めるか。
久しぶりに古龍との対決。しかも世界レベルの危機ときたもんだ。
毎度のことだが、古龍は碌な奴がいない。
そう考えれば黒闘竜はまだマシなほうだ。
反則的な身体能力を持っているらしいが、対処の方法はある。
凄腕のハンターを数十人連れ込めばいいんだからな。
古龍はその常識がまるで通用しない化け物だ。
自然災害そのものを人間は相手にすることができない。
…ラオシェンロンの時は正直死ぬかと思ったぞ…。
なんせ山そのものが歩いて来るようなものだ。
角を斬り飛ばすのが精一杯だったな。うん。
そんな古龍だが、その殆どは話が通じる。
…まぁ、そのせいで口調がおかしくなっちまったんだが…。
こんな非常時でもない限り、素の口調に戻らない。
怒ってる時は別だがな。
会話さえ成功すれば、大抵の古龍を無力化出来る。
古龍は理由なく暴れる事は絶対にない。
その殆どが人間側に非があるのだ。
会話によって得た情報を整理し、人間側にその非を正させる。
そうすることによって古龍は納得し、大抵の場合自分の体の一部をくれる。
それを討伐した証として提出するのだ。
これが俺の『古龍喰らい』の正体。
確かに手のつけられない古龍は打ち倒すなりなんなりしてきたが、そんな古龍の殆どはかなり弱い。
自己中心的な奴は心が弱く、あまり力を使えないらしい。
あの白いBBAに聞いたから間違い無いだろう。
そうでなければこの身が持たない。古龍とやり合う時に必要なのは主に知恵だと俺は思う。
…だが、今回の古龍は話し合いで解決しそうにないな…。
打ち倒すにしても、どんな力を持っているかわからん。
…死なない程度に頑張るとしようか…。
レイスターさんの口調は気分で変わります。
取材を受けたときは落ち着いていたので古龍のような口調に、逆にブラキさんと遭遇した時は転生者への怒りとブラキさんに対する好奇心によって素に戻っていました。
レイスターさんの口調はこっちが素ですのであしからず。
それとレイスターさんは最近擬人化の存在を知りました。
白いBBAに擬人化の存在を教えられたようです。
白いBBAの正体は次の章で出ると思います。