もんすたーな世界にもんすたーで転生?   作:ひなあられ

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古龍の叫び

『…人間…か…。』

 

「あぁ、古龍って本当に喋るんだ。」

 

「アルン。この状況でその発言はないわよ。」

 

「取り敢えず切るぞ」

 

「レイスターさんは少し自重して下さい!」

 

ここは山の中腹。

かつてシナト村と呼ばれていた人里の近くの狩猟地にて、一匹の古龍と三人の人間が対峙していた。

古龍によるシリアスな空気は一瞬で消し飛び、女のハンターによるフォローのせいで古龍が色々と可哀想である。

 

『私はあの憤激砕竜(ラースオブシィディアン)が先に来ると思っていたのだがな…。

フ…これも運命…か。」

 

違った。こっちも残念だった。

金ピカになろうと抜けなかった厨二病のせいで、この地にカオスな空気が流れ始める。

話を聞く気を失った男二人が武器を構え始め、女が直ちに演奏を始めた。

このどうにもならない空気を変えようと、最大音量で演奏を始める彼女だったが、ここに来てもう一つのカオスが降り注ぐ。

 

『いいだろう。少々物足りぬが、どうやら腕は確かなようだ…。

この私…暗黒黄金古龍(ダークネス・ゴルディア・エンシェントドラゴン)が相手を…グベッ!?』

 

ヒュルルル…ゴギュシャ!ドゥゥゥン!!

 

彼曰く、憤激砕竜ことブラキさんが放った山の一部が直撃。

横っ腹に見事命中した大岩は、あらゆる状態異常を厨二病龍に与えていた。

 

『グァァァア!!…フフ…流石は我が好敵手。このような援護を計算して送る…ブゲッ!?」

 

ザクッ!…ドォォォン!

 

また何か言おうとしていた古龍の口に徹甲榴弾が突き刺さり、強制的に会話を中断させる。

流石にちょっと可哀想なレベルでボコられているが、あの男に躊躇の二文字はない。

 

ザンッ!

 

無言で振るわれた刀が古龍の角を一刀両断。

側から見ればこの上なく綺麗な連携だが、色々とおかしな物が混じっているせいで微妙な空気が流れる。

溜息をつく女、無表情で貫通弾を速射する男、使っていた太刀を背中に背負い直し、腰に差してあった黒い棒を掴む男、岩から伸びる木に絡め取られて若干涙目の古龍。

もうどうしようもない程にカオスだった。

 

『…す、少しはやるようだな!だがまだまだ甘い!』

 

涙声でそう叫ぶ古龍。

ぶっちゃけ全く怖くないが、攻撃自体は凶悪そのものだった。

突然ハンター達の足元が光りだし、一気に爆発したのだ。

 

「きゃっ!?」

 

「くっ!」

 

「ハァァァァア!!」

 

笛使いとガンナーは避けられず攻撃を食らってしまったが、太刀使いの男は踏み込みと同時に前へと進んで攻撃を回避。

すかさず腕の付け根、関節部分に強烈な突きを叩き込む。

 

『グァァァア!?…クッ…貴様、その刀は一体なんだ…?

狂竜ウイルスによって強化された私の体を貫ける物など、この世にはない筈だ…!』

 

太刀使いの男が手にしている太刀…いや、男の手元から身の丈程までに伸びる『光線』。

俗に言うライトセイバーのような物を構えていた。

 

「…これか…?これは最近開発された新しい武器らしいぞ。

俺の扱う力を十二分に発揮出来るように作られた武器だそうだ。

まだ試作段階と聞いたがな。」

 

『…っ!?貴様っ!それが何かわかっているのか!?』

 

「なんだ?これがどうかしたのか?

それともお得意の妄想か?光学熱剣(ライトセイバー)とか言い出すんじゃないだろうな。」

 

『違う…それの正式名称は高出力工学光子砲と言う…。

まさか…ここまで技術の発達が速いとは…。』

 

「…?」

 

厨二病によくある裏付けの無さが見えない。それに感づいたのか、一旦距離を取る太刀使いの男。

ガンナーと笛使いも起き上がっており、男と古龍の会話に聴き入っている。

そして何かに気付いた笛使いが驚きの声を上げた。

 

「嘘…あれだけの攻撃を受けていたのに…無傷なの…?」

 

笛使いが呆然とした呟きを漏らしている間にも、太刀使いが付けた傷が高速で治っていく。

切り落とした筈の角でさえも回復しており、実質振り出しに戻ってしまった。

 

『絶望を与えるのはまだ早いと思っていたが…どうやら早めなければならないようだ。

…集え!我が暗闇の眷属よ!」

 

「「「「「「シャガァァァァアア!!」」」」」」

 

古龍の一声により、六匹のゴア・マガラが現れる。

ガンナーが「あ、厨二病はデフォか。」と呟いたのはこの際どうでもいい。

現れた六匹のゴア・マガラは、それぞれ六つの方角に散っていった。

問題はその姿が、明らかに普通のゴア・マガラではないと言う所だ。

過剰にウイルスをばら撒き、目にあたる部分から残光を残しながら飛び去っていく。

背景が黒い事もあって分かりづらいが、黒い尾を引きながら飛んでいる。

何処か不安を駆り立てられるその光景に、三人のハンターは無意識に後ずさりした。

 

「…絶望?なんだよそれ。」

 

『…昔…我ら古龍と言う存在が生まれるより遥か昔。

お前たち人間は栄華の極みにあった。

その当時のモンスターは獣のような物が多く、龍の形を取っていたのは祖龍ただ一匹だった。』

 

「は?」

 

『人間の欲望は収まる事を知らず、遂にはかつて神と崇めた祖龍でさえも討ち滅ぼそうとしていた。

空を飛ぶ鉄、一撃で山が吹き飛ぶ大砲、人の思うように動く傀儡。それらは『兵器』と呼ばれ、祖龍へと放たれた。

祖龍は怒り狂い、自らの力を使って人間の大半を逆に滅ぼした。

その時、祖龍への信仰を棄てぬ一握りの人間が『竜人族』として転生し、それ以外の者は辛く厳しい生活を送る事となる。』

 

「…」

 

『その時溢れた祖龍の力が龍脈を形作り、その力の恩恵を受けた獣が『獣竜種』として誕生した。

更に龍脈の力を受けた竜に近い種族…その当時は『爬虫類』と呼ばれていた矮小な獣が『飛竜種』となる。

形が近い故により大きな影響を受けた『飛竜種』は、後にこの世界を制する存在となった。

その中で争いあい、祖龍の体に比較的近い体を得た『飛竜種』が…後の『古龍種』となったのだ。

多少の例外によって、『獣竜種』の中からも『古龍種』が誕生したのだが…この際どうでもよいな。』

 

「それが絶望と何の関係があるんだよ。」

 

『話はこれからだ人間。

暫くはその平穏が続いた…。私が生まれたのも丁度その頃で、他の古龍種と違い私には両親と呼べる者が存在した。

私は竜と古龍の間に生まれた特殊な龍なのだ。

故に私には幼少期と呼べる物が存在し、その特異な形態を持つ為か殺されても前世の記憶が残る。

更に他の竜に私のウイルスを感染させ、私の眷属として同じ姿に変貌させる事も可能だ。

私自身は他の古龍に劣るが、その脅威は他の古龍を凌駕する。それ故、この地に祖龍様によって封印されたのだ…。

私自身、自身の能力を持て余していたのでな。』

 

「ますます関係ねぇじゃん。そのまま今まで封印されて来たってことだろ?絶望のぜの字も出てこねぇじゃねぇか。」

 

『…時は記憶を断つ。私の存在を示す文献は残っていないのか…?』

 

「残っているわよ…。シナト村の村長が教えてくれたわ。

確か…

闇がその目を覚ますなら 彼方に光が生まれ来て

大地に若芽が伸びるなら 彼方に影が生まれ来る

すべてを照らすは光なれ あまたの影は地に還り

いずこに光が帰る時 新たな影が生まれけん

やがては影が地に還り 新たな命の息吹待つ

共に回れや 光と影よ

常世に廻れや 光と影よ

そしてひとつの唄となれ

天を廻りて戻り来よ

時を廻りて戻り来よ

だったかしら?」

 

対話する龍と人。

互いの歴史を確認し合う異様な光景が広がる。

人は龍の記憶を読み解くように、龍は人に理解を求めるように。

太刀使いの男も武器をしまい、戦闘態勢を解いた。

だが警戒は怠っておらず、ゴア・マガラの飛び去った方向を睨むようにして観察していた。

 

『確かにそれは私の事を歌った詩のようだな…。

だがそれは、同時に戦争を歌った詩でもあるようだ。』

 

「戦争?」

 

『龍と人の戦争だ。

一度滅ぼされかけた人間は技術の大半を失ったが、それでも尚生き残っていた。

龍脈の影響で格段に強くなった獣…いや、モンスターに対抗する手段を得たのだ。

それは機械と生命体の融合。具体的には竜の体内に生成される竜玉を使い、あらゆる物を作り上げていった。

それにより、ある程度の生活圏を獲得した人間は、再び我ら龍に戦争を仕掛けた。

当然私もそれに参加し、この地に進撃してきた人間を倒していたのだが…私はその戦いに負け、意識だけがその地に残ってしまった。

見ることはできても戦う事は叶わぬ。そんな日々が続いたが、結局は人間側の敗北で終わった。

その武器を作る技術を残さない為に、黒龍様が武器を生産していた国を一つ焼き払った。

それが今のシュレイド城にあたる。

…だが、戦争で使われた工具は各地に残り、今の人間たちはそれを古代武器として使っているようだな。

私に言わせれば、工具を武器に使っているお前達が滑稽に見えるぞ。』

 

「…あー…つまりなんだ。

お前は人間の技術の発達が、龍を滅ぼすと考えているのか?」

 

『その通りだ。』

 

「詩の言う影が人類、光が龍。

繰り返された二回目の争いをその詩は嘆いているって事か?」

 

『理解したようだな。』

 

「リイン…分かったか?」

 

「一応は。」

 

「マジかよ…理解出来てないの俺だけかよ…。」

 

「…ハァ…。」

 

馬鹿に振り回される苦労人が一人。

この極限状態で天然のボケをかます男は、ある意味強敵である。

そんな最中でも警戒を緩めない太刀使いは、冷静に判断を下した。

 

「…お前の言い分は分かった。これは俺たちの手に負えない問題らしい。

…リイン、アルン、逃げるぞ。」

 

「「え?」」

 

「早くしろ!古龍の本気は人間の力を軽く超える!こいつの力の全容が分からない今、迂闊に勝負を仕掛けるのは危険だ!」

 

『ほう…我がそれを逃すとでも?』

 

「理由は分からんが、お前はそこを動けないんだろう?トドメを刺せない俺たちではお前に敵わん。

撤退だ!」

 

『…見破られていたか…。』

 

「ちょ、レイスターさん!?」

 

「早い!逃げ足早い!自分達まだ本気出し切れてないんですけど!?」

 

微動だにしない古龍から逃げる人間組。

太刀使いの男が山を下り始めた頃、空の黒いドームに亀裂が走った。

もしそれを空から眺める事が出来たなら…。

それは巨大な龍の卵が孵る前兆にも見えただろう。

 

古龍の語った過去。

古龍の言う『絶望』が今、この地に現れようとしていた。

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