…どーすっかねぇ…。
「ザギャァァァァアア!!!」
ちょっと…無理っぽいっすわ。
「…グッ…ルルル…。」
さっきから攻撃してんのに、全部弾かれる。
その上に反撃かまされるし、何よりその手数が桁違いだ。
更にその全てが当たると即死するレベル。
防戦…まぁ、俺は防戦する事が出来ないから、必然的に殴って掻き消してる感じだけど、爆破粘菌がなければ簡単に腕を持ってかれる。そんな感じ。
そのせいでチャージする暇がない。吸収しては使っての繰り返しで、デカイ一発を出す事が出来ないのだ。
…うーん…負けることはないけど、勝つこともないって感じか…。
あっちはどんな方法使ってるか知らないけど、エネルギーが尽きることはなさそうだし、消耗戦は無理。
下で何が起きてるか分からんけども、なんかこのクソデカイ古龍の動きが止まり始めてるし、それまで持てば一応こっちの勝ちか…。
「シャガァァァアアアッッ!?!!!?」
ん?攻撃が止まった?なんかの予兆か?
ズンッ!!
え?ちょ…地面が傾いてんですけど!?なに?下で何が起こってんの!?
いや…微妙に斜め向きに傾いてるっつーことは…この古龍が支えを失った…つまり…誰かが足を何らかの方法で無力化したって事か?
しかも生半可な攻撃だと回復してしまうこの古龍の足を無力化するには…足を跡形もなく吹き飛ばすか、根元から切り落とすか、落とし穴に嵌める以外にない。
跡形もなくってのは無理だし、ラオ爺がいない今、巨大な落とし穴を作れる古龍は限られてくる。ってー事は…。
「グルルルルゥ!?(人間の範疇超えてんだろレイスターさん!)」
ま、まぁいいや。何はともあれ隙はできたんだ。
これを活用しない手はない。
何故か知らんが金ぴか古龍の動きも止まってるし、トドメの一撃、やってやりますかね。
ー集中ー
爆破粘菌は扱いやすい。だけど、それ故に全力で扱った事は少ない。
何故なら全力で扱う前に相手が倒れるからだ。
そりゃぁ、最初のうちはよく使ってたよ?だけど最近は緑化粘菌とかしか使ってなかったんだよね。
でも、それ以上に使わなかった…いや、使えなかった理由は、何が起こるかわからないから。
緑化粘菌や雷撃粘菌の場合、最悪の結果になってもどうにかなる。
緑化粘菌はその性質上、どうあがいても自然を壊す事はないし、雷撃粘菌は一点集中するものだから、広範囲に被害がいかない。
最近習得した空間を撃ち抜く謎の技だって、結局は何かを壊すだけの技だ。
だけど爆破粘菌は色々とまずい。
純粋な爆発で核爆弾級。しかもこれ、ストレス発散の為の悪ふざけみたいな感じでやったヤツだから、炎とか雷とか出てないんだよ。
もし集中した上で爆発をかました時、その威力は計り知れない。本当に何が起こるか予想不可能だ。
「シャガァァァアアアッッ!!!」
「グルウッ!(おっと!)」
攻撃が再開されたけど問題ない。必要な分のエネルギーは充填できた。
影のように這い回る上に地面を侵食してる闇から全速力で逃げ回り、徐々になくなる足場を経由して背中の棘を目指す。
避けきれない闇をぶん殴り、直前で潰された足場を足にある粘菌を爆発させる事で、闇に呑み込まれる前に突き進み、ついに山へとたどり着いた。
「シャグルルルルゥ…。シャガァッ!!」
「グルッ!(チッ!やっぱ追ってくるよな!)」
あークソ、これだから羽のあるヤツは…。
愚痴りつつ、龍脈エネルギーを存分に取り込みながら、最もエネルギーを消費しないやり方で山を登る。
まぁ、足の粘菌使って強引に駆け上がるだけですがね。
その間に黒い炎を左腕に纏わせ、角に向けてほぼ全力のエネルギーを叩き込む。
今自分が出来る最大の力を溜め込む為に。
粘菌の分裂、足の筋肉、龍脈エネルギー、狂心の鼓動、それら全てのエネルギーを、竜菌核に送っては放出する事を何度も繰り返す。
そのせいで目の上の角からは蒸気が出続けている。
モノクロの世界の中、チロチロと視界を横切る影。
恐らく、角から吹き出た雷だろう。狂心を止める訳にはいかないので色は分からないが。
もうすぐ、頂上…。
「ガァァアアッッ!!!(ッラァッ!!)」
三角に尖った山の頂上を蹴り飛ばし、更に上へ飛び上がる。
今まで戦っていた所が既に雲より上だった為か、なんだか空が青く見える所まで来てしまった。
遠くを見ると、地平線が曲がって見える。…つまり…宇宙と空の間まで来ちゃったって事か?
…俺、飛べない筈なんだけどなぁ…。
「シャガァァァアアア!?!!?」
…で、なんであの古龍はあそこでジタバタしてんだ?
そこ壁なんてないだろ…あ(察し)
空気…無いもんね。そりゃ飛べないよね…。わーい、遂に古龍の無効化に成功したぞー(棒)
龍脈使えばなんとかなりそうな感じもするけど、なんで飛べないか理解出来てないみたいだねー。そりゃ対策出来ないかー(棒)
まぁ、好都合という事で。
速度がゼロになった所で、態勢を立て直し、左腕を振るう。
もう何度となく見た空間がヒビ割れる光景と共に、衝撃波が古龍を穿つ。
バランスを崩していた上に、纏っていた闇でさえも突き抜けた攻撃をくらった古龍は、叫び声をあげて下に落ちていく。
それと同時に俺も落下を開始。
空中でもがく古龍と、右腕を引いた状態で静止する俺とでは空気抵抗が違う。
それにより、どんどん差を詰めていく俺。
…角の全粘菌、一部を残して右腕へ。
竜菌核解放…圧縮!
腕にある粘菌は、角に存在する粘菌と比べて数が少ない。
だからその数を増やす為に、一旦角の粘菌にエネルギーを送り、その分のエネルギーと粘菌を右腕に回したのだ。
扱いやすい爆破粘菌だからこそ出来る、"粘菌ごと移動させる"荒技だ。
「ガッ…グルルゥ…(…こんな状態じゃ無いと使えなかったな…。)」
本当に、落下中でよかった。
なんかもう、えらい事になってる。
具体的に言うと、なんかもの凄い炎あげてる右拳が、空間を割り砕いてるって感じ?
拳が通った所に真っ黒なヒビが入ってるし…。
…この際無視だ。気にしたら負けだ。
今はただ、あの古龍にこれを叩きつける事を考えろ!
あと20…10…3、2、1!
「ガァァァアアアッッ!!(くたばれこの野郎!)」
ズンッ!
拳は見事、ガラ空きの腹に命中。…このまま爆発しちまえ!
「ザギャァアッ!?!!」
…あれ?爆発しない?…もしかして…溜まったエネルギーが強すぎて、エネルギーの余波が当たってるだけとか?
…あり得るな…だったら!
「グルァッ!(このまま地面に叩きつける!)」
足にある粘菌を爆発させ、更に加速。
古龍の背面から煙が上がり、オレンジ色の炎が上がる。
そのままただ真っ直ぐに。相手が態勢を立て直せない程のスピードまで持っていく!
「ガァァアア!」
足の粘菌を爆破させても空は飛べない。だけど、この状態からの加速には十分。
空気抵抗による摩擦熱はこの古龍が肩代わりしてくれてるから、思う存分加速できる。
地面に到達後は…うん、考えないようにしよう。なんとかなるだろ、多分。
…もう少しで地面か…。
ヤバイな…なんか走馬灯が見えてきたわ。
時間感覚もどんどん引き延ばされてるし、地面まで結構近い筈なのに全然届かねぇ…。
…らしくないな。今更走馬灯なんて見たってしょうがないだろ?
そんなもん見るくらいなら…一息に、全力で、未練さえも置き去りにして、真っ直ぐに、ぶっ壊した方がマシだ!
そして
「ザギュゥウウアァ!!!」
地面に
「グルァァァアッッッッツ!!!」
墜ちた
ー滅ー
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ある研究者のレポートより報告
レイスター氏による巨大古龍足止め作戦の最中、モンスターの軍勢が突如逃げ出すという、不可思議な現象が起こった。
それが起こったのは、レイスター氏が巨大古龍の左前足を斬り落とした時だ。
更に、レイスター氏が地面に着地する頃には、G級ハンターのほぼ全てが武器を放り出して逃げていたと言う。
その後、レイスター氏も避難を指示。
若手のハンターは戸惑いながらも、その指示に従ってその場を離脱した。
そして、戸惑いながらも逃げたハンター(研究員も含む)は、その理由を体感する事となる。
まず、光という光が消えた。
何故?と疑問に思った時には、全ての音が消えていた。
疑問を塗りつぶす恐怖を感じるより先に、感覚が消えた。
体を丸めるという咄嗟の防御態勢を取った頃には、自分の存在が消えていた。
どれ程そうしていただろうか。
自分が何者で、何処にいて、過去に何をしていたかを思い出し、存在を取り戻した時、感覚、音、光が戻って来た。
後に知ったが、我々の研究員グループの乗る龍車が、一番爆心地に近かったそうだ。
私は龍車の中の最後尾に座っていたので、私が最も爆心地に近い人物だろう。
話は戻るが、私が感覚を取り戻して体を起こした時、愕然とした。
何故なら、私達の乗っていた龍車の近くの大地が消えていたからだ。
比喩ではない。文字通り消えていたのだ。
遥か遠方…最初に見えたのは空だけだった。
地平線の彼方まで黒一色。横を見やれば、葉が落ちたとはいえ、まだ立っている樹木があるにも関わらず、目の前の大地には何も無かった。
それは巨大な円形状に広がっており、中心に向かって地面が落ち込んでいる。
言うなれば、漏斗のような形をしていた。…その規模は桁違いだが。
巨大古龍は何処にも居なかった。恐らく、消えたのだろう。
呆然とその大地を眺める。
動けなかったのだ。あまりにも桁違いな出来事が起こると、人間は意識が飛ぶらしい。
今日、初めてその事を知った。
いつまでそうしていただろう。
地平線の彼方に陽が沈む頃、落ち窪んだ大地の中心から、唐突に一本の線が現れた。
それは夕陽に当てられて黄金色に煌き、まるで一種の狼煙のようにも見えた。
そう、戦いは終わったと告げるように…。
その時、微かに、本当に微かにだが、猛々しい竜の咆哮が聞こえた。
朗々と響く竜の叫び…微かな声にも関わらず、私達の心を揺さぶるには十分過ぎるものだった。
それを皮切りに、私達は我に返って動き始めた。
アレはなんだったのだろうか?誰もが疑問に思ったことだったが、終始誰も口にしなかった。
撤退後になってようやく様々な推測が飛び交ったが、結局何も判らずじまいだった。
『私の勘では、あの時、火山で発見した黒い砕竜ではないかと思っている。
所詮勘に過ぎないが、なんとなく、あの竜ならばこの光景を起こせるような気がするのだ。
今現在のところ何も判っていないが、今後の調査により原因が特定されるだろう。』(二重鉤括弧内判読不可能。ペンで塗り潰された痕跡あり。)
これにて、私の報告を終了する。
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