もんすたーな世界にもんすたーで転生?   作:ひなあられ

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番外編:あるいは竜と人の頂上決戦3

拳が割れてしまった…しかし、むしろ割れて正解だとでも言うかのように一層の輝きを見せる拳。

いや違う。彼にとってみれば、割れて正解なのだ。

砕竜の拳と角は本来空洞になっており、そこに大量の粘菌が詰まっている。

だが魂砕竜には空洞が存在しないのだ。

それは進化の過程において不要とされたが故の変化だが、粘菌の威力にして言えば力が落ちてしまっている事は否めない。

それが割れた事により、多少とはいえ粘菌を貯蓄する量が増えた。

それが何を意味するのか…。

簡単な事だ。

 

…ギシリ…。

 

ただ単純に。

 

ズズ…ミシ…。

 

爆発する力が増えた。ただそれだけの事である。

 

ーーーーーーーッッッッツオ!!!

 

振り下ろされる拳。

限界まで振り上げられたそれは、地面に風圧をもたらして同心円状に草を薙ぎ倒す。

雷撃粘菌の時程のスピードこそないが、込められた力はその遥か上を行く。

 

地面に接触した途端、焼け付くような光を発する拳。

遅れて熱が。更に遅れて風圧が。

一気に膨張したエネルギーに押し出されて衝撃波が。それに伴う爆音が。

それら全てが凶器となってハンターに襲いかかった。

 

一方のハンターは太刀を抜き去り、大上段に構えたまま動かない。

最初は無色だったオーラも今や白色に輝き、全てを断ち切らんと言わんばかりの気迫を出している。

…どうやら本当に全てを断ち切ってしまうようだが。

 

ハンターが太刀を無造作に振り下ろした途端、迫り来る爆風が『切れた』。

その為、ハンターの周りのみ何事も無かったかのようである。

対照的に魂砕竜の周りは見事にクレーターと化している。

爆風を切ってしまうハンターもハンターだが、桁違いの威力でクレーターを作ってしまう竜も竜だ。

 

振り下ろした右拳をそのままに、左拳に黒い炎を纏ってストレートを打ち出す竜。

拳の先の空間がひび割れ、ハンターに向けて衝撃波が襲い来る。

それすらも一振りで断ち切り、更に輝きを増した太刀を振りかざしながら竜目掛けて飛び出した。

半歩後ろに下がり、そこからサマーソルトを繰り出す竜。

尻尾の先と太刀が噛み合い、そこから放たれたエネルギーが球状に広がる。

白い火花を散らす両者。

 

これが人同士の戦いならば、ハンターが鍔迫り合いの末に打ち勝っていただろうが、相手は竜である。

強引にサマーソルトを続ける竜に弾き飛ばされ、すり鉢状になった地面に着地するハンター。その背後の地面には深い溝が出来ていた。

竜が両足をつける頃には太刀を横に構え、竜の目を斬り付けようと迫る。

それを咆哮で吹っ飛ばし、態勢の崩れたハンターに向けて尻尾が襲い来る。

態勢を崩して弾かれたように太刀を泳がしていたハンターだったが、すぐさま太刀を引き戻してそれを迎え撃つ。

再び散る火花と球状に広がるエネルギー。

 

ハンターの背後のクレーターの壁に横一文字の傷が入り、地面には小型のクレーター。

今度は上手く攻撃を逸らす事に成功したのか、吹っ飛ばされずに地面へ着地。

左回りに回転している途中の竜の足に向けて斬りつける。

だがその太刀は足に届く前に、竜の左腕に阻まれる。

回転しながら勢いをつけ、そのままの力で左腕を振るった竜の腕がハンターの太刀を捕らえたのだ。

三たび起こる爆風。

 

しかし今度こそハンターの方に軍配が上がった。

不安定な態勢のまま放たれた拳には充分な勢いが乗っておらず、爆風を斬り割いて放たれた一太刀を押し切る事が出来なかった。

流石に左腕が斬り落とされるような事は無かったものの、竜の左拳にはそれなりに深い傷が出来ていた。

ここに来て初めて仰け反る竜。

 

それを逃すハンターでは無い。

振り切った太刀を切り返し、もう一度同じ傷を斬る。

音さえも置き去りにして白色の火花が散る。

竜が右腕を盾にした時にまた横一文字。

更に踏み込み、バツの字を描くようにして二太刀。

態勢を立て直した竜に隙を作らせない為に太刀を上に振り上げ、角を一斬り。

衝撃によって竜の頭が上を向く。

その時にはもう、最大の一撃を放とうとしていた。

 

振り下ろした太刀をそのままに左脚で地面を蹴り出し、竜の目の前で右脚を一歩踏み抜き、太刀を握りなおす。

右脚を踏み出した時のエネルギーを、ダッシュした時の勢いを、太刀の重さがもたらす慣性の力を、腰を捻る力に変え、上半身に伝え、腕を通し、太刀の鋒に伝える。

 

「ゼァァアアッッ!!」

 

 

ーーー斬ーーー

 

 

風が止み、音が止み、時が止まる。

その静寂を打ち破るのは涼やかな鉄の音。

 

 

「ガァァッッツ!?」

 

 

竜の胴体を横一文字に切り裂く光。

それは『気』と呼ばれる力がもたらす現象。

全てのハンターの中で、ただ一人しか使えぬ剣技。

それは後に『気刃斬り』と呼ばれる奥義でもあった。

 

グラリ、と。竜の身体が前に傾く。

光が消えた後に残る深い傷。甲殻は斬り裂かれ紅い血が大地に落ちる。

その身体が大地に倒れ込もうとする。遂に決着がついた…かに思われた。

 

竜の足が動く。

倒れそうになる身体を支える為に、一歩前に踏み出す。

動きが止まる。粘菌の活性化も消え、紅く染まった拳が残される。

フラリ、と。竜が動いた。

ハンターに対して正面を向き、堂々と立つはいいものの、その傷と光の消えた粘菌により、むしろ痛ましさの方が大きいような有様だった。

それでも前を向く竜。

 

訝しげにそれを見据えるハンター。何故なら、先程の打ち合いで勝負は決したと判断したからだ。

相手は手負い。それも拳はもう使えぬほどボロボロになり、胸には深い傷。並のモンスターならば最後の抵抗も出来ない程の有様なのだ。

最大の攻撃手段である拳を失った今、勝負は決した。その筈だった。

 

「…なに…?」

 

風が吹く。

轟と吹く一陣の風が。

風を起こしたのは竜。ピクリともしない竜からだ。

黄金の炎が芽吹く。全てを浄化し癒す黄金の炎が。

拳に、胸に、そして…右の眼に。

傷が癒えた後、炎は跡形もなく消える。眼にその炎を残したまま。

 

その光景に目を見張り、いつでも動けるように己の武器へ手をかけるハンター。

次の行動が予測出来ない以上、迂闊に近づく事も出来ず、待機を余儀なくされてしまう。

 

不意に、大きな音が聞こえてきた。

それは何かを打ち付けるような、太鼓を叩くような。もしくは…心臓の鼓動のような音だった。

たった一回。波打つような鼓動の音。

それだけの筈なのに、それは途轍もない重圧となってハンターを襲った。

 

 

ーーーーーーードーーーゥンーーーーーー

 

 

「!?」

 

 

大地が揺れる。強者の力に呼応して。

 

 

ーーーーーーードーーーゥンーーーーーー

 

 

空が揺れる。強者の魂に呼応して。

 

 

ーーーーーーードーーーゥンーーーーーー

 

 

全てが揺れる。強者の本気に慄いて。

 

 

ーーゴォォォオオオオオ!!!!

 

 

突如燃え上がる魂砕竜。

全身が烈火の如く燃え上がり、その影すら見えなくなる。

唯一見えるのは炎に混じって輝く、一点の黄金の炎のみ。

炎は何も焦がす事なく燃える。地面の草は炎に巻き込まれながらも火は付かず、空気は相変わらず澄んでいる。焼け付くような熱気もなく、ましてハンターの身が焦げる事も無かった。

 

燃え上がった火は徐々に鎮火していき、角、拳、足、尻尾のそれぞれに収縮していく。

紅い炎は透明度を増し、まるで緋色のガラスのように揺らめく。

最後に炎が灯ったのは…赤くて紅い炎よりも、尚紅い左の眼。

金と紅、二つの炎をその眼に宿し、今、動きだす。

 

 

「…クッ…!」

 

太刀を鞘に収め、全速力でその場を離れるハンター。

未だかつてない龍脈のうねりを感じ取り、ここは危険だと判断したのだ。

クレーターの斜面を駆け上がり、その淵まできてやっとその脚を止めた。

 

魂砕竜はそれを追う事なくその場に佇む。

ゆるりと首をもたげ、息を吸う。

ジリジリと頭が上がり、やがて角が天を向く。

排気筒が音を立てて伸び、黄金色の蒸気が噴き上がる。

それより一瞬遅れて甲殻にも変化が起こった。

背中より尻尾に至るまでの甲殻が前方にスライドし、またしても黄金の蒸気を噴き上げたのだ。

爆発寸前の火山のような激しい振動。

波状に放たれる衝撃。刻一刻と上がっていく力が、波状に衝撃を放っている。

 

ピタリと、それらの現象が止まる。

ハンターはそれを感じた途端に全力で地面にしがみついた。

そうしなければならなかった。

 

『ーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!』

 

竜を中心として大地に亀裂が走る。

空が裂け、ヒビが彼方此方にに現れる。

衝撃が草を凪いでいく。

大地が捲り上がり断層を創り出す。

裂けた空が衝撃波を放つと共に閉じる。

その頃になって、やっと竜の咆哮が止んだ。

 

クレーターはふた回りほど拡張されていたが、ハンターもまた咆哮によって押し流されていた。

呻き声を上げながらハンターが立ち上がる。

その両耳からポロリとピンクの耳栓が落ちた。

咆哮が来ると判断して咄嗟に身に付けたようだ。

 

ズシン…ズシン…と竜が足を踏み出す。

その音を聴き、頰に笑みを浮かべるハンター。

まるでそう来なくては面白くないと言わんばかりに。

戦局は絶望的と言っても過言ではないだろう。

双方無傷ではあるものの、手を出し尽くしたハンターに勝てる要素は殆どない。

回復薬や食料などのアイテムはまだ余裕があるようだが、彼はここに一人で来た。

つまり罠の類は一つも無いという事になる。

…罠に掛かるかどうかは別としてだが…。

 

それでもハンターは笑う。

己の敵わぬ境地を目の当たりにして。

全力を出しきろうとも敵わない。自身の腕っ節の強さでは手も足も出ない。

勝てる見込みも無い。

それでもハンターは笑う。

何故なら…敵わないからこそ戦えるからだ。

頼れるのは己自身。仲間と共に戦うことをしなかった…いや、出来なかったハンター。

連携をとって戦うよりも、一人で戦った方が早かった。

そんな最中に見つけた己と同類の存在。

所詮は竜と人。その間には覆すことの出来ない壁がある。

一対一ではまず勝ち目がないのは承知の上なのだ。

 

だからこそハンターは笑う。

それを覆す為に。

ハンターは知っている。たとえ覆すことの出来ない壁があったとしても、それは幻想に過ぎない事を。

理性あるもの同士の戦いでは、何よりも己の意識が勝敗を決める事を。

 

 

ここにいるのは一人と一匹。

竜は人の力を認め、本気になった。

人は竜の力を認め、本気になった。

双方己の手の内を明かし、小細工すら卑怯と言えぬ境地に達した。

 

「…ハァァァァアア!!!!」

 

「ォォォオオオオオ!!!!」

 

飛び上がった竜と、竜めがけて太刀を振り下ろす人が今、交差する。




解説:
ブラキさん爆破粘菌モード
1、爆砕
殴る→爆発。これだけ。この状態のブラキさんはモーションこそ多いものの、大体の攻撃に爆発が付く以外変わらない。レイスターさんとの打ち合いの時に爆発しなかったのは、レイスターさんの太刀が気を纏っていたから。気は高エネルギーみたいなものであまり実体はない(要するにレーザーみたいなもの)ので爆発しなかった。任意で爆発も可能だが、やる意味がないのでしない(殴った方がより大きい爆発になるから)。

ブラキさん本気モード
1、咆哮
クソデカイ咆哮を放つ。それだけ。威力はお察し下さい。モチーフはディオレックス。それまでの部位破壊を修復し、なおかつ自身にドーピングを掛ける。
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