もんすたーな世界にもんすたーで転生?   作:ひなあられ

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番外編:あるいは竜と人の頂上決戦4

舞い散る閃光。

一挙一刀毎に弾けるそれは幻想の如く辺りを彩る。

不気味に広がっていた雲は晴れ渡り、夕暮れの光が辺りを照らす。

 

閃光の主は竜と人。

半日以上の間戦い続ける彼らは未だ決着が付かず、今もまだこうして戦う。

戦局はやはり竜が有利か。

一挙毎に振るわれる拳に宿る力は計り知れず、人の技術を凌駕して押し込む。

人が躱したとしても巻き起こる爆風がそれを許さず、いなそうにもいなしきれぬ力。

何段階にも渡って変化する戦い方に翻弄される所もあり、どうしても攻めきる事が出来ない。

太刀に宿る光は一挙毎に光を増してはいるが、それを振るう隙がなければ同じ事。

たとえ振るったとしても、『気』の脅威を知った竜は難なくそれを躱すだろう。

つまり、もう勝敗はついたのだ。

 

だが戦いは続く。

意思が折れぬ限りそれは続く。

そうでなければ双方納得しないからだ。

 

竜が一際強く拳を振るった。

避けきれないと感じて後方に逃げるハンター。

直後に巻き起こる爆発。クレーターこそ出来なかったものの、地面には焼け焦げた跡が痛々しく残った。

 

それだけの為にわざわざこんな攻撃を…?

ふとそんな考えが浮かぶハンター。

そう思いついた瞬間、まさかとは思いつつも太刀を地面に突き刺した。

太刀を通して感じるその出鱈目さ。

竜はただ無意味にハンターと打ち合っていた訳ではない。

その間にもしっかりと攻撃の準備をしていたのだ。

己の勘を信じ、刺した太刀にしがみつくハンター。

 

竜は右拳を地面につけたまま、今度は左拳を地面につける。

そこから一歩後退りして、今度は角を地面に突き立てた。

全方位への爆破。

普通の砕竜ならそれを行うだろう。

だが生憎、この竜は普通ではない。

 

両拳と角を突き立てたまま、今度は逆立ちをするかのように足を振り上げた。

人間で言う三点倒立のような状態だ。

吹き上がる蒸気。夕暮れの空がそれを黄金に照らし出す。

 

 

ー景色が反転したー

 

 

逆立ちした竜はそのままに、夕焼けの絶景が180度反転した。

遥か彼方まで続く地面を見上げるという不可思議な現象が起こる。

理由は単純。

竜が地面を根こそぎ捲りあげたからだ。

つまり反転しているのは竜と人の方であり、決して重力が変動するといったような超常現象が起きた訳ではない。

 

ハンターは太刀を通して、地面に無数に走る粘菌を感じ取ったのだ。

直感的にこのままでは一撃で負けてしまうと悟ったハンターは、敢えて地面にしがみつく事を選んだ。

 

「オ、ァァァア!!」

 

裂帛の気合いと共にハンターが走り出した。

無論重量は下向きにかかっており、ハンターの踏み出した足は空を切る。

ハンターは空中で体勢を立て直し、太刀を大上段に構えた。

 

「ゼァァァッ!!!」

 

振り下ろされる太刀。

切り裂かれる岩盤。

あまりにも大き過ぎる地面は切れずとも、一部ならば斬り裂ける。

それにより安全地帯が作りあげられた。

冷や汗をかきながらも無事作られた安全地帯に安堵するハンター。

そこでふと気になり、竜の状態を確かめた。

そして顔を引き攣らせた。

 

無理も無い。

何故なら竜は擬似的に作られた天井を『走って』いるからだ。

無論粘菌による恩恵だということは分かっているのだが、それでもある種の脱力感を覚えずにはいられない。

 

「ガァァッッ!!」

 

叩き込まれる拳。

ハンターに避ける術は無かった。

かろうじて鞘を間に挟み込む事は出来たが、それで衝撃がなくなる訳ではない。

更にここで爆発。粘菌による侵食を受けていた鞘は粉々になり、ハンター自身も吹き飛ばされた。

 

吹き飛ばされた事により、大量の瓦礫に押し潰される事は無かったものの被害は甚大だ。

鞘を失った事により切り札とも言える抜刀術が使えなくなったのだ。

更に瓦礫の中から出てきた竜は殆ど無傷。

これによりハンターは感じた。

己の意思が折れた事を。

 

「…参った。降参だ。もうやり合う気すら起きんよ…。」

 

「オ?マジカ?俺ノ勝チカ?」

 

「悔しいがな。…全く…呆れる程強い竜だ…。」

 

「人ノ目ン玉潰シトイテヨク言ウゼ…オ陰デトドメノ一手ガ使エナカッタゾ。」

 

「あの粘菌が大量に絡みついた瓦礫が全て爆発すると少々厄介だからな…先手は打たせて貰ったよ。」

 

「チクショウ。抗菌作用カナンカデモアンノカヨコレ。遠隔爆破ガ出来ネェ。」

 

「…大枚はたいて買った特別仕様のナイフだ。通常のブラキディオスならば粘菌を使う事すら出来ん代物だよ。」

 

「…アー…ウン、慣レタワ。セイ!」

 

何やら呟いた竜は尻尾を地面に叩きつけた。

その途端途轍もない轟音が鳴り響き、竜の背後にある瓦礫が盛大に爆発した。

本日2個目の新たなクレーターが出来上がる。

爆風に煽られ顔を顰めるハンター。

その表情の中には苦々しいものが混じっていた。

 

「当然のように無力化…か。これは一考の余地がありそうだ…。」

 

「ナンカ言ッタカ?」

 

「お前を倒す算段だよ。なに、お前を倒すのはなにも私で無くてもいい。私の弟子、あるいは私を超えるハンターに任せる事にするよ。」

 

「ウヘェ…ソリャ勘弁。マァ、負ル気ハネェケドナ。」

 

「それでいい。では、私は帰るとしよう。もう会う事は無いだろうがな。」

 

「…ソウカ…ソリャソウダヨナァ…普通ハ死ヌモンナァ…。」

 

「なんだ今更。それに私は今日限りでハンター業は引退だ。これからは教官として前線に立つ。そう言う意味でも会わんと言ったまでだよ。」

 

「ンエ?引退スンノカヨオ前。…ダッタラモウ少シココニイロヨ。久シ振リニ楽シカッタカラナ。ソノオ礼ダ。」

 

「お礼?お前がか?」

 

「以外ソウニスンナヨナ…。ソレニモウスグ日モ暮レル。焦ッテ今帰ル事モネェダロ。」

 

「それもそうか…。では少しお邪魔しよう。」

 

「オ邪魔モ何モ、コンダケ荒ラシトイテ今更ダロ。ア、ソウダ。携帯食クレ。一度食ベテミタカッタンダヨ。」

 

「不味いぞ?」

 

「生肉ガ常食ノ俺ニ今更不味イモクソモアルカ。」

 

「フハハハハッ!それもそうだったな。ほら、こいつが携帯食だ…」

 

負けた腹いせなのか、何故か持っている苦虫を携帯食の中に仕込む大人気ないハンター。

それを不用意に食いつき、虫を食べなかった仇がここに来て表れた竜の叫びが空に響く。

 

竜と人のじゃれ合いを背景に日は沈む。

そして黄金の草が緑の活気を取り戻す頃には、一匹の竜が猫のように寝ていた。

これは竜と人が織り成した誰も知らない裏話。

この世紀の戦いを話せるのはもう、この竜しか居ないだろう。




ブラキさんモーション解説
2、爆砕
粘菌攻撃をまともに受けると防御ダウンが掛かる。と言っても粘菌が身体に付着した後の爆発のみなので然程脅威はない。
3、驚天轟地
全方位爆破のモーションから逆立ちをして地面をひっくり返す大技。角と両腕が光るので比較的わかりやすい。
4、轟爆
前方宙返りの後、角を地面に突き刺す。フィールドほぼ全域にダメージ判定のある爆破攻撃付き。今回は使用する事なく勝利。
5、斬魔
その場でサマーソルト。フィールドほぼ全域に横向きの斬撃が飛ぶ。今回は使用する事なく勝利。
6、疾走
残像を残す事なく走り抜ける。地面が光る場所にいるとブラキさんに轢かれる。地面に接地した粘菌によって急制動急発進しているものと思われる。今回は使用する事なく勝利。
7、双滅
両腕を引き絞り、一気に前に突き出す。前方に向けて衝撃波と即粘菌爆破の滅殺コンボダメージが入る。今回は使用する事なく勝利。
8、天滅
大ジャンプの後、地面に向けて角一本で突っ込んで来る。取り敢えずフィールドから出ない限り逃れる術はない。モーションは大きいので早く逃げよう。初見殺し技。今回は使用する事なく勝利。
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