おそらく誤字や矛盾があると思われますので、誤字報告や矛盾点の指摘など、よろしくお願いします
「(な、なんだよ、これ……!?)」
俺は、今確かに俺の意思で動いている、俺のものではない手で体をぺたぺたと触る。
「(感触は、ある)」
いったいどうなっているのか、俺にはさっぱりわからない。
ただ一つ分かるならば、俺は、死体を俺自身のものにしたことだ。
「(一体何なんだよ、俺の身に何が起きてるんだよ!)」
【伝:転生時、主が望んだ肉体へと変化。その際、肉体に見合った種族へ変貌致しました】
「(ッ!?だ、誰だ!!)」
頭の中が混乱する中、さらに混乱するようなことが起きた。
俺の頭の中に、俺のものではない声が響いてきたのだ。
【伝:私は
「(伝える……者)」
そういえばそんなことをどこかで聞いた気がするけど、どこだったか。
【伝:主が大型の鉄の塊に弾き飛ばされた数瞬後です】
そんなことを言われ、そういえば、と思い出す。
確かにあの時いろんな言葉を聞いた気がする。
ほとんど覚えてないが。
「(俺の身にいったい何が起きてるんだ?)」
俺は試しに伝言者に俺の言葉を伝える。
【伝:転生時、主が望んだ肉体へ】
「(違うそうじゃない!今の俺の身に、だ!)」
【伝:現在、主の種族は"
「(なるほどねぇ……)」
正直何にもわからないけど、分かったことにしておこう。
で、それから何ができるのか試していくうちに、この身体についてかなりの情報を手に入れることに成功した。
この身体の元の種族は"ゴブリン族"というらしい。
あと少し魔力(?)があればホブゴブリンっていうやつに進化できたらしいんだけど、残念ながらその機会が訪れる前に死亡。
名前はリグルっていうらしい。
「(……リグル、お前の身体、使わせてもらうぞ。)」
何が変わるってわけでもないが、俺はこの肉体の元の持ち主――リグルに対して心の中でそう呟く。
「(さてと……)」
俺はさっそくこの肉体を使って、あたりを探索することにした。
さっきまでは肉体がなかったから、自由に動き回ることができなかったが、肉体がある今、俺を縛るものは何もな――!!
身体を得た嬉しさを抑えることができず、思わずといった感じで走り出そうとした瞬間、真横からかなりの衝撃が襲う。
体幹もくそもない状態から食らったタックルだ。
そのまま俺は吹き飛ばされ、木に勢いよくぶつかる。
そのとき、軽い感じでポキッと何かが折れるような音が森の中に響き渡る。
俺は何とか起き上がって、何がぶつかってきたか、そして何の音なのか確認しようとあたりを見回す。
すると……
「(ぶつかってきたのは……狼?それも複数。音の原因は…………え?)」
思わず脳が思考を止める。
だって、その音の原因は…………俺の腕が本来曲がらない方向へとひん曲がっていたことで起きていたことなのだから。
「(――――ッッッ!!!?)」
俺は自慢じゃないが、前世では入院はおろか骨折さえしたことのない超健康児。
だから俺は、骨が折れているところを見るのが初めてだった。
が故に、パニックになってしまった。
それがいけなかった。
折れた腕のことで一瞬でも忘れてしまった狼の存在。
狼はパニックになっている俺に向かって、その鋭い牙を俺の身体に突き付けてきたのだ。
腹から溢れ出る血液、臓物。
普通に生きているなら見ることのないものが視界に入り、俺はさらにパニックになってしまう。
そして俺はそのまま、狼に対してそんなに抵抗することができないまま、二度目の死を迎えた……
わけがない。
「(……あれ?そういえば全然痛くない。なんで……?)」
【伝:耐性『痛覚無効』の効果です】
「(それじゃ、なかなか死ぬ気配がない理由は?)」
【伝:エクストラスキル『不死』の効果です。たとえ肉体が完全に崩壊しようと、"死の細胞"が死ぬことはありません】
「(はぇぇ……)」
そんなことを吞気に聞く俺。
「(……って俺、吞気に納得してる場合じゃねぇ!?)」
俺は急いでいまだに嚙みついてくる狼を力任せに引き離す。
そのときに、完全に腹部が裂けたが、痛みを感じない今じゃ特に気になることでもない。ていうかこの時の俺は底を気にしている場合じゃないから気づいてない。
「(お。思ったより簡単に引っぺがせた)」
【伝:リミッターが外れているため、本来抑えられている分の力も表に出しているからだと考えられます】
「(なんでリミッターが外れてるんだ?)」
【伝:現在主が用いている肉体は死体。死体にリミッターはありません】
「(……なるほどね、言いたいことは理解した)」
リミッターが人間にある理由は、肉体の本来の力――仮にこれを100%だとして――を使うと、人間の肉体は壊れてしまう。でもこの肉体はすでに死んでいて、俺自身、肉体がいくら壊れても痛みは感じないし、死にもしない。だからリミッターをかける理由がない、ってわけか(支離滅裂)
とりま、俺の肉体をボロボロにしてきたあの狼どもは……
「(――死ね)」
俺は狼に向かって全力ダッシュをかまし、その鼻っ面目掛けて拳を振り下ろす。
ちなみにこの過程で、両足と片腕がぶっ壊れた……どこぞの緑のもじゃもじゃみたいだな。
まぁそんなことはさておいて、この一撃によって一匹は頭が潰れる。
それを見たほかの狼は、怯えたような顔をして逃げていった。
「(なんとかなった、な?)」
【伝:肉体の72%が機能を停止しています。ほかの肉体に移ることを強く推奨します】
「(は?え、なんで?)」
【主は現在の肉体がどうなっているか、確認することを推奨します】
「(え、俺の肉体?……あ)」
俺は視線を下に向けると、なかなかな惨状が広がっていた。
腹から血やら臓物が崩れ落ち、地面にはそこそこ大きな血だまりを作っている。
右腕は赤黒く変色しており、動かそうと思っても反応が鈍く、まともに動かすことができない。それは足も同様だ。
「(あ、あぁ……これはダメだわ)」
【伝:ほかの肉体に移ることを強く推奨します】
「(ほかの肉体に、ってどうすればいいのかわからんし)」
【伝:現在の肉体から自分が出ていく様をイメージしてみてください】
「(うーん、こうか……?うぉ!?)」
俺は伝言者に言うとおりに、肉体から緑色の塊が
すると、一瞬で手足の感覚がなくなり、外に勢いよく飛び出す。
ベシャ!とたたきつけられたような音を立てながら、地面を転がる俺。
肉体を動かすという意志を失った身体は、前のめりになって血の池の中に倒れる。
「(って、何も考えずに外に出ちゃったけど、ほかの肉体って……)」
【伝:目の前にある"牙狼族"の死体に移りましょう】
「(あ、やっぱりそうなるよね!)」
まぁ仕方なしと、俺は首のない狼――さっきの話を聞く限りだと"牙狼族"というようだ――の体に近づいて触れる。
すると、ゴブリンの死体に触れた時と同じように、一瞬にして視界が暗転した。
「(…………ん……)」
目が覚めると、俺は灰色の毛に覆われた狼の姿になっていた。
「(やっぱりこうなるか)」
【伝:スキル『威圧』『思念伝達』を奪取しました】
「(ん?)」
【伝:固有スキル『死奪』の効果です】
「(固有スキルっていうのは?)」
【伝:その種族が保有しているスキルのことです】
「(なるほどね)」
思わぬ収穫である。
今の俺には死んだ動物からスキルを奪うことができるみたいだ。
「(そういえば俺、肉体を得ても喋れないんだけど、その原因ってあったりする?)」
【伝:死人に口なし】
「(やかましいわ)」
と、俺は寂しさを紛らわすために伝言者と一方的な会話をしながら森の中を進んでいった。